「彼はレスペクタブルな人だ」と言いたいとき、英語で respectable と respectful のどちらを使えばいいのか、迷ったことはありませんか?
どちらも「respect(尊敬)」から派生した言葉ですが、意味の方向性は「尊敬される側(客観的評価)」か「敬意を払う側(主観的態度)」かで真逆になります。
この記事を読めば、人物評価やビジネスメールでの敬語表現、さらには紛らわしい「respective」との区別までスッキリ理解でき、誤解のない的確な英語表現が身につきます。
それでは、まず最も重要な違いの結論から詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「respectable」と「respectful」の最も重要な違い
「respectable」は「尊敬に値する(立派な)」という意味で、評価される対象(人や物)に使います。一方、「respectful」は「敬意を表する(礼儀正しい)」という意味で、敬意を払っている人の態度や行動に使います。「尊敬される側」か「する側」かの違いです。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | respectable(リスペクタブル) | respectful(リスペクトフル) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 尊敬に値する、立派な (ちゃんとしている) | 敬意を表する、礼儀正しい (丁寧な) |
| 視点の向き | ← 受ける側 (他者から尊敬される) | → 向ける側 (他者に敬意を払う) |
| 対象 | 人、職業、家柄、成果、服装 | 人の態度、言葉遣い、振る舞い |
| その他の意味 | かなりの、相当な(分量・大きさ) | (特になし) |
ざっくり言うと、「立派だね」と褒めるなら respectable、「礼儀正しいね」と褒めるなら respectful を使うのが基本ルールです。
「respectable」は、社会的に認められるステータスや品行方正さを指します。
一方、「respectful」は、相手に対して頭を下げたり、丁寧な言葉を使ったりする「態度」を指します。
僕も昔、目上の人に「You are respectful(あなたは礼儀正しいですね)」と言ってしまい、「いや、そこは respectable(立派な方ですね)だろ…」と心の中でツッコミを入れられた経験があります。
なぜ違う?接尾辞(-able / -ful)からイメージを掴む
「respectable」の接尾辞「-able」は「〜できる(可能)」を意味し、「尊敬できる=立派な」という受動的な価値を表します。「respectful」の接尾辞「-ful」は「〜に満ちた(性質)」を意味し、「敬意に満ちた=礼儀正しい」という能動的な態度を表します。
単語のお尻(接尾辞)に注目すると、意味の違いが明確に見えてきます。
「respectable」= respect + able(できる)
「-able」は「〜できる」「〜される価値がある」という意味を作ります。
- respect(尊敬)+ able(できる)= 尊敬できる、尊敬に値する
つまり、その人や物が「立派である」「ちゃんとしている」からこそ、周りが尊敬「できる」状態にあることを示します。
「respectful」= respect + ful(満ちた)
「-ful」は「〜に満ちた」「〜の性質を持つ」という意味を作ります。
- respect(敬意)+ ful(満ちている)= 敬意に満ちている、敬う気持ちがある
心の中に敬意が満ちているから、態度が「礼儀正しい」「丁寧」になるわけです。
「-able」は客観的な価値、「-ful」は主観的な態度と覚えると間違えません。
具体的な例文で使い方をマスターする
「彼は立派な人だ」と褒めるなら「He is a respectable man.」、「彼は(誰かに対して)礼儀正しい」と言うなら「He is respectful.」です。また、「respectable」は「かなりの(量・質)」という意味でも使われます。
言葉の違いは、具体的なシチュエーションで覚えるのが一番です。
それぞれのシーン別の使い分けを見ていきましょう。
1. 人を評価する場合
- He is a respectable teacher.
(彼は立派な(尊敬すべき)先生だ。)
※彼の実績や人格が素晴らしい。 - The student is respectful to his teacher.
(その生徒は先生に対して礼儀正しい。)
※生徒の態度が敬意に満ちている。
2. 物や服装について
- Please wear respectable clothes.
(きちんとした(恥ずかしくない)服装をしてください。)
※社会的に見て「ちゃんとしている」という意味。 - a respectful silence
(敬意を表した沈黙、黙祷)
※故人や厳粛な場に対する態度。
3. 「かなりの」という意味の respectable
「respectable」には、「馬鹿にできない=かなりの、相当な」という意味もあります。
- a respectable income(かなりの収入、まずまずの収入)
- a respectable distance(相当な距離)
「立派な数字」というニュアンスから派生した使い方です。
【応用編】似ている言葉「respective」との違いは?
