「自動詞」と「他動詞」の違いとは?目的語の有無で見分ける文法の基本

「自動詞」と「他動詞」の違いを一言で言うと、動作の対象となる「目的語(~を)」が必要かどうかという点にあります。

「自動詞」は「雨が降る」「彼が走る」のように、主語自身の動作だけで文が完結する動詞です。一方、「他動詞」は「本を読む」「ドアを開ける」のように、動作の影響を受ける相手(目的語)がいなければ文が成立しない動詞を指します。特に英語学習においては、この区別が文型決定の鍵となるため、多くの人がつまずきやすいポイントでもあります。

この記事を読めば、日本語と英語それぞれの特徴から、見分け方のコツや間違いやすいペアの使い分けまでスッキリと理解できます。

それでは、まず最も重要な違いの比較から詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「自動詞」と「他動詞」の最も重要な違い

【要点】

「自動詞」は目的語を必要とせず、主語の動作や状態だけで意味が通じる動詞です。「他動詞」は目的語(~を)を必要とし、動作が他者や物に働きかける動詞です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これを見れば、文法的な役割の違いが一目瞭然です。

項目自動詞 (Intransitive Verb)他動詞 (Transitive Verb)
中心的な意味主語だけで動作が完結する他者(目的語)に働きかける
目的語(Object)不要(直後に名詞を置けない)必要(直後に名詞を置く)
日本語の助詞「~(…する)」「~(…する)」
英語の文型第1文型 (SV)
S+V (+前置詞+名詞)
第3文型 (SVO) など
S+V+O
代表例(日/英)開く / open, run, stand開ける / open, eat, make

一番のポイントは、「~を」にあたる言葉(目的語)が直後に必要かどうかという点ですね。

英語では、自動詞の直後には目的語(名詞)を置けませんが、前置詞を挟めば名詞を続けることができます(例:look at the picture)。他動詞は前置詞なしで直後に名詞を置きます(例:watch the picture)。

なぜ違う?言葉の成り立ちと文法用語としてのイメージを掴む

【要点】

「自動詞」は自らの力で動くイメージ、「他動詞」は他へ影響を及ぼす(Transit)イメージです。英語の「Transitive」は「通過する・移行する」を意味し、動作が主語から目的語へ移っていく様を表しています。

漢字の意味や英語の語源を知ると、なぜそのような名前がついているのかが深く理解できますよ。

「自動詞」のイメージ:自己完結する動き

「自動詞」という漢字は、「分で(ことば)」と書きます。

英語では「Intransitive verb」と言いますが、接頭辞の「In-」は否定を表します。つまり「移行しない動詞」という意味です。

動作のエネルギーが主語から外へ出て行かず、主語自身の内部で完結しているイメージを持ってください。「私が走る」「花が咲く」のように、動作の影響が他に及ばないのが特徴です。

「他動詞」のイメージ:他への働きかけ

一方、「他動詞」は、「に対してきかける」です。

英語では「Transitive verb」です。「Transit」は「通過する」「乗り換える」といった意味がありますよね。空港のトランジットと同じ語源です。

これは、動作のエネルギーが主語から発せられ、対象物(目的語)へと「移行・通過」していくイメージを表しています。「私が(ボールを)投げる」「彼が(本を)読む」のように、動作の受け手が存在するのが大前提となります。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

日本語では「~が」なら自動詞、「~を」なら他動詞と見分けるのが基本です。英語では、前置詞なしで名詞が続くなら他動詞、文が終わるか前置詞が必要なら自動詞と判断します。

定義が分かったところで、実際の文章でどう使い分けられているか、日本語と英語の例文で確認していきましょう。

日本語での使い分け例

日本語には、対になる自動詞と他動詞が多く存在します。

【ドアの例】

  • 自動詞:ドア開く。(Door opens.)
    ※ドア自体の変化に注目しています。
  • 他動詞:私がドア開ける。(I open the door.)
    ※私がドアに対して作用しています。

【授業の例】

  • 自動詞:授業始まる。(Class begins.)
  • 他動詞:先生が授業始める。(Teacher begins the class.)

英語での使い分け例

英語では、同じ動詞が自動詞にも他動詞にもなる場合と、形が変わる場合があります。

【run(走る/経営する)】

  • 自動詞:I run in the park.
    (私は公園で走る。)
    ※「in」という前置詞があるので、runの直後に目的語はありません。
  • 他動詞:I run a shop.
    (私は店を経営する。)
    ※「a shop」という目的語が直後にあり、「店を走らせる=経営する」という意味になります。

【look(見る)と watch(見る)】

  • 自動詞:I look at the sky.
    (私は空を見る。)
    ※look単体では「目を向ける」という自動詞なので、対象を示すにはatが必要です。
  • 他動詞:I watch TV.
    (私はテレビを見る。)
    ※watchは「~をじっと見る」という他動詞なので、前置詞なしでTVを続けられます。

【応用編】英語で間違えやすい「lie」と「lay」などのペアの違いは?

