「tall」は「細長く垂直に伸びているもの」に使われ、「high」は「地面からの位置が高いもの」や「平均よりも数値が高いこと」に使われるのが決定的な違いです。
なぜなら、「tall」は下から上への「成長」や「縦の長さ」に焦点があるのに対し、「high」は地面や基準点からの「距離(レベル)」や「到達点」に焦点があるから。
この記事を読めば、人の身長にはなぜ「high」を使わないのか、ビルや山はどう使い分けるのかが直感的に理解でき、自信を持って英語を話せるようになります。
それでは、まず二つの違いを整理した一覧表から詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「high」と「tall」の最も重要な違い
「tall」は「人、木、塔」など、幅に対して高さがある(細長い)ものに使います。「high」は「山、壁、空」など、床面積が広いものや、地面から離れた位置にあるものに使います。抽象的な「価格・温度・地位」はすべて「high」です。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | tall(背が高い) | high(位置が高い) |
|---|---|---|
| 中心的なイメージ | 細長い、垂直に伸びる | 基準より上にある、幅広い |
| 対象(具体物) | 人、木、ビル、タワー、動物(キリンなど) | 山、壁、天井、空、雲、飛行機 |
| 対象(抽象物) | (基本的に使わない) | 価格、温度、熱、地位、品質 |
| 視点 | 下から上への「長さ」 | 地面からの「距離(高さ)」 |
一番大切なポイントは、「人」の身長には必ず「tall」を使い、「high」は使わないという点ですね。
例えば、「背が高い男性」は「a tall man」です。
もし「a high man」と言ってしまうと、英語圏では「(薬物などで)ハイになっている人」や「地位が高い人」という意味で取られてしまう可能性があります。
物理的な背の高さを言うときは、その形が「細長い(tall)」かどうかを基準にしましょう。
なぜ違う?コアイメージから「high」と「tall」の形状を掴む
「tall」のコアイメージは「縦長」です。地面に接しており、そこからニョキニョキと上に伸びている感覚があります。「high」のコアイメージは「高所」です。地面から離れている、あるいは地面からの距離が遠いことを指し、対象の幅広さは問いません。
なぜこの二つの言葉に使い分けが必要なのか、そのコアイメージを紐解くと、理由がよくわかりますよ。
「tall」のイメージ:縦横比で「縦」が勝つ
「tall」は、古英語の「getæl(迅速な、準備ができた)」が原義ですが、現代では「幅に比べて高さが際立っている」という形状を表します。
人、木、煙突、電柱などを想像してください。
これらは地面から垂直に立っていて、横幅よりも縦の長さの方が圧倒的に長いですよね。
この「スッとした立ち姿」がtallの正体です。
「high」のイメージ:地面からの距離とレベル
一方、「high」は「基準面(地面)から高い位置にある」ことを表します。
山(mountain)や壁(wall)のように、裾野が広くて「どっしりしたもの」や、空(sky)や天井(ceiling)のように「頭上高くにあるもの」に使われます。
また、物理的な高さだけでなく、数値やレベルが「高い」場合(high price, high speed)も、グラフの縦軸が高い位置にあるイメージで「high」が使われます。
具体的な例文で使い方をマスターする
「ビル」は現代では高層化して細長いので「tall」が好まれます。「山」は幅が広いので「high」です。「壁」は越えられない高さ(位置)を強調するので「high」を使います。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
「tall」を使う場面(細長いもの・人)
【OK例文】
- He is very tall.
(彼はとても背が高い。) - There is a tall tree in the garden.
(庭に背の高い木がある。) - Tokyo Skytree is the tallest tower in the world.
(東京スカイツリーは世界で一番高い塔です。) - Look at that tall building.
(あの高いビルを見て。※現代の高層ビルは細長いのでtallが一般的)
「high」を使う場面(位置・レベル・幅広いもの)
【OK例文】
- Mt. Fuji is the highest mountain in Japan.
(富士山は日本で一番高い山です。) - The bird is flying high in the sky.
(鳥が空高く飛んでいる。) - This restaurant has high prices.
(このレストランは値段が高い。) - The wall is too high to climb.
(その壁は登るには高すぎる。)
これはNG!間違えやすい使い方
ネイティブが違和感を覚える、典型的なミスです。
- 【NG】a high person
(背が高い人?? ※「地位が高い人」か「ハイな人」になる) - 【OK】a tall person
(背が高い人)
- 【NG】a tall mountain
(高い山??) - 【OK】a high mountain
(高い山)
※山は通常、高さに対して幅が広いため「high」を使います。ただし、切り立った崖のような細い岩山なら「tall」を使うことも稀にありますが、基本は「high」です。
【応用編】「high heels」はなぜtallではない?
