「事務用品費」と「消耗品費」の違いは、厳密には「事務用品費」が事務作業で使う物品に限定されるのに対し、「消耗品費」はそれらを含む、使うとなくなる物品全般を指すという包含関係にあります。
ただし、実務上はどちらの勘定科目を使っても税務上の問題はなく、重要なのは自社のルールとしてどちらかに統一し、継続して使用すること。
この記事を読めば、それぞれの科目の定義から具体的な仕訳例、さらには「雑費」との使い分けまで詳しく分かり、日々の経理処理で迷うことがなくなります。
それでは、まず二つの違いを一覧表で比較して、全体像を把握していきましょう。
結論:一覧表でわかる「事務用品費」と「消耗品費」の最も重要な違い
「消耗品費」は使用してなくなる物品全般を指す広い概念で、「事務用品費」はその中でも事務作業に使う文房具などに限定した狭い概念です。実務では「消耗品費」に一本化することも多いですが、管理目的で分けることもあります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの勘定科目の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 事務用品費 | 消耗品費 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 事務作業で使用する文房具や事務機器 | 使用により消耗するもの、または少額な備品全般 |
| 包含関係 | 狭い(消耗品費の一部) | 広い(事務用品費を含む) |
| 具体例 | ボールペン、ノート、ファイル、電卓 | 洗剤、ティッシュ、電球、PC周辺機器、工具 |
| 金額基準 | 通常は少額なもの | 原則として10万円未満(または耐用年数1年未満) |
| 使い分けのコツ | 事務経費を細かく管理したい場合に使用 | これ一本でまとめて管理するのが一般的 |
簡単に言うと、ペンやノートなどの事務で使うものだけを抜き出したのが「事務用品費」で、それらを含めて会社で使う消耗品すべてをひっくるめたのが「消耗品費」というイメージですね。
例えば、オフィスの蛍光灯が切れて買い換えた場合、これは「消耗品費」になりますが、ボールペンを買った場合は「事務用品費」でも「消耗品費」でも、社内ルール次第でどちらでもOKなのです。
なぜ違う?勘定科目の定義からイメージを掴む
「事務用品費」は事務(デスクワーク)を遂行するための費用という限定的なイメージ。「消耗品費」は物理的に摩耗・消滅するものや、資産計上しない少額備品全般を指す包括的なイメージです。
なぜこの二つの科目に違いがあるのか、それぞれの言葉の定義や範囲からイメージを掴むと、その理由がよくわかりますよ。
「事務用品費」の定義:事務作業を支える道具たち
「事務用品費」は、文字通り「事務」を行うための「用品」にかかる費用ですよね。
デスクワークを中心とした業務遂行に必要な、文房具や机上用品などがこれに当たります。
「ボールペン」「コピー用紙」「バインダー」「ホッチキスの芯」といった、オフィスの机周りにあるものを想像すると分かりやすいでしょう。
つまり、「事務用品費」とは、事務作業を円滑に進めるための必需品に限定した経費という状態を表している、と考えるとイメージしやすいですね。
「消耗品費」の定義:使えばなくなる、または価値が減るもの全般
一方、「消耗品費」は、「消耗」してなくなるもの全般を指します。
これには事務用品だけでなく、「トイレットペーパー」「洗剤」「電球」といった日用品や、「ガソリン代(車両費としない場合)」なども含まれることがあります。
さらに、会計上のルールとして、使用可能期間が1年未満か、取得価額が10万円未満の備品もここに含まれます。
このことから、「消耗品費」には、会社運営に必要なあらゆる「消えゆくもの」や「少額な備品」を広く受け入れるという包括的なニュアンスが含まれるんですね。
具体的な仕訳例で使い方をマスターする
ボールペンやコピー用紙は「事務用品費」でも「消耗品費」でもOKですが、ティッシュや洗剤は「消耗品費」とします。10万円未満のパソコンや棚なども「消耗品費」として処理するのが一般的です。
言葉の違いは、具体的な仕訳の事例で確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーンでの具体的な仕訳例と、間違いやすいポイントを見ていきましょう。
「事務用品費」として処理するケース
事務作業に直結するものは、こちらで処理して管理することが多いですよ。
【OK例文】
- 文房具店でボールペンとノートを購入した。(借方:事務用品費)
