英語の代名詞「it」と「one」、どちらも「それ」や「もの」を指すことができて便利ですよね。
でも、「どっちを使えばいいんだっけ?」と迷う場面、意外と多くないですか?例えば、お店で「赤いバッグを見せてください。あ、やっぱり青いのにします」と言うとき、英語では “the blue it” なのか “the blue one” なのか…。
実はこの二つ、指しているものが「特定」か「不特定」かで使い分けが決まるんです。
この記事を読めば、「it」と「one」の根本的な違いから具体的な使い方、さらには似ている「that」との使い分けまでスッキリ理解でき、英会話やライティングでの迷いがなくなります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「it」と「one」の最も重要な違い
基本的には、「it」は前に出た「特定のモノ・コト」を指し、「one」は前に出た名詞と「同じ種類の不特定のモノ・コト」を指すと覚えるのが簡単です。「まさにそれ!」なら「it」、「そういうやつ」なら「one」とイメージしましょう。
まず、結論からお伝えしますね。
「it」と「one」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | it | one | 
|---|---|---|
| 品詞(役割) | 人称代名詞 | 不定代名詞・代不定詞 | 
| 指すもの | 特定のモノ・コト(前に出た名詞そのもの) | 不特定のモノ・コト(前に出た名詞と同じ種類のもの) | 
| ニュアンス | まさに「それ」 | 「(同じ種類の)ひとつ」「〜なやつ」 | 
| 修飾 | 形容詞などで修飾できない | 形容詞などで修飾できる (例: the red one) | 
| 複数形 | なし (複数は they/them) | ones | 
一番大切なポイントは、「it」が特定の「まさにそれ!」を指すのに対し、「one」は「そういう種類のもの」の中から不特定の「ひとつ」を指すという点です。
道端に落ちている特定のペンを指して「それ拾って」と言うなら “Pick it up.” ですが、ペンがたくさんある中から「どれか一本取って」と言うなら “Take one.” になります。
なぜ違う?代名詞の種類(役割)からイメージを掴む
「it」は特定のモノやコトを指す「人称代名詞」です。一度話題に出た具体的な「それ」を指します。一方、「one」は不特定のモノやコトを指す「不定代名詞」や、名詞の繰り返しを避ける「代不定詞」として働き、「(同じ種類の)とある一つ」を指します。役割の違いが使い分けの鍵です。
この二つの代名詞の使い分けは、それぞれの文法的な役割(品詞)を理解するとイメージしやすくなりますよ。
「it」の役割:特定の「それ」を指す人称代名詞
「it」は、人称代名詞の一つです。「he」や「she」が特定の人を指すように、「it」は前に出てきた特定の「モノ」や「コト」を指します。
一度話題に上がった具体的な事物、状況、アイデアなどを、そのまま「それ」として受け止める役割です。
例えば、「I bought a new phone. It is very useful.」(新しい電話を買いました。それはとても便利です。)この場合の「It」は、直前に出てきた「a new phone」そのものを指していますね。他の電話ではなく、まさに「その」電話のことです。
重要なのは、「it」は形容詞などで修飾できない点です。「the new it」や「a useful it」のような言い方はできません。
「one」の役割:「(とある)ひとつ」を指す不定代名詞・代不定詞
一方、「one」は不定代名詞や代不定詞として使われます。「不定」という名前の通り、特定されていない「(同じ種類の)とある一つ」を指します。
前に出てきた名詞と同じ種類のものではあるけれど、まさに「それそのもの」ではなく、同じカテゴリーに属する別のものを指したい場合に使われます。
例えば、「I lost my pen. I need to buy a new one.」(ペンをなくしました。新しいのを買わなければなりません。)この場合の「one」は、「pen」という種類のもの(=ペン)を指していますが、なくしたペンそのものではなく、新しい別のペンを指しています。
また、「one」は「it」と違って、形容詞などで修飾できるのが大きな特徴です。「a new one」(新しいの)、「the red one」(赤いの)、「which one?」(どれ?)のように使えます。複数形は「ones」です。
この「特定」か「不特定」かの違いをしっかり掴むことが、使い分けの最大のコツですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
「Do you have a pen? Yes, I have it.」(ペン持ってる? うん、(さっき話したそのペンを)持ってるよ)のように特定のペンなら「it」。「Do you have a pen? Yes, I have one.」(ペン持ってる? うん、(どれか一本)持ってるよ)のように不特定のペンなら「one」を使います。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
「it」と「one」の使い分けを、もう少し詳しく見ていきましょう。
「it」(特定のものを指す)の使い方
「it」は、文脈上、どのモノ・コトを指しているかが明確な場合に使います。
【OK例文:it】
- I read the book you recommended. It was interesting. (君が勧めてくれた本を読んだよ。それは面白かった。)→「It」= 君が勧めてくれた「その本」
- “Where is my key?” “I put it on the table.” (「私の鍵はどこ?」「テーブルの上に置いたよ。」)→「it」= あなたの「その鍵」
