「云う」と「言う」の違いとは?発言と伝聞で変わるニュアンスと使い分け

「云う」と「言う」、どちらも「いう」と読みますが、小説などで「云う」を見かけて、「どう違うんだろう?」と思ったことはありませんか?

実はこの2つの言葉、「はっきりと言葉にすること」か「引用や伝聞として伝えること」かで使い分けるのが基本です。

ただし、現代の日本語においては「言う」を使うのが圧倒的に一般的で、「云う」はかなり限定的な場面でしか使われません。

この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的なイメージから具体的な使い分け、さらには公的なルールまでスッキリと理解でき、自信を持って言葉を選べるようになります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「云う」と「言う」の最も重要な違い

【要点】

「言う」は自分の意思や事実をはっきりと言葉に出す一般的な表記で、「云う」は引用や伝聞、あるいは言葉を濁すようなニュアンスを含みます。迷ったときは常用漢字である「言う」を使えば間違いありません。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目言う云う
中心的な意味思ったことを言葉に出す、告げる口ごもる、引用する、ぼかす
対象意見、事実、感情、指令伝聞、昔話、引用、曖昧なこと
ニュアンス明確、直接的、現代的間接的、文学的、古風
使用頻度極めて高い(常用漢字)低い(表外読み・文学的表現)

一番大切なポイントは、ビジネスや日常では「言う」一択でOKということです。

「云う」は、小説やエッセイなどで、あえて古風な雰囲気や含みを持たせたいときに使われる特殊な表現だと覚えておきましょう。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「言」ははっきりと言葉に出すことを意味し、「云」は雲がもくもくと湧くように口ごもる、または声を出すことを意味します。明確な発言は「言」、ぼかした表現や引用は「云」というイメージです。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「言う」の成り立ち:「辛」+「口」で“はっきり告げる”イメージ

「言」という漢字は、「辛(刺青を入れる針)」と「口」から成り立っています。

これは、針で刺すような鋭さを持って、自分の意思や事柄をはっきりと言葉に出すことを意味します。

「発言」「宣言」「言語」といった熟語からもわかるように、明確な意志を持って言葉を発するという、能動的で強いイメージですね。

「云う」の成り立ち:「雲」の原字で“もくもくと伝える”イメージ

一方、「云」という漢字は、もともと「雲」の原字であり、雲がもくもくと湧き出る様子を象ったものです。

そこから、雲のように形が定まらない、あるいは口ごもりながら言う、声を出すという意味が生まれました。また、自分の言葉ではなく「ここに雲があるよ」と指し示すように、他からの引用や伝聞を表す際にも使われます。

「云々(うんぬん)」という言葉が「などなど」「しかじか」と言葉を濁したり省略したりするにように、「云う」には直接的ではない、少しぼかしたニュアンスが含まれているのです。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「意見を言う」「好きだと言う」など日常的な発言には「言う」を使い、「昔の人はこう云った」「云々(うんぬん)かんぬん」など、引用やボカした表現には「云う」が使われることがあります。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

日常会話と、少し文学的な表現での使い分けを見ていきましょう。

日常・ビジネスでの「言う」

自分の考えや事実を伝える場合は、迷わず「言う」を使います。

【OK例文:言う】

  • 会議で自分の意見を言う。(発言)
  • 彼は「ありがとう」と言った。(言葉にする)
  • 冗談を言って場を和ませる。(会話)
  • 上司に不満を言う。(主張)

このように、私たちが普段行っている「話す」「伝える」という行為はすべて「言う」で表現できます。

文学的・限定的な「云う」

「云う」は、引用や、あえて古めかしい雰囲気を出す場合に使われますが、現代ではひらがなで書かれることも多いです。

【OK例文:云う】

  • 古人(いにしえびと)云(い)わく、時は金なり。(引用・伝聞)
  • 何かと云うと文句をつけてくる。(事あるごとに)
  • 云々(うんぬん)かんぬんと弁解する。(言葉を濁す)
  • 所謂(いわゆる)、天才と云うやつだ。(定義・評価)

「云う」を使うと、そこに「昔話のような響き」や「直接的ではない気配」が漂います。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が通じなくはないですが、漢字の持つニュアンスや公的なルールとして不適切な例を見てみましょう。

  • 【NG】明日、先生に欠席すると云っておいて。
  • 【OK】明日、先生に欠席すると言っておいて。

単なる連絡事項や伝言に「云う」を使うと、意味深長に見えたり、単なる変換ミスだと思われたりする可能性が高いです。

  • 【NG】はっきりモノを云う性格だ。
  • 【OK】はっきりモノを言う性格だ。

「はっきり」と「云う(口ごもる・ぼかす)」はイメージが矛盾します。明確な発言は「言う」が適切です。

【応用編】似ている言葉「謂う」との違いは?

