「ROI」と「費用対効果」の違い!マーケティングで迷わない使い分け

「ROI」と「費用対効果」、企画書や会議でどちらの言葉を使えばいいか迷った経験はありませんか?

実はこの2つの言葉、利益をパーセンテージで数値化した厳密な指標なら「ROI」、定性的なメリットも含めた広い意味での成果なら「費用対効果」と使い分けるのが基本です。

ただし、ビジネスシーンでは両者が混同されやすく、上司とのコミュニケーションですれ違いが起きやすい点には注意が必要。

この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的な意味から具体的な使い分け、さらにはマーケティングの現場でのルールまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「ROI」と「費用対効果」の最も重要な違い

【要点】

基本的には利益に基づく明確な数値指標なら「ROI」、数値化しにくいメリットも含めるなら「費用対効果」と覚えるのが簡単です。視点の厳密さが異なるため、目的によって適切に使い分ける必要があります。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けのイメージがパッと掴めるはずです。

項目ROI(投資利益率)費用対効果
中心的な意味投資したコストに対する「利益」の割合かけた費用に対する「効果全般」の度合い
対象とする効果売上から算出される直接的な利益(定量)利益のほか、時間短縮や認知度向上など(定量・定性)
表し方パーセンテージ(%)高い・低い、見合う・見合わない
よく使う場面経営会議での投資判断、広告予算の決定日常的な業務改善、新しい施策の検討

表を見ると、評価する「効果の範囲」が全く違うことがわかりますよね。

ROIは「ごまかしのきかないシビアな数字」、費用対効果は「数字以外の価値も含めた総合的な判断」と言えます。

なぜ違う?言葉の定義からイメージを掴む

【要点】

ROIは「Return On Investment」の略で、投資額に対してどれだけの利益を生み出したかを示す指標です。一方の費用対効果は、かけたコストに対して得られるすべてのメリットを指す広義の言葉です。

言葉の違いをより深く理解するために、それぞれの言葉の背景を見てみましょう。

定義を知ることで、なぜこのような使い分けがされるのかがスッと腹に落ちるはずです。

ROIの定義とイメージ

ROIは「Return On Investment(リターン・オン・インベストメント)」の頭文字をとった言葉で、日本語では「投資利益率」または「投資対効果」と訳されます。

その名の通り、投資した金額に対して「どれだけの利益(Return)が返ってきたか」を測る指標です。計算式としては「(売上-売上原価-投資額)÷ 投資額 × 100」となり、必ず「%」で表されます。たとえば、100万円の広告費を使って150万円の利益が出た場合、ROIは50%となります。

経営者や投資家が「この事業にお金をつぎ込む価値があるか?」を判断するための、極めてシビアで冷徹な指標ですね。

費用対効果の定義とイメージ

費用対効果(Cost Effectiveness)は、かけた費用(コスト)に対して、どれだけの効果(メリット)が得られたかを示す言葉です。

ここでの「効果」には、売上や利益といったお金に関することだけでなく、「作業時間が半分になった」「社員のストレスが減った」「ブランドの認知度が上がった」といった、すぐには金額に換算しにくい定性的なメリットも含まれます。そのため、「費用対効果が高い」「費用対効果に見合わない」といった、感覚的な表現と一緒に使われることが多いのです。

日常のビジネスシーンで、より柔軟に幅広く使える便利な言葉と言えるでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ROIは具体的な数値や目標を語るシーンで使われ、費用対効果は施策全体の価値や定性的なメリットを評価するシーンで使われます。文脈に応じた適切な使い分けを意識しましょう。

では、実際のビジネスシーンでどのように使われるのか、具体的な例文を見ていきましょう。

OK例とNG例を比較することで、より適切な使い方が身につきます。

ROIの例文

【OK例】
・今期のWeb広告施策は、ROIが200%を超えており大成功だと言える。
・新しいマーケティングオートメーションツールの導入にあたり、事前にROIをシミュレーションしてほしい。
・このキャンペーンは売上こそ大きいが、利益率が低いためROIの観点では落第点だ。

【NG例】
・✕:リモートワークの導入によって通勤の疲労が減り、ROIが向上した。
(※「通勤の疲労が減る」といった定性的な効果は、金額に換算しない限りROIとしては表現できません。この場合は「費用対効果が高い」とするのが自然です)

費用対効果の例文

【OK例】
・このデザインツールは月額5,000円かかるが、作業時間が大幅に短縮されるため費用対効果は非常に高い。
・イベントへの協賛は、短期的な売上には繋がらないかもしれないが、中長期的なブランディングの観点から見て費用対効果が見合うと判断した。
・費用対効果を最大化するために、まずは無料のSNS発信から始めましょう。

【NG例】
・✕:来月のプロモーションの費用対効果は、150%を目標に設定します。
(※「150%」という具体的な数値目標を設定する場合は、費用対効果ではなく「ROI(またはROAS)」を使うのが正確です)

【応用編】似ている言葉「ROAS」との違いは?

