「garment」と「clothes」の違いをプロが解説!業界用語と日常会話の境界線

「garment」と「clothes」、どちらも「服」という意味ですが、この二つを混同して使うと、ビジネスの現場では「素人」だと思われてしまうかもしれません。

実は、日常会話で使うのは圧倒的に「clothes」ですが、プロの現場や一点一点の「衣類」を指す場合には「garment」を使わなければならない明確なルールが存在するのです。

この記事を読めば、アパレル業界での正しい使い分けはもちろん、文法的な単数・複数の扱いまで完璧に理解でき、英語の仕様書やフォーマルな場でも自信を持って表現できるようになります。

それでは、まず最も重要な違いの全体像から詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「garment」と「clothes」の最も重要な違い

【要点】
日常会話で「服」と言うなら「clothes」、アパレル業界や公的な文書で「衣類(一点)」を指すなら「garment」を使います。最大の違いは、clothesが常に複数形であるのに対し、garmentは一つ一つ数えられる可算名詞である点です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、大まかな使い分けはバッチリです。

項目clothes(クローズ)garment(ガーメント)
中心的な意味着るもの全般、服衣類(一点)、衣服
使われるシーン日常会話、一般的な文脈アパレル業界、フォーマル、法律・仕様書
文法的な扱い常に複数扱い(単数形なし)可算名詞(単数・複数あり)
数え方数えられない(two clothesとは言わない)数えられる(a garment, two garments)
ニュアンス生活感がある、身につけるもの製品としての一点、装飾的な衣服

表を見てわかる通り、最も注意すべきは「文法的な扱い」の違いですね。

「clothes」は常に複数形で、「a clothes」や「two clothes」とは絶対に言えません。一方、「garment」は「a garment」と言えますし、製品一つ一つを指すことができる便利な言葉なんです。

なぜ違う?語源からイメージを掴む

【要点】
「clothes」は「cloth(布)」の複数形から来ており、身にまとう布の集合体を意味します。一方、「garment」は古フランス語の「装備する・飾る」に由来し、加工された完成品としての「衣類」というニュアンスを強く持ちます。

言葉の成り立ちを知ると、なぜ使い分ける必要があるのかが腑に落ちますよ。

clothes:布を身にまとうイメージ

「clothes」の語源は、古英語の「clāthas」で、これは「cloth(布)」の複数形です。

昔は、布を体に巻きつけたり、布を重ねたりして服としていました。そのため、「布の集合体」=「服」という感覚なんですね。

「今日はどんな布(服)を着ているの?」という日常的な感覚が、今の「clothes」にも残っています。

garment:美しく仕立てられた「装備」

一方、「garment」は、古フランス語の「garnement(装備、装飾)」が語源です。

これは、現代英語の「garnish(料理にパセリなどを添えて飾る)」と同じルーツを持っています。

つまり、単なる「布」ではなく、「人の体を飾るために加工・装備されたもの」というフォーマルで、少し気取った響きがあるのです。

だからこそ、アパレル産業では、縫製され完成した「製品」のことを、敬意や専門性を含めて「garment」と呼ぶんですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】
日常会話では「I bought new clothes.」のように「clothes」を使うのが自然です。ビジネスや生産管理の現場で、特定の製品を指す場合は「This garment requires special care.」のように「garment」を使います。

ここでは、シーン別に具体的な使い方を見ていきましょう。

日常会話での「clothes」

友達との会話や、家でのシチュエーションでは、ほぼ100%「clothes」を使います。

  • I need to buy some new clothes for the trip.
    (旅行のために新しい服を買わなくちゃ。)
  • Put your dirty clothes in the laundry basket.
    (汚れた服は洗濯カゴに入れてね。)
  • She spends a lot of money on clothes.
    (彼女は服にたくさんのお金を使う。)

「服」と言いたいときは、難しく考えずに「clothes」で大丈夫です。

ビジネス・業界用語としての「garment」

アパレルショップの店員さんや、生産管理、輸入業務などに携わる場合は「garment」の出番です。

  • This garment is made of 100% organic cotton.
    (この衣類は100%オーガニックコットンで作られています。)
  • Please check the garment care label before washing.
    (洗濯の前に、衣類の取り扱い表示(ケアラベル)を確認してください。)
  • The Garment District in New York is famous for fashion.
    (ニューヨークのガーメント・ディストリクト(アパレル地区)はファッションで有名だ。)

このように、「一つの製品」として扱う場合や、業界全体のことを指す場合に「garment」が選ばれます。

【応用編】似ている言葉「clothing」「apparel」との違いは?

