「migrate」と「immigrate」の違いとは?永住・一時滞在の使い分け

「migrate」は「(一時的に)移動する・移り住む」という移動そのものや周期的な動きを表すのに対し、「immigrate」は「(外国から)移住してくる・入国する」という永住を前提とした「入ってくる」視点を表すのが決定的な違いです。

なぜなら、「migrate」は場所から場所へ動くプロセス全体に焦点があり、「immigrate」は「in(中へ)」という接頭辞が示す通り、ある国や地域に入って定住することに焦点があるから。

この記事を読めば、渡り鳥の移動から海外移住の手続き、さらにはIT用語としての使い分けまで、迷うことなく正しい英語表現ができるようになります。

それでは、まず二つの違いを整理した一覧表から詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「migrate」と「immigrate」の最も重要な違い

【要点】

「migrate」は動物の渡りや一時的な出稼ぎなど「移動する行為」そのものを指します。「immigrate」は外国から新しい国へ「入ってきて定住する」ことを指します。視点が「移動中」か「入国」かで使い分けます。

まずは、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目migrateimmigrate
中心的な意味移動する、渡る、(一時的に)移り住む(外国から)移住してくる、入植する
視点移動のプロセス・周期的入ってくる(In)
期間・目的季節労働、渡り鳥、データ移行永住、定住、新しい生活
対義語-(stayなど)emigrate((外国へ)移住する・出ていく)

一番大切なポイントは、「immigrate」は「永住するために外国から入ってくる」という強い定住の意志を含むという点ですね。

例えば、季節に合わせて場所を変える渡り鳥は「migrate」を使います。

一方で、アメリカンドリームを夢見てアメリカに永住しに来た人は「immigrate to America」となるわけです。

この「定住か移動か」の感覚を持っておくと、迷うことが激減するでしょう。

なぜ違う?語源と接頭辞から「migrate」と「immigrate」を掴む

【要点】

「migrate」はラテン語の「migrare(場所を変える)」が語源です。「immigrate」はそれに「in(中へ)」を意味する「im-」がついたもので、「中へ移動してくる」という意味になります。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、その語源を紐解くと、理由がよくわかりますよ。

「migrate」のイメージ:場所を変えて動く

「migrate」の語源は、ラテン語の「migrare」で、「場所を変える」「移動する」という意味です。

ここから、「A地点からB地点へ動く」という移動のアクションそのものや、季節ごとに場所を変える「周期的・一時的」な移動のイメージが定着しました。

動物の「渡り」や、コンピューターの「データ移行」に使われるのは、この「移動プロセス」に焦点があるからです。

「immigrate」のイメージ:外から中へ入ってくる

「immigrate」は、「in(中へ)」の変化形である「im-」と「migrate」がくっついた言葉です。

つまり、「(外からこの国・地域へ)移動して入ってくる」という意味になります。

受け入れる側の国や地域から見た視点であり、「入ってきて、そこに住み着く」という完了・定着のニュアンスが強くなります。

空港の入国審査を「Immigration」と呼ぶのは、「国の中に入ってくる人」を管理する場所だからなんですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「migrate」は動物の移動やシステム移行、季節労働などで使います。「immigrate」は人が国境を越えて移り住んでくる場合に使います。「どこへ」を示す「to」と一緒に使われることが多いです。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

「migrate」を使う場面(移動・周遊・移行)

【OK例文】

  • These birds migrate south for the winter.
    (これらの鳥は冬の間、南へ渡る。)
  • We need to migrate data to the new server.
    (新しいサーバーへデータを移行する必要がある。)
  • Farmers migrate to the city for work.
    (農民たちは仕事のために都市へ出稼ぎに行く。)

※「出稼ぎ」のように、また戻る可能性がある場合や、生活拠点を移すプロセス自体を指す場合に適しています。

「immigrate」を使う場面(移住・入植)

【OK例文】

  • My grandparents immigrated to the US in 1950.
    (私の祖父母は1950年にアメリカへ移住してきた。)
  • Many people want to immigrate to Canada.
    (多くの人がカナダへ移住(入国・定住)したがっている。)

※「to」の後ろに来る国や地域に「入っていく」視点です。

これはNG!間違えやすい使い方

視点の向きを間違えると、不自然な英語になります。

  • 【NG】He immigrated from Japan to the US.
    (彼は日本からアメリカへ移住してきた? ※日本から出る視点なら不自然)
  • 【OK】He emigrated from Japan to the US.
    (彼は日本から(出て)アメリカへ移住した。)

「〜から(from)」を使って「出ていく」ことを強調したい場合は、次で説明する「emigrate」を使うのが適切です。

【応用編】「emigrate」との違いとIT用語の「マイグレーション」

【要点】

「emigrate」は「ex(外へ)」+「migrate」で、「(自国から他国へ)移住する・出ていく」という意味です。IT用語の「マイグレーション(migrate)」は、システムやデータを新しい環境へ移行することを指します。

「migrate」と「immigrate」に加えて、もう一つセットで覚えておくべき言葉があります。

それが「emigrate(国外へ移住する)」です。

3つの視点の違い

  • migrate:移動する(動いている状態・プロセスに焦点)
  • immigrate:入ってくる(Inの視点。受け入れ国側から見た言葉)
  • emigrate:出ていく(Ex=Outの視点。母国側から見た言葉)

