「回る」と「廻る」の違い!回転寿司はどっち?正しい漢字の選び方

「回る」と「廻る」、どちらも「まわる」と読みますが、この二つの漢字の違いを正しく理解していますか?

「目がまわる」「時代がまわる」「挨拶まわり」など、日常には「まわる」という言葉があふれていますが、いざ漢字で書こうとすると変換候補に出てきて迷ってしまうことも多いですよね。

実は、日常的な動作や回転には「回る」、遠回りや繰り返し巡るという情緒的な意味には「廻る」を使うのが基本ですが、公的な文書では「回る」に統一するというルールがあります。

この記事を読めば、それぞれの漢字が持つ本来のニュアンスや使い分けの基準がスッキリと理解でき、ビジネスメールや創作活動でも自信を持って最適な言葉を選べるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「回る」と「廻る」の最も重要な違い

【要点】

基本的にはすべて「回る」を使えば間違いありません。「廻る」は常用漢字表にないため、公用文やビジネスでは「回る」を使います。「廻る」は遠回りや循環など、特定のニュアンスを強調したい個人的な文章で使われます。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目回る(まわる)廻る(まわる)
中心的な意味回転する、順に移動する、機能する遠回りする、巡り歩く、還ってくる
対象こま、風車、寿司、挨拶、仕事時代、季節、因果、お遍路
ニュアンス物理的な回転、円運動、一般的な動作仏教的(輪廻)、詩的、遠回し、継続的
漢字の種別常用漢字(基本はこれ)表外漢字(公的な場では使わない)

一番大切なポイントは、迷ったら「回る」を選んでおけば、まず問題ないということです。

「廻る」は常用漢字ではないため、新聞や教科書、公的な書類では基本的に使われません。すべて「回る」か、ひらがなの「まわる」で表記されます。

ただし、お店の屋号や小説のタイトルなど、独自のこだわりや雰囲気を伝えたい場面では「廻る」が意図的に選ばれることがあります。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「回」は水が渦を巻く様子を表し、物理的な回転や繰り返しを意味します。「廻」は「回」に「しんにょう(進む)」を加えた字で、道を進んで遠回りする、あるいは巡り歩いて元の場所に戻るという移動のイメージが含まれています。

なぜこの二つの言葉に使い分けが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「回る」の成り立ち:「回」が表す“渦巻き”のイメージ

「回」という漢字は、外側の枠の中に、内側の枠がある形をしていますよね。

これは、水が渦を巻いて回転している様子を象った象形文字だと言われています。

そこから、「くるくるとまわる」「元の場所に戻る」「繰り返す」という意味が生まれました。

物理的にその場で回転する「こまが回る」や、順序よく巡る「回覧板」などは、このシンプルな回転のイメージから来ています。

「廻る」の成り立ち:「廻」が表す“巡り歩く”のイメージ

一方、「廻」という漢字は、「回」に「廴(いんにょう・えんにょう)」がついています(※現在は「しんにょう」で書かれることも多いですが、本来は延びるという意味の廴です)。

「廴」には「長く道を引いて歩く」「進む」という意味があります。

つまり、「廻」は単にその場で回るのではなく、長い道のりを進んで遠回りしたり、あちこち巡り歩いたりするというニュアンスが加わります。

「迂廻(うかい)」という言葉があるように、まっすぐではなく大きく回って行くイメージや、「輪廻(りんね)」のように長い時間をかけて巡り戻ってくるイメージで使われます。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

日常業務や物理的な動作には「回る」を使います。一方、「時代が廻る」や「因果が廻る」のように、抽象的でスケールの大きな循環や、仏教的な縁を表す場合には「廻る」を使うことで、文章に深みを持たせることができます。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