【要点】
「clothing」は衣類全般を指す集合名詞で不可算扱い、機能性を強調する際によく使われます。「apparel」は主に流通・販売の文脈で使われる商業的な用語です。

「garment」と「clothes」以外にも、似た言葉がありますよね。これらも整理しておきましょう。

clothing:衣類全般(機能・保護のニュアンス)

「clothing」は、「衣類」という概念全体を指す言葉で、数えられない名詞(不可算名詞)です。

「clothes」よりも少し堅く、「暑さ寒さから身を守るもの」という機能的なニュアンスを含むことがあります。

  • Food, clothing, and shelter are basic human needs.
    (衣食住は人間の基本的なニーズだ。)
  • Protective clothing
    (防護服)

apparel:既製服(ビジネス・流通)

「apparel」は、主にアメリカ英語でよく使われる、商業的な「既製服」を指す言葉です。

お店の看板や、企業の部門名などでよく目にしますね。

  • Men’s apparel
    (紳士服売り場)
  • Apparel industry
    (アパレル産業)

「garment」と「clothes」の違いを言語学的視点から解説

【要点】
言語学的には、「可算性(数えられるかどうか)」が決定的違いです。「clothes」は複数形のみで個体を特定できませんが、「garment」は個体として特定可能です。この性質が、仕様書などの精緻な文書での採用基準となります。

少し専門的な視点から、この二つの違いを深掘りしてみましょう。

最大の違いは、コト(抽象概念)かモノ(具体的物体)か、という点にあります。

「clothes」は常に複数形(Pluralia tantum)として扱われるため、「漠然とした服の集まり」を指します。「服が1着ある」と言いたい時に、「There is a clothes」とは言えません。この場合、「There is a piece of clothing」や「There is an item of clothing」と表現する必要があります。

一方で、「garment」は「C(可算名詞)」です。「A garment」と単数で呼ぶことができるため、「独立した一つの製品」としての個体性が非常に強い言葉です。

品質管理や貿易実務において、曖昧さはトラブルのもとです。「どの服」を指しているのかを明確にする必要があるため、個体として指差し確認できる「garment」が、契約書や仕様書(スペックシート)では好んで使われるのです。

つまり、感情や生活感を伝えたいなら「clothes」、物理的な個体や製品仕様を伝えたいなら「garment」。この使い分けは、単なる好みの問題ではなく、情報の解像度の違いと言えるでしょう。

僕が「clothes」を使ってしまいプロ失格だと感じた体験談

あれは僕がアパレル商社に入社して間もない頃、初めて海外生産管理を任された時のことです。

意気揚々と現地の縫製工場へ、新商品の仕様書(スペックシート)を送りました。そこには、縫製の注意点としてこう書いたんです。

「Please check the clothes carefully.」(服をよく確認してください)

日常会話なら何の問題もないフレーズです。しかし、数日後、工場長からビデオ通話がかかってきました。画面越しに彼は、少し困惑した表情でこう言いました。

「Mr. Takeuchi, which part of the garment do you want us to check? The fabric? The stitching? Or the whole lot?」

彼は「garment」という言葉を使って聞き返してきました。その時、ハッとしたんです。

僕が書いた「clothes」という言葉は、彼らにとって「漠然とした服の山」のようなイメージを与えてしまい、「製品一点一点の、どの工程の品質を確認すべきか」という具体的な指示になっていなかったのです。

プロの現場では、「This garment」(この製品個体)として扱わなければならない。

「clothes」という言葉の持つ「生活感」や「曖昧さ」が、ビジネスの現場では命取りになることがあると痛感しました。

それ以来、僕は仕様書やメールで「garment」を使うようになりました。「Garment washed」(製品洗い)、「Garment length」(着丈)など、専門用語として使いこなすことで、現地のスタッフとも対等に渡り合えるようになったと感じています。

あなたも、もしビジネスで英語を使う機会があれば、この「解像度の違い」を意識してみてくださいね。

「garment」と「clothes」に関するよくある質問

ここでは、「garment」と「clothes」について、よく聞かれる質問にQ&A形式でお答えします。

Q. 「服を2着買いました」と言いたい時、「I bought two clothes.」は間違いですか?

はい、間違いです。「clothes」は数えられない名詞なので、数字を直接つけることはできません。正しくは「I bought two items of clothing.」や、具体的に「I bought two shirts.」と言います。もちろん、業界人っぽく言うなら「I bought two garments.」も文法的には正解ですが、日常会話では少し不自然ですね。

Q. スーツケースに入れる衣装ケースは「Garment Bag」と言いますが、なぜですか?

スーツやドレスなど、型崩れさせたくない「大切な衣類(一点)」を収納するためのバッグだからです。雑多な服(clothes)を詰め込むのではなく、仕立てられた製品(garment)を保護するというニュアンスが込められています。

Q. 「garment」は日常会話で使っても通じますか?

通じますが、かなり堅苦しく聞こえます。日本語で言うなら、友達に「今日の君の『衣服』は素敵だね」と言うようなものです。「今日の服(clothes/outfit)いいね」と言うほうが自然ですよね。

「garment」と「clothes」の違いのまとめ

今回は「garment」と「clothes」の違いについて、深く掘り下げて解説しました。

最後に、もう一度ポイントを整理しておきましょう。

  • clothes:日常会話で使う「服」。常に複数形。漠然としたイメージ。
  • garment:アパレル業界やフォーマルな場で使う「衣類」。一点ずつ数えられる。製品としてのイメージ。
  • 使い分けのコツ:「今日の服」ならclothes、「製品の仕様」ならgarment。

言葉の背景にある「文化」や「視点」を知ることで、単なる暗記ではなく、感覚として使い分けられるようになります。

もしあなたがアパレル業界を目指していたり、海外通販を楽しんだりしているなら、ぜひ「garment」という言葉の持つプロフェッショナルな響きを楽しんでみてください。

言葉の使い分けについて、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

英語由来語の使い分け一覧を見てみる

参考リンク:文化庁

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