「is」と「was」の違いは?現在と過去を分ける「時間」の境界線

「彼は親切だ」と言いたいとき、「He is kind」なのか「He was kind」なのか、瞬時に判断できますか?

「たかが時制の違いでしょ?」と思っていると、実はとんでもない誤解を生むことがあります。

例えば、恋人の話をしているときにうっかり「was」を使ってしまうと、「えっ、もう別れたの?」や、最悪の場合「亡くなったの?」と勘違いされかねません。

この記事を読めば、「is」と「was」が持つ本来の「時間の感覚」を理解し、ビジネスや日常会話で、誤解なくスムーズに状況を伝えられるようになりますよ。

それでは、まずは二つの言葉の決定的な違いから、詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「is」と「was」の最も重要な違い

【要点】

「is」は「現在」の状態や存在を表し、日本語では「~です」「~にいる」と訳します。一方、「was」は「過去」の状態や事実を表し、「~でした」「~にいた」となります。時間軸が「今」か「昔」かが最大の分岐点です。

僕が英語を教える際、いつも生徒さんに伝えているのは「be動詞はイコール(=)の記号だと思ってください」ということです。

そして、「is」は「今のイコール」、「was」は「昔のイコール」です。

この二つは、単に時間が違うだけでなく、「現在との関わり」が全く異なります。

以下の表に、その決定的な違いをまとめましたので、まずはここから頭に入れていきましょう。

項目is(イズ)was(ワズ)
中心的な意味~です、~にいる(現在)~でした、~にいた(過去)
時間軸現在(今この瞬間、普遍の事実)過去(完了した事実、思い出)
現在の状態現在もそうである現在は違う(または不明)
主語単数(He, She, It, Thisなど)単数(I, He, She, It, Thisなど)
イメージ目の前にある、続いているアルバムの中の写真、終わった話

表を見てわかる通り、「is」は現在進行中のリアリティがありますが、「was」を使った瞬間、その事実は「過去のアーカイブ」に入ってしまい、現在とは切り離されます。

特に「was」を使うときは、「今はもうそうではない」というニュアンスが含まれることが多いので、注意が必要です。

なぜ違う?語源からイメージを掴む

【要点】

両者とも古代のインド・ヨーロッパ語族にルーツを持つbe動詞の変化形です。「is」は存在の「実在性(ある)」を、「was」は「wesan(留まる・住む)」という古語から派生し、「かつてそこに存在した」という経過した時間を内包しています。

言葉の深い意味を理解するには、そのルーツ、つまり語源を知るのが一番の近道です。

なぜなら、語源にはその言葉が生まれた時の「時間感覚」が保存されているからです。

まず、「is」は、古英語の「is」やドイツ語の「ist」、ラテン語の「est」と共通のルーツを持ち、根本的には「存在する(to be)」や「実在する」という強い「現在の事実」を表す言葉でした。

「そこに在る」という揺るぎない今の状態を指すのが「is」の本質です。

一方、「was」は、古英語の「wæs」に由来し、これは「wesan(留まる、住む)」という動詞の過去形から来ています。

「かつてそこに留まっていた」「以前はそこに住んでいた」というニュアンスがあり、そこから転じて「過去の状態」を表すようになりました。

つまり、「is」がスポットライトを浴びている「ステージ上の現在」なら、「was」は幕が下りた後の「楽屋」や「記録映像」のようなイメージだと考えると分かりやすいでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

自己紹介や天気の話など、日常会話では頻出します。「She is a teacher(彼女は現役の先生)」と「She was a teacher(彼女は元先生)」のように、たった一語で相手の「今のステータス」を完全に変えてしまうため注意が必要です。

では、実際にどのような場面で使い分けるべきか、具体的なシーン別の例文を見ていきましょう。

これを読めば、明日から自信を持って「時制」をコントロールできるはずです。

ビジネス・自己紹介シーン

まず、自分の職業や状態を伝える場面です。

He is a project manager.
(彼は[現在]プロジェクトマネージャーです。)

He was a project manager at his previous company.
(彼は前の会社ではプロジェクトマネージャーでした。[今は違う])

The office is in Tokyo.
(オフィスは東京にあります。)

The meeting was productive.
(その会議は生産的でした。[会議はもう終わった])

日常・感情や天気のシーン

次に、日常的な会話での例です。

It is sunny today.
(今日は晴れです。)

It was rainy yesterday.
(昨日は雨でした。)

I am happy. / She is happy.
(私は幸せです。/ 彼女は幸せです。)

She was angry with me.
(彼女は私に怒っていました。[今はもう怒っていないかもしれない])

NGな使い分け例

逆に、ここで時制を間違えると誤解を生む、という例も知っておきましょう。

× This book was interesting.
(この本は面白かった。)

日本語では読んだ直後に「面白かった」と言いますが、英語で「was」を使うと「昔は面白かった(今はつまらない?)」とも受け取られかねません。読んだ感想として本の性質を語るなら、「This book is interesting(この本は面白い本だ)」と現在形で言うのが一般的です。

【応用編】似ている言葉「has been」との違いは?

