「先入れ先出し」と「後入れ先出し」、どちらの手法を選ぶべきか実務で迷った経験はありませんか?
実はこの2つの言葉、「古いものから順に出す」か「新しいものから順に出す」かという非常にシンプルな違いで使い分けられています。
この記事を読めば、在庫管理や会計処理においてどちらを採用すべきか、メリットとデメリットがはっきりと理解でき、もう二度と迷うことはありません。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「先入れ先出し」と「後入れ先出し」の最も重要な違い
基本的には、賞味期限があるものや劣化しやすいものは古い順に出す「先入れ先出し」を使い、かさばる資材など奥から取り出しにくいものは新しい順に出す「後入れ先出し」を使います。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 先入れ先出し | 後入れ先出し |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 先に仕入れた(古い)ものから順番に払い出すこと | 後に仕入れた(新しい)ものから順番に払い出すこと |
| 英語の略称 | FIFO(First In, First Out) | LIFO(Last In, First Out) |
| 対象となる主な物 | 食品、医薬品、流行り廃りのある商品 | 砂利や石炭などの資材、釘などの細かな部品 |
| 最大のメリット | 品質の劣化や期限切れ(廃棄ロス)を防げる | 実際の物の動き(積み上げた上から取る等)に合致し、作業効率が良い |
| 最大のデメリット | 奥にある古いものを手前に出すため、陳列の手間がかかる | 古いものが底に残り続け、品質劣化のリスクがある |
表を見るとわかるように、品質管理を優先するか、作業効率を優先するかで使い分けが分かれています。
特に食品業界などでは、安全性を担保するために「先入れ先出し」が絶対のルールとなっていますね。
なぜ違う?言葉の意味と仕組みからイメージを掴む
「先入れ先出し」はところてん式に古いものを押し出すイメージ、「後入れ先出し」は上に積み上げた本を上から取っていくイメージを持つと理解しやすくなります。
ビジネスの現場で飛び交うこれらの用語ですが、そもそもなぜこのような違いが生まれたのでしょうか。
それぞれの言葉の成り立ちや、現場での物理的な動きからイメージを掴んでいきましょう。
「先入れ先出し(FIFO)」の仕組みとイメージ
先入れ先出しは、英語で「First In, First Out」と呼ばれ、頭文字をとって「FIFO(ファイフォ)」とも言われます。
言葉の通り、「先に入庫したものを、先に出庫する」という原則です。
スーパーマーケットの牛乳コーナーを思い浮かべてみてください。
店員さんは新しい牛乳を補充するとき、必ず棚の奥に新しいものを入れ、賞味期限の近い古い牛乳を手前に押し出しますよね。
もしこれを怠ると、奥に古い牛乳が残り続け、賞味期限切れになって廃棄せざるを得なくなってしまいます。
常に新鮮な状態を保つための「ところてん」のような仕組みだと覚えておきましょう。
「後入れ先出し(LIFO)」の仕組みとイメージ
一方、後入れ先出しは英語で「Last In, First Out」と呼ばれ、「LIFO(ライフォ)」と略されます。
こちらは「最後(後)に入庫したものを、先に出庫する」というルールです。
「古いものを残して新しいものから使うなんて不合理では?」と思うかもしれません。
しかし、例えば建築現場でトラックから砂利を山積みに下ろしたとします。
その砂利を使うとき、わざわざ山の底(一番古い砂利)から掘り起こして使う人はいないでしょう。
自然と、山の一番上(一番新しい砂利)からすくって使っていくはずです。
このように、物理的に「上から順番に取るしかない」ものや、古くなっても品質が変わらないものにおいては、後入れ先出しのほうが圧倒的に合理的になるのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
「先入れ先出し」は品質管理や期限管理の文脈で、「後入れ先出し」は作業効率や特定の保管状態を表す文脈で使われます。対象物の特性に合わせて言葉を選びましょう。
意味と仕組みがわかったところで、実際のビジネスシーンや日常でどのように使われるのかを見ていきましょう。
具体的な例文を通して、言葉のニュアンスを感じ取ってくださいね。
「先入れ先出し」の正しい使い方と例文
品質の維持や、ロスの削減を徹底したい場面でよく使われます。
- ビジネスでのOK例:
「食品の廃棄ロスを減らすために、倉庫内の在庫は徹底して先入れ先出しで管理してください」 - 日常でのOK例:
「冷蔵庫の野菜室は、傷みやすいものから消費できるように先入れ先出しを心がけている」 - NGな使い方(不自然な例):
「この砂山は、先入れ先出しで底から順番にスコップで崩して使おう」
(※砂山の下から取るのは物理的に困難で危険なため、不適切な使い方です)
「後入れ先出し」の正しい使い方と例文
作業の手間を省きたい場面や、物理的に下から取り出せない状況で使われます。
- ビジネスでのOK例:
「この鉄くずの山は、保管スペースの都合上、どうしても後入れ先出しにならざるを得ない」 - 日常でのOK例:
「クローゼットに段ボールを積み上げているから、服を探すときは後入れ先出しになってしまう」 - NGな使い方(不自然な例):
「お弁当の陳列は作業効率を優先して、後入れ先出しで手前に新しいものを置いてください」
(※食品でこれを行うと古いものが腐敗してしまうため、実務として完全にNGです)
「先入れ先出し」と「後入れ先出し」の違いを専門的に解説
会計分野では利益操作を防ぐために「後入れ先出し法」が廃止され、IT分野ではデータ構造として両方の概念が明確に使い分けられています。
