「連係」と「連携」、どちらも「れんけい」と読みますが、ビジネスシーンでよく使われるのは「連携」の方です。
なぜなら、「連携」には「協力して物事を行う」という意味があり、他部署や他社と手を組む場面に適しているからです。一方、「連係」は「密接なつながり」や「連動」を指し、スポーツのプレーや機械の動作などで使われます。
この記事を読めば、二つの言葉の決定的な違いと、場面に応じた正しい使い分けがスッキリと分かります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「連係」と「連携」の最も重要な違い
「連携」は「目的のために協力すること」を指し、ビジネスや組織間の協力関係で使われます。「連係」は「互いにつながり合うこと」を指し、スポーツのプレーや機械の連動など、物理的・動作的なつながりに使われます。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
ポイントは、「協力する(手を携える)」のか、「つながる(関係する)」のかです。
| 項目 | 連携(れんけい) | 連係(れんけい) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 連絡をとり合い、協力して物事を行うこと。 | 互いに密接に関連・連絡し合っていること。 |
| 漢字のイメージ | 手を携(たずさ)える=協力・提携 | 係(かか)わる=関係・つながり |
| 主な対象 | 組織、企業、人、システム(協力動作) | 動作、プレー、機械、システム(連動) |
| よくある表現 | 産学連携、他部署と連携する | 連係プレー、連係動作 |
| 英語 | cooperation, partnership | connection, linkage |
一番大切なポイントは、「協力体制」を作るなら「連携」、「一連の動きやつながり」を指すなら「連係」と覚えておくことです。
ビジネスで「A社とれんけいする」という場合は、共に協力して事業を行うので「連携」が正解ですね。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「携」は「手を携える(つなぐ)」という意味で、人と人が協力する様子を表します。「係」は「人と糸」から成り、「つなぐ」「関係する」という意味を持ちます。ここから、協力の「連携」と、つながりの「連係」という違いが生まれます。
なぜ同じ読み方で意味が異なるのか、漢字の成り立ちを知るとイメージが定着しますよ。
「連携」の成り立ち:「携」が表す“手をつなぐ”イメージ
「連携」の「携」という漢字は、手偏(てへん)ですよね。
これは「携帯」や「提携」という言葉にも使われるように、「手を携(たずさ)える」「手をつなぐ」「持ち運ぶ」という意味を持っています。
つまり、「連携」とは「手を取り合って協力する」という人間的なアクションや意志が含まれている言葉なのです。
「共に事にあたる」というニュアンスが強いため、ビジネスやプロジェクトなど、目的を共有して動く場面で使われます。
「連係」の成り立ち:「係」が表す“つながり”のイメージ
一方、「連係」の「係」という漢字は、人偏(にんべん)に「系(糸のつながり)」と書きます。
これは「関係」や「係留」という熟語があるように、「かかわり合う」「つなぎ止める」という意味を持っています。
ここから、「連係」は「個々のものが切れ目なくつながって動く」という意味になります。
協力という意思よりも、仕組みや動作としての「つながり」に焦点が当たっている言葉なんですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスや医療、教育などの分野で「協力体制」を築く場合は「連携」を使います。スポーツのパス回しや、機械・システムの連動した動きなど、スムーズな「つながり」を表現する場合は「連係」を使います。
言葉の違いを肌感覚で理解するために、具体的な例文を見ていきましょう。
ビジネスシーンと、スポーツや日常の場面で使い分けるのがコツです。
ビジネス・組織での使い分け(主に「連携」)
組織同士が協力する場合は、ほぼ「連携」が使われます。
【OK例文:連携】
- 産学官が連携して、新技術の開発に取り組む。(=協力)
- 営業部と開発部が連携をとってプロジェクトを進める。(=協力体制)
- 医療機関と介護施設との連携(病診連携)を強化する。(=提携・協力)
スポーツ・動作での使い分け(主に「連係」)
動きのつながりやコンビネーションを指す場合は「連係」です。
【OK例文:連係】
- ショートとセカンドの見事な連係プレーでダブルプレーをとった。(=動きのつながり)
- 前線の選手同士の連係がうまくいかず、得点につながらない。(=コンビネーション)
- 信号機が連係して作動し、交通渋滞を緩和する。(=連動)
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じるかもしれませんが、漢字の使い分けとして不適切なパターンです。
- 【NG】他社と連係して新商品を開発する。
- 【OK】他社と連携して新商品を開発する。
他社と行うのは「協力(提携)」ですので、手をつなぐ「連携」が適切です。
- 【NG】内野手の連携プレー。
- 【OK】内野手の連係プレー。
スポーツのプレーは、お互いの動きが密接に関連し合う「つながり」を指すため、「連係」と書くのが一般的です。
