「今度、彼女と食事に行くんだ」
こう聞いたとき、あなたは相手に「恋人」がいると思いますか? それとも単に「女性の友人」や「知人女性」の話をしていると思いますか?
日本語の「彼女」は、文脈によって「恋人」を指すこともあれば、単に「三人称(あの女性)」を指すこともあるため、非常に誤解を生みやすい言葉です。
一方、「女友達」には恋愛関係のニュアンスは含まれません。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ範囲や、誤解を招かないためのスマートな使い分けがスッキリと理解でき、もう会話で冷や汗をかくことはありません。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「女友達」と「彼女」の最も重要な違い
「女友達」は恋愛関係のない女性の友人を指します。「彼女」は文脈により「恋人」を指す場合と、単に「あの女性(三人称)」を指す場合があります。最も誤解されやすいのは、「彼女」という言葉一つで両方の意味を持ってしまう点です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これさえ頭に入れておけば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 女友達(おんなともだち) | 彼女(かのじょ) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 女性の友人 | ①恋人(女性) ②あの女性(三人称) |
| 恋愛関係 | なし | あり(①の場合) なし(②の場合) |
| 対象 | 親しい女性、友人関係 | 付き合っている女性、または話題に出ている特定の女性 |
| 誤解リスク | 低い(友達であることが明確) | 高い(恋人か他人か文脈依存) |
| 英語 | female friend | girlfriend / she |
一番大切なポイントは、「彼女」という言葉を使うときは、相手が「恋人」と受け取る可能性を常に考慮するということです。
特に男性が「彼女がさ〜」と話し始めると、十中八九「恋人の話」として聞かれます。
なぜ違う?「彼女」という言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「女友達」は文字通り「女性の友達」ですが、「彼女」は明治時代に英語の「she」を翻訳するために作られた新しい日本語です。当初は単に女性を指す代名詞でしたが、昭和に入ってから「恋人」を指す意味が定着しました。
なぜ「彼女」という言葉には二つの意味があるのか、その歴史を紐解くと理由がよくわかりますよ。
「彼女」の誕生:明治時代の翻訳語として
実は、江戸時代以前の日本には「彼女」という言葉は存在しませんでした。
明治時代に入り、西洋の小説などを翻訳する際、英語の「she(三人称単数女性代名詞)」に対応する日本語が必要になり、「彼(かれ)」に「女(おんな)」をつけて「彼女」という言葉が作られました。
当初は、「あの方」「あの女性」という意味で使われていたのです。
「恋人」という意味の付加
その後、昭和の初め頃から、特定の女性を指す「彼女」という言葉に、親密さや特別な感情が込められるようになり、次第に「愛する女性」「恋人」という意味でも使われるようになりました。
英語の「girlfriend」のニュアンスが輸入された影響もあると言われています。
この歴史的経緯により、現代の日本語では「彼女=she(あの女性)」と「彼女=girlfriend(恋人)」という二重の意味が混在することになったのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
誤解を避けるため、単なる友人の場合は「女友達」や「友達の〇〇さん」と明言するのが無難です。「彼女」を三人称(あの人)として使う場合は、文脈で恋人ではないことが分かるようにするか、「彼女さん」と敬称をつけるなどの工夫が必要です。
言葉の違いは、具体的なシチュエーションで確認するのが一番ですよね。
誤解を招かないためのOK例と、冷や汗をかくかもしれないNG例を見ていきましょう。
日常会話での使い分け
ここでは関係性を明確にすることが重要です。
【OK例文:女友達】
- 週末は大学時代の女友達と飲みに行く予定です。
- 彼女は恋人じゃなくて、ただの女友達だよ。
- 異性の意見が聞きたくて、女友達に相談してみた。
【OK例文:彼女(恋人)】
- 来月、彼女の誕生日だからプレゼントを探しているんだ。
- ついに彼女ができました!
- 俺の彼女、料理がすごく上手なんだ。
【OK例文:彼女(三人称)】
- (プレゼンをしている女性を指して)彼女の提案は非常に論理的ですね。
- 田中さんは欠席です。彼女は今日、体調不良だそうです。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じても、相手をドキッとさせてしまう使い方があります。
- 【NG】(ただの同僚の女性を指して)昨日、彼女と二人で残業してさ…。
- 【OK】(ただの同僚の女性を指して)昨日、同僚の〇〇さんと二人で残業してさ…。
特定の名前を出さずに「彼女」と言うと、聞き手は「えっ、付き合ってるの?」と勘違いする可能性が高いです。
- 【NG】(妻のことを)うちの女友達がね…。
- 【OK】(妻のことを)うちの妻(または奥さん、嫁さん)がね…。
配偶者を「女友達」と呼ぶと、家庭内別居や他人行儀な関係を疑われてしまうかもしれません。
【応用編】似ている言葉「ガールフレンド」との違いは?