ここからは応用編として、少し専門的な視点から二つの違いを掘り下げてみましょう。
実はこの概念、単なる倉庫作業の話に留まらず、会計やIT、社会問題の解決にも深く関わっているのです。
会計基準における大きな違い(後入れ先出し法の廃止)
会計の世界では、棚卸資産(在庫)の評価方法として「先入先出法」と「後入先出法」が存在していました。
しかし現在、日本の会計基準や国際財務報告基準(IFRS)において、後入れ先出し法は原則として廃止・禁止されています。
なぜでしょうか。
物価が上昇している局面で後入れ先出し法を採用すると、高い値段で仕入れた「新しい在庫」の原価から先に費用として計上されます。
すると、利益が意図的に少なく計算され、税金を安く抑えるといった利益操作に利用されやすかったからです。
現在では、より実際の物の流れに近い「先入れ先出し法」や「平均原価法」などが主流となっています。
食品ロス削減と「先入れ先出し」の密接な関係
現代の大きな社会問題である「食品ロス」を減らすためにも、先入れ先出しの徹底は欠かせません。
たとえば農林水産省では、食品ロスの削減に向けて様々な情報発信を行っていますが、その中でも流通段階での適切な在庫管理は重要視されています。
農林水産省トップページ等でも関連施策が確認できますが、消費者に対しても「棚の手前にある商品から取る」という購買行動を推奨していますよね。
私たち消費者も、すぐに食べるのであれば「先入れ先出し」に協力することが求められているのです。
IT業界におけるデータ構造の違い(キューとスタック)
ITやプログラミングの世界でも、この概念は頻繁に登場します。
データを保存し、取り出す際のルールとして使われるのです。
先入れ先出し(FIFO)のデータ構造は「キュー(Queue)」と呼ばれます。
プリンターの印刷待ちデータや、遊園地の順番待ちの列のように、最初に来たデータから順番に処理される仕組みです。
一方で、後入れ先出し(LIFO)のデータ構造は「スタック(Stack)」と呼ばれます。
こちらは、ブラウザの「戻る」ボタンのように、最後に開いたページ(一番新しいデータ)から順番に戻っていく仕組みです。
このように、ITの分野では目的に応じて両者が美しく使い分けられています。
僕が「先入れ先出し」を甘く見て大失敗した新人時代の体験談
ここで、僕がまだ学生の頃、スーパーマーケットでアルバイトをしていた時の苦い経験をお話しさせてください。
品出し担当になった初日、僕はバックヤードから大量のヨーグルトを台車に積んで売り場に向かいました。
棚にはまだ古いヨーグルトがいくつか残っていましたが、僕は「早く終わらせたい」という一心で、手前の空いているスペースに新しいヨーグルトをガンガン詰め込んでしまったのです。
そうです、完全に「後入れ先出し」の状態を作ってしまったんですね。
数日後、店長からバックヤードに呼び出されました。
そこには、棚の奥から発掘された、完全に賞味期限の切れたヨーグルトがいくつも置かれていました。
「神宮寺くん、手前に新しいのを置いたら、お客さんは奥の古い商品を取ってくれないよね。これ全部、お店の損失になるんだよ」
静かに、しかし厳しく叱られ、僕は自分の作業効率だけを優先したことを猛烈に反省しました。
それ以来、品出しをする時は必ず「棚に残っている商品をすべて一旦外に出し、奥をアルコールで拭いてから、新しい商品を奥に詰め、古い商品を手前に戻す」という手順を徹底しました。
言葉で知っているだけの「先入れ先出し」と、現場で実践する「先入れ先出し」の大変さの違いを身をもって学んだ出来事です。
面倒な作業には、それだけの価値と理由があるのですね。
「先入れ先出し」と「後入れ先出し」に関するよくある質問
最後に、これら二つの言葉について、よく寄せられる疑問にお答えします。
Q. 家庭の冷蔵庫でも「先入れ先出し」は有効ですか?
はい、非常に有効です。買ってきた食材を奥にしまい、賞味期限の近いものを手前に配置する習慣をつけるだけで、食品ロスを劇的に減らし、食費の節約にも繋がります。
Q. なぜ今でも「後入れ先出し」が使われる現場があるのですか?
釘やネジ、木材など、時間が経っても品質が劣化しないものであれば、奥から取り出す手間をかけるよりも、手前にある新しいものから使ったほうが作業効率が圧倒的に良いからです。
Q. 会計で「後入れ先出し」が禁止されたのはなぜですか?
物価上昇時に、新しく高く仕入れた原価を先に費用として計上することで、意図的に企業の利益を小さく見せ、税金を減らすような利益操作に悪用される懸念があったためです。
「先入れ先出し」と「後入れ先出し」の違いのまとめ
ここまで「先入れ先出し」と「後入れ先出し」の違いについて詳しく解説してきました。
最後に、記事の重要ポイントを振り返っておきましょう。
- 先入れ先出し(FIFO)は、古いものから順に出す方法で、品質管理や廃棄ロス削減に優れている。
- 後入れ先出し(LIFO)は、新しいものから順に出す方法で、作業効率が良いが品質劣化のリスクがある。
- 食品や医薬品は先入れ先出し、砂利や劣化しない資材は後入れ先出しが適している。
- 会計の分野では、利益操作を防ぐために後入れ先出し法は現在廃止されている。
- ITの分野では「キュー(FIFO)」と「スタック(LIFO)」として両方が活用されている。
ビジネスの現場では、扱う商品の特性に合わせて最適な管理手法を選ぶことが求められます。
今回の知識を活かして、あなたの職場の在庫管理や業務フローを一度見直してみてはいかがでしょうか。
なお、他の業界用語やビジネス用語の違いについてもっと知りたい方は、業界用語の使い分けまとめ記事もぜひチェックしてみてくださいね。
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