ただし、チームとして精神的に協力し合うという意味を強調したい文脈では「連携」が使われることもゼロではありませんが、プレーそのものを指すなら「連係」が正解です。
「連係」と「連携」の違いを学術的に解説
辞書的な定義では、「連携」は「連絡して協力して物事を行うこと」、「連係」は「つながりを持つこと」と区別されます。「携(たずさえる)」と「係(かかわる)」という漢字の本義に基づき、人的・組織的な協力関係には「連携」、物理的・機能的なつながりには「連係」が適用されます。
ここでは、少し専門的な視点から、言葉の定義を深掘りしてみましょう。
国語辞典などの定義を見ると、以下のように記されています。
- 連携:同じ目的を持つ人や組織などが、互いに連絡を取り合って協力し、物事を行うこと。提携。(例:経済連携協定、医科歯科連携)
- 連係:互いに関係し合うこと。切れ目なく続くこと。つながり。(例:連係動作、連係プレー)
学術的あるいは公用文的な観点からも、この使い分けは明確です。
「連携」は英語でいう「Cooperation(協力)」や「Collaboration(協同)」に近く、主語となる人や組織の「意志」や「目的」が背景にあります。
一方、「連係」は「Linkage(結合)」や「Connection(接続)」に近く、システムや動作がスムーズにつながっている「状態」を表します。
IT分野においては、「システム連携(異なるシステム同士が協力してデータをやり取りする)」と「システム連係(システム同士が接続されている状態)」の両方が使われることがありますが、近年は「データ連携」のように「連携」が優勢です。
これは、システムを擬人化して「協力して動く」と捉える傾向があるためでしょう。
しかし、厳密な動作の連なりを指す場合は「連係」という言葉が持つ「係わり合い」のニュアンスが正確です。
僕が「連携プレー」と書いて先輩に直されたスポーツ記事の失敗談
僕も新人ライターの頃、この二つの違いを曖昧にしていて、恥ずかしい思いをしたことがあります。
ある地域の少年野球チームの取材記事を書いていたときのことです。試合の様子を熱く伝えようと、僕はこんな文章を書きました。
「最終回、ショートとセカンドの絶妙な連携プレーがチームを救った!」
自分では「チームワーク(協力)」の素晴らしさを表現したつもりで、「連携」という字を選んでいました。PCの変換でも最初に出てきましたし、疑いもしませんでした。
しかし、原稿チェックをしてくれた先輩ライターから、赤ペンで修正が入りました。
「ここ、スポーツのプレーのつながりは『連係』だよ。『連携』だと、まるで企業同士の業務提携みたいに見えるぞ」
言われてみて、ハッとしました。
確かに、選手たちがその瞬間に「協力契約」を結んでいるわけではありません。
日頃の練習で培った、あうんの呼吸による「動きのつながり(連なり)」だったのです。
「係(かかり)」という字には「つながる」という意味がある。
そう教わって以来、僕は「チームの協力体制」について書くときは「連携」、「グラウンドでの動き」について書くときは「連係」と、明確に意識して使い分けるようになりました。
言葉一つで、プレーのスピード感やニュアンスが変わって伝わるんですよね。
この失敗のおかげで、今では自信を持って使い分けられるようになりました。
「連係」と「連携」に関するよくある質問
「システムれんけい」はどっちを使えばいいですか?
一般的には「システム連携」が多く使われます。異なるシステム同士がデータをやり取りし、協力して機能するというニュアンスが強いためです。ただし、機械的な動作の連なりを指す場合は「連係」が使われることもあります。
「連係プレー」を「連携プレー」と書くのは間違いですか?
厳密には、スポーツのプレーのつながりは「連係プレー」が正しいとされています。新聞や放送の用語基準でも「連係」が採用されています。しかし、チームの協力という意味を込めて「連携」と書くケースも一般には見られますが、正しい表記を目指すなら「連係」が無難です。
「連絡」とどう違いますか?
「連絡」は単に情報を伝え合うことや、物理的につながることを指します。「連携」は連絡を取り合った上で協力して行動すること、「連係」は密接に関わり合って連動することを指します。「連絡」よりも、さらに深い関わり合いを示す言葉です。
「連係」と「連携」の違いのまとめ
「連係」と「連携」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 「連携」は協力:手を携えて、共通の目的のために行動すること。(ビジネス、組織)
- 「連係」はつながり:互いに関係し合い、切れ目なく続くこと。(スポーツ、動作)
- 漢字で見分ける:「携」は手をつなぐ(提携)、「係」はつながる(関係)。
- 迷ったら:協力体制なら「連携」、動きの連動なら「連係」を選ぶ。
「手を取り合う(連携)」のか、「係わり合う(連係)」のか。
このイメージを持っておけば、もう変換候補の前で迷うことはありません。
これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。
さらに言葉の使い分けについて知りたい方は、漢字の使い分けの違いまとめのページもぜひご覧ください。
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