- Look at the cloud. It looks like a sheep. (あの雲を見て。それは羊のように見える。)→「It」= 「あの特定の雲」
- Studying English is hard, but it is important. (英語の勉強は大変だが、それは重要だ。)→「It」= 「英語を勉強すること」という特定の行為
このように、会話や文脈の中で、話し手と聞き手の間で「ああ、あれのことね」と共通認識がある特定の対象を指すのが「it」です。
「one」(不特定のものを指す)の使い方
「one」は、同じ種類のものならどれでもよい場合や、特定のものとは別のものを指す場合に使います。形容詞と一緒に使われることが多いのも特徴です。
【OK例文:one / ones】
- My phone is old. I want a new one. (私の携帯は古い。新しいのが欲しい。)→「one」= 「phone」という種類の中の、新しいどれか一つ
- “Which car do you like?” “I like the red one.” (「どの車が好き?」「赤いのが好きです。」)→「one」= 「car」という種類の中の、「赤い」特定の個体(※ただし、初めから特定されていた訳ではない)
- These cookies are delicious. Can I have another one? (このクッキー美味しいね。もう一つもらってもいい?)→「one」= 「cookie」という種類の中の、追加の一つ
- I don’t like these shoes. I prefer the other ones. (この靴は好きじゃない。他のの(複数)がいい。)→「ones」= 「shoes」という種類の中の、これらとは別の複数の靴
「one」は非常に便利な言葉で、名詞の繰り返しを避けて文をすっきりさせる効果がありますね。
これはNG!間違えやすい使い方
よくある間違いと、なぜそれが間違いなのかを見てみましょう。
- 【NG】 I lost my key. I have to find one.
- 【OK】 I lost my key. I have to find it. (鍵をなくした。それを見つけなければならない。)
なくした鍵は「特定の鍵」ですよね。だから「it」を使います。「one」を使うと、「(どれでもいいから)鍵を一つ見つけなければならない」という意味になってしまいます。
- 【NG】 I need a pen. Do you have it?
- 【OK】 I need a pen. Do you have one? (ペンが必要です。(どれか一本)持っていますか?)
特定のペンを指しているわけではなく、「ペンという種類のもの」を一本貸してほしい、という意味なので「one」を使います。「it」を使うと、聞き手は「どのペンのこと?」と戸惑ってしまいます。
- 【NG】 I like the red it.
- 【OK】 I like the red one. (私は赤いのが好きです。)
前述の通り、「it」は形容詞(red)で修飾できません。形容詞で修飾したい場合は「one」を使います。
この区別、最初はややこしく感じるかもしれませんが、例文を通して感覚を掴んでいくのが一番ですね。
【応用編】似ている表現「that」との違いは?
「it」と「one」に加え、「that」も「それ」を指す代名詞ですが、「that」は「it」よりも少し距離のあるものや、対比を示すニュアンスがあります。また、「that」は形容詞で修飾できます(例: that red one)。文脈によって使い分けが必要です。
「it」や「one」と似た働きをする代名詞に「that」があります。これも使い分けに迷うことがありますよね。
基本的な違いは以下の通りです。
- it: すでに話題に出ている、特定のモノ・コトを指す。(心理的な距離が近い)
- one: 不特定の「(同じ種類の)ひとつ」を指す。形容詞で修飾可能。
- that: 特定のモノ・コトを指すが、「it」よりも少し距離がある感じ。または、何かと対比して「あちらの」と指す場合。形容詞で修飾可能(例: that book, that red one)。
例文で見てみましょう。
- This pen is good, but that one is better. (このペンも良いけど、あっちの方が良い。)→「this」と対比して「that」を使っている。
- “Did you see the movie?” “Yes, it was great.” (「その映画見た?」「うん、(まさにその映画が)素晴らしかったよ。」)→ 特定の映画「it」で受ける。
- “I need a phone charger.” “You can use that one on the desk.” (「充電器が必要なんだ。」「机の上のあれを使っていいよ。」)→ 少し離れた場所にある特定の充電器を「that one」で指している。
「that」は「it」と同様に特定のものを指せますが、「it」ほど直接的ではなく、少し距離感を置いたり、選択肢の中から「あちら」と区別したりするニュアンスが出ます。また、「one」のように形容詞を伴うこともできます。
微妙なニュアンスの違いですが、使いこなせると表現の幅が広がりますね。
「it」と「one」の違いを英語学習の視点から解説
英語学習者が「it」と「one」を混同する主な原因は、日本語の「それ」という言葉の曖昧さに引きずられることと、英語の「特定性」の概念への理解不足です。文脈の中で「まさにそれ specific」なのか、「どれかひとつ non-specific」なのかを常に意識する練習が効果的です。
多くの英語学習者にとって、「it」と「one」の使い分けは、なぜ難しいのでしょうか?