「日本人が日本を出て(emigrate)、アメリカに入って(immigrate)、新しい生活を始めた」という関係性です。

IT用語としての「マイグレーション」

ビジネス、特にIT業界では「マイグレーション(migration)」という言葉をよく使います。

これは、古いシステムから新しいシステムへ、あるいはオンプレミス(自社運用)からクラウドへ、データや環境を「移行(引っ越し)」させることを指します。

この場合、「immigrate」や「emigrate」は使いません。

あくまで、AからBへの「移動プロセス」なので「migrate」が選ばれているのです。

「migrate」と「immigrate」の違いを文法的に解説

【要点】

文法的にはどちらも自動詞で、後ろに前置詞「to」や「from」を伴って使います。「immigrate」は到達点を示す「to」と相性が良く、「emigrate」は起点を示す「from」と相性が良いです。「migrate」はどちらも使えますが、移動の方向を示す「from A to B」の形が典型的です。

少し専門的な視点から、この違いを深掘りしてみましょう。

これらの動詞は、「視点」と「前置詞」の組み合わせで理解すると整理しやすくなります。

「immigrate」は「in(中へ)」のニュアンスを持つため、到着地を示す「to(〜へ)」と非常に強く結びつきます。

「immigrate to Canada(カナダへ移住してくる)」と言うとき、話者の意識はカナダ(到着地)にあります。

一方、「emigrate」は「ex(外へ)」のニュアンスを持つため、出発地を示す「from(〜から)」と相性が良いです。

「emigrate from Japan(日本から移住して出ていく)」と言うとき、意識は日本(出発地)にあります。

そして「migrate」は、その両方、あるいは移動経路全体を俯瞰する言葉です。

「Birds migrate from north to south.(鳥は北から南へ渡る)」のように、出発点と到着点を含んだ「移動の線」を描写できるのが特徴です。

入国審査で「I want to migrate」と言って怪訝な顔をされた僕の体験談

僕が初めて長期滞在のために海外へ渡航した時のことです。

空港の入国審査(Immigration)で、滞在目的を聞かれました。

緊張していた僕は、「移住(長期滞在)するために来ました」と言いたくて、こう答えました。

「I want to migrate here.」

すると審査官は一瞬眉をひそめ、「Migrate? Like a bird?(渡り鳥のように?)」と冗談めかして聞き返してきました。

僕はキョトンとしてしまいましたが、後で気付きました。

「Migrate」と言うと、「季節ごとに場所を変えてふらふらする」とか「一時的に移動してまたどこかへ行く」というニュアンスに聞こえてしまうことがあるのです。

入国審査官に対しては、「この国に入って(Immigrate)、腰を据えて生活する・勉強する」という意志を伝えるべき場面でした。

まあ、厳密にはビザの種類にもよりますが、単に「住みに来た」と言いたかった僕の英語は、「放浪しに来た」ように響いてしまったのかもしれません。

もちろん、その場では「I mean, I will live here for a year.(つまり、1年住みます)」と言い直して無事に入国できましたが、単語一つの選択で「根無し草」のような印象を与えてしまう怖さを知りました。

「入国する・定住する」なら、迷わず「Immigrate」の親戚(あるいはMove to)を使うべきですね。

皆さんも、入国審査では「渡り鳥」にならないよう気をつけてください。

「migrate」と「immigrate」に関するよくある質問

「I moved to America」とはどう違いますか?

「Move to」は「引っ越す」という意味で、最も一般的でカジュアルな表現です。「Immigrate」は国境を越えて法的な手続きを経て定住するという、より硬く公式なニュアンスがあります。日常会話で「アメリカに引っ越したんだ」と言うなら「I moved to America」で十分です。

「Migrant」と「Immigrant」の違いは?

「Migrant」は「(出稼ぎなどで)移動する人々」を指し、定住しない一時的な滞在者や渡り労働者を指すことが多いです。「Immigrant」は「(永住目的の)移民」を指し、新しい国に定住する人々を指します。ニュースなどではこの使い分けが重要になります。

ITで「イミグレーション」とは言いませんか?

言いません。データの移行やシステムの乗り換えは、AからBへの「移動プロセス」なので、常に「マイグレーション(Migration)」を使います。「データが新システムに永住する」という情緒的なニュアンスは不要だからでしょう。

「migrate」と「immigrate」の違いのまとめ

「migrate」と「immigrate」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. migrate:移動する、渡る。一時的・周期的な移動や、データの移行(プロセス重視)。
  2. immigrate:移住してくる、入国する。外国から入って定住する(Inの視点)。
  3. emigrate:移住する、出国する。自国から出ていく(Outの視点)。
  4. 使い分け:渡り鳥やITは「migrate」、永住や入国管理は「immigrate」。

「動いている」ならMigrate、「入って落ち着く」ならImmigrate。

このイメージを持っていれば、ニュース英語も入国審査も怖くありません。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。

言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、英語由来語の違いをまとめたページや、法的な手続きに関連する言葉を知りたい方は出入国在留管理庁のサイトなども参考にしてみてください。

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