【要点】

ROAS(ロアス)は広告費に対してどれだけ「売上」が発生したかを見る指標です。「利益」を見るROIとは明確に区別して使われます。

ここで一つ、マーケティングの現場で「ROI」とセットでよく登場する「ROAS(ロアス)」という言葉にも触れておきましょう。

ROASは「Return On Advertising Spend」の略で、投資した広告費に対して得られた「売上」の割合を示します。

最大の違いは、ベースにする数字が「売上」なのか「利益」なのか、という点です。例えば、100万円の広告費を使って300万円の「売上」が上がった場合、ROASは300%です。一見すると大成功に見えますよね。

しかし、もしその商品の原価や人件費が250万円かかっていたとしたらどうでしょう?トータルのコストは350万円になり、売上の300万円を上回って赤字になってしまいます。この場合、ROASは300%でも、ROI(利益)はマイナスになってしまうのです。

「ROASが良くても、ROIが赤字なら事業は継続できない」。多くのマーケターが見逃しがちな、非常に重要なポイントです。

「ROI」と「費用対効果」の違いを専門的に解説

【要点】

ROIは短期的な直接効果を測るのに適していますが、中長期的なブランド価値の向上などを測るには不十分です。マーケティング戦略では、定量的なROIと定性的な費用対効果の両輪で評価することが求められます。

少し視点を変えて、マーケティング戦略の全体像から二つの違いを深掘りしてみましょう。

昨今のデジタルマーケティングでは、あらゆる施策のデータが可視化されるため、どうしても「ROI」ばかりを追いかけてしまう傾向があります。確かに、数字で明確に結果が出るROIは、経営陣への報告には最適です。

しかし、ROI至上主義に陥ると、企業の首を絞めることになりかねません。

なぜなら、ブランドの認知度向上や、顧客のロイヤリティ育成といった施策は、すぐには「利益」という数字に表れないからです。ROIが低いからといってこれらの施策を切り捨ててしまうと、長期的にはファンが離れ、最終的に売上が細っていくという悪循環に陥ります。

専門的な観点から言えば、目先の刈り取り施策は「ROI」で厳密に管理し、中長期的な種まき施策は「費用対効果(ブランドリフト効果など)」として広い視野で評価する。このデュアルトラック(二軸)の評価体制を築くことが、強いブランドを作るための絶対条件となります。

新しいツールの提案で「ROI」と「費用対効果」を混同した失敗談

僕も以前、事業会社のマーケティング担当だった頃、この二つの言葉の使い分けで手痛い失敗をした経験があります。

当時、チームの業務効率化のために、ある高額な分析ツールの導入を検討していました。僕は意気揚々と、「このツールを導入すれば、データ集計の手間が減り、レポート作成のミスもなくなります!非常に費用対効果が高いです!」と、定性的なメリットを熱弁する企画書を作成し、経営会議に臨みました。

しかし、僕の熱いプレゼンを聞き終えた役員は、冷ややかな視線でこう言ったのです。

「君の言う『費用対効果』はよくわかった。で、結局のところ、そのツールに年間100万円を投資して、我々の利益はいくら増えるんだ?ROIは何%を想定している?」

僕は絶句しました。頭が真っ白になり、言葉に詰まってしまったのです。「作業が楽になる」という自分の都合ばかりを考え、それが会社にどれだけの「利益」をもたらすのかというシビアな計算から逃げていたことに、その瞬間、気付かされました。

この苦い経験から、決裁権者に対して提案を行うときは、定性的な「費用対効果」だけでなく、必ず数字に基づいた「ROI」をセットで提示しなければならないと痛感しました。それ以来、どんなに素晴らしいアイデアでも、「それは最終的にいくらの利益を生むのか?」を自問自答するクセがついたように思います。

「ROI」と「費用対効果」に関するよくある質問

この二つの言葉について、よくある疑問をまとめました。

ROIがマイナスになることはありますか?

はい、投資した金額に対して、得られた利益が下回った場合(つまり赤字の場合)、ROIの数値はマイナスになります。ビジネスにおいては早急な改善が求められる状態ですね。

日常会話でよく使う「コスパ」と「費用対効果」は同じ意味ですか?

日常会話の「コストパフォーマンス(コスパ)」とビジネスにおける「費用対効果」は、ほぼ同じ意味で使われます。ただ、フォーマルなビジネスシーンでは「費用対効果」を使うのが一般的です。

ROIを改善するには、具体的にどうすればいいですか?

基本的には「利益を増やす」か「投資コストを下げる」の二択です。客単価を上げて売上を伸ばすか、不要な広告費やツールの利用料を削減することで、ROIは向上します。

「ROI」と「費用対効果」の違いのまとめ

最後に、もう一度重要なポイントをおさらいしておきましょう。

利益に基づく明確な数値指標なら「ROI」、数値化しにくい定性的なメリットも含めるなら「費用対効果」を使うのが正しい使い分けです。

厳密な数字で語るべき場面と、総合的な価値を語るべき場面。この二つを正しく見極めることが、説得力のあるコミュニケーションの第一歩となります。

マーケティングや経済に関する公的な統計データを確認したい場合は、政府統計ポータル e-Statなどのサイトも非常に参考になりますので活用してみてください。

さらに様々なビジネス用語の使い分けを知りたい方は、マーケティング用語の違いまとめもあわせてチェックしてみてくださいね。

スポンサーリンク