「ガールフレンド」は英語圏では主に「恋人」を指しますが、カタカナ語としての日本では「親しい女友達」を指す場合と「恋人」を指す場合の両方があり、世代や文脈によって受け取り方が異なります。「女友達」と言う方が誤解は少ないでしょう。
「女友達」「彼女」と似た言葉に「ガールフレンド」があります。
英語の「Girlfriend」は、基本的に「恋人(女性)」を意味します。単なる女友達の場合は「female friend」などと言うのが一般的です。
しかし、日本で「ガールフレンド」と言うと、「デートするような親しい女友達(恋人未満)」というニュアンスで使われることもあれば、ストレートに「恋人」を指すこともあります。
昭和の歌謡曲などでは「ただの女友達」をガールフレンドと呼ぶケースも多かったですが、現代では「彼女(恋人)」と同義で使われることが増えていますね。
はっきりさせたい時は、「ただの友達」と言うのが一番確実です。
「女友達」と「彼女」の違いを学術的に解説
「彼女」は明治期の言文一致運動の中で、西欧語の三人称代名詞(she)の翻訳語として定着しました。国立国語研究所の資料などによると、当初は馴染みの薄い言葉でしたが、文学作品などを通じて普及し、戦後には「恋人」を指す専用の用法が確立されました。
少し専門的な視点から、この言葉の変遷を深掘りしてみましょう。
明治時代、坪内逍遥や二葉亭四迷といった作家たちは、英語の「he/she」にあたる言葉が日本語にないことに苦労しました。
そこで、「彼(かれ)」に対して「彼女(かのじょ)」という造語を当てたり、「彼(か)の女(おんな)」という表現を用いたりして定着を図りました。
『日本国語大辞典』などを参照すると、「彼女」が三人称として一般化するのは大正から昭和にかけてです。
そして興味深いことに、特定の女性を指す指示代名詞から、話者にとって特別な対象(恋人)を指す名詞へと意味が拡張されました。
これは「彼氏(かれし)」という言葉が「彼(三人称)」から派生して「恋人(男性)」を指すようになったのと対をなす現象です(実は「彼氏」の方が新しい言葉で、昭和初期の流行語から定着しました)。
現代日本語において、代名詞がそのまま「恋人」という意味を持つのは、世界的に見てもユニークな特徴の一つと言えるでしょう。
詳しくは国立国語研究所の日本語コーパスなどを調べると、時代ごとの用例の変化が見えてきますよ。
同僚を「彼女」と呼んで社内がざわついた体験談
僕が新卒で入社したばかりの頃、ちょっと背伸びをして大人びた言葉遣いをしようとしていた時期がありました。
ある日のランチタイム、先輩社員たちと雑談をしている時に、同期の女性社員(Aさん)の話題になりました。
僕はAさんとは研修で一緒だっただけの、ごく普通の同僚関係です。
しかし、小説の言い回しに影響されていた僕は、Aさんのことを指してこう言いました。
「ああ、Aさんですね。彼女は昨日、遅くまで資料を作っていましたよ」
その瞬間、先輩たちの箸が止まりました。
「えっ? お前、Aさんと付き合ってるの!?」
「え? いえ、違いますけど…?」
「だって今、『彼女』って言ったじゃん!」
先輩たちは完全に色めき立ってしまい、僕は必死に「あの方(三人称)」という意味で使っただけだと弁解する羽目になりました。
顔が真っ赤になったのを覚えています。
日常会話で、特定の女性を指して「彼女」と言うと、文脈によっては「僕の彼女(恋人)」という所有のニュアンスが含まれて聞こえてしまうことがあるんですね。
この経験から、誤解を避けるためには「〇〇さん」「彼女さん(敬称つき)」「あの方」と言い換えるか、名前で呼ぶのが一番安全だと学びました。
言葉は、辞書的な意味だけでなく、受け取る側の感覚やシチュエーションで意味が大きく変わるものだと痛感した出来事でした。
「女友達」と「彼女」に関するよくある質問
「彼女」と呼ぶのは失礼になりますか?
目上の女性や、そこまで親しくない相手を「彼女」と呼ぶのは、馴れ馴れしい、あるいは上から目線だと感じられることがあるため避けたほうが無難です。ビジネスシーンでは名前で呼ぶか、「〇〇さん」と呼ぶのが基本です。
「女友達」と「女友だち」、表記に違いはありますか?
意味に違いはありません。「友達」の「達」という漢字は「達成」などの熟語に使われるため、平仮名の「友だち」の方が柔らかい印象を与えると好む人もいますが、どちらも一般的に使われます。
「彼女」を「恋人」の意味で使わない方法はありますか?
「彼女」の前に指示語をつけて「あの彼女」「その彼女」としたり、文脈で明らかに第三者であることを示す必要があります。しかし、会話では誤解されやすいため、恋人でないなら「彼女」という言葉自体を使わないのが最も確実な回避策です。
「女友達」と「彼女」の違いのまとめ
「女友達」と「彼女」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 関係性の違い:「女友達」は友人、「彼女」は恋人(または三人称)。
- 誤解の種:「彼女」は文脈次第で「恋人」と受け取られやすい。
- 使い分けのコツ:誤解されたくないなら、友人や知人は名前や「女友達」と呼ぶ。
言葉の背景にある歴史やニュアンスを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、その場にふさわしい的確な言葉を選んでいきましょう。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、社会・関係の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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