「seem」と「look」の違いを一言で言うなら、判断材料が「見た目(視覚)」だけか、「状況や知識を含めた推測」かという点に尽きます。
どちらも日本語では「〜のようだ」「〜に見える」と訳されますが、電話越しに相手の様子を伝える時に「look」を使ってしまうと、ネイティブには「え? 見えてるの?」と不思議がられてしまいます。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ「視覚」と「思考」のイメージの違いから、文法的な使い方のルールまでスッキリと理解でき、状況に合わせて正確なニュアンスを伝えられるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「seem」と「look」の最も重要な違い
基本的にはパッと見の印象なら「look」、総合的な判断・推測なら「seem」と覚えるのが簡単です。「look」は目が基準、「seem」は頭(心)が基準です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの単語の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | look | seem |
|---|---|---|
| 判断の根拠 | 視覚情報(見た目) | 主観・状況・知識(推測) |
| ニュアンス | 「(外見が)〜に見える」 | 「(どうやら)〜らしい」 |
| 確信度 | 見たままの事実 | 話し手の主観的な判断 (控えめな断定) |
| 使える文法 | look + 形容詞 look like + 名詞 | seem + (to be) + 形容詞 seem to + 動詞 It seems that… |
一番大切なポイントは、「look」は目を使っている時に使い、「seem」は頭を使っている時に使うということです。
例えば、ニコニコしている人を見て「He looks happy.(幸せそうだ)」と言いますが、笑顔はないけれど良いことがあったと知っている場合は「He seems happy.(幸せなようだ)」と言います。
なぜ違う?単語の成り立ち(コアイメージ)から掴む
「look」は「視線を向ける」動作が原点で、外見的な印象を表します。「seem」は「適合する」という意味が語源で、状況証拠から「つじつまが合う=〜らしい」と判断する内面的なプロセスを表します。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、コアイメージを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「look」のイメージ:視線の先にある「外見」
「look」の基本は「視線を向ける」という動作です。
そこから、「(視線を向けた結果)〜に見える」という意味が生まれました。
判断基準はあくまで「目に入ってくる情報」です。
「外見」「表情」「色」「形」など、視覚的に確認できる事実に基づいて感想を言う時に使われます。
「seem」のイメージ:頭の中で「つじつまを合わせる」
一方、「seem」の語源は「ふさわしい」「適合する」という意味に関連しています。
「same(同じ)」や「simultaneous(同時の)」と同じルーツを持ちます。
そこから、色々な情報や状況証拠を集めて、「(状況からすると)〜であるのがふさわしい=〜らしい」と頭の中で結論づけるイメージになりました。
見た目だけでなく、話し方、雰囲気、事前の知識などを含めた「総合的な推測」を表します。
具体的な例文で使い方をマスターする
外見の感想を言う時は「look」、内面や状況を察する時は「seem」を使います。「seem」は「to不定詞」や「that節」と繋がれるのが大きな特徴です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
日常会話とビジネス、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
日常会話での使い分け
「彼、元気そう?」と聞かれた場面を想像してください。
【OK例文:look(見た目の印象)】
- He looks tired.(彼は(顔色が悪いし)疲れているように見える。)
- That cake looks delicious!(そのケーキ、(見た目が)美味しそう!)
【OK例文:seem(総合的な印象)】
- He seems tired.(彼は(声に元気がないし、話す内容も暗いから)疲れているようだ。)
- He seems to know the truth.(彼は真実を知っているようだ。)
「知っている」かどうかは見た目だけでは分からないので、「seem」を使うのが自然です。
ビジネスシーンでの使い分け
状況判断や提案の際にも重要です。
【OK例文:look】
- The proposal looks good.(企画書は(パッと見)良さそうですね。)
【OK例文:seem】
- The proposal seems reasonable.(企画書は(内容を検討した結果)妥当なようです。)
- It seems that there is a problem with the system.(システムに問題があるようです。)
ビジネスで慎重に意見を述べたい時は、「断定を避ける」ために「seem」が好まれます。
これはNG!間違えやすい使い方
文法的なルール違反に注意しましょう。
- 【NG】 He looks to be busy.
- 【OK】 He seems to be busy.(彼は忙しいようだ。)
「look」の後ろに「to不定詞」を続けることはできません。「seem to be」や「seem to do」は定番の形です。
- 【NG】 It looks that he is angry.
- 【OK】 It seems that he is angry.(彼は怒っているようだ。)
- 【OK】 It looks like he is angry.
「look」は「that節」を取れません。「It looks like…」ならOKです。
【応用編】似ている言葉「appear」「sound」との違いは?
