「喫驚」と「吃驚」の違い!「びっくり」と読むのはどっち?

「喫驚」と「吃驚」、どちらも普段あまり見かけない難しい漢字ですが、実はとても身近な「驚き」を表す言葉です。

一見すると同じように見えますが、「きっきょう」と読むか、「びっくり」と読むかで使い分けられることが多いのをご存知でしょうか?

この記事を読めば、それぞれの漢字が持つ本来の意味や語源、文学作品や専門分野での使われ方までスッキリと理解でき、自信を持って言葉を選べるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「喫驚」と「吃驚」の最も重要な違い

【要点】

基本的には医学用語や堅い表現なら「喫驚(きっきょう)」、日常的な「びっくり」の当て字なら「吃驚(びっくり)」と覚えるのが簡単です。意味はどちらも「驚くこと」ですが、現代では読み方と使用シーンで使い分けられています。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目喫驚吃驚
主な読み方きっきょうびっくり(※きっきょうとも読む)
中心的な意味驚くこと、驚きを受けること驚くこと(驚いて口ごもる)
使用シーン医学用語、堅い文章小説、歌詞、強調したい日常表現
ニュアンス専門的、客観的感情的、瞬間的

一番大切なポイントは、「びっくり」と読ませたい場合は「吃驚」を使い、「きっきょう」と音読みする場合は「喫驚」を使うのが一般的ということですね。

どちらも「驚く」という意味では同じですが、使われる文脈が大きく異なります。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「喫驚」の「喫」は「(作用を)受ける」という意味で、驚きを被ることを表します。「吃驚」の「吃」は「どもる」という意味があり、驚いて言葉に詰まる様子や、中国語での用法が由来となっています。

なぜこの二つの言葉に使い分けが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「喫驚」の成り立ち:「喫」が表す“受ける”イメージ

「喫」という漢字は、「喫茶(お茶を飲む)」や「喫煙(タバコを吸う)」のように、口から何かを取り入れる意味でよく使われますね。

しかし、ここから転じて「(攻撃や不利益などを)受ける、こうむる」という意味も持っています。

「完敗を喫する」という使い方がその代表例です。

つまり、「喫驚」とは予期せぬ驚きを身に受けるという状態を表している、と考えると分かりやすいですね。

「吃驚」の成り立ち:「吃」が表す“口ごもる”イメージと中国語由来

一方、「吃」という漢字は、「吃音(きつおん)」のように「どもる、言葉につかえる」という意味があります。

そこから、「驚いて口ごもる」「あっけにとられる」といったニュアンスで「吃驚」という言葉が使われるようになりました。

また、中国語では「吃」を「(作用を)受ける」という意味でも使い(「喫」の代用としても使われる)、中国語で「吃驚(チージン)」は「驚く」という意味の一般的な言葉です。

このことから、日本では「びっくり」という和語に対する当て字として「吃驚」が定着したという背景があります。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

医学的な反射反応を指す場合は「喫驚(きっきょう)」、小説などで感情的な驚きを表現する場合は「吃驚(びっくり)」を使います。日常会話ではひらがなの「びっくり」が最も自然ですが、強調したい場合に漢字が使われます。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスや専門分野、そして創作の世界での使い分けを見ていきましょう。

「喫驚(きっきょう)」の例文:堅い文章や医学的表現

主に専門的な文脈や、格式ばった表現で使われます。

【OK例文】

  • 患者に対し、光刺激による喫驚反射(きっきょうはんしゃ)の有無を確認した。
  • その知らせを聞いて、一同は喫驚(きっきょう)した。
  • 予期せぬ事態に喫驚の色を隠せなかった。

「喫驚反射」のように、医学用語としてセットで使われることがほとんどです。

「吃驚(びっくり)」の例文:小説や日常表現

驚きの感情を視覚的に強調したい場合に使われます。

【OK例文】

  • 突然の来客に吃驚(びっくり)して、茶碗を落としてしまった。
  • 吃驚(びっくり)するようなニュースが飛び込んできた。
  • その値段の高さに吃驚(びっくり)仰天した。

明治・大正時代の小説(夏目漱石や太宰治など)では、「吃驚」と書いて「びっくり」と読ませるルビが振られていることがよくあります。

これはNG!間違えやすい使い方

読み方と漢字の組み合わせには注意が必要です。

  • 【NG】友達を驚かそうとして喫驚(びっくり)させた。
  • 【OK】友達を驚かそうとして吃驚(びっくり)させた。

「びっくり」と読ませる場合に「喫驚」の字を当てることは、間違いではありませんが一般的ではありません。「びっくり」という読みに対しては「吃驚」の字を当てるのが慣例です。

【応用編】似ている言葉「仰天」「愕然」との違いは?

