「縁戚」と「親戚」。どちらも親族関係を表す言葉ですが、この二つの使い分けに迷ったことはありませんか?
結論から言うと、「親戚」は血の繋がりと結婚による繋がりの両方を含んだ広い言葉であり、「縁戚」は主に「結婚によってできた繋がり(義理の関係)」に焦点を当てた言葉です。日常会話では「親戚」を使えば間違いありませんが、血縁関係がないことを強調したい場合や、少し改まった文脈では「縁戚」が使われます。
この記事を読めば、結婚式や法事の席、あるいはビジネス上の身辺申告などで、どちらの言葉を使うべきかがスッキリ理解でき、大人の教養として恥じない言葉選びができるようになります。
それでは、まず二つの言葉の核心的な違いを比較表で見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「縁戚」と「親戚」の最も重要な違い
「親戚」は血縁・婚姻を問わず身内全般を指す最も一般的な言葉です。「縁戚」は婚姻によって生じた関係(姻族)を指すことが多く、血縁関係を含まないニュアンスが強くなります。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 縁戚(えんせき) | 親戚(しんせき) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 婚姻によってできた親類関係。 | 血縁や婚姻による身内関係の総称。 |
| 対象範囲 | 主に配偶者の家族など、血の繋がりのない関係。 | 血族(血の繋がり)と姻族(結婚の繋がり)の両方。 |
| ニュアンス | 少し硬い、客観的、血縁との区別。 | 日常的、一般的、広範囲。 |
| 言い換え | 姻戚(いんせき)、姻族。 | 親類(しんるい)、身内。 |
一番大切なポイントは、日常会話で「縁戚」と言うことはほとんどなく、通常は「親戚」で全てカバーできるということです。「縁戚」は文章語や、血縁ではないことを明確にしたい時に使う「こだわりのある表現」と言えるでしょう。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「戚」は「みうち」や「親しい」という意味。「縁」は結婚などの「ゆかり」を、「親」は「親しみ」や「血筋」を表します。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「縁戚」の成り立ち:縁(ゆかり)で繋がったみうち
「縁戚」の「縁(えん)」は、「ふち」や「ゆかり」という意味ですね。
仏教用語の「因縁」や、結婚を指す「縁組」という言葉があるように、もともとは他人だった同士が、何かのきっかけ(主に結婚)で結びついた関係を強調しています。
「戚(せき)」は、中国古代の武器(まさかり)の形から来ていますが、「みうち」や「親しい」という意味で使われます。「憂い(うれい)」という意味もあり、喜びも悲しみも分かち合う関係を表しています。
「親戚」の成り立ち:親(した)しいみうち
一方、「親戚」の「親」は、文字通り「おや」ですが、「したしい」とも読みます。
木の上に立って見るという字の通り、身近で見守る存在や、血の繋がったルーツを表します。
つまり、血縁関係にある「親(血族)」と、婚姻関係にある「戚(姻族)」を合わせた、身内全体の総称として使われているのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
日常会話や広範囲を指す時は「親戚」、結婚相手の親族など血縁がない関係を特定して指す時は「縁戚」を使います。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
日常・ビジネスでの使い分け
【OK例文:親戚】
- お盆には親戚一同が集まって食事をする。
- 彼は私の遠い親戚にあたる人物だ。
- 親戚の叔父さんが会社を経営している。
【OK例文:縁戚】
- 社長とは縁戚関係にあるが、血の繋がりはない。
- 結婚によって、彼らとは縁戚になった。
- 縁戚者(姻族)の法事に出席する。
「縁戚」は、「血は繋がっていないけれど親戚関係である」というニュアンスを伝えたい時に便利ですね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じますが、少し不自然な使い方です。
- 【NG】自分の兄や姉のことを「縁戚」と呼ぶ。
- 【OK】自分の兄や姉のことを「親戚(または身内・兄弟)」と呼ぶ。
自分の兄弟姉妹は「血族(血縁)」なので、「結婚による繋がり」を意味する「縁戚」と呼ぶのは誤りではありませんが、違和感があります。「縁戚」はあくまで「配偶者側の親族」や「親族の結婚相手」などを指すのが基本です。
【応用編】似ている言葉「親族(しんぞく)」との違いは?