「respective」は「それぞれの、めいめいの」という意味で、尊敬とは全く関係ない文脈で使われます。「respect」の原義「振り返る(顧みる)」から、「個々を振り返る=それぞれ」という意味に派生しました。TOEICなどで頻出のひっかけ単語です。
「respect」から派生したもう一つの重要な形容詞に、respective(リスペクティブ)があります。
これは「尊敬」という意味は全くなく、「それぞれの」「各自の」という意味で使われます。
- Please go to your respective seats.
(各自、自分の席に着いてください。) - They went to their respective homes.
(彼らはそれぞれの家に帰った。)
語源である「re(再び)+spect(見る)」が、「個々を振り返って見る」→「それぞれの点に注目する」と変化したためです。
「respectable(立派な)」「respectful(礼儀正しい)」「respective(それぞれの)」の3兄弟は、セットで覚えておきましょう。
「respectable」と「respectful」の違いを学術的に解説
言語学的には、形容詞の派生における「対象指向(Object-oriented)」と「主体指向(Subject-oriented)」の違いです。「respectable」は評価の対象となる客体に焦点があり、「respectful」は感情や態度を持つ主体に焦点があります。
少し専門的な視点から、この違いを整理します。
形容詞の意味論において、「-able」形容詞は通常、被修飾語(名詞)が動作の「受け手(Patient)」となる関係性を持ちます。
例えば、「a respectable person」は、「(人々によって)尊敬されるべき人」という受動的な関係です。
一方、「-ful」形容詞は、被修飾語が動作や感情の「主体(Agent/Experiencer)」となる関係性を持ちます。
「a respectful person」は、「(その人が)敬意を持っている人」という能動的な関係です。
このように、同じ動詞から派生しても、形容詞が修飾する名詞が「動作主」なのか「対象」なのかによって、意味のベクトルが反転するのが英語の面白い特徴です。
「Respectful salary」と言ってキョトンとされた、僕の失敗談
僕が海外への転職活動をしていた頃の話です。
面接で希望年収を聞かれ、「まあ、恥ずかしくない程度の、ちゃんとした額が欲しいです」と伝えたくて、こう言いました。
「I would like a respectful salary.」
面接官は一瞬動きを止め、不思議そうな顔で聞き返しました。
「A respectful salary? Does the money bow to you?(礼儀正しい給料? お金が君にお辞儀でもするのかい?)」
僕は顔から火が出るほど恥ずかしかったです。
「respectful」は「(人が)敬意を払う」という意味なので、「給料が礼儀正しい」というのは擬人化としても変な表現だったのです。
「ちゃんとした」「かなりの」と言いたければ、「respectable salary」と言うべきでした。
「ableかfulかで、給料の額の話なのか、お札の態度の話なのかが変わってしまう」。
たった数文字の違いが大きな意味のズレを生むことを痛感した、苦い思い出です。
「respectable」と「respectful」に関するよくある質問
Q1. 「respectable」は上から目線の言葉ですか?
いいえ、基本的には褒め言葉ですが、文脈によっては「まあまあ」「悪くない(飛び抜けてすごくはない)」という、「中の上」くらいのニュアンスで使われることもあります(例:a respectable result=まずまずの結果)。しかし、人物に対して使う場合は「立派な」「ちゃんとした」という肯定的な意味です。
Q2. 「respective」の副詞「respectively」の使い方は?
A. 「それぞれ(順に)」という意味で、文末によく置かれます。
例:Tom and Jerry are 10 and 12 years old, respectively.
(トムとジェリーは、それぞれ10歳と12歳です。=トムが10歳、ジェリーが12歳)
前の名詞の順番通りに対応させる時に使います。
Q3. 「respected」という言葉もありますが、違いは?
A. 「respected」は「(実際に)尊敬されている」という事実を表します。
「respectable」は「尊敬に値する(品行方正な)」という性質を表すのに対し、「respected」は実際に世間から評価を受けている状態を指します。
例:He is a highly respected doctor.(彼は非常に尊敬されている医者だ。)
「respectable」と「respectful」の違いのまとめ
いかがでしたか?「respectable」と「respectful」の違いについて解説しました。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- respectable:尊敬に値する、立派な。「される側」。
- respectful:敬意を表する、礼儀正しい。「する側」。
- respective:それぞれの。尊敬とは無関係。
- 覚え方:ableは「できる(評価)」、fulは「満ちた(態度)」。
「彼は立派だ(respectable)」と言いたいのか、「彼は礼儀正しい(respectful)」と言いたいのか。
矢印の向きを意識するだけで、もう迷うことはありません。
これからは自信を持って、相手の素晴らしさや態度を正確に表現してくださいね。
もっと英語の微妙なニュアンスや、カタカナ語の使い分けについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
スポンサーリンク