「parent」と「parents」、たった一文字「s」があるかないかの違いですが、その意味するところは大きく異なります。
この2つの言葉は、「片方の親」を指すのか、「両親(二人)」を指すのかという点で決定的に使い分けられます。
この記事を読めば、学校への提出書類や自己紹介の場面で、「s」をつけるべきか迷うことはもうなくなります。
それでは、まず最も重要な結論から見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「parent」と「parents」の最も重要な違い
基本的には父か母の「どちらか一人」なら「parent」、「両親二人とも」なら「parents」と覚えるのが鉄則です。「s」は「複数」の印であり、親が二人いることを示します。
まずは、この2つの言葉の決定的な違いを以下の表で確認しましょう。
| 項目 | parent | parents |
|---|---|---|
| 人数 | 1人 | 2人(以上) |
| 意味 | 親(父または母) | 両親(父と母) |
| 動詞の形 | is / has / does (単数扱い) | are / have / do (複数扱い) |
| イメージ | どちらか一方の親 | ペアとしての親 |
このように、「parent」は「個」としての親を指し、「parents」は「カップル(ペア)」としての親を指します。
「私は親と同居しています」と言う時、片方の親だけなら “I live with my parent.”、両親となら “I live with my parents.” となり、状況が全く変わって伝わります。
なぜ違う?単数形と複数形のイメージから掴む
英語は「数」に厳密な言語です。「s」がつかない単数形は「たった一人」を強調し、「s」がつく複数形は「二人揃っている」状態を強調します。
なぜ「s」だけでこれほど意味が変わるのでしょうか。
それは、英語という言語が「1つ(1人)」なのか「2つ(2人)以上」なのかを、常に明確に区別する性質を持っているからです。
- parent(単数):
「父」か「母」のどちらか一人にスポットライトが当たっている状態です。性別を特定せずに「一人の保護者」と言いたい時にも使われます。
イメージ:参観日に一人で来ているお母さん(またはお父さん)。 - parents(複数):
「父と母」の二人が並んでいる状態です。一般的に「私の両親」と言いたい時は、二人がセットになっているこちらを使います。
イメージ:二人並んで座っているお父さんとお母さん。
日本語の「親」という言葉は単数・複数を区別しませんが、英語では明確に分ける必要があるのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
「My parents」は両親の話題で最も一般的です。「A parent」は学校の連絡網や、片親であることを伝える特定の文脈で使われます。
ここでは、シーン別に自然な使い分けを見ていきましょう。
日常会話での使い分け
家族について話す場面です。
- My parents live in Tokyo.
(私の両親は東京に住んでいます。)
※父と母の二人が住んでいるので「parents」です。 - I am a single parent.
(私はひとり親(シングルマザー/ファザー)です。)
※自分一人で子育てをしているので「parent」です。
学校や公的な場での使い分け
保護者全体への呼びかけや、特定の条件を示す場面です。
- Each student must bring a letter to their parents.
(生徒は両親への手紙を持ち帰らなければならない。)
※一般的に家庭には両親がいると想定した表現です(現代では配慮が必要な場合もあります)。 - A parent must sign this form.
(保護者の方(一人)がこの用紙に署名してください。)
※署名するのは父か母の「どちらか一人」でいいので「parent」を使います。
避けるべきNG例
両親が健在なのに「My parent」と言うと、相手に誤解を与える可能性があります。
- × I went to travel with my parent.
(親と旅行に行きました。)
※こう言うと、「もう一人の親はどうしたの?(離婚?死別?不仲?)」と相手に深読みさせてしまう可能性があります。両親と行ったなら必ず「parents」と言いましょう。
【応用編】似ている言葉「single parent」「grandparents」との違いは?
