「政治家」と「議員」。ニュースや新聞で毎日のように目にする言葉ですが、この二つの正確な違いを説明できますか?
結論から言うと、「政治家」は政治に携わる人全般を指す広い言葉であり、「議員」は議会に所属して議決権を持つ特定の人を指す職名です。つまり、すべての議員は政治家ですが、すべての政治家が議員というわけではありません。例えば、都道府県知事や市町村長は「政治家」ですが、「議員」ではありません。
この記事を読めば、ニュースの理解度が深まるだけでなく、選挙期間中やビジネスの場での話題選びでも、相手の立場を正確に捉えた言葉選びができるようになります。
それでは、まず二つの言葉の核心的な違いを比較表で見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「政治家」と「議員」の最も重要な違い
「政治家」は政治活動を行う人全般を指す広いカテゴリーで、首長や大臣も含みます。「議員」は選挙で選ばれ、議会に議席を持つ人に限定された職名です。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な関係性はバッチリです。
| 項目 | 政治家 | 議員 |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 政治(まつりごと)を行うことを職業、または役割とする人。 | 国会や地方議会の構成員として、議決権を持つ人。 |
| 関係性 | 広いカテゴリー(上位概念)。 | その中に含まれる特定の職種(下位概念)。 |
| 対象範囲 | 議員、総理大臣、知事、市長、村長、政党役員など。 | 衆議院議員、参議院議員、都道府県議会議員、市町村議会議員。 |
| 選挙の有無 | 選挙を経ない場合もある(民間人閣僚など)。 | 原則として選挙で選ばれる(民選)。 |
一番大切なポイントは、知事や市長などの「首長」は政治家ですが、議会で議論する立場ではないため「議員」とは呼ばないという点です。
なぜ違う?言葉の成り立ちと役割からイメージを掴む
「政治家」は国家や社会を治める「家(専門家)」としての職業的アイデンティティ。「議員」は議会で「議(はか)る」ための構成員という組織的な役割を表します。
なぜこの二つの言葉に範囲の違いが生まれるのか、漢字の意味や役割を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「政治家」のイメージ:社会を動かす専門家
「政治家」の「政(まつりごと)」は、国や社会を治める活動全般を指します。「家」は、その道の専門家や職業人を表す接尾語です(例:芸術家、実業家)。
つまり、特定の役職に就いているかどうかにかかわらず、政治活動を専門的に行い、社会に影響を与える人という広い意味を持っています。
そのため、現職の議員だけでなく、落選中の元議員や、これから立候補を目指す人、あるいは政治団体のリーダーなども、自らを「政治家」と名乗ることがあります。
「議員」のイメージ:議会で話し合う代表者
一方、「議員」の「議」は「はかる」「話し合う」という意味です。「員」は組織の構成メンバーですね。
これは、「議会」という特定の機関に所属し、予算や法律について話し合い、決定(議決)する権限を持つ人を指す、非常に具体的な職名です。
私たち国民や住民の代表として選挙で選ばれ、議席を与えられている期間中だけが「議員」です。任期が終われば、ただの「元議員」や「政治活動家」に戻ります。
具体的な例文で使い方をマスターする
職業や生き様を語る時は「政治家」、議会での活動や身分を指す時は「議員」を使います。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ニュースや日常会話、間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ニュース・会話での使い分け
【OK例文:政治家】
- 彼は親子三代続く政治家の家系だ。
- 将来の夢は、国を良くする政治家になることだ。
- あの知事は、行政手腕に優れた政治家として知られている。
【OK例文:議員】
- 国会議員の定数削減が議論されている。
- 市議会議員選挙に立候補する。
- 現職の議員として、地域の声を議会に届ける。
「政治家」は生き方や職業的カテゴリを指すのに対し、「議員」は具体的なポスト(椅子)を指している感覚ですね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じても、正確ではない使い方です。
- 【NG】東京都知事は、都民を代表する議員だ。
- 【OK】東京都知事は、都民を代表する政治家(または首長)だ。
知事は行政のトップ(首長)であり、議会のメンバー(議員)ではありません。この二つは「二元代表制」といって、お互いにチェックし合う対等な別の機関です。
【応用編】似ている言葉「代議士(だいぎし)」との違いは?
