「commence」と「start」の違いとは?「始める」の正しい英語

「commence」と「start」、どちらも「始める」という意味を持つ英語ですよね。

でも、どんな時にどちらを使えばいいのか、その違いを正確に説明できますか?

実はこの二つの単語、フォーマルさの度合いや、使われる状況に明確な違いがあるんです。特に、公式なイベントや手続きの開始には、どちらか一方を使うのがより適切とされています。

この記事を読めば、「commence」と「start」それぞれの意味や語源、具体的な使い分け、さらには「begin」や「initiate」といった類義語との違いまでスッキリ理解できます。もうビジネスメールやスピーチで迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「commence」と「start」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、よりフォーマルで、公式な行事や手続きの「開始」を意味するのが「commence」、より一般的で日常的な「始まり」を指すのが「start」と覚えるのが簡単です。「commence」は書き言葉や改まった場で、「start」は話し言葉も含め幅広く使われます。

まず、結論からお伝えしますね。

「commence」と「start」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 commence start
中心的な意味 (公式に)始まる、開始する 始まる、開始する、出発する
フォーマル度 高い(フォーマル) 普通(フォーマル・インフォーマル両方)
使われる場面 式典、会議、裁判、取引、学期など、公的・公式な開始 日常会話、仕事、旅行、機械の作動など、幅広い開始全般
ニュアンス 改まった、儀式的な始まり 一般的な、物理的な動き出しも含む
品詞 動詞(自動詞・他動詞) 動詞(自動詞・他動詞)、名詞

一番大切なポイントは、「commence」の方がずっとフォーマルな響きを持つということです。

ですから、日常会話で友達に「映画が始まるよ!」と言う時に “The movie will commence soon!” と言うと、少し大げさに聞こえてしまうかもしれません。こういう場合は “The movie will start soon!” の方が自然ですね。

逆に、会社の創立記念式典の開会を宣言するような場面では、「commence」を使う方が格式高い印象になります。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「commence」はラテン語の「共に始める(com + initiare)」が語源で、複数の人が関わる公式な開始のイメージ。「start」は古英語の「跳び上がる、急に動く」が語源で、より瞬間的で幅広い動作の始まりを示唆します。

この二つの「始める」は、なぜフォーマルさやニュアンスが異なるのでしょうか?言葉の成り立ち、つまり語源を探ると、その背景にあるイメージが見えてきますよ。

「commence」の成り立ち:「共に始める」から公式な開始へ

「commence」の語源は、ラテン語に遡ります。「com-(共に)」「initiare(始める、開始する)」という二つの要素が組み合わさった言葉が、古フランス語を経て英語に入りました。

「initiare」は「initium(始まり)」に関連し、「initial(最初の)」などの語にも繋がっています。

この「共に始める」という成り立ちから、単なる個人的な開始ではなく、複数の人が関与するような、公の、あるいは改まった状況での「開始」というニュアンスが生まれたと考えられます。式典や会議、法的な手続きなどが始まる、といった場面で使われるようになったのは、この語源が影響しているのかもしれませんね。

「start」の成り立ち:「跳び上がる」から一般的な開始へ

一方、「start」の語源は、古英語の「styrtan」に由来します。これは「跳び上がる」「急に動く」「飛び出す」といった、瞬間的な動きを表す言葉でした。

この「静止状態から動き出す」という基本的なイメージが、「start」の核心にあります。そこから転じて、物事が始まる、エンジンがかかる、旅に出発するなど、非常に幅広い「開始」を表す一般的な言葉として使われるようになりました。

「commence」のような改まったニュアンスは元々なく、日常的な動作からビジネス、機械の作動まで、あらゆる「始まり」に使える、非常に汎用性の高い単語なんですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「The ceremony will commence at 10 AM.」(式典は午前10時に開始)、「Let’s start the meeting.」(会議を始めましょう)。日常では「My new job starts next week.」(来週から新しい仕事が始まる)、「The rain started suddenly.」(雨が突然降り始めた)のように使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。ビジネスシーンや日常会話など、様々な場面での使い方を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

