「get」と「take」、どちらも「取る」や「得る」と訳されることが多く、英語を話す瞬間に「どっちだっけ?」と迷ってしまいませんか?
実はこの2つ、主語(あなた)の「意志」と「動き」の向きに決定的な違いがあるのです。
この記事を読めば、ネイティブスピーカーがどのような感覚で「get」と「take」を使い分けているかが直感的に理解でき、自信を持って英語を話せるようになりますよ。それでは、まず最も重要な結論から見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「get」と「take」の最も重要な違い
「get」は向こうから来るものを手に入れる、あるいは変化するイメージで、「take」は自ら手を伸ばして選び取る、あるいは持ち去るイメージです。受動的か能動的か、この感覚の違いが最大のポイントです。
まずは、この2つの動詞の核心的な違いを一覧表で整理しました。「get」と「take」の境界線は、この表を見れば一目瞭然です。
| 項目 | get(ゲット) | take(テイク) |
|---|---|---|
| 中心的なイメージ | 到達・入手・変化 (何かが自分の所に来る/動いて得る) | 選択・受容・移動 (自ら手を伸ばして掴む/取り込む) |
| 主語の意思 | やや受動的、または努力の結果 (機会を得る、病気になる、わかる) | 能動的・意図的 (選ぶ、受け入れる、時間を要する) |
| 動きの方向 | 外から自分へ(To You) | 自分から外へ(From You) ※何かを掴んで他の場所へ移す |
| タクシーの例 | get a taxi (タクシーを捕まえる・見つける) | take a taxi (移動手段としてタクシーを利用する) |
| 授業の例 | get a lesson (教わる・理解する) | take a lesson (履修する・受講する) |
いかがでしょうか。単なる日本語訳の違いではなく、「動きのベクトル」が違うことにお気づきいただけたかと思います。
次は、この違いがなぜ生まれるのか、言葉の成り立ちからさらに深くイメージを定着させていきましょう。
なぜ違う?コアイメージと語源から本質を掴む
「get」の語源は「掴む・手に入れる」で、状態の変化や到達を表します。一方、「take」の語源は「触れる・掴み取る」で、自分の意志で何かを選び取り、自分の領域に取り込むという強い能動性を持ちます。
言葉のルーツを知ると、使い分けの迷いは驚くほど減ります。「get」と「take」の語源から、その本質的なニュアンスを紐解いてみましょう。
「get」のコアイメージ:変化と到達
「get」は、古北欧語の「geta(手に入れる、到達する)」に由来します。この言葉の根本にあるのは、「ある状態から別の状態への変化」です。
例えば、「I got tired.(疲れた)」は、「疲れていない状態」から「疲れた状態」へ変化したことを表します。また、「I got a mail.(メールを受け取った)」は、メールが自分の手元になかった状態から、ある状態へと変化(到達)したことを意味します。
つまり、「get」は「何かが自分のところにやってくる」、あるいは「自分が動いてその状態になる」という、「結果として手に入る」ニュアンスが強いのです。
「take」のコアイメージ:選択と取り込み
一方、「take」は、古北欧語の「taka(触れる、掴む)」に由来します。ここには、「自分の意志で手を伸ばし、何かを自分の領域に取り込む」という強い能動性があります。
たくさんの選択肢の中から一つを「選び取る」イメージです。例えば、買い物で「I’ll take this.(これにします)」と言うのは、数ある商品の中から自分の意志でそれを選び取ったからです。
「get」が「来るものをキャッチする」感覚なら、「take」は「自らガシッと掴みに行く」感覚だと言えるでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
電話に出る場面では、着信という現象を受けるなら「get」、応答するという行為を選ぶなら「take」。休暇の場合、許可をもらうなら「get」、権利を行使して休むなら「take」。この微妙なニュアンスの違いを例文で確認しましょう。
理屈がわかったところで、実際の会話でどう使い分けるのか、具体的なシチュエーションを見てみましょう。「get」と「take」を入れ替えるだけで、伝わるニュアンスがガラリと変わります。
シーン1:電話や連絡
- Can you get the phone?
(電話に出てくれる?/電話を取ってくれる?)
※電話が鳴っていることに気づき、受話器を取る(到達する)という物理的な動作や、着信に対応してほしいというニュアンス。 - Can you take a message?
(伝言をお願いできますか?)
※相手の言葉を自分の意志で受け取り、預かる(取り込む)というニュアンス。
シーン2:休憩や休暇
- I finally got a break.
(やっと休憩が取れたよ。)
※忙しい時間の末に、ようやく休憩する機会が「手に入った」という、少し受動的でラッキーな感覚。 - Let’s take a break.
(休憩しよう。)
※自分たちの意志で作業を中断し、休憩という時間を「選び取る」感覚。
シーン3:交通手段
- We should get a taxi.
(タクシーを拾おう。)
※流しのタクシーを見つけて捕まえる、という「入手のプロセス」に焦点が当たっています。 - We should take a taxi.
(タクシーで行こう。)
※バスや電車ではなく、移動手段としてタクシーを「選択する」ことに焦点が当たっています。
【応用編】似ている言葉「receive」との違いは?
