「shall」と「should」の違いとは?義務と推奨の決定的な差

「この契約書の shall は、単なる未来形ではありません。法的拘束力のある義務です」

もしあなたがビジネスの現場で、あるいは英語の試験でこの二つの言葉を「なんとなく」で使い分けているとしたら、それは少し危険かもしれません。

なぜなら、「shall」と「should」には、法的責任すら左右するほどの決定的な強さの違いがあるから。

この記事を読めば、契約書で使われる重い「shall」と、日常やビジネスアドバイスで使われる「should」のニュアンスを完全に理解し、もう二度と迷うことなく自信を持って使い分けられるようになります。

それでは、まず最も重要な結論から見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「shall」と「should」の最も重要な違い

【要点】

「shall」は「絶対的な義務(〜するものとする)」、「should」は「推奨や当然の帰結(〜すべき/〜はずだ)」です。特にビジネスや法務の文脈では、「shall」は「must」に近い強制力を持ち、「should」はあくまでアドバイスや見込みを表します。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、ビジネス文書でも試験でも、大まかな方向性はバッチリです。

項目shallshould
中心的なイメージ絶対的な義務・運命推奨・当然の予測
日本語訳の定番〜するものとする(契約)
〜でしょう(未来・意思)
〜すべきである(推奨)
〜するはずだ(推量)
強制力の強さ最強(法的拘束力あり)中程度(理想・アドバイス)
主な使用シーン契約書、法規、仕様書日常会話、ビジネスメール、提案

表を見ていただくとわかる通り、「shall」は非常に堅く重い言葉であるのに対し、「should」は相手への配慮や論理的な予測を含む柔らかい言葉なんですね。

「shall」を見ると「〜でしょう」という未来形を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、ビジネス、特に契約の世界では「未来」ではなく「義務」として君臨しています。

なぜ違う?語源から「義務」と「推奨」のイメージを掴む

【要点】

「shall」の語源は「借金がある(負っている)」という意味。そこから逃れられない「義務」や「運命」のニュアンスが生まれました。「should」はその過去形から派生し、「(本来なら)そうあるべき」という「理想」や「推奨」へと意味が変化しました。

そもそも、なぜこれほど意味が違うのでしょうか?その答えは、遠い昔の語源に隠されています。

実は、「shall」の語源は古英語の「sceal」で、これは「借金がある」「負っている」という意味でした。「借金は絶対に返さなければならない」というところから、「義務」や「どうしてもそうなる運命(未来)」という意味が生まれたのです。

一方で、「should」は歴史的に「shall」の過去形から派生しましたが、時を経て「現実とは異なる仮定」のニュアンスを帯びるようになりました。

「(現実はどうあれ)本来は借金を返している状態であるべきだ」という感覚から、「〜すべきだ(推奨)」「当然〜しているはずだ(推量)」という、理想や論理的な正しさを表す言葉へと進化したのです。

「shall」には「逃げられない拘束」が、「should」には「理屈上の正解」が根底にあるとイメージすると、覚えやすいですよね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

契約書での「shall」は「Must」と同義で使われます。日常会話の「should」はアドバイスです。NG例として、上司への報告で確実な予定に「should」を使うと「不確実さ」が出てしまい、不安を与えてしまうので注意しましょう。

ここでは、シーン別に具体的な例文を見ていきましょう。特にビジネスシーンでの使い分けは、信頼性に直結します。

ビジネス・契約シーン(shall)

契約書や仕様書では、「shall」は主役級の活躍をします。

  • 英文:The Contractor shall complete the work by March 31st.
  • 和訳:請負人は、3月31日までに業務を完了するものとする。(義務)

ここで「will」を使うと単なる未来の予測と取られかねず、「should」を使うと「完了したほうがいいですね」という努力目標になってしまいます。「shall」を使うことで、「法的義務」を明確にしているのです。

日常・アドバイスシーン(should)

同僚へのアドバイスや、論理的な予測には「should」が最適です。

  • 英文:You should update your software to fix the bug.
  • 和訳:バグを直すために、ソフトウェアを更新したほうがいいよ。(推奨)
  • 英文:The meeting should be over by noon.
  • 和訳:会議は正午までには終わるはずです。(推量)