公式な場面か、日常的な業務かを意識すると分かりやすいです。

【OK例文:commence】

  • The annual general meeting will commence at 2 PM sharp. (年次株主総会は午後2時ちょうどに開始いたします。)
  • Construction on the new building is scheduled to commence next month. (新社屋の建設は来月開始される予定です。)
  • The company will commence legal proceedings against them. (会社は彼らに対して法的手続きを開始します。)
  • Trading on the stock exchange will commence shortly. (証券取引所での取引は間もなく開始されます。)

株主総会、建設工事、法的手続き、取引開始など、改まった、あるいは公式なニュアンスのある開始に使われていますね。

【OK例文:start】

  • Let’s start the presentation. (プレゼンテーションを始めましょう。)
  • What time does the workshop start? (ワークショップは何時に始まりますか?)
  • I need to start working on this report immediately. (すぐにこのレポートに取り掛かり始める必要がある。)
  • The engine won’t start. (エンジンがかからない。)

プレゼン開始、ワークショップの開始時刻、レポート作成への着手、エンジンの始動など、より一般的で幅広い「始まり」に使われています。

日常会話・公的な場面での使い分け

日常会話では「start」が圧倒的に多く使われますが、公的なアナウンスなどでは「commence」も耳にします。

【OK例文:commence】

  • The graduation ceremony will commence with the national anthem. (卒業式は国歌斉唱をもって開始されます。)
  • Boarding for flight JL123 will commence at Gate 5. (JL123便へのご搭乗は5番ゲートにて開始いたします。)(空港アナウンスなど)
  • The autumn semester will commence on September 1st. (秋学期は9月1日に開始します。)

式典、搭乗案内、学期の開始など、やや改まった、公式なニュアンスの場面で使われています。

【OK例文:start】

  • What time does the party start? (パーティーは何時に始まるの?)
  • Let’s start cooking dinner. (夕食を作り始めよう。)
  • My car wouldn’t start this morning. (今朝、車のエンジンがかからなかったんだ。)
  • I decided to start learning Spanish. (スペイン語を習い始めることにした。)

パーティー、料理、車のエンジン、習い事など、日常的なあらゆる「始まり」に使えますね。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が通じないわけではありませんが、不自然に聞こえる可能性のある例です。

  • 【△/NG】 Let’s commence our chat over coffee. (コーヒーでも飲みながらおしゃべりを開始しましょう。)
  • 【OK】 Let’s start our chat over coffee. (コーヒーでも飲みながらおしゃべりを始めましょう。)

友人との気軽なおしゃべりのような、非常にインフォーマルな場面で「commence」を使うと、堅苦しく、ユーモラスにさえ聞こえてしまう可能性があります。「start」が断然自然です。

  • 【△】 The baby commenced crying. (赤ちゃんが泣き始めた。)
  • 【OK】 The baby started crying. (赤ちゃんが泣き始めた。)
  • 【OK】 The baby began crying. (赤ちゃんが泣き始めた。)

赤ちゃんの泣き声のような、自然発生的で日常的な事柄の始まりに「commence」を使うのは一般的ではありません。「start」や、後述する「begin」が自然です。

【応用編】似ている言葉「begin」「initiate」との違いは?

【要点】

「begin」は「start」とほぼ同じ意味で広く使えますが、ややフォーマルな響きを持つこともあります。「initiate」はプロセスや計画などを「始動させる」「着手する」という意味合いが強く、より能動的で改まった表現です。

「commence」や「start」の他にも、「始める」を意味する単語があります。代表的な「begin」と「initiate」との違いも理解しておくと、表現の選択肢が広がりますよ。