「receive」は「get」よりも硬く、単に「受け取る」という事実のみを客観的に表します。「get」のような「自分から取りに行く」動きや口語的な軽さはなく、事務的・受動的なニュアンスが強くなります。
「手に入れる」という意味では、「receive(受け取る)」もよく使われますね。「get」との違いも整理しておきましょう。
「receive」は非常にフォーマルで静的な言葉です。「ただ単に自分の所に届いた」という事実を淡々と述べる際に使われます。
- I received a letter.(手紙を受領しました。)
※事務的。内容の良し悪しや感情は含みません。 - I got a letter!(手紙が来たよ!)
※日常会話的。「やった!」「手に入った」という感情や動きのニュアンスが含まれます。
日常会話では「get」を使うのが圧倒的に自然ですが、ビジネスメールや公式な場では「receive」を選ぶとスマートです。
「get」と「take」の違いを言語学的視点から解説
認知言語学の視点では、「get」は「起動相(inchoative)」を持ち、状態の変化に焦点を当てます。対して「take」は主語の「作用主性(agency)」が高く、対象物をコントロール下に置くという意味合いが強くなります。
ここでは少し専門的な視点から、この2つの動詞を深掘りしてみましょう。専門家の視点を知ることで、感覚的な理解が論理的な確信へと変わります。
言語学、特に認知言語学の分野では、「get」はしばしば「起動相(inchoative aspect)」としての性質が指摘されます。これは「〜になる」という変化のプロセスそのものを指す機能です。「get angry(怒る)」「get old(老ける)」のように、状態の変化を表すのに「get」が多用されるのはこのためです。
一方、「take」は主語の「作用主性(agency)」、つまり「主語が対象物にどれだけ影響を与えているか」という度が強い動詞とされています。「take a shower(シャワーを浴びる)」「take a walk(散歩する)」のように、主語がその行為を主体的にコントロールし、実行するというニュアンスが含まれるのです。
この「変化(get)」と「制御(take)」の対比こそが、学術的な見地から見た両者の決定的な違いと言えるでしょう。
僕が「get」と「take」で赤面した留学時代の体験談
今でも思い出すと顔が熱くなるのですが、僕がアメリカに留学して間もない頃の失敗談をお話しします。
ホームステイ先の夕食後、ホストマザーに「シャワーを借りたい」と伝えようとしました。当時の僕は「〜を手に入れる=get」という図式が頭にこびりついていたため、自信満々にこう言ったのです。
“Can I get a shower?”
ホストマザーは一瞬きょとんとして、笑いながらこう返しました。「シャワーを取り外してあなたの部屋に持っていくの? それなら ‘get’ だけど、浴びるだけなら ‘take a shower’ よ」
その時、ハッとしました。「get」は「物として入手する」というニュアンスが強すぎて、「行為を行う(浴びる)」という意味では不自然だったのです。「take」には「(時間をかけて)その行為を行う」という能動的な意味があることを、身をもって学んだ瞬間でした。
「単語の訳語だけを覚えても、本当の意味では使えない」。この恥ずかしい経験が、その後の英語学習の姿勢を大きく変えるきっかけになりました。あなたには、こんな思いをしてほしくありません。
「get」と「take」に関するよくある質問
最後に、「get」と「take」の使い分けについて、学習者が抱きがちな疑問にQ&A形式でお答えします。
Q. 「写真を撮る」はなぜ “take a picture” なのですか? “get” は使えませんか?
A. 良い質問ですね。写真は「風景の中から自分の撮りたい構図を切り取る(選び取る)」行為なので、選択のニュアンスを持つ “take” が使われます。”get a picture” と言うと、「(誰かから)写真をもらう」や「(店で)写真を購入する」という意味になってしまうので注意が必要です。
Q. 「風邪をひく」は “catch” と “get” どちらが一般的ですか?
A. どちらも使いますが、ニュアンスが少し違います。”catch a cold” はウイルスを「捕まえてしまった」という感染の瞬間に焦点がありますが、”get a cold” は「風邪の状態になる」という変化に焦点があります。日常会話では “I’ve got a cold.”(風邪ひいちゃった)のように “get” を使うことも非常に多いですよ。
Q. 薬を飲むときは “drink” ではなく “take” なのはなぜですか?
A. これは “take” が持つ「体内に取り込む」というイメージから来ています。”drink” は「液体を飲む」行為を指しますが、薬は液体とは限りませんよね。必要なものを体に取り入れるという能動的な行為として “take medicine” が使われます。
「get」と「take」の違いのまとめ
ここまで、「get」と「take」の違いについて解説してきました。最後に改めて要点を整理しましょう。
- get(ゲット):
何かが自分の所に来る「到達」、あるいは状態が変わる「変化」。
イメージは「受動的入手」や「変化」。 - take(テイク):
自分の意志で何かを「選び取る」、あるいは自分の領域に「取り込む」。
イメージは「能動的選択」や「制御」。
「get」と「take」は、英語の心臓部とも言える基本動詞です。この2つの感覚を掴むことは、英語脳を作るための大きな一歩になります。
もし迷ったら、「向こうから来るならGet、自分から掴みに行くならTake」と思い出してください。このシンプルなルールが、あなたの英語表現をより自然で豊かなものにしてくれるはずです。
さらに詳しく英語由来の言葉の違いを学びたい方は、英語由来語の違いのまとめ記事もぜひ参考にしてみてください。言葉の背景を知ることで、世界はもっと面白くなりますよ。
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