「例えば」と英語で言いたいとき、「for example」と「for instance」、どちらを使うべきか悩んだことはありませんか?
ほとんど同じ意味で使われることが多いこの二つの表現ですが、微妙なニュアンスの違いや、文脈による使い分けが存在するんです。
一般的には互換可能ですが、「for example」はより一般的な例、「for instance」は特定の実例や状況を指す傾向があります。この記事を読めば、「for example」と「for instance」の核心的な違いから、具体的な使い分け、さらには「e.g.」との違いまでスッキリ理解でき、英語での表現力がさらに豊かになります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「for example」と「for instance」の最も重要な違い
多くの場合、「for example」と「for instance」は交換可能ですが、「for example」はより一般的な例を示すのに対し、「for instance」は特定の実例や状況、仮定的な事例を示すニュアンスがやや強いです。フォーマルさの度合いにも若干の違いがあります。
まず、結論からお伝えしますね。
「for example」と「for instance」の最も重要な違いと共通点を、以下の表にまとめました。基本的には同じように使える場面が多いことを念頭に置きましょう。
| 項目 | for example | for instance |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 例えば(一般的な例、典型例) | 例えば(具体的な実例、特定の場合、仮定的な状況) |
| ニュアンス | 代表的・典型的な例を示す感覚がやや強い | ある特定のケースや事例を取り上げる感覚がやや強い |
| フォーマル度 | ややフォーマル寄り(文中・文頭・文末で使用可) | ややインフォーマル寄り(文中・文頭・文末で使用可) |
| 互換性 | 多くの場合、交換可能 | |
| 使い分けのヒント | 示す例が、そのカテゴリーを代表する典型的なものか? | 示す例が、数ある中の「とある一つの事例」か?仮定の話か? |
一番大切なポイントは、ほとんどの文脈でどちらを使っても意味は通じるし、間違いではないということです。ネイティブスピーカーでも厳密に使い分けていないことも多い表現です。
ただし、わずかなニュアンスの違いとして、「for example」は代表例、「for instance」は特定例という傾向があることを知っておくと、より洗練された英語表現が可能になりますね。
なぜ違う?言葉の核心的な意味からイメージを掴む
「example」はラテン語の「eximere(取り出す)」に由来し、全体から代表として「取り出された」典型例のイメージ。「instance」は「近くに立つこと」に由来し、ある状況や場合に「その場にある」特定の実例というイメージです。
この二つの表現の微妙なニュアンスの違いは、それぞれの中心となる単語「example」と「instance」の成り立ちを探ると見えてきます。
「for example」の核心:典型的な「例」を示す
「example」の語源は、ラテン語の「exemplum」、さらに遡ると「eximere(取り出す、取り除く)」に行き着きます。「exempt(免除された)」とも関連があります。
ここから、「example」には、あるグループやカテゴリー全体の中から、その性質を代表するものとして「取り出された」見本・手本という核心的なイメージがあります。
つまり、「for example」は、ある事柄を説明する際に、その典型例や代表例を「例として取り上げて」示す、というニュアンスが根底にあるわけですね。
「for instance」の核心:具体的な「実例・事例」を示す
一方、「instance」は、ラテン語の「instantia(近くにあること、切迫)」に由来し、「in-(上に、近くに)」と「stare(立つ)」が組み合わさった言葉です。「instant(即時の)」とも繋がりますね。
この語源から、「instance」には、ある特定の状況や場合に「その場に存在する」「差し迫った」具体的な事例・実例という核心的なイメージが生まれます。
「for instance」は、一般的な法則や主張を裏付けるために、「ここに(具体的に)立っている」一つの事例・ケースを取り上げて示す、というニュアンスを持つのです。仮定的な状況を示す場合に使われることがあるのも、この「特定の状況」というイメージからかもしれません。
具体的な例文で使い方をマスターする
一般的な果物の例なら “Fruits, for example, apples and oranges…”。特定の状況の例なら “Take this case, for instance…” のように使い分けると、より自然な英語になりますが、逆でもほとんど問題ありません。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすい使い方(多くはありませんが)を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
プレゼンテーションや報告書で具体例を示す際によく使われます。多くの場合、互換可能です。
【OK例文:for example】
- Many countries, for example, Japan and Germany, face aging populations. (多くの国々、例えば日本やドイツは、高齢化社会に直面しています。) ※代表例
- We need to improve our marketing strategy. For example, we could increase our social media presence. (我々はマーケティング戦略を改善する必要があります。例えば、ソーシャルメディアでの存在感を高めることができます。) ※提案の一例
- There are several ways to reduce costs, for example, by negotiating with suppliers. (コストを削減する方法はいくつかあります。例えば、サプライヤーと交渉することによって。) ※方法の一例
【OK例文:for instance】
- Unexpected issues can arise during a project. For instance, a key member might resign suddenly. (プロジェクト中には予期せぬ問題が発生することがあります。例えば、主要メンバーが突然辞職するかもしれません。) ※特定の起こりうる事例
- Our competitors are adopting new technologies. Take Company X, for instance; they recently implemented AI analysis. (競合他社は新しい技術を採用しています。例えばX社を見てください。彼らは最近AI分析を導入しました。) ※特定企業の事例
- Let’s consider a hypothetical situation, for instance, what if our main server goes down? (仮定的な状況を考えてみましょう。例えば、もしメインサーバーがダウンしたらどうなるでしょうか?) ※仮定の事例
比べてみると、「for example」の方が一般的な例、「for instance」の方が特定のケースや仮定的な事例を示す際に、わずかに好まれる傾向があるかな?と感じる程度ですね。どちらを使っても全く問題ない場面がほとんどです。強いて言えば、「for instance」の方が少し口語的な響きがあるかもしれません。
日常会話での使い分け
日常会話ではさらに区別なく使われることが多いでしょう。
【OK例文:for example】
- I like outdoor activities, for example, hiking and camping. (私はアウトドア活動が好きです、例えばハイキングやキャンプなど。)
- You should eat more vegetables, for example, spinach or broccoli. (もっと野菜を食べるべきだよ、例えばほうれん草とかブロッコリーとか。)
【OK例文:for instance】
- He often forgets things. For instance, he left his keys at home yesterday. (彼はよく物忘れをするんだ。例えば、昨日は家に鍵を忘れてきた。)
- Think about it. What would you do, for instance, if you won the lottery? (考えてみてよ。例えばさ、もし宝くじに当たったらどうする?)
