「despite」と「although」の違いを一言で言うなら、後ろに「名詞」が来るか、「文(主語+動詞)」が来るかという点に尽きます。
どちらも「~にもかかわらず」という逆接の意味を持ちますが、文法的な役割(品詞)が決定的に異なります。
これを間違えると、「雨にもかかわらず」と言いたいのに、文法が破綻して相手に違和感を与えてしまいます。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ「前置詞」と「接続詞」のルールの違いから、ネイティブが自然に使い分けている感覚までスッキリと理解でき、正確な英文を作れるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「despite」と「although」の最も重要な違い
基本的には名詞(句)を続けたいなら「despite」、文章(S+V)を続けたいなら「although」と覚えるのが簡単です。意味はほぼ同じですが、文法ルールが異なります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの単語の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | despite | although |
|---|---|---|
| 品詞 | 前置詞 | 接続詞 |
| 後ろに来る形 | 名詞、代名詞、動名詞 (A) | 主語 + 動詞 (AがBする) |
| 意味 | ~にもかかわらず | ~だけれども、~にもかかわらず |
| フォーマル度 | やや硬い(書き言葉でよく使う) | 硬い(書き言葉・話し言葉両方) |
一番大切なポイントは、「despite」の後ろには「文(S+V)」を直接置けないということです。
例えば、「雨にもかかわらず」と言う場合、「Despite the rain」は正解ですが、「Despite it was raining」は間違いになります(正しくは「Although it was raining」)。
なぜ違う?単語の成り立ち(コアイメージ)から掴む
「despite」は「軽蔑・見下す」という強いニュアンスが語源で、障害を物ともしないイメージ。「although」は「すべて(all)そうだが(though)」という譲歩のイメージで、事実を認めつつ反論をつなげます。
なぜこの二つの言葉に文法的な違いが生まれるのか、語源やコアイメージを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「despite」のイメージ:障害をねじ伏せる
「despite」の語源は、ラテン語で「見下ろす」「軽蔑する」といった意味を含んでいます。
そこから、「(障害や不利な条件を)軽蔑するほど物ともせずに」という強いニュアンスが生まれました。
「困難な状況(名詞)」という障害物があり、それを「乗り越えて」という前置詞的なイメージで捉えると分かりやすいでしょう。
「雨」という障害を、ポンと乗り越える感覚です。
「although」のイメージ:事実を認めてつなぐ
一方、「although」は「all(すべて)」+「though(~だけれども)」から成り立っています。
「(後ろに続く文の内容は)全面的にその通りなんだけど、でもね…」と、一度事実を受け入れてから、別の事実をつなぐイメージです。
文と文をつなぐ「接着剤(接続詞)」の役割を果たすため、後ろには必ず「事実を表す文(S+V)」が必要になるのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
名詞一語や動名詞ですっきり言いたい時は「despite」、状況を詳しく説明したい時は「although」を使います。意味は同じでも、文の構造によって使い分けます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
日常会話での使い分け
同じ状況をどう表現するか見てみましょう。
【OK例文:despite(名詞)】
- We went out despite the rain.(雨にもかかわらず、私たちは外出した。)
- He came to work despite being sick.(彼は病気であるにもかかわらず出勤した。)
「the rain(雨)」や「being sick(病気であること)」という名詞の塊をポンと置いています。
【OK例文:although(文)】
- We went out although it was raining.(雨が降っていたけれど、私たちは外出した。)
- He came to work although he was sick.(彼は病気だったけれど出勤した。)
「it was raining(雨が降っていた)」や「he was sick(彼は病気だった)」という完全な文がつながっています。
ビジネスシーンでの使い分け
少し硬い表現でもルールは同じです。
【OK例文:despite】
- Despite the recession, our sales increased.(不況にもかかわらず、我々の売上は増加した。)
【OK例文:although】
- Although the economy is in a recession, our sales increased.(経済は不況にあるが、我々の売上は増加した。)
これはNG!間違えやすい使い方
日本人がよくやってしまう間違いを見てみましょう。
- 【NG】 Despite he studied hard, he failed the exam.
- 【OK】 Although he studied hard, he failed the exam.
- 【OK】 Despite studying hard, he failed the exam.
「Despite」の後ろにいきなり「he studied(彼が勉強した)」という主語と動詞を置くことはできません。
どうしても「despite」を使いたいなら、「studying(勉強すること)」という動名詞に変える必要があります。
【応用編】似ている言葉「in spite of」「though」との違いは?
