「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」の違いは、強みの対象が「組織全体のプロセス(How)」か「特定の技術(What)」かという点にあります。
なぜなら、前者は企業が事業を推進する上での総合的な能力を指し、後者は他社が絶対に真似できない核となる技術やノウハウを指すからです。
この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的なイメージから具体的なビジネスシーンでの使い分けまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはないでしょう。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」の最も重要な違い
ケイパビリティは「組織全体のプロセスや仕組みの強み(How)」であり、コアコンピタンスは「他社に真似できない圧倒的な特定の技術やノウハウ(What)」です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | ケイパビリティ | コアコンピタンス |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 組織全体に浸透している事業実行能力 | 他社が模倣できない中核的な技術・スキル |
| 焦点の当て方 | どうやるか(How)/プロセス | 何ができるか(What)/特定の領域 |
| 具体的な例 | 迅速なサプライチェーン、優れた顧客対応の仕組み | ホンダの小型エンジン技術、ソニーの小型化技術 |
| 模倣の難しさ | 組織文化や仕組みに根ざすため真似されにくい | 特許や独自の高度な技術であるため真似されにくい |
表を見るとわかるように、ケイパビリティは「仕組みや流れ」であり、コアコンピタンスは「特定の核となる技術」という違いがあります。
どちらも企業の競争優位性を生み出す源泉ですが、フォーカスしている部分が大きく異なるのですよね。
なぜ違う?言葉の語源からイメージを掴む
ケイパビリティは「何かを成し遂げる能力(capability)」、コアコンピタンスは「中核となる(core)適性・能力(competence)」という英語から来ています。
言葉の本来の意味を知ることで、さらに理解が深まりますよ。
ここでは、それぞれの英単語の語源からイメージを掴んでいきましょう。
ケイパビリティ(Capability)のイメージ
ケイパビリティの語源である「capability」は、「〜できる」という意味の「capable」の名詞形です。
単なる才能ではなく、組織として物事を実行し、結果を出すための総合的な能力を意味しています。
例えば、「商品を受注してから翌日には顧客の元へ届ける物流システム」のように、複数の部署が連携して生み出すプロセス全体がケイパビリティに該当しますね。
コアコンピタンス(Core Competence)のイメージ
一方、コアコンピタンスは「中心・核」を意味する「core」と、「能力・適性」を意味する「competence」を組み合わせた言葉です。
企業の中に複数ある強みの中でも、特に中心となる圧倒的な強みを指します。
「顧客に独自の価値を提供する」「他社には真似できない」「複数の市場に展開できる」という3つの条件を満たすものが、真のコアコンピタンスと呼ばれます。
具体的な例文で使い方をマスターする
ケイパビリティは「組織力やプロセス」について語る場面で、コアコンピタンスは「独自の技術力や競争の核」について語る場面で使用します。
それでは、実際のビジネスシーンでどのように使い分けるのか、具体的な例文を見ていきましょう。
OK例とNG例を比較することで、ニュアンスの違いがハッキリと見えてくるはずです。
ケイパビリティの例文
【OK例】
「我が社の最大の強みは、企画から販売までを高速で回すケイパビリティにある。」
「新しい市場に参入するためには、デジタルマーケティングのケイパビリティを構築する必要がある。」
【NG例】
「この画期的な新素材の特許こそが、我が社のケイパビリティだ。」
※特許や特定の技術そのものを指す場合は、コアコンピタンスの方が適切です。
コアコンピタンスの例文
【OK例】
「光学レンズにおける精密加工技術は、長年培ってきた我が社のコアコンピタンスです。」
「コアコンピタンス経営を実践し、自社の強みを活かせる新規事業にリソースを集中させる。」
【NG例】
「全社員が毎朝元気よく挨拶をすることが、我が社のコアコンピタンスだ。」
※良い習慣ですが、他社が容易に真似できるものはコアコンピタンスとは呼びません。
【応用編】似ている言葉「コンピテンシー」との違いは?