一つは、日本語の「それ」という言葉が非常に広い範囲をカバーするため、英語の「it」「one」「that」のような細かい区別を意識しにくい点にあります。
もう一つは、英語における「特定されているか (specific)」と「特定されていないか (non-specific)」という概念の重要性を十分に理解できていないことが挙げられます。
英語では、あるモノについて話すとき、それが「(すでに話題に出ている)特定のモノ」なのか、「(まだ特定されていない、あるいは同じ種類の中の)一般的なモノ」なのかを、冠詞(a/an, the)や代名詞(it, one)などを使って明確に区別します。
「it」を使うときは、話し手と聞き手の間で「どのモノ・コトについて話しているか」が共通認識として特定されている必要があります。
一方、「one」を使うときは、「どの個体を指すか」は特定されていないか、あるいは「同じ種類」であることが分かっていれば十分です。
この「特定性」への意識を養うことが、使い分けをマスターするための鍵となります。
学習のコツとしては、
- 英文を読むときに、代名詞が何を指しているのか、それは「特定」か「不特定」かを常に考える。
- 自分で英作文をするときに、「これは特定の『それ』か?」「それとも不特定の『ひとつ』か?」と自問自答してみる。
- 会話の中で意識して使い分け、間違いを恐れずに練習する。
といった地道な練習が効果的でしょう。英語の文法規則は、文部科学省の外国語教育に関するページなどでも基本的な考え方が示されていますので、参考にしてみるのも良いかもしれませんね。
僕がカフェで「it」と「one」を間違えてしまった体験談
あれは忘れもしない、初めて海外(シアトルでした)のカフェでコーヒーを注文したときのことです。
カウンターに数種類のマグカップが並んでいて、店員さんに「For here or to go?(店内でお召し上がりですか?お持ち帰りですか?)」と聞かれ、「For here.」と答えました。そして、棚にあったシンプルな白いマグカップを指差しながら、こう言ってしまったんです。
“Can I use it?”
僕としては「(あの棚にあるカップのうちの)ひとつを使えますか?」と伝えたかったのですが、「it」を使ったことで、まるで「(指差した)まさにその特定のカップを使えますか?」という意味になってしまったんですね。
店員さんは一瞬「?」という顔をしましたが、すぐに意図を汲んでくれて、「Sure, you can take one.」(ええ、ひとつ取っていいですよ)と笑顔で言ってくれました。
その瞬間、「あ!こういうときは “one” なのか!」と気づきました。棚には同じ種類の白いマグカップがたくさんあり、僕はその中のどれか一つを使いたかったわけですから、「不特定の一つ」を指す「one」が正しかったのです。
もし、テーブルの上に置いてある、まさに「その」カップを使いたかったのなら、「it」で良かったのかもしれません。でも、棚にあるたくさんの中から「どれか一つ」という意味合いでは、「one」を使うべきだったんですね。
教科書で理屈は学んでいても、実際の場面で自然に使い分けることの難しさを痛感した出来事でした。あのときの店員さんの優しい笑顔と、「oneだよ」と心の中で教えてくれた(気がした)瞬間のことは、今でも鮮明に覚えています。それ以来、代名詞を使うときは「特定か、不特定か」を以前よりずっと意識するようになりました。
「it」と「one」に関するよくある質問
Q. 天気や時間を言うときの「it」は何を指しているのですか?
A. 天気(It’s sunny.)、時間(It’s
three o’clock.)、距離(It’s five kilometers to the station.)などを言うときの「it」は、特定の何かを指しているわけではなく、文法上の主語として置かれる「非人称のit」または「状況のit」と呼ばれるものです。これは「one」で置き換えることはできません。
Q. 「the one」と「that one」はどう違いますか?
A. どちらも特定のものを指しますが、「the one」は文脈上すでに特定されているもの、あるいは「~なもの」として特定されるもの(例: the one I bought yesterday – 昨日私が買ったもの)を指します。「that one」は、前述のように、物理的または心理的に少し距離があるもの、あるいは対比されるものを指すことが多いです。
Q. 可算名詞(数えられる名詞)と不可算名詞(数えられない名詞)で使い分けは変わりますか?
A. はい、変わります。「one/ones」は基本的に可算名詞の代わりに使われます(例: a pen → one, pens → ones)。「it」は単数の可算名詞、不可算名詞(例: water, information)、または文全体を受けることができます。不可算名詞を「one」で受けることはできません。(例: × I need water. Do you have one?)
「it」と「one」の違いのまとめ
「it」と「one」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 指すものが特定か不特定か:「it」は特定のモノ・コト、「one」は不特定の(同じ種類の)モノ・コト。
- 品詞が違う:「it」は人称代名詞、「one」は不定代名詞・代不定詞。
- 修飾の可否:「it」は形容詞で修飾できない、「one」はできる。
- 「that」との違い:「that」は特定だが、「it」より距離感や対比のニュアンスがある。
この基本的な違いを理解し、文脈の中で「まさにそれ!」なのか「そういうやつの一つ」なのかを意識することで、自信を持って使い分けられるようになります。
英語の代名詞は奥が深いですが、一つ一つ着実にマスターしていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。