これはNG!間違えやすい使い方
「for example」と「for instance」の使い分け自体で、明確なNGとなるケースはほとんどありません。どちらを使っても意味が通じなくなることは稀でしょう。
ただし、文法的な注意点として、これらを文頭で使う場合は、通常カンマ(,)を後ろに置きます。
- 【OK】 For example, we need to reconsider the budget.
- 【OK】 For instance, let’s look at last year’s data.
文中で使う場合は、前後にカンマを置くことが多いですが、必須ではありません。
- 【OK】 Many factors, for example, cost and time, should be considered.
- 【OK】 Many factors for example cost and time should be considered.
文末で使う場合も、前にカンマを置くのが一般的です。
- 【OK】 We discussed various topics, for example.
- 【OK】 We discussed various topics, for instance.
使い分けよりも、むしろこうした句読法のルールの方が、ライティングでは重要かもしれませんね。
【応用編】似ている言葉「e.g.」「i.e.」との違いは?
「e.g.」はラテン語の「exempli gratia」の略で「例えば」を意味し、「for example」の代わり(主に括弧内やリスト)に使われます。「i.e.」はラテン語の「id est」の略で「すなわち」「言い換えれば」を意味し、例を示すのではなく同義語句や説明を加える際に使います。
「for example」や「for instance」としばしば混同されるのが、ラテン語由来の略語「e.g.」と「i.e.」です。これらは意味が全く異なるので注意が必要です。
- e.g. (exempli gratia): 「例えば」 (for example)。例をいくつか挙げる際に使います。(例:Citrus fruits, e.g., oranges and lemons, are rich in vitamin C. 柑橘類の果物、例えばオレンジやレモンは、ビタミンCが豊富です。)
- i.e. (id est): 「すなわち」「言い換えれば」 (that is, in other words)。前に述べたことを別の言葉で説明し直したり、具体的に限定したりする際に使います。例を挙げるのではありません。(例:The price is $100, i.e., one hundred US dollars. 価格は100ドル、すなわち100米ドルです。)
「e.g.」は「for example」の代わりとして、特に括弧内や箇条書きなどで簡潔に示したい場合に便利です。「i.e.」は例を示すのではなく、前の語句を明確化・限定するためのものなので、「例えば」の意味で使うのは誤りです。
覚え方としては、e.g. = Example Given、i.e. = In Essence / In other words のように考えると混同しにくいかもしれませんね。
「for example」と「for instance」の違いを学術的に解説
コーパス分析などでは、「for example」の方が「for instance」よりも使用頻度が高く、より広範な文脈(特に学術文)で好まれる傾向が見られます。「for instance」は会話や、特定の事例・仮定を示す文脈でやや多く使われる可能性がありますが、意味上の明確な区別は現代英語では薄れています。
言語学的な観点、特にコーパス言語学(大量の言語データを分析する分野)の知見からは、「for example」と「for instance」の間にいくつかの傾向が見られます。
まず、使用頻度においては、多くのコーパス(例えば COCA: Corpus of Contemporary American English など)で「for example」の方が「for instance」よりも有意に高い頻度で出現します。これは、「for example」がより一般的で、広範な文脈で使われやすいことを示唆しています。
次に、文体やジャンルによる偏りを見ると、「for example」は学術論文やフォーマルな書き言葉(written discourse)で特に好まれる傾向があります。一方、「for instance」は、会話(spoken discourse)や、ややインフォーマルな文脈で相対的に多く使われる可能性が指摘されていますが、その差は決定的なものではありません。
意味的なニュアンスについては、語源(example=取り出す、instance=近くに立つ)が示唆するように、「for example」が典型例や代表例 (typical or representative examples) を導入する際に、「for instance」が特定の事例や具体的な発生例 (specific occurrences or cases)、あるいは仮定的な状況 (hypothetical situations) を導入する際に、わずかに好まれる傾向があるかもしれません。しかし、現代英語の実用においては、この意味的な区別は非常に曖昧になっており、ほとんどの文脈で互換可能と見なされています。