「begin」との違い

「begin」は「start」と非常に意味が近く、多くの場合で互換的に使えます。最も一般的で基本的な「始める」「始まる」を表す動詞と言えるでしょう。

「start」との微妙な違いとしては、「start」が瞬間的な動き出し(エンジンをかける、出発するなど)のニュアンスを持つのに対し、「begin」はプロセスや状態の緩やかな始まりを示すことがあります。また、「start」よりもわずかにフォーマルな響きを持つとされることもあります。

例:The concert will begin at 7 PM. (≒ start) (コンサートは午後7時に始まる。)

例:She began to feel nervous. (彼女は緊張し始めた。)(状態の始まり)

例:Let us begin the ceremony. (ややフォーマル) (式典を始めましょう。)

「initiate」との違い

「initiate」は「(プロセスや計画などを)新たに始める、開始する、着手する」という意味合いが強い動詞です。

単に物事が始まるというより、誰かが意図を持って何か新しい段階やプロセスを「始動させる」というニュアンスがあります。「commence」と同様にフォーマルな場面で使われることが多いです。

例:The government decided to initiate peace talks. (政府は和平交渉を開始することを決定した。)

例:We need to initiate the new project as soon as possible. (我々はできるだけ早く新しいプロジェクトに着手する必要がある。)

例:He was initiated into the secret society. (彼はその秘密結社への加入を許された(=加入プロセスが開始された)。)

「commence」と「start」の違いを英語の専門家視点で解説

【要点】

言語学的には、「commence」はラテン語由来の借用語であり、フォーマルなレジスター(文体)に属します。一方、「start」はゲルマン語系の固有語であり、より広範なレジスターで使用されます。意味論的には、「commence」はしばしば公的な、あるいは儀式的なイベントの開始を、「start」はより物理的、瞬間的な開始や一般的な着手を含意します。

英語の専門家、例えば言語学者やコーパス(言語データベース)分析の研究者の視点から見ると、「commence」と「start」の違いは、語源、使用される文体(レジスター)、そして意味的な範囲(意味場)に関連しています。

語源とレジスター:「commence」はラテン語由来のフランス語を経由して英語に入った借用語です。一般的に、ラテン語やフランス語由来の単語は、古英語(ゲルマン語系)由来の単語よりもフォーマルな響きを持つ傾向があります。まさに「commence」はこの典型例であり、法律文書、公式発表、学術論文、儀式的なスピーチなど、格調高い、あるいは公的な文脈で好まれます。

一方、「start」は古英語に起源を持つ固有語であり、より日常的で基本的な語彙に属します。そのため、インフォーマルな会話からフォーマルな文書まで、非常に幅広いレジスターで使用されます。

意味論的な範囲:「commence」が示す「始まり」は、しばしば予定されたイベント、プロセス、期間の公式な開始点を指します(例:会議、学期、訴訟)。儀式的なニュアンスを伴うこともあります。また、「commence」は名詞形(commencement)が「卒業式」を意味するように、特定の公的な「始まり」と強く結びついています。

対照的に、「start」がカバーする意味範囲は非常に広いです。物理的な動きの開始(例:車が発進する)、機械の作動開始(例:エンジンがかかる)、活動や仕事への着手(例:勉強を始める)、イベントや期間の始まり(例:パーティーが始まる)など、文脈に応じて多様な「始まり」を表します。名詞としても「出発点」「有利なスタート」など様々な意味で使われます。

コーパス分析を行うと、「start」の出現頻度は「commence」よりも圧倒的に高く、共起する単語も「start」の方がはるかに多様であることが示されます。これは、「start」がより基本的で汎用的な語彙であることを裏付けています。

ネイティブスピーカーは、これらの語源的背景や意味的なニュアンス、そして社会的な慣習に基づいて、無意識のうちに適切な単語を選択していると考えられます。

僕が「start」を使うべき場面で「commence」と言ってしまった体験談

これは僕がまだ英語にそれほど慣れていなかった頃の話です。海外の取引先との比較的カジュアルなオンラインミーティングでのことでした。

時間になり、参加者も揃ったので、僕が口火を切ることになりました。少しかしこまった方が良いかな、という気持ちと、覚えたての単語を使いたいという気持ちが混ざっていたのかもしれません。僕は参加者に向かって、こう言ってしまったんです。

“Okay everyone, shall we commence the meeting?”

