「明日の会議の準備はできた?」と英語で聞きたいとき、「prepare」と「ready」のどちらを使えばいいのか迷ったことはありませんか?
実はこの2つの言葉、日本語では同じ「準備」と訳されますが、「準備するプロセス(過程)」を指すのか、「準備が完了した状態」を指すのかで使い分けるのが基本です。
この記事を読めば、ネイティブが持つ言葉のコア(核心)となるイメージを理解でき、ビジネスや日常会話で自信を持って「準備」を使い分けられるようになります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「prepare」と「ready」の最も重要な違い
「prepare」は準備するための「行為・プロセス」に焦点を当てた動詞で、「ready」は準備が整った「状態・完了」を表す形容詞です。「これから準備する」ならprepare、「もう準備OK」ならreadyと覚えましょう。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | prepare(プリペア) | ready(レディ) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 準備・用意をする(行為) | 準備ができている(状態) |
| 品詞 | 動詞 | 形容詞(主に) |
| 時間の焦点 | プロセス(過程・時間経過) | 完了(今、この瞬間) |
| ニュアンス | 計画的、段階的、少し硬い | 即時的、完了形、身軽 |
| 使い方の例 | I prepare dinner. (夕食を作る工程を行う) | Dinner is ready. (夕食ができあがっている) |
表を見ると一目瞭然ですね。「prepare」は準備という「作業」そのものを指し、「ready」は作業が終わって「いつでもどうぞ」という状態を指します。
「prepare」は積み上げるイメージ、「ready」はスタンバイOKのランプが点灯しているイメージを持つと分かりやすいでしょう。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「prepare」はラテン語の「前もって(pre)整える(pare)」に由来し、計画的な手順を意味します。一方、「ready」は古英語の「乗馬の用意ができた」等に由来し、すぐに行動できる機敏な状態を表します。
言葉のルーツを知ると、そのニュアンスがより深く理解できます。
prepare:前もって整える計画性
「prepare」は、ラテン語の「praeparare」が語源です。
- pre-(前に)
- parare(整える・準備する)
この二つが組み合わさって、「事前の段階からしっかりと整えていく」という意味になりました。ここから、時間や手間をかけて計画的に行う準備、例えば資料作成や心の準備といった「プロセス」を強調するニュアンスが生まれています。
ready:すぐに行動できる即応性
一方、「ready」は古英語の「ræde」などに由来し、「整った」「乗馬の用意ができた」といった意味を持っていました。
ここから、長いプロセスよりも「今、すぐに行動に移せる状態にある」という「結果・状態」を重視する意味になりました。まさに、スタートラインに立ってピストルの音を待っている状態ですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスでは「資料作成」などの作業には「prepare」、「会議開始OK」の状態には「ready」を使います。日常会話でも「食事を作る(prepare)」と「食事ができた(ready)」のように、時間軸の違いで使い分けます。
ここでは、ビジネスシーンと日常会話、それぞれの具体的なシチュエーションで使い分けを見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
ビジネスの現場では、この二つの使い分けが「作業中」か「完了」かを伝える重要なサインになります。
【prepareを使う場面:作業・工程】
- I need to prepare the presentation slides for tomorrow.
(明日のためにプレゼン資料を準備する必要があります。)
※資料を作るという「作業」に焦点があります。 - We are preparing for the new project launch.
(新プロジェクトの立ち上げに向けて準備を進めています。)
※長期的な計画やプロセスを含みます。
【readyを使う場面:状態・完了】
- The meeting room is ready.
(会議室の準備ができました。)
※いつでも会議を始められる「状態」です。 - Are you ready to sign the contract?
(契約書にサインする準備はできていますか?)
※今すぐサインできるかを確認しています。
日常会話での使い分け
日常の何気ないシーンでも、この違いは明確です。
【prepareを使う場面】
- My mother is preparing dinner in the kitchen.
(母はキッチンで夕食を作っています。)
※切ったり煮たりする「調理の過程」を表します。
【readyを使う場面】
- Dinner is ready! Come and eat.
(夕食ができたよ!来て食べて。)
※調理が完了し、食べるだけの「状態」を表します。
【注意】NGな使い方の例
× I am preparing to go out.(今すぐ出かける文脈で)
「もう出かける準備はいい?」と聞かれて「I am preparing.」と答えると、「今から身支度を(時間をかけて)始める」あるいは「まだ準備の最中(プロセス)」というニュアンスになり、「すぐに動けない」と伝わってしまいます。
「もうすぐ出られるよ」と言いたい場合は、「I’m getting ready.(身支度を整えているところ)」や「I’m almost ready.(ほぼ準備完了)」と言うのが自然です。
【応用編】似ている言葉「arrange」との違いは?