実際、多くのスタイルガイド(例:Chicago Manual of Style, APA Style)では、両者を実質的に同義として扱っています。ただし、文中で繰り返し「例えば」と言いたい場合に、単調さを避けるために交互に使う(elegant variation)といった文体的な理由で使い分けることはありますね。
結論として、言語学的には使用頻度や文体・ジャンルによるわずかな偏りは観察されるものの、意味上の明確な区別は現代英語では希薄であり、互換可能な同義表現として捉えるのが実態に近いと言えるでしょう。
どっちを使う?プレゼンで固まった「for example」と「for instance」体験談
僕も、英語でのプレゼンテーションでこの二つの表現の使い分けに悩み、頭が真っ白になったことがあります。
それは、海外の展示会で自社製品のデモンストレーションをしていた時のこと。製品の多機能性をアピールするために、いくつかの具体的な使用例を挙げようとしました。
「This product has many useful features. (この製品には多くの便利な機能があります。)」
ここまでは良かったのですが、続く「例えば…」で、言葉が詰まってしまったんです。
(あれ?こういう具体的な機能の例を挙げる時って、for example? それとも for instance だっけ…?どっちが自然なんだ?)
頭の中では二つの選択肢がぐるぐる回り、どちらもしっくりこないような気がして、一瞬、完全にフリーズしてしまいました。ほんの数秒だったと思いますが、冷や汗が出ましたね。
結局、しどろもどろになりながら “For example, you can use this function to…” と続けたのですが、後で考えると「for instance」でも全く問題なかった場面でした。
なぜあんなに迷ってしまったのか?今思えば、「完璧な英語を使わなければ」というプレッシャーと、「使い分けには明確なルールがあるはずだ」という思い込みがあったからだと思います。
実際には、あの場面ではどちらを使っても良かったし、聴衆もそんな細かい違いは気にしていなかったはずです。もっと言えば、「like」や「such as」を使って「…features like A, B, and C.」のように言うこともできたでしょう。
この経験から学んだのは、細かい違いにこだわりすぎてコミュニケーションが止まってしまうくらいなら、多少ニュアンスがズレていても、まずは言い切ってしまうことが大切だということ。そして、「for example」と「for instance」に関しては、ほとんどの場合、神経質になる必要はない、ということです。
もちろん、この記事で解説したような微妙なニュアンスを知っておくことは表現の幅を広げますが、それにとらわれすぎないことも、スムーズなコミュニケーションには必要なのかもしれませんね。
「for example」と「for instance」に関するよくある質問
Q1:結局、迷ったらどちらを使えばいいですか?
どちらでも大丈夫です! 意味が通じなくなることはまずありません。「for example」の方が使用頻度は高い傾向にあるので、迷ったら「for example」を使ってみるのが無難かもしれませんが、本当にどちらでも問題ないですよ。
Q2: 文頭、文中、文末、どこで使うのが一番自然ですか?
どちらの表現も文頭、文中、文末のいずれでも使えます。文頭なら “For example, …”、文中なら “… , for example, …”、文末なら “… , for example.” のように、カンマの使い方に注意すれば、どこで使っても自然です。文体やリズムに合わせて使いやすい位置を選びましょう。
Q3: 「for example」や「for instance」の代わりに使える表現はありますか?
はい、いくつかあります。「like」や「such as」は、特に名詞の例を挙げる際に口語的で使いやすい表現です (例: fruits like apples and oranges)。フォーマルな文章では、「namely」や「specifically」などが特定の例を導入する際に使われることもありますね。
「for example」と「for instance」の違いのまとめ
「for example」と「for instance」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- ほぼ交換可能:ほとんどの状況で、どちらを使っても意味は通じ、間違いではない。
- 微妙なニュアンス:「for example」は一般的・典型的な例、「for instance」は特定・具体的な事例や仮定を示す傾向がわずかにある。
- フォーマル度:「for example」がややフォーマル、「for instance」がややインフォーマルとされることもあるが、差は小さい。
- 「e.g.」と「i.e.」との違い:「e.g.」は「例えば」、「i.e.」は「すなわち」。意味が全く異なるので混同しないこと。
- 気にしすぎない:ネイティブも厳密に使い分けていないことが多い。迷ったらどちらを使ってもOK。
語源をたどると、「example」の「取り出す(代表例)」と「instance」の「近くに立つ(特定例)」というイメージの違いが見えてきますが、実際の使われ方ではその境界はかなり曖昧になっていますね。
これからは、自信を持って、文脈に合わせてこれらの表現を使ってみてください。そして、細かい違いに悩みすぎず、スムーズなコミュニケーションを心がけましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。