その瞬間、画面の向こうの何人かが、ほんの一瞬、不思議そうな顔をしたのを僕は見逃しませんでした。すぐに笑顔に戻ってくれましたが、僕は「あれ?何かおかしかったかな?」と内心焦りました。

ミーティング自体は問題なく進みましたが、終わった後、気になってネイティブの同僚に聞いてみました。「ミーティングの開始で commence って言ったんだけど、変だった?」と。

同僚は笑いながら教えてくれました。

「いや、間違いじゃないよ。でも、今日のメンバーとの、あの雰囲気のミーティングで commence はちょっと硬すぎるかな。まるで裁判か何かを始めるみたいに聞こえたかも(笑)。普通に ‘Shall we start?’ とか ‘Let’s get started.’ で十分だよ。commence はもっと大きな公式会議とか、式典とか、そういう場で使うことが多いかな」

…やってしまいました。まさに、場の空気に合わない、フォーマルすぎる単語を選んでしまった典型的な失敗例です。

単語の意味を知っているだけでなく、その単語が持つ「フォーマルさ」や「使われるべき場面」を理解することが、自然なコミュニケーションには不可欠だということを、この体験を通じて学びました。それ以来、新しい単語を覚えるときは、辞書の意味だけでなく、例文や使われる状況も一緒に確認するようにしています。

「commence」と「start」に関するよくある質問

Q. 日常会話では「commence」は絶対に使わない方がいいですか?

A. 絶対にダメというわけではありませんが、使う場面は非常に限られます。意図的にユーモアを込めて、大げさに言いたい時などには使われるかもしれませんが、基本的には「start」や「begin」を使う方がはるかに自然です。日常会話で「commence」を使うと、堅苦しい、気取っている、といった印象を与える可能性があります。

Q. ビジネスメールでは常に「commence」を使うべきですか?

A. いいえ、そんなことはありません。ビジネスメールでも、内容や相手との関係性によって使い分けます。契約の開始や公式なプロジェクトの始動など、改まった内容を伝える際には「commence」が適していますが、日常的な業務連絡や比較的カジュアルな依頼などでは「start」で全く問題ありません。むしろ、何でもかんでも「commence」を使うと、かえって不自然で硬い印象になることもあります。

Q. 「commence」と「begin」の違いは何ですか?

A. 「commence」は「begin」よりもさらにフォーマルです。「begin」も「start」よりはややフォーマルな響きを持つことがありますが、「commence」ほどではありません。「begin」は「start」と同様に非常に幅広く使われますが、「commence」は主に公式な、あるいは儀式的な開始に限定される傾向があります。

「commence」と「start」の違いのまとめ

「commence」と「start」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. フォーマルさが最大の違い:「commence」は非常にフォーマル、「start」は一般的で幅広く使える。
  2. 使われる場面:「commence」は式典、公式会議、法的手続きなど改まった開始に。「start」は日常会話からビジネスまであらゆる開始に。
  3. 語源イメージ:「commence」は「共に始める」→公式な開始。「start」は「跳び上がる」→一般的な開始・動き出し。
  4. ニュアンス:「commence」は儀式的・公式的。「start」はより汎用的で、物理的な動き出しも含む。
  5. 類義語との比較:「begin」は「start」に似ているがややフォーマル寄り。「initiate」はプロセスや計画の「始動・着手」を意味し、フォーマル。

これらのポイントを押さえれば、もう「commence」と「start」の使い分けで迷うことは少なくなるはずです。

特に重要なのは、場面や相手に合わせたフォーマルさのレベルを意識することですね。適切な単語を選ぶことで、あなたの英語はより自然で、意図が正確に伝わるようになります。自信を持って使い分けていきましょう。カタカナ語・外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。