【要点】

「謂(い)う」は、「いわゆる(所謂)」や「意味する」という文脈で使われます。発言そのものよりも、言葉の定義や評価を説明する際に用いられる、少し古風で硬い表現です。

「言う」「云う」のほかに、「謂(い)う」という漢字もありますね。これも整理しておきましょう。

「謂」の基本イメージは、「〜と呼ぶ」「意味する(謂れ)」です。

  • 言う:発言する。口に出す。
    例:文句を言う。
  • 謂う:〜のことである。〜と称する。
    例:ここが謂(い)わゆる正念場だ。(一般的にそう言われている)
  • 云う:引用する。ぼかす。
    例:云々(うんぬん)。

「謂う」は「所謂(いわゆる)」や「謂れ(いわれ=理由・由緒)」という言葉で使われますが、動詞として「〜と謂う」と書くことは現代では稀です。基本的には「言う」で代用されます。

「云う」と「言う」の違いを学術的に解説

【要点】

「云」は常用漢字表に含まれていますが、訓読みの「い(う)」は表外読み(常用漢字表にない読み方)です。そのため、公用文や新聞などのメディアでは原則として「言う」に統一されており、「云」は「云々(うんぬん)」という熟語でのみ使われます。

公的な文書や一般的なニュース記事において、「云う」という表記を目にすることはまずありません。

なぜなら、「云」という漢字は常用漢字表には含まれていますが(音読みの「ウン」として)、訓読みの「いう」は表外読み(常用漢字表に記載されていない読み方)だからです。

そのため、公用文、新聞、教科書などでは、原則として「言う」と表記することがルールとされています。

「云」が使われるのは、「云々(うんぬん)」や「出雲(いずも)」といった特定の熟語や固有名詞に限られます。

個人のブログや創作物で「云う」を使うのは自由ですが、読み手によっては「読みにくい」「気取っている」と感じられるリスクがあることも知っておくと良いでしょう。

詳しくは文化庁の常用漢字表などで確認することができます。

僕が「云う」を多用して「気取ってる」と笑われたブログの体験談

僕がまだ学生で、純文学にハマっていた頃の話です。

当時開設していたブログで、少しでも知的に見せたくて、日常の出来事を書く際に意識して「云う」を多用していました。「友人がこう云った」「それは間違いだと云わざるを得ない」といった具合です。

自分では「文学的でカッコいい表現だ」と悦に入っていたのですが、ある日、友人からコメントがつきました。

「お前のブログ、なんか読みづらいし、変に気取ってて面白いな(笑)。『云う』って変換ミスかと思ったわ」

顔から火が出るほど恥ずかしかったです。僕は「云う」を使うことで文章に深みが出ると思っていましたが、読者(友人)にとっては単なる「読みにくい当て字」か「変換ミス」にしか見えていなかったのです。

言葉は、相手に伝わってこそ意味があります。どんなに高尚なニュアンスを込めようとしても、基本的なルール(常用漢字)から外れすぎると、独りよがりな文章になってしまうのだと痛感しました。

それ以来、僕は基本的には「言う」を使い、どうしても引用のニュアンスを強調したい時だけ、慎重に言葉を選ぶようになりました。カッコよさよりも「伝わりやすさ」が大切なんですよね。

「云う」と「言う」に関するよくある質問

「云々」は「いういう」と読みますか?

いいえ、「云々」は「うんぬん」と読みます。「しかじか」「などなど」という意味で、引用文の省略や、言葉をぼかして続ける際に使われます。「いういう」とは読みません。

ビジネスメールで「云う」を使っても失礼になりませんか?

失礼とまでは言えませんが、ビジネス文書では常用漢字を使うのがマナーとされています。「云う」は表外読みであり、相手によっては「変換ミスかな?」「癖が強いな」と思われる可能性があるため、避けたほうが無難です。素直に「言う」を使いましょう。

「謂れのない」の「謂れ」はどう書きますか?

「いわれのない非難」などの「いわれ」は、「謂れ」と書くのが本来の漢字ですが、これも表外読みのため、一般的にはひらがなで「いわれ」と書くか、「理由」などの言葉に書き換えられることが多いです。

「云う」と「言う」の違いのまとめ

「云う」と「言う」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本の使い分け:日常的な発言や主張は「言う」、引用やぼかしは「云う」。
  2. 漢字のイメージ:「言」ははっきり告げる、「云」は雲のようにもくもくと(口ごもる)。
  3. 公的なルール:「云う」は表外読みなので、公用文では「言う」を使う。
  4. おすすめ:迷ったら「言う」を使えば100%間違いはない。

言葉の背景にある漢字のイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。漢字の使い分けについてさらに知りたい方は、漢字の使い分けの違いをまとめたページもぜひご覧ください。

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