「ハイヒール」はかかとの「位置」を地面から高く持ち上げる機能を持つため「high」が使われます。「Tall coffee」はカップの形状が細長いことから来ています。言葉のチョイスには、その物が持つ機能や形状が反映されています。
身近な言葉にも、このルールのヒントが隠されています。
high heels(ハイヒール)
かかと(heel)の部分が細長いので「tall」と言いたくなりますが、正解は「high」です。
これは、かかとを「地面から高い位置(high position)にする」ための靴だからです。
地面からの距離に焦点が当たっているんですね。
Tall size(トールサイズ)
コーヒーショップのサイズ表記にある「Tall」。
これはカップの形状が「上に細長く伸びている」からです。
「High size」とは言いませんよね。
カップの位置が高いわけではなく、容器の背が高いからです。
「high」と「tall」の違いを認知言語学的に解説
認知言語学的には、「tall」は一次元的(線)な伸びを認識し、「high」は二次元的(面)または三次元的(空間)な位置関係を認識します。また、「high」は「到達不可能な高さ」という心理的距離感も表します。
少し専門的な視点から、この違いを深掘りしてみましょう。
認知言語学では、人間が対象物をどう「スキャン」しているかで言葉が決まると考えます。
「tall」を使うとき、視線は「下から上へ」となぞるように移動しています。
足元から頭頂部へ、根元からてっぺんへ。
この「縦の動き」がtallの本質です。
一方、「high」を使うとき、視線は「地面と、対象物の上端」の距離を一瞬で把握しています。
なぞるのではなく、「あんなに高いところにある!」という「隔たり」を感じているのです。
「The fence is high(塀が高い)」と言うとき、私たちはその塀の縦の長さ(tallness)よりも、「乗り越えるのが大変な位置に頂上がある」という「到達の難易度(highness)」を感じ取っていることが多いのです。
「How high are you?」と聞いて爆笑された僕の体験談
僕が語学留学をして最初の日、ホストファミリーとの会話での失敗談です。
ホストファザーがとても大柄な人だったので、純粋に身長を聞こうとしました。
「Wow, you are big! How high are you?」
その瞬間、リビングにいた家族全員が爆笑しました。
ホストファザーは笑い涙を拭きながら、「I’m not high! I haven’t had any beer yet!(ハイになんてなってないよ!まだビールも飲んでないしな!)」と答えました。
僕は真っ赤になりました。
「How high are you?」は、直訳すると「あなたはどのくらいの高さ(位置)にいますか?」ですが、スラングでは「どのくらい(薬や酒で)キマってるの?」という意味になってしまうのです。
身長を聞くときは、下から上への長さを聞くので「How tall are you?」が正解です。
「High」は人間に対して使うと危険な言葉。
この強烈な体験のおかげで、僕は二度と間違えなくなりました。
皆さんは、僕の屍(しかばね)を越えて、最初から「How tall」を使ってくださいね。
「high」と「tall」に関するよくある質問
ビルは「tall」と「high」どちらですか?
基本的には「tall building」を使います。現代のビルは上に細長く伸びているからです。しかし、「How high is that building?(あのビルの高さはどれくらい?)」のように、高さの数値を問う場合や、位置の高さを強調する場合は「high」という単語が出てくることもあります。形容詞としてビルを修飾するときは「tall」が自然です。
「背が高い」の反対は?
「tall」の反対は「short(背が低い)」です。「high」の反対は「low(位置が低い)」です。「short mountain」とはあまり言わず、「low mountain」と言います。「Low person」と言うと「身分の低い人」や「卑劣な人」になるので、人の背が低い場合は必ず「short」を使います。
「High school」はなぜHigh?
「High school(高等学校)」のHighは、教育のレベル(段階)が初等教育(Elementary)よりも「高い位置にある」ことを示しています。校舎の背が高いわけではないので、Tall schoolとは言いません。
「high」と「tall」の違いのまとめ
「high」と「tall」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本イメージ:「tall」は細長い・垂直。「high」は高い位置・幅広い。
- 人の身長:必ず「tall」を使う。「high」は使わない(NG)。
- 建物と山:細長いビルは「tall」、幅広い山は「high」。
- 抽象的な高さ:価格、温度、地位などはすべて「high」。
「スッとしているならTall」、「高い場所にあるならHigh」。
この映像を頭に浮かべるだけで、正しい英語が自然と選べるようになります。
これからは自信を持って、高さの表現を使い分けていきましょう。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、英語由来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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