- プリンター用のコピー用紙を大量に発注した。(借方:事務用品費)
- 書類整理のためのファイルボックスとインデックスシールを買った。(借方:事務用品費)
これらを「消耗品費」としても間違いではありませんが、事務経費の推移を把握したい場合は「事務用品費」を使うと便利ですね。
「消耗品費」として処理するケース
事務用品以外のものや、少し高価な備品はこちらになります。
【OK例文】
- 来客用トイレのトイレットペーパーと芳香剤を購入した。(借方:消耗品費)
- オフィス清掃用の洗剤と雑巾を買った。(借方:消耗品費)
- 従業員用に9万8000円のノートパソコンを1台購入した。(借方:消耗品費)
- 工場で使用する軍手やウエスを購入した。(借方:消耗品費)
これはNG!間違いやすい仕訳
経理処理として不適切な例を見てみましょう。
- 【NG】前回はボールペンを「消耗品費」にしたが、今回は「事務用品費」で処理した。
- 【OK】前回ボールペンを「消耗品費」にしたなら、今回も「消耗品費」で処理する。
勘定科目は「継続性の原則」が重要です。気分によって変えてしまうと、過去との比較ができなくなってしまいますね。
- 【NG】15万円の応接セットを購入し、「消耗品費」として処理した。(※青色申告の特例などを適用しない場合)
- 【OK】15万円の応接セットを購入し、「工具器具備品」として資産計上した。
原則として10万円以上のものは資産として計上し、減価償却を行う必要があります。すべてを「消耗品費」で経費にできるわけではないので注意しましょう。
【応用編】似ている勘定科目「雑費」との違いは?
「雑費」は他のどの勘定科目にも当てはまらない、少額で一時的な費用を処理するための科目です。「事務用品費」や「消耗品費」のように頻繁に発生するものは雑費に含めず、独立した科目で管理するのが基本です。
「事務用品費」「消耗品費」と似ていて、つい使いたくなる科目に「雑費」があります。これも押さえておくと、経理の精度がさらに深まりますよ。
「雑費」は、他に該当する勘定科目がない、少額かつ重要性の低い費用を入れるための「その他」ボックスのような存在です。
例えば、クリーニング代、廃棄物処理代、証明書の発行手数料などがこれに当たることが多いです。
しかし、決定的な違いは、「雑費」の金額が大きくなりすぎないようにするという点です。
もし「事務用品」や「消耗品」をすべて「雑費」に入れてしまうと、雑費の金額が膨れ上がり、何にいくら使ったのかが不明瞭になってしまいます。これは経営分析の観点からも、税務調査の観点からも好ましくありません。
継続的に発生する費用は「消耗品費」や「事務用品費」として独立させ、「雑費」はあくまで一時的なものに留めるのが賢明でしょう。
「事務用品費」と「消耗品費」の違いを会計的に解説
会計上は「重要性の原則」に基づき、消耗品は購入時に費用処理することが認められています。税務上は「少額減価償却資産」の判定ラインである10万円が、「消耗品費」と「資産」を分ける重要な基準となります。
実は、この二つの使い分けの背景には、会計や税務のルールも関わっているんです。
会計基準には「重要性の原則」という考え方があります。これは、重要性が乏しいものについては、厳密な処理を省略しても良いというルールです。
本来、未使用の消耗品は「貯蔵品」として資産計上すべきですが、事務用消耗品のように毎期ほぼ同量を購入し消費するものは、購入した時に全額を経費(費用)として処理しても良いとされています。
また、税務の視点では「10万円」という壁が重要です。
取得価額が10万円未満のものは、使用可能期間が1年以上であっても、その全額を「消耗品費」として経費に落とすことができます。これを「少額減価償却資産」といいます。
つまり、「事務用品費」か「消耗品費」かという科目の名称よりも、それが10万円未満かどうか、資産計上すべきものかどうかという判定の方が、決算書や税金の計算においては遥かに重要なのです。
科目の名称は会社の管理しやすい方を選べば良いですが、この金額基準だけはしっかりと意識しておきましょう。詳しくは国税庁のウェブサイトなどでご確認いただけます。
僕が「事務用品費」と「消耗品費」で混乱した新人経理時代の体験談
僕も新人の頃、この「事務用品費」と「消耗品費」の使い分けで冷や汗をかいたことがあるんです。
小さな商社に入社してすぐ、経費精算の仕訳を任されました。真面目な僕は、「正確にやらなきゃ!」と意気込んでいました。
ボールペンは「事務用品費」、コピー用紙も「事務用品費」、でも洗剤は「消耗品費」、USBメモリは…事務で使うから「事務用品費」かな? いや、パソコン周辺機器だから「消耗品費」か?