【要点】

「was」は過去の一時点で終わった事実(点)ですが、「has been(現在完了形)」は過去から現在まで続いている状態(線)を表します。「彼は病気だった(今は元気)」ならwas、「彼はずっと病気だ(今も)」ならhas beenです。

「過去のこと」と「現在のこと」をつなぐ表現として、「has been(現在完了形)」もよく使われます。

しかし、「was」との間には、期間の感覚に大きな違いがあります。

「was」は、あくまで過去のアルバムの一ページです。「昨日」や「3年前」など、特定の過去の時点で完結しています。

一方、「has been」は、過去からスタートして、今この瞬間まで続いている「継続」のニュアンスがあります。

例えば、「He was busy(彼は忙しかった)」と言えば、今はもう暇かもしれません。

しかし、「He has been busy(彼は[ずっと]忙しい)」と言えば、過去のある時点から今現在まで、忙しい状態が続いていることを表します。

「was」は点、「has been」は線、とイメージすると分かりやすいですね。

「is」と「was」の違いを学術的に解説

【要点】

言語学的には、これらは「コピュラ(繋辞)」と呼ばれ、主語と補語をイコールで結ぶ機能を持ちます。「is」は無標の現在時制として普遍的な真理や習慣を表す一方、「was」は過去時制として、現在とは切り離された事象であることを明示する機能を持ちます。

少し専門的な視点から、この二つの言葉を分析してみましょう。

「is」や「was」などのbe動詞は、文法用語で「コピュラ(Copula)」と呼ばれ、主語(Subject)と補語(Complement)を繋ぐ「=」の役割を果たします。

英語学において、時制(Tense)は動詞の形によって示されます。

「is」は現在時制(Present Tense)ですが、単に「今」を表すだけでなく、「地球は丸い」のような「普遍の真理」や、「彼は毎日走る」のような「習慣」など、時間的な広がりを持つ「無標(Unmarked)」な状態を表すことが多いです。

対して「was」は過去時制(Past Tense)であり、これは「現在とは異なる時間領域」であることを明示的に示す「有標(Marked)」な形です。

認知言語学の観点からは、「過去形」は「心理的な距離感」を表すとも言われます。

「was」を使うことで、話者はその出来事を「今の自分からは遠いもの」「完了したもの」「現実ではないもの(仮定法など)」として認識していることを示しているのです。

つまり、ビジネスで「was」を使うときは、「それはもう終わった案件です」「今の議論とは切り離されています」という心理的な距離感を、暗に相手に伝えていることになるわけです。

英語面接で「was」を使ってしまい焦った体験談

僕が外資系企業の英語面接を受けた時の恥ずかしい失敗談です。

面接官に「あなたの強みは何ですか?」と聞かれ、僕は前の会社での実績をアピールしようと意気込んでいました。

「私は粘り強い性格です」と言いたくて、こう言いました。

「I was persistent.(私は粘り強かったです。)」

すると、面接官が少し不思議そうな顔をして、「So, you are not persistent now?(じゃあ、今は粘り強くないの?)」と聞き返してきたのです。

僕はハッとしました。

「was」を使ってしまったことで、「かつては粘り強かった(でも今は違う)」という、過去の栄光のようなニュアンスになってしまっていたのです。

性格や能力といった、今も持っている資質については、たとえエピソードが過去のものであっても、「I am persistent」と現在形(is/am)を使うべきでした。

「No, no! I am still persistent!(いえいえ!今も粘り強いです!)」

慌てて訂正し、なんとかその場は和みましたが、たった一語の時制ミスが、自分のアピールポイントを台無しにしかけた冷や汗ものの体験でした。

この経験から、僕は学びました。

自分のアイデンティティや現在も続く強みを語るときは、自信を持って「is(am)」を使うべきなのだと。

「is」と「was」に関するよくある質問

最後に、よくある質問をQ&A形式でまとめました。

Q. 「Always(いつも)」と一緒に使うときはどっちですか?

A. どちらも使えますが、意味が変わります。「He is always kind」なら「彼は(今も昔も)いつも親切だ」という現在の習慣や性格。「He was always kind」なら「彼は(昔は)いつも親切だった(今は付き合いがない、または亡くなったなど)」という過去の回想になります。

Q. 未来のことを話すときに「is」を使うのはなぜですか?

A. 「is going to ~」などの形で、未来の予定を表すことができます。これは、その予定に向けて「現在の状況がすでに動いている」「心が向かっている」というニュアンスがあるため、現在形の「is」が使われます。

Q. 「There is」と「There was」の違いは何ですか?

A. 「There is ~」は「(今ここに)~がある/いる」。「There was ~」は「(かつてここに)~があった/いた」です。物語の冒頭で「Once upon a time, there was…(昔々、あるところに…)」と使われるのが典型的ですね。

「is」と「was」の違いのまとめ

いかがでしたでしょうか。

「is」と「was」の違いについて、文法的な意味から、ネイティブが感じるニュアンスまで、詳しく解説してきました。

最後に、もう一度要点を振り返ってみましょう。

  • is:現在。今の状態、普遍の事実、職業などを表す。「~です」。
  • was:過去。終わった事実、昔の状態、思い出を表す。「~でした」。
  • 使い分け:今も続いているなら「is」、今は違うなら「was」。

たった二文字、三文字の単語ですが、そこには「時間」という大きな川が流れています。

これからは、時制を意識して「is」と「was」を使いこなし、より正確に自分の状況や気持ちを伝えてくださいね。

もし、さらに英語由来の言葉や、カタカナ語の違いについて深く知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

英語由来語の違いを解説した記事一覧はこちら

言葉の解像度を上げることで、あなたの英語表現はもっと豊かになるはずです。

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