シーン別に、正しい使い分けと間違いやすいNG例を見ていきましょう。

「回る」の例文:日常・ビジネス

ほとんどの場面で使える万能な表記です。

【OK例文】

  • 扇風機が勢いよく回っている。
  • 取引先への挨拶回りに出かける。
  • お酒が回って、顔が赤くなった。
  • 忙しくて目が回るようだ。
  • 彼のおかげで仕事がうまく回るようになった。(=機能する)
  • ツケが回ってくる。(※請求や報いが来ること)

「廻る」の例文:情緒的・強調

あえてニュアンスを出したい場合に使われる表現です。

【OK例文(こだわりの表現)】

  • 季節は廻り、また春が来た。(※循環の強調)
  • 因果は廻る糸車。(※運命的な巡り)
  • 六道輪廻の思想。(※仏教用語として固定)
  • 家路を遠く廻る。(※遠回りする、迂回する)
  • 廻転寿司。(※屋号などで回転を強調する場合)

これはNG!間違いやすい使い方

変換ミスや思い込みで間違いやすいケースを見てみましょう。

  • 【NG】報告書:工場内の見回りに廻る
  • 【OK】報告書:工場内の見回りに回る

ビジネス文書や報告書では、常用漢字である「回る」を使うのが鉄則です。「廻る」を使うと、変換ミスか、あるいは何か宗教的な儀式でもしているのかと思われかねません。

  • 【NG】領収書を廻してください。
  • 【OK】領収書を回してください。

順送りにするという意味でも「回す」が適切です。「廻す」は常用外なので、事務的な連絡では避けるべきです。

【応用編】似ている言葉「周る」「巡る」との違いは?

【要点】

「周る」は周囲をぐるりと囲むように動くこと、「巡る(めぐる)」はあちこちを移動して渡り歩くことを指します。「回る」は回転そのもの、「廻る」は遠回りや循環のニュアンスが強いため、文脈に合わせて「一周するなら周る」「各地を訪ねるなら巡る」と使い分けるのも有効です。

「まわる」と読む漢字には「周る」もありますし、似た意味の言葉に「巡る(めぐる)」もあります。

これらも合わせて整理しておきましょう。

  • 周る(まわる):何かの周りを一周する、周囲を取り囲むこと。(例:池の周りを周る)※ただし「回る」で代用されることが多いです。
  • 巡る(めぐる):あちこちを順に移動する、季節などが循環すること。(例:観光地を巡る、季節が巡る)

「廻る」は、この「巡る」と非常に近い意味を持っています。

実際、「お遍路で八十八ヶ所をめぐる」という場合、「巡る」とも書きますし、昔ながらの表記で「廻る」と書くこともあります。

現代の一般的な文章では、「まわる」という読みなら「回る」、「めぐる」という読みなら「巡る」と書き分けるのが最も自然で分かりやすいでしょう。

「回る」と「廻る」の違いを学術的に解説

【要点】

1954年の「当用漢字表補正試案」やその後の常用漢字表の制定により、「廻」などの表外漢字は「回」に書き換える指針が示されました。これにより、「回答(←廻答)」「回送(←廻送)」のように多くの熟語が「回」に統一されましたが、「輪廻」のような特定の仏教用語や固有名詞では「廻」が維持されています。