「in spite of」は「despite」と全く同じ意味・用法(前置詞)です。「though」は「although」のカジュアル版で、会話でよく使われます。「even though」は「although」の強調形です。
「despite」や「although」の言い換え表現もセットで覚えておくと便利です。
in spite of = despite
この2つは完全にイコールと考えて大丈夫です。
どちらも前置詞として働き、後ろには名詞が来ます。
- In spite of the rain, we went out.(雨にもかかわらず…)
「despite」の方が一語ですっきりしているため、書き言葉で好まれる傾向がありますが、意味に違いはありません。
注意点として、「despite of」とは言いません。「of」をつけるのは「in spite」の方だけです。
though ≒ although
「though」は「although」と同じ接続詞ですが、よりカジュアルで会話的です。
また、「though」は文末に置いて「〜だけどね」と付け足す使い方ができますが、「although」にはその使い方はありません。
- It’s expensive. I’ll buy it, though.(高いな。買うけどね。)
even though
「although」をさらに強調した表現で、「〜であるにもかかわらず(驚いたことに)」というニュアンスが強まります。
明確な対比を示したい時によく使われます。
「despite」と「although」の違いを文法的な視点から解説
「despite」は前置詞なので、名詞(句)を目的語にとります。「although」は従位接続詞なので、副詞節(S+Vを含む文)を作ります。
感覚だけでなく、文法的なルールを知っておくと、迷った時の強力な判断基準になります。
専門的な視点から、決定的な違いを解説します。
1. 前置詞 vs 接続詞
■ despite:前置詞
「at」「in」「on」などと同じ仲間です。
前置詞の後ろには必ず「名詞」か「名詞に相当する語句(動名詞など)」を置くという絶対のルールがあります。
■ although:接続詞
「because」「when」「if」などと同じ仲間(従位接続詞)です。
接続詞の後ろには必ず「主語+動詞(S+V)」が揃った完全な文を置く必要があります。
2. 裏技:despite the fact that …
どうしても「despite」の後ろに「S+V」をつなげたい場合の裏技があります。
それは、「the fact that」を挟むことです。
- Despite the fact that it was raining, we went out.(雨が降っていたという事実にもかかわらず…)
こうすれば、「the fact(事実)」という名詞が「despite」の目的語になり、その中身を「that節」で説明するという構造になるため、文法的にも正しくなります。
少し長ったらしい表現になりますが、フォーマルな文脈でよく使われます。
僕が「Despite it is…」と書いて赤ペンだらけになった体験談
僕も英語学習を始めたばかりの頃、この使い分けで痛い目を見たことがあります。
社会人になってから挑戦した英作文の添削課題でのことです。
「難しいプロジェクトだったが、成功した」とかっこよく書こうとして、自信満々にこう書きました。
「Despite it was a difficult project, we succeeded.」
戻ってきた答案用紙は、そこが真っ赤に修正されていました。
ネイティブの先生からのコメントにはこうありました。
「”Despite” is a preposition. You cannot put a sentence after it. Use “Although” or “Despite the difficulty”.」
(Despiteは前置詞です。後ろに文は置けません。Althoughを使うか、Despite the difficultyとしてください。)
顔から火が出るほど恥ずかしかったですが、この失敗のおかげで、「Despite + 名詞」「Although + 文」という鉄則が骨身に沁みました。
それ以来、「S+V」が見えたら反射的に「Although」を選ぶようになり、文法ミスが激減しました。
失敗は成功の母とはよく言ったものです。
「despite」と「although」に関するよくある質問
「despite of」という表現はありますか?
いいえ、ありません。これは非常によくある間違いです。「in spite of」と混同して「despite of」と言ってしまう人が多いですが、正しくは「despite」単独、もしくは「in spite of」です。「of」をつけるのは「in spite」の時だけと覚えましょう。
「although」と「though」は書き言葉でどちらを使うべきですか?
論文やビジネスメールなどのフォーマルな書き言葉では「although」の方が好まれます。「though」は少しカジュアルな響きがあるため、日常会話や親しい間柄のメールなどでよく使われます。ただし、意味自体に大きな違いはありません。
文頭と文中のどちらに置くのが正しいですか?
どちらも文頭、文中の両方に置くことができます。「Although it rained, we went out.」でも「We went out although it rained.」でもOKです。「despite」も同様です。強調したい内容(逆接の条件)を先に言いたい場合は文頭に置くことが多いです。
「despite」と「although」の違いのまとめ
「despite」と「although」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本ルール:後ろが名詞なら「despite」、文(S+V)なら「although」。
- 品詞の違い:「despite」は前置詞、「although」は接続詞。
- 言い換え:「despite」=「in spite of」、「although」≒「though」。
言葉の背景にある「乗り越える」か「事実をつなぐ」かのイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
英語学習についてさらに詳しく知りたい方は、英語由来語の違いまとめもぜひご覧ください。
文部科学省の外国語教育に関する資料なども参考にしながら、これからは自信を持って、的確な表現を選んでいきましょう。
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