そんなふうに一つひとつ悩みながら、自分なりの厳密なルールで仕訳を入力していました。「これだけ細かく分けておけば、後で分析するときに役立つはずだ!」と、誰にも頼まれていないのに自信満々だったんです。
ところが、月次決算のチェックの時、経理のベテラン課長に呼び出されました。
「君、この仕訳なんだけどね。なんでUSBメモリが『事務用品費』になってるの? うちの会社では、パソコン関係は全部『消耗品費』で統一してるんだけど」
僕は反論しました。「えっ、でも事務で使いますよね? 正確に分けた方がいいと思って…」
課長は苦笑いしながら教えてくれました。
「気持ちはわかるけどね。勘定科目っていうのは、過去との比較が大事なんだよ。君が勝手にルールを変えてしまうと、去年の数字と比べられなくなってしまうだろう? それに、金額の小さいものを細かく分けすぎても、管理の手間が増えるだけでメリットは少ないんだよ」
ガツンと頭を殴られたような衝撃でした。僕は「正確さ」を履き違えていたんです。独りよがりの細かさよりも、会社としての「継続性」と「効率」を守ることの方が大切だったんですね。
それ以来、迷ったときは自己判断せず、必ず過去の元帳を確認して「前例踏襲」を徹底するようになりました。経理の仕事は、クリエイティブさよりも、ルールを守り続ける愚直さが大事なんだと学んだ出来事です。
「事務用品費」と「消耗品費」に関するよくある質問
どちらの科目を使えばいいか迷ったらどうすればいいですか?
迷った場合は、会社の過去の仕訳データ(元帳)を確認し、前例に合わせるのが鉄則です。もし新規でルールを決めるなら、管理の手間を減らすために、すべて「消耗品費」に統一してしまうのも一つの賢い方法です。
10万円以上のパソコンは「消耗品費」になりますか?
原則として10万円以上のものは「工具器具備品」などの資産科目になり、「消耗品費」にはなりません。ただし、中小企業の特例や一括償却資産の制度を使えば、条件付きで経費にできる場合もありますが、科目の扱いは税理士等に相談することをおすすめします。
切手や収入印紙は「事務用品費」ですか?
いいえ、切手は「通信費」、収入印紙は「租税公課」として処理するのが一般的です。これらは物理的な「モノ」ですが、通信サービスの対価や税金としての性質が強いため、別の科目を使います。ただし、購入時ではなく使用時に費用化するのが原則です。
「事務用品費」と「消耗品費」の違いのまとめ
「事務用品費」と「消耗品費」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 包含関係を理解する:「消耗品費」という大きな枠の中に、事務用文具に特化した「事務用品費」があるイメージ。
- 実務では統一が命:どちらを使っても税務上は問題ないが、一度決めたら継続して使うことが重要。
- 10万円の壁を意識:科目名よりも、10万円未満(経費)か以上(資産)かという金額基準が会計上は最重要。
言葉の定義だけでなく、経理実務としての背景を理解すると、機械的な作業ではなく、意味のある業務として取り組めるようになります。
これからは自信を持って、適切な勘定科目を選んでいきましょう。業界による違いについてさらに知りたい方は、業界用語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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