ここでは少し視点を変えて、漢字政策の歴史からこの二つの言葉を深掘りしてみましょう。

かつて日本には、「廻」を含む多くの漢字が日常的に使われていました。

「廻船問屋(かいせんどんや)」や「廻状(かいじょう)」といった言葉を歴史の授業で聞いたことがあるかもしれません。

しかし、戦後の国語改革において、漢字をわかりやすく整理・制限しようという動きの中で、「廻」は当用漢字(後の常用漢字)から外されました。

その際、「廻」が持っていた「まわる」「めぐる」という意味は、形も意味も似ている「回」が引き受けることになったのです(書き換え)。

その結果、現代では「回」が「まわる」全般をカバーする万能な漢字となり、「廻」は歴史的な文脈や、あえて古風・情緒的な表現をしたい場合にのみ残る形となりました。

「身の回りの世話」という表現も、本来は着物の寸法を測る「身の廻り(周囲)」の意味合いがありましたが、現在では「身の回り」と書くのが一般的です。

言葉は時代と共に効率化されていくものですが、「廻」の字に残る「遠くへ巡り行く」という微細なニュアンスは、文学や芸術の中で今も大切にされています。

僕が企画書で「廻る」を使って上司に修正された体験談

僕も新人の頃、この「回る」と「廻る」の使い分けで、ちょっと恥ずかしい思いをしたことがあります。

ある新規プロジェクトの企画書を作成していた時のことです。そのプロジェクトは、地域の特産品を巡りながら紹介するというコンセプトでした。

僕は少しカッコつけて、タイトル案に「全国の美食を廻る旅」と書いたんです。

「巡る」よりも「廻る」の方が、なんとなく旅情があって、深く探求するようなプロっぽい雰囲気が出ると思ったんですよね。

自信満々で上司に提出したところ、返ってきた企画書には赤字で大きくチェックが入っていました。

「これ、漢字間違ってるよ。変換ミス?」

上司は優しく指摘してくれましたが、僕は顔が熱くなるのを感じました。

「いえ、あえて雰囲気を出したくて『廻る』を使ったんですが……」と言い訳じみたことを言いましたが、上司は苦笑い。

「気持ちはわかるけど、社外に出す公式な文書やプレスリリースでは、常用漢字を使うのがマナーだよ。『回る』か、旅のニュアンスなら『巡る』にしなさい。読めない人もいるし、文字化けのリスクもあるからね」

その時、僕はハッとしました。

自分のこだわりや雰囲気作りよりも、相手に正しく、ストレスなく情報を伝えることがビジネスでは最優先なのだと痛感したんです。

それ以来、個人のブログやSNSでは好きな表現を楽しむこともありますが、仕事では迷わず「回る」を選ぶようになりました。

「廻る」という字を見るたびに、あの時の少し背伸びした自分と、上司の的確なアドバイスを思い出します。

「回る」と「廻る」に関するよくある質問

Q. 「挨拶まわり」は「回り」ですか「周り」ですか?

A. 「挨拶回り」と書くのが一般的です。順に場所を移動して訪ねるという意味なので、「回る」の字が適しています。「周り」は「池の周り」のように周辺を指す場合に使うため、挨拶の場合は使いません。

Q. 「首がまわらない(借金などで)」はどの漢字?

A. 「首が回らない」と書きます。身体の一部が回転・可動する意味合いから来ています。物理的に首が動かない場合も、金銭的に行き詰まった比喩の場合も「回」を使います。

Q. お寿司屋さんの「かいてん」はなぜ「廻転」と書く店があるの?

A. 店名や看板などで「廻転寿司」と表記するのは、他店との差別化や、こだわり、高級感、あるいは「ネタが新鮮で次々と巡ってくる」という活気あるイメージを演出するためです。ただし、一般的な名詞としては「回転寿司」と書くのが正解です。

「回る」と「廻る」の違いのまとめ

「回る」と「廻る」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は「回る」一択:日常、ビジネス、公用文では「回る」を使えば間違いなし。
  2. 「廻る」はこだわりの表現:遠回り、循環、輪廻など、特別なニュアンスを出したい時に限定。
  3. 漢字のイメージ:「回」はクルクル回る渦、「廻」は道を巡り歩く旅。
  4. 「巡る」との関係:あちこち移動する場合は「巡る」とも書き換え可能。

漢字一つで、文章の雰囲気はガラリと変わります。

基本の「回る」をしっかりと押さえつつ、ここぞという場面で「廻る」や「巡る」のスパイスを効かせられるようになれば、あなたの表現力はもっと豊かになるはずです。

これからは自信を持って、最適な言葉を選んでみてくださいね。

漢字の使い分けについてさらに詳しく知りたい方は、漢字の使い分けの違いまとめの記事もぜひ参考にしてみてくださいね。

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