「親族」は民法で定義された法律用語です。「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」を指します。「親戚」や「縁戚」よりも範囲が明確に決まっている言葉です。
「親戚」や「縁戚」と似た言葉に「親族(しんぞく)」があります。これは法律(民法)で使われる厳密な言葉です。
民法第725条では、「親族」の範囲を以下のように定めています。
- 6親等内の血族(血の繋がった人、養子含む)
- 配偶者(夫や妻)
- 3親等内の姻族(配偶者の血族、または血族の配偶者)
「親戚」や「縁戚」は日常語なので、「遠い親戚」と言えば範囲に制限はありませんが、「親族」と言った場合は法律上のライン引きが存在します。
履歴書や公的な書類で「親族」と書かれていれば、この民法の定義に従うのが一般的です。
「縁戚」と「親戚」の違いを法学・社会学的に解説
法学的には「血族(血縁)」と「姻族(婚姻)」という分類が用いられます。「縁戚」は社会学的な文脈で「姻族」に近い意味で使われますが、厳密な法律用語ではありません。
少し専門的な視点から、この言葉の背景を深掘りしてみましょう。
法学の世界では、「縁戚」という言葉はあまり使われず、代わりに「姻族(いんぞく)」という言葉が使われます。
姻族とは、「配偶者の血族(義理の父母、兄弟など)」と「血族の配偶者(兄弟の妻、姉妹の夫など)」のことです。これが、一般用語の「縁戚」にほぼ相当します。
一方、「親戚」は法的な定義を持たない広い言葉であり、社会学的には「親族ネットワーク」全体を指す包括的な用語として機能しています。
つまり、法的な権利義務(扶養義務や相続権など)を論じる時は「血族」「姻族」「親族」を使い、社会的な付き合いや人間関係を論じる時は「親戚」「縁戚」を使う、という棲み分けがされているのです。
僕が結婚式の席次表作りで「縁戚」という言葉に救われた話
僕が結婚式の準備をしていた時のことです。席次表の肩書きを決めるのに、とても頭を悩ませていました。
妻のお姉さんの旦那さんのご両親…といった、遠い関係の方々も招待することになったのですが、肩書きをどうすればいいのか分かりませんでした。「親戚」と書くのは簡単ですが、なんだかざっくりしすぎている気がして。
そんな時、プランナーさんが「『ご親戚』でも構いませんが、関係性を整理する上では『ご縁戚』という言葉も便利ですよ」と教えてくれました。
席次表に直接「縁戚」と書くわけではありませんが(通常は「新婦親戚」などで統一します)、自分の中で「血は繋がっていないけれど、この結婚という『縁』で結ばれた大切な人々」として「縁戚」という言葉を意識した時、すっと腑に落ちたのです。
「親戚」というと、どうしても「血の濃さ」や「昔からの付き合い」をイメージしてしまい、会ったこともない相手をそう呼ぶことに違和感がありました。
でも、「縁戚」なら「これから縁を紡いでいく人々」というニュアンスで受け取れます。この言葉のおかげで、遠い関係の方々に対しても、敬意と親しみを持って接する心の準備ができたように思います。
「縁戚」と「親戚」に関するよくある質問
英語で「縁戚」や「親戚」はどう言いますか?
親戚全体は「relative(レラティブ)」と言います。縁戚(義理の家族)は「in-laws(イン・ロウズ)」と表現するのが一般的です。例えば義理の母は「mother-in-law(法的な母)」となります。
「遠縁(とおえん)」と「縁戚」は同じですか?
少し違います。「遠縁」は血縁・婚姻を問わず、関係が遠い親戚(はとこ、みいとこなど)を指します。「縁戚」は関係の遠近に関わらず、婚姻によって結ばれた関係を指します。
履歴書の「親戚」にはどこまで書けばいいですか?
通常、履歴書の緊急連絡先や家族構成欄には「同居家族」や「親族(3親等内程度)」を書くのが一般的です。「親戚」という欄がある場合は、指定がない限り、連絡のつく近しい親族を書けば問題ありません。
「縁戚」と「親戚」の違いのまとめ
「縁戚」と「親戚」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の範囲:「親戚」は血縁・婚姻すべて、「縁戚」は主に婚姻(義理)の関係。
- 使い分け:日常会話は「親戚」でOK。血縁がないことを区別するなら「縁戚」。
- 法的な視点:法律用語では「親族」「血族」「姻族」を使う。
言葉の背景にある「血」と「縁」の違いを知ると、人間関係の結びつき方がより立体的に見えてきますね。
これからは自信を持って、状況に応じた的確な言葉を選んでいきましょう。さらに詳しい人間関係や社会の言葉については、社会・関係の言葉の違いまとめもぜひご覧ください。
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