【要点】

「lie(横たわる/自動詞)」と「lay(横たえる/他動詞)」、「rise(上がる/自動詞)」と「raise(上げる/他動詞)」は、形が似ているため試験で頻出の難所です。活用形も含めてセットで覚える必要があります。

英語学習において最大の難所とも言えるのが、形が似ている自動詞と他動詞の使い分けです。これらは明確に区別して覚える必要があります。

lie(自動詞)と lay(他動詞)

  • lie(横たわる、ある):自動詞
    活用:lie – lay – lain – lying
    例:He lies on the bed.(彼はベッドに横たわる。)
  • lay(~を横たえる、置く):他動詞
    活用:lay – laid – laid – laying
    例:He lays the book on the desk.(彼は本を机に置く。)

ややこしいのは、自動詞 lie の過去形が lay であるため、他動詞の原形 lay と混同しやすい点です。「目的語があるか?」を常に見る癖をつけましょう。

rise(自動詞)と raise(他動詞)

  • rise(上がる、昇る):自動詞
    例:The sun rises.(日が昇る。)
  • raise(~を上げる、育てる):他動詞
    例:Please raise your hand.(手を上げてください。)

「自動詞」と「他動詞」の違いを言語学的に解説

【要点】

言語学では、動詞がいくつの名詞(項)を必要とするかという「結合価(Valency)」で分類します。自動詞は「主語」のみの1項動詞、他動詞は「主語+目的語」の2項動詞(またはそれ以上)として定義されます。

少し専門的な視点から、この違いを深掘りしてみましょう。

言語学において、動詞は「項(argument)」と呼ばれる要素をいくつ取るかで分類されます。項とは、動詞の意味を成立させるために必須となる名詞句のことです。

  • 自動詞(1項動詞):[主語] + 動詞
    (例:犬が 吠える)
  • 他動詞(2項動詞):[主語] + [目的語] + 動詞
    (例:猫が 魚を 食べる)

さらに、「あげる(他動詞)」と「もらう(他動詞)」のように、3つの項(主語、直接目的語、間接目的語)を必要とする「授与動詞(3項動詞)」もあります。

また、日本語には「能格性」と呼ばれる特徴を持つ動詞もあります。例えば「開く(自動詞)」の主語(ドア)は、「開ける(他動詞)」の目的語(ドア)と同じ対象を指しますよね。このように、自動詞の主語と他動詞の目的語が対応する関係性は、言語学的に非常に興味深い研究対象となっています。

詳しくは国立国語研究所の研究資料などを参照すると、日本語の動詞の奥深さがより理解できるでしょう。

英語のテストで「自動詞」と「他動詞」を間違えて赤っ恥をかいた体験談

僕が高校生の頃、英語の授業で恥ずかしい思いをしたことがあります。

先生に指名されて、「私たちは結婚しました」を英語にするよう言われた時のことです。自信満々にこう答えました。

We married.

すると、教室が一瞬静まり返り、先生がニヤリと笑って言いました。

「それだと、『私たちは(誰かと)結婚させた』という意味になっちゃうか、文法的に不自然だよ。『marry』は他動詞だからね」

僕は顔から火が出るほど恥ずかしかったです。「marry」は「~と結婚する」という日本語訳のイメージから、「with」を使いたくなったり、自動詞だと思い込んだりしがちですが、実際は「~を妻(夫)にする」というニュアンスの他動詞なんですよね。

正しくは「We got married.(受動態)」か、「I married her.(目的語あり)」としなければならなかったのです。

日本語の『~する』という感覚だけで英語の動詞を使うと痛い目を見る

この失敗を通じて、辞書を引くたびに「自」か「他」かの記号を必ずチェックするようになりました。あの時の恥ずかしさは、今では良い教訓になっています。

「自動詞」と「他動詞」に関するよくある質問

「discuss(議論する)」は自動詞ですか?他動詞ですか?

「discuss」は他動詞です。日本語で「~について議論する」と言うため、「discuss about」と言いたくなりますが、これは間違いです。正しくは「discuss the problem」のように、直後に目的語を置きます。同様に「visit(~を訪問する)」「resemble(~に似ている)」も間違えやすい他動詞です。

両方として使える動詞はどう見分ければいいですか?

多くの英単語(stop, change, moveなど)は自動詞・他動詞の両方で使えます。見分け方は「後ろに目的語(名詞)があるか」です。「I stop.(立ち止まる=自)」、「I stop the car.(車を止める=他)」。文脈の中で、主語が自分で動いているのか、何かを動かしているのかを判断しましょう。

日本語の「~を」があれば必ず他動詞ですか?

基本的にはそうですが、例外もあります。例えば「公園を歩く」「空を飛ぶ」の「を」は、通過点や場所を表すもので、対象物を操作しているわけではありません。この場合の「歩く」「飛ぶ」は自動詞(移動動詞)に分類されます。英語では「walk in the park」のように前置詞が必要になります。

「自動詞」と「他動詞」の違いのまとめ

「自動詞」と「他動詞」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 目的語の有無:自動詞は不要、他動詞は必要。
  2. 日本語の助詞:自動詞は「~が」、他動詞は「~を」が基本。
  3. 英語の構造:自動詞は「S+V」、他動詞は「S+V+O」。
  4. イメージ:自動詞は自己完結、他動詞は他への働きかけ。

言葉の背景にある「エネルギーの向き」をイメージすると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになりますね。英語学習でも日本語の分析でも、この違いを意識することは非常に重要です。

これからは自信を持って、動詞を使いこなしていきましょう。関連する言葉の使い分けについては、英語由来語の違いまとめもぜひ参考にしてみてください。

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