「appear」は「seem」のフォーマル版で、外見と事実が異なる可能性を含みます。「sound」は「聴覚(耳)」で判断する場合に使います。
「seem」や「look」と似た感覚で使える動詞(知覚動詞など)も整理しておきましょう。
appear ≒ seem(フォーマル)
「appear」は「現れる」という意味もありますが、「〜のように見える」という意味では「seem」とほぼ同じです。
ただし、より客観的で堅い響きがあり、「外見上はそう見える(が、実際は違うかもしれない)」というニュアンスを強く含むことがあります。
- He appears to be rich.(彼は(身なりなどからして)金持ちのように見える。)
sound(耳で聞いて〜そう)
「look」が視覚なら、「sound」は聴覚です。
話を聞いたり、音を聞いたりして判断する場合に使います。
- That sounds great!((話を聞いて)それはいいね!)
- He sounded angry on the phone.(電話で彼は怒っているようだった。)
「seem」と「look」の違いを文法的な視点から解説
「look」はSVC文型(形容詞)か「like + 名詞」。「seem」はそれに加えて「to不定詞」や「that節」を取れる柔軟性があります。
感覚だけでなく、文法的な構造(取れる形)を知っておくと、迷った時の判断基準になります。
専門的な視点から、決定的な違いを解説します。
1. 後ろに来る品詞のパターン
■ look
- look + 形容詞(Happy, busy…)
- look like + 名詞(a doctor, rain…)
- look like + S + V(文)(It looks like it will rain. ※口語的)
■ seem
- seem + (to be) + 形容詞
- seem like + 名詞
- seem + to 不定詞(seem to know, seem to have finished…)
- It seems that S + V
2. 「to be」の省略
「seem」の後ろの「to be」は省略されることが多く、結果的に「seem + 形容詞」の形になります。
そのため、「He looks happy」と「He seems happy」は文法構造上は同じに見えますが、前述の通り判断のプロセス(視覚か推測か)が異なります。
僕が電話で「He looks busy」と言って相手を困らせた体験談
僕も英語を習い始めた頃、この使い分けで失敗したことがあります。
海外の取引先に電話をかけ、担当者のボブを呼び出してもらった時のことです。
電話に出た同僚の方が「今、ボブは席にいないんだ」と言いました。
僕は気を利かせて、「ああ、彼は忙しそうですね(きっと忙しいんでしょうね)」と言いたくて、こう言いました。
「I see. He looks busy.」
すると相手は一瞬沈黙した後、笑いながらこう言いました。
「Are you here? Can you see him?(君、ここにいるの? 彼が見えるのかい?)」
電話越しで姿が見えないのに「looks(見た目が〜だ)」と言ったのが、ジョークのように聞こえたのです。
状況から推測して「忙しいらしい」と言うなら、「He seems busy.」または「He must be busy.」と言うべきでした。
「look」はあくまで「視覚」が基準になるということを、身をもって学んだ体験でした。
それ以来、目に見えない相手や状況について話すときは、意識して「seem」を使うようにしています。
「seem」と「look」に関するよくある質問
「seem like」と「look like」の違いは?
どちらも「〜のようだ」という意味ですが、「look like」は見た目の類似性(〜に似ている)を表すのに対し、「seem like」は状況からの判断(〜という雰囲気だ)を表します。例:「He looks like a teacher(見た目が先生っぽい=服装など)」、「He seems like a nice person(いい人っぽい=言動などから)」。
「It seems like…」と「It seems that…」の違いは?
意味はほぼ同じですが、「It seems that…」の方がフォーマルで書き言葉的です。「It seems like…」は口語的で、日常会話でよく使われます。
自分の体調について言う時はどっち?
「I don’t look well.(顔色が悪い)」は鏡を見ている状況なら言えますが、自分の感覚としては「I don’t feel well.(気分が悪い)」を使います。「seem」は自分の内面(直接感じていること)にはあまり使いません。
「seem」と「look」の違いのまとめ
「seem」と「look」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 判断基準:「look」は視覚(見た目)、「seem」は推測(頭・心)。
- 文法:「seem」は「to不定詞」や「that節」とセットで使える。
- 使い分け:電話やメールなど姿が見えない時は「seem」を使うのが安全。
言葉の背景にある「目」と「脳」のイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
英語学習についてさらに詳しく知りたい方は、英語由来語の違いまとめもぜひご覧ください。
文部科学省の外国語教育に関する資料なども参考にしながら、これからは自信を持って、的確な表現を選んでいきましょう。
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