「代議士」は衆議院議員のみを指す俗称です。参議院議員や地方議員には使いません。
「政治家」や「議員」と合わせてよく聞く言葉に「代議士(だいぎし)」があります。これも正しく使い分けられると、ニュース通に見えますよ。
「代議士」とは、一般的に衆議院議員のことだけを指します。
明治憲法下において、衆議院議員が「代議士」と呼ばれていた名残です。そのため、参議院議員に対して「〇〇代議士」と呼ぶのは誤りです。
また、地方議会の議員(県議や市議)に対しても使いません。あくまで国会、それも衆議院の議員に対する特別な呼び方と覚えておきましょう。
「政治家」と「議員」の違いを制度的な視点から解説
日本の統治機構は「議決機関(議会)」と「執行機関(内閣・首長)」に分かれています。「議員」は前者に属し、「首長(知事・市町村長)」は後者に属します。どちらも広い意味での「政治家」です。
少し専門的な視点から、この言葉の背景を深掘りしてみましょう。
民主主義の仕組みにおいて、権力の集中を防ぐために役割分担がされています。
一つは、ルール(条例や予算)を決める役割。これが「議会」であり、ここに所属するのが「議員」です。
もう一つは、決められたルールに基づいて実際に政治を行う(予算を使って橋を作ったり、福祉サービスを提供したりする)役割。これが「執行機関」であり、地方自治体では知事や市町村長などの「首長」がこれにあたります。
国政においては「議院内閣制」をとっているため、国会議員の中から総理大臣(執行機関の長)が選ばれますが、地方自治では「二元代表制」といって、議員と首長をそれぞれ別の選挙で選びます。
つまり、制度的には「チェックする側(議員)」と「実行する側(首長)」という明確な対立構造があるのですが、職業分類としてはどちらも「政治を専門とする人」なので、まとめて「政治家」と呼ばれるのです。
僕が「政治家」と紹介して「私は議員だ」と訂正された話
僕が地元の商店街のイベントで司会をしていた時のことです。来賓として、地元の市議会議員の方がいらっしゃいました。
僕は敬意を表したつもりで、マイクでこう紹介しました。
「それでは、この地域のために日々ご尽力いただいている、政治家の山田様よりご挨拶を頂戴します!」
会場は拍手に包まれましたが、登壇された山田さんは苦笑いしながら、マイクを握って第一声でこう言いました。
「ご紹介にあずかりました、市議会議員の山田です。政治家なんて言うと、なんだか偉そうで先生稼業みたいに聞こえますが、私は皆さんの使いっ走り、一介の『議員』として、議会で汗をかいております」
その時は「謙遜だなあ」と思ったのですが、後で考えると、山田さんは「政治家」という言葉が持つ「権力者」や「特権階級」のようなニュアンスを嫌い、あくまで「市民の代表(議員)」であるという職務上の立場を強調したかったのだと気づきました。
「政治家」は職業名として正しいですが、文脈によっては「政治屋(自分の利益のために政治をする人)」のようなネガティブな響きを含んでしまうこともあります。「議員」と呼ぶ方が、その人の現在の役割に即した、フラットで実務的な敬意を表せる場合があるのですね。
「政治家」と「議員」に関するよくある質問
「政治屋」と「政治家」の違いは何ですか?
「政治屋(せいじや)」は蔑称です。本来の政治的理念や国民のための政策よりも、自分の地位や金儲け、権力維持を優先して政治を利用する人を批判して呼ぶ言葉です。英語では政治家を「Statesman」、政治屋を「Politician」と使い分けてニュアンスを区別することもあります(Politician自体は中立ですが、文脈で使い分けられます)。
大臣は議員でなくてもなれますか?
はい、なれます。日本国憲法では、国務大臣の過半数は国会議員から選ばなければなりませんが、残りの半数未満は民間人から選ぶことができます。これを「民間人閣僚」と呼びます。彼らは「議員」ではありませんが、国の政治を司る重要な「政治家」です。
選挙に落選中の人は何と呼べばいいですか?
現職ではないので「議員」とは呼べません。「元議員」「前議員」あるいは「新人候補予定者」などと呼ばれます。職業としては「政治活動家」や、単に「政治家(を目指している人)」という広義の枠組みで捉えられることが多いです。
「政治家」と「議員」の違いのまとめ
「政治家」と「議員」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の包含関係:「政治家」は広いグループ、「議員」はその中の特定の職種。
- 首長の扱い:知事や市長は「政治家」だが、「議員」ではない。
- 使い分けのコツ:生き様や職業全体を指すなら「政治家」、議会での役職を指すなら「議員」。
ニュースで「政治家」と言っているのか、「議員」と言っているのかに注目すると、報道の意図や対象がよりクリアに見えてきますね。
これからは自信を持って、状況に応じた的確な言葉を選んでいきましょう。さらに詳しい社会制度や言葉の使い分けについては、社会・関係の言葉の違いまとめもぜひご覧ください。
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