「arrange」は「手配する」「配置する」という意味で、日時や場所の調整など「段取り」に焦点があります。「prepare」が中身を作るのに対し、「arrange」は外枠を整えるイメージです。
似たような場面で使われる言葉に「arrange(アレンジ)」があります。
- Prepare:中身を作る、準備作業をする(例:会議資料を作る)
- Ready:準備完了の状態(例:いつでも発表できる)
- Arrange:段取りをつける、手配する(例:会議室を予約する、日程を決める)
「I arranged the meeting.」と言えば、会議の日時や場所を取り決めたことを意味し、会議の内容(資料など)を作成したことにはなりません。ビジネスではこの「中身(prepare)」と「段取り(arrange)」の違いも重要ですね。
「prepare」と「ready」の違いを学術的に解説
言語学的な観点(Aspect: アスペクト)から見ると、「prepare」は目標に向かう持続的な活動(Activity)を含意し、「ready」はその活動が終結した到達点(State)を表します。品詞的にも動詞と形容詞という決定的な機能差があります。
ここまではイメージで捉えてきましたが、少し専門的な視点から言語学的な構造(品詞とアスペクト)の違いを解説します。
1. 品詞による機能の決定的な違い
最大の違いは文法機能にあります。
- prepare(動詞):主語が目的語に対して何らかの力を及ぼす「動作」を表します。他動詞として使われることが多く、「何を」準備するのかという対象(目的語)を強く意識します。
- ready(形容詞):主語の性質や「状態」を叙述します。動作主の意志よりも、その結果として「どういう状態にあるか」を客観的に描写する機能が強いです。
2. アスペクト(相)の違い:プロセス vs 到達点
言語学には「アスペクト(相)」という、時間の流れの中での動作の局面を捉える概念があります。
- prepareは「Durative(継続的)」な性質を持ちます。準備には開始点と終了点があり、その間の時間的広がり(プロセス)を含意しています。
- readyは「Stative(状態的)」かつ、準備完了という「Resultative(結果的)」な局面を切り取っています。プロセスが終わり、次のアクションへの待機状態にある静的な時間を表します。
つまり、「prepare」と言った瞬間、聞き手は脳内で「作業時間が必要だな」と予測し、「ready」と言えば「待ち時間なし」と判断する。この認知的な処理の違いが、コミュニケーションの円滑さを左右しているのです。
僕が「prepare」ばかりに気を取られて「ready」をおろそかにしたプレゼンの失敗談
これは僕が外資系企業で働き始めたばかりの頃、ある重要なプロジェクトのプレゼンでやらかしてしまった、苦い体験談です。
当時、僕は英語でのプレゼンに自信がなく、「とにかく完璧な資料を作らなければ!」と必死でした。一週間前からデータを集め、スライドを何度も修正し、原稿を暗記するまで練習しました。まさに、徹底的に「prepare(準備するプロセス)」に没頭していたのです。
プレゼン当日。僕は自信満々で会議室に入りました。資料は完璧。練習も完璧。「I prepared perfectly!(準備は完璧にやった!)」と心の中で叫んでいました。
しかし、いざプロジェクターにPCを繋ごうとした瞬間、顔面蒼白になりました。
変換アダプターが合わないのです。
「えっ、嘘だろ…?」
さらに悪いことに、配布資料の印刷部数が、急遽参加することになった役員の分だけ足りません。慌ててPCを操作しようとしますが、焦りでパスワードを打ち間違える始末。
その時、上司がため息交じりに言いました。
「Your slides are well prepared, but you are not ready.(スライドはよく準備されているが、君自身が整っていないね)」
その言葉で、僕はハッとしました。
僕は「資料を作る(prepare)」ことだけに全力を注ぎ、機材チェックや予期せぬ事態への対応、そして何より「いつでも始められる心の余裕(ready)」を完全に無視していたのです。
「Prepare(作業)」はあくまで手段であり、「Ready(状態)」に持っていくことが目的である。
この失敗を通じて、僕は「準備」の本当の意味を痛感しました。それ以来、資料作成は早めに切り上げ、当日のシミュレーションや機材確認を行い、「I am ready.」と胸を張れる状態を作ることに時間を割くようになりました。
皆さんも、作業としての準備に追われて、肝心の「整った状態」を見失わないように気をつけてくださいね。
「prepare」と「ready」に関するよくある質問
ここでは、「prepare」と「ready」について、よく検索される疑問にQ&A形式で答えていきます。
Q. 「get ready」と「prepare」はどう違うのですか?
A. どちらも「準備する」という動作を表しますが、「get ready」の方が日常的でカジュアルです。例えば、朝の着替えや出かける支度には「get ready」がよく使われます。「prepare」はもう少し堅く、ビジネスの資料作成や心の準備など、計画的なニュアンスが強くなります。
Q. 「ready」を動詞として使うことはできますか?
A. はい、可能です。「ready oneself(身構える)」や「ready the gun(銃を構える)」のように使われますが、日常会話ではあまり一般的ではありません。基本的には形容詞(I am ready)や、「get ready」というフレーズとして使うのが自然です。
Q. 「Be prepared」と「Be ready」の違いは?
A. 「Be prepared」は「(困難や不測の事態に対して)覚悟ができている、備えがある」というニュアンスが強くなります(例:災害への備え)。一方、「Be ready」は単に「次の行動に移れる状態」という、即時的な準備完了を指します。
「prepare」と「ready」の違いのまとめ
「prepare」は準備の「プロセス(過程)」、「ready」は準備完了の「状態」です。ビジネスでは資料作りは「prepare」、会議開始OKなら「ready」と使い分けましょう。
最後にもう一度、重要なポイントを整理しておきましょう。
- Prepare(動詞):準備の「プロセス」に焦点。計画的に作ったり整えたりする行為。
(例:夕食を作る、資料を作成する、試験勉強をする) - Ready(形容詞):準備完了の「状態」に焦点。すぐに行動できること。
(例:夕食ができている、会議室が整っている、心の準備OK)
「Prepare」という階段を登った先に、「Ready」というゴールがあるイメージを持てば、もう迷うことはないでしょう。
英語には、このように似た意味を持つ言葉がたくさんあります。他の英語由来語の使い分けについても、ぜひ以下の記事をチェックして、語彙力を磨いてみてくださいね。
言葉の解像度が上がれば、ビジネスでも日常でも、あなたの意図がより正確に伝わるようになりますよ。
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