【要点】

「仰天」は天を仰ぐほど非常に驚くこと、「愕然」は衝撃を受けて顔色を失ったり立ちすくんだりする様子を表します。「吃驚」は突発的な驚き全般を指すのに対し、これらは驚きの程度や反応の仕方に焦点が当たります。

「喫驚」「吃驚」と似た言葉に「仰天(ぎょうてん)」や「愕然(がくぜん)」があります。

これらも驚きを表しますが、ニュアンスが違います。

「仰天(ぎょうてん)」

「びっくり仰天」とセットで使われることも多いですね。

「天を仰ぐ」と書く通り、あまりの驚きに度肝を抜かれるという、非常に強い驚きを表します。

「愕然(がくぜん)」

「愕」は「おどろく」とも読みますが、特に予期せぬ悪い知らせや衝撃的な事実に触れて、ショックを受ける様子を指します。

「驚いてハッとする」というよりは、「ガーンと衝撃を受けて呆然とする」イメージです。

「喫驚」と「吃驚」の違いを学術的に解説

【要点】

「びっくり」という言葉は、「びく」っとするという擬態語から派生した和語です。これに対し、漢語である「喫驚」や「吃驚」が当て字として用いられました。江戸時代以降の文献では「吃驚」の表記が多く見られ、現代でも文学的な表現として定着しています。

少し専門的な視点から、この二つの言葉の背景について解説します。

もともと日本語の「びっくり」は、「びくり」「びくっ」という、驚いたときの身体的な反応を表す副詞から生まれた言葉です。

江戸時代や明治時代の文学作品を見ると、この「びっくり」という和語に対して、意味の近い漢語を当てて表記する手法が流行しました。

その中で選ばれたのが「吃驚」です。

「吃」には「どもる」という意味があるため、驚いて一瞬言葉が出なくなる、息を飲む、という「びっくり」の瞬発的なニュアンスと非常に相性が良かったと考えられます。

一方、「喫驚」は「驚きを喫する(受ける)」という構造の漢語であり、より客観的で静的な表現として、医学書や公的な記録などで「きっきょう」という読み方と共に残りました。

現代の辞書においても、「びっくり」の漢字表記として「吃驚」が掲載されていますが、「喫驚」は別項目として「きっきょう」と読ませるケースが多いのは、こうした歴史的な使い分けの経緯があるためです。

言葉の歴史を知ると、なぜ小説では「吃驚」が好まれるのか、その理由が腑に落ちますね。

古い小説で「吃驚」に出会って読めずに困った話

僕が学生時代、夏目漱石の『坊っちゃん』を読んでいたときのことです。

物語の中で、主人公が驚くシーンで頻繁に「吃驚」という漢字が出てきました。

当時の僕は、この漢字を「きっきょう」と読むのか、それとも別の読み方があるのか分からず、文脈から「驚いているんだな」と推測して読み進めていました。

ある日、友人とその小説について話しているとき、自信満々に言いました。

「あの、赤シャツにキッキョウさせられるシーンがさ…」

友人はきょとんとして、「え? なにそれ? びっくりしたシーンのこと?」と聞き返してきました。

そこで初めて、「吃驚」と書いて「びっくり」と読む(読ませる)ことが多いのだと知りました。

さらに恥ずかしかったのは、別の本で「しゃっくり」を意味する「吃逆(きつぎゃく)」という言葉を見たときに、「これもびっくりって読むのかな?」と勘違いしてしまったことです。

「吃」という字には「どもる(言葉につまる)」という意味があるため、「吃驚(驚いて言葉につまる)」も「吃逆(しゃっくりで言葉がつまる)」も、同じ漢字が使われているんですね。

それ以来、漢字のイメージと読み方の関係を意識するようになり、読書がより深まった気がします。

漢字一つで、その場の空気感や身体的な反応まで伝えようとする、先人たちの表現力に感服した体験でした。

「喫驚」と「吃驚」に関するよくある質問

「びっくり」を漢字で書く必要はありますか?

基本的にはありません。現代の一般的な文章やビジネスメールでは、ひらがなで「びっくり」と書くのが最も自然で読みやすいです。漢字の「吃驚」を使うと、少し古風で文学的な印象、あるいは強調したいという意図が伝わります。

「喫驚反射」とは何ですか?

医学用語で、予期しない大きな音や光などの刺激を受けたときに、反射的に体がビクッとすくむ反応のことです。「きっきょうはんしゃ」と読みます。この場合は「吃驚」とは書きません。

「吃驚」は「きっきょう」と読んでも間違いではないですか?

間違いではありません。辞書によっては「きっきょう」の項目に「吃驚」も併記されています。ただし、現代では「吃驚」と書いてあれば「びっくり」と読ませる意図であることが圧倒的に多いため、文脈判断が必要です。

「喫驚」と「吃驚」の違いのまとめ

「喫驚」と「吃驚」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は読み方で判断:「きっきょう」なら「喫驚」、「びっくり」なら「吃驚」。
  2. 使用シーンの違い:「喫驚」は医学・専門用語、「吃驚」は小説・日常表現。
  3. 漢字のイメージが鍵:「喫」は“受ける”、「吃」は“口ごもる”。

言葉の背景にある漢字のイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、漢字の使い分けの違いまとめもぜひご覧ください。