「single parent」は一人で子育てをする親、「grandparents」は祖父母を指します。ここでも「s」の有無が人数を表すルールは同じです。
関連語もセットで覚えると、家族関係の表現が豊かになります。
- single parent:
「ひとり親」。母子家庭や父子家庭の親を指します。「single parents」と複数形にすると「世の中のひとり親たち」という総称になります。 - grandparents:
「祖父母」。おじいちゃんとおばあちゃんの二人セットです。「My grandparent」と言うと、祖父か祖母のどちらか一人を指します。 - parenting:
「子育て」。動詞のparent(親として振る舞う)から来ており、「親業」という意味です。
「parent」と「parents」の違いを学術的に解説
語源的にはラテン語の「parere(生む)」に由来します。言語学的には、英語は「数的概念(Number)」を文法的に強制する言語であり、名詞を使う際には必ず単数か複数かを決定しなければならないという特徴が、この使い分けの根底にあります。
専門的な視点から見ると、この語は単なる「血縁関係」以上の意味を持つことがあります。
生物学や遺伝学の分野では、「Parent organism(親生物)」のように単数形で使われ、無性生殖などで分裂する前の個体を指すことがあります。ここでは「parents」ではなく「parent」が使われるのが一般的です。
また、社会学や教育学の文脈では、「Parenting style(親の養育スタイル)」のように、個々の親の行動に焦点を当てる場合もあれば、「Parents’ association(保護者会)」のように集団としての親を指す場合もあります。文脈に応じて「個」を見るか「集団」を見るかが変化するのです。
ビジネスシーンでは「Parent company(親会社)」という表現が使われますが、これは「子会社を生んだ(所有する)一つの法人」として扱われるため、通常は単数形の「parent」が使われます。
「parent」と「parents」に関する失敗体験談
僕がオーストラリアでホームステイをしていた頃の失敗談をお話しします。
ホストファミリーとの夕食時、自分の家族について聞かれました。僕は父と母、両方とも元気で仲良く暮らしていることを伝えたくて、こう言いました。
“My parent is very kind to me.”
すると、ホストマザーが少し神妙な顔をして、「Oh, I see. Is it your mom or dad?(ああ、そうなの。それはお母さん?それともお父さん?)」と聞いてきました。
僕は「え?どっちもだけど…」と答えに窮しました。
「parent」と単数形で言ったせいで、「片親に育てられた」あるいは「片方の親としか仲良くない」というニュアンスで伝わってしまっていたのです。
慌てて「No, no! Both! My parents are kind!」と言い直すと、ホストマザーは「Ah, parents! That’s lovely.」と笑顔に戻りました。
「たった一文字の『s』が、家庭の事情まで変えて伝えてしまうのか」と冷や汗をかいた瞬間でした。
それ以来、家族の話をする時は、意識して「s」を強調するようにしています。
「parent」と「parents」に関するよくある質問
ここでは、疑問に思いやすいポイントをQ&A形式でまとめました。
Q. 「Parent-Teacher Association」はなぜ単数形なんですか?
A. いわゆるPTAのことですね。これは「親(という立場の人)と教師の会」という意味合いで、個々の親よりも「親という役割」に焦点を当てた集合的な意味合いが強いため、形容詞的に単数形の「Parent」が使われています。ただし、「Parents’ Association」とする組織もあります。
Q. 義理の両親はどう言えばいいですか?
A. 「Parents-in-law」と言います。「parent-in-law」なら義理の父か母のどちらか一人、「parents-in-law」なら義理の両親二人を指します。ここでも「s」のルールは同じです。
Q. ステップファミリー(再婚家庭)の親は?
A. 「Stepparent(継親)」を使います。「Stepparents」なら継父と継母の二人を指します。
「parent」と「parents」の違いのまとめ
いかがでしたでしょうか。
「parent」と「parents」は、単なる単数と複数の違い以上に、家族の構成や状況を伝える重要な役割を持っています。
- parent:親一人(父または母)。署名欄や片親の話で使う。
- parents:両親二人(父と母)。一般的な「私の親」の話で使う。
迷ったときは、「お父さんとお母さん、二人の顔が浮かぶならparents」と覚えておけば間違いありません。
この違いを理解して使い分けることで、あなたの家族の話がより正確に、誤解なく相手に伝わるようになります。
英語由来の言葉や、似ている英単語の使い分けについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
また、より専門的な英語の用法については、文化庁の日本語教育に関する資料や、信頼できる英語学習サイトでも知識を深めてみることをおすすめします。
スポンサーリンク