コアコンピタンスやケイパビリティが「企業・組織」の強みを指すのに対し、コンピテンシーは主に「個人」の優れた行動特性を指します。
ビジネス書を読んでいると、「コンピテンシー」という言葉に出会うこともあるでしょう。
実はこの言葉、優秀な成果を上げる「個人」の行動特性を表す人事用語なのです。
「彼は高い営業コンピテンシーを持っている」といった具合に使われます。
組織の強みであるコアコンピタンスと、個人の強みであるコンピテンシー。主語が誰になるのかを意識すると迷いませんね。
「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」の違いを学術的に解説
1990年代前半に提唱された経営戦略論の双璧であり、それぞれ「What(技術)」と「How(プロセス)」という異なるアプローチから企業の競争優位性を説いています。
実は、この二つの概念は経営学の歴史において非常に重要な位置を占めています。
コアコンピタンスは、1990年にゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードが学術誌において提唱し、世界中の経営者に衝撃を与えました。
一方のケイパビリティは、それに対抗するかのように1992年にジョージ・ストークスらが提唱した概念です。
「特定の技術(What)を磨くべきか、事業プロセス(How)を磨くべきか」という議論は、今もなお多くの学術論文で取り上げられています。
経営学やマーケティングの論文を探す際は、国立情報学研究所が提供するサービスなどで検索してみると、より深い知見が得られるはずですよ。
自社の本当の強みに気づいた新規事業会議での体験談
僕が以前、あるメーカーの新規事業立ち上げプロジェクトに参加した時のこと。
会議室では「我が社のコアコンピタンスを活かした新商品を考えよう!」という声が飛び交っていました。
誰もが自社の「独自のコーティング技術」ばかりに目を向け、なかなか斬新なアイデアが出ずに会議は行き詰まってしまったのです。
その時、一人の若手社員がポツリとつぶやきました。
「でも、お客様が一番喜んでくれているのって、要望を聞いてから試作品を作るまでのスピードですよね?」
その一言で、その場にいた全員の目が覚めました。
技術(コアコンピタンス)も大切ですが、部署間の垣根を越えてスピーディーに対応する組織力(ケイパビリティ)こそが、他社には真似できない最大の武器だったのです。
この経験から、企業の強みは「持っている技術」だけでなく、「どう動くかという組織のプロセス」にも潜んでいるのだと深く学びました。
言葉の違いを正しく理解することは、自社の本当の強みを見つめ直すきっかけにもなるのですね。
「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」に関するよくある質問
ここからは、読者の皆さんが抱きやすい疑問について、会話形式でお答えしていきます。
Q.自社の強みを見つけるには、どちらから考えればいいの?
A.まずは「コアコンピタンス(他社に負けない独自の技術や製品)」から探すのがわかりやすいです。その後で、それらを生み出している「ケイパビリティ(組織の仕組みやプロセス)」に目を向けると良いでしょう。
Q.就職活動の面接で「あなたのコアコンピタンスは何ですか?」と聞かれたら?
A.本来は企業に対して使う言葉ですが、個人の圧倒的な強みを聞かれていると解釈しましょう。「他の人には絶対に負けない、自分の核となる専門スキルや経験」をアピールすればOKです。
Q.両方を兼ね備えている企業ってあるの?
A.もちろんあります。例えば、圧倒的な技術力(コアコンピタンス)を持ちながら、それを世界中へ効率的に届ける物流ネットワーク(ケイパビリティ)を構築しているグローバル企業などが該当しますね。
「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」の違いのまとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、経営戦略やマーケティングで頻出する二つの言葉の違いについて解説しました。
最後にもう一度、重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- ケイパビリティ:企業全体に浸透している組織力やプロセスの強み(How)
- コアコンピタンス:他社に絶対に真似できない中核となる技術やノウハウ(What)
- コンピテンシー:(おまけ)高い成果を出す個人の行動特性
これらの言葉を正しく使い分けることで、あなたの企画書やプレゼンはより一層説得力を持つようになるはずです。
言葉の背景にある意味をしっかりと理解して、ぜひ明日のビジネスから活用してみてくださいね。
その他のマーケティング用語の使い分けについては、マーケティング用語のまとめ記事でも詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
スポンサーリンク