「should」は「〜しなさい!」という命令ではなく、「それが一番いい方法だよ」という理知的な提案のニュアンスを含みます。

【NG例】上司への確約で「should」を使ってしまう

ここが落とし穴です。「来週までに提出します」と言いたい時に、丁寧さを意識しすぎてこう言ってしまう人がいます。

  • NG:I should submit the report by next week.
  • 意味:(たぶん)来週までには提出できるはずです

これでは上司に「え? できない可能性もあるの?」という不安を与えてしまいます。確実な約束をする場合は、「I will」や「I promise to」を使うのが正解ですね。

【応用編】似ている言葉「will」「must」との違いは?

【要点】

「will」は単なる「未来・意思」で義務感は薄いです。「must」は個人的・圧力的な「義務」。「shall」は契約上の厳格な「義務」。「should」はそれらより弱い「推奨」。強さの順は「shall ≒ must > will > should」です。

似ている言葉との位置関係を整理しておくと、理解がさらに深まります。

  • shall:契約上の義務、神の意志のような運命的未来。(最も堅い)
  • must:逃れられない必要性、個人的な強い確信。(圧力がある)
  • will:単純な未来、あるいは話者の強い意思。(義務ではない)
  • should:道徳的・論理的な推奨。(強制力はない)

契約書では「must」も使われますが、「shall」の方が「契約条項としての定め」という客観的な響きが強いため、好まれる傾向にあります。

「shall」と「should」の違いを学術的に解説

【要点】

言語学的には「モダリティ(法のムード)」の違いです。「shall」は義務や許可を表す「義務的モダリティ」の典型で、「should」はそれより確信度の低い「認識的モダリティ(推量)」や弱い義務を表します。

少し専門的な視点から、この違いを掘り下げてみましょう。

言語学の分野では、これらの助動詞を「モダリティ(Modality)」という概念で説明します。モダリティとは、話者の心理的態度を表す文法範疇のことです。

専門家の視点では、「shall」は話者の強い意志や、外部からの強制力を表す「義務的モダリティ」の度合いが非常に高いとされます。これは、法的な文脈で「〜せねばならない」と訳される根拠です。

対して「should」は、「事態がそうあることが望ましい」という「評価」や、「論理的に考えてそうなる」という「認識的モダリティ」の側面が強くなります。

興味深いことに、現代のアメリカ英語の日常会話では「shall」の使用頻度は激減しており、未来形としては「will」や「be going to」に取って代わられています。しかし、法曹界(法律の世界)という特殊な環境の中でのみ、「shall」は古代の「絶対的義務」という意味を保ったまま生き残っているのです。まるで、化石が生きたまま発見されたような面白さがありますよね。

僕が仕様書の「shall」を甘く見て冷や汗をかいた体験談

これは僕がIT企業のプロジェクトマネージャーになりたての頃、海外ベンダーとのシステム開発で経験した、今でも思い出すと胃が痛くなるような失敗談です。

当時、僕は英語の仕様書を読み込んでいました。そこには膨大な数の「The system shall…」という記述が並んでいました。

「The system shall display the user ID.(システムはユーザーIDを表示でしょう)」
「The system shall backup daily.(システムは毎日バックアップするでしょう)」

僕は恥ずかしながら、これを学校で習った「shall = 〜でしょう(未来)」の感覚で読んでいたのです。「なるほど、こういう機能になる予定なんだな」と。

開発が進み、納期が迫ったある日、いくつかの機能の実装が遅れていました。僕は軽い気持ちでベンダーに言いました。
「このバックアップ機能、リリース後のアップデートで対応しませんか? 優先度を下げましょう」

すると、相手の担当者の顔色が変わり、強い口調で言われたのです。
「No! The specification says ‘shall‘. It is mandatory! This is a contract violation!」

「仕様書に『shall』とある以上、それは必須要件だ。実装しないのは契約違反だ!」

その瞬間、頭が真っ白になりました。僕は「shall」を「未来の予定」程度に捉えていましたが、彼らにとってそれは「絶対に守るべき約束」だったのです。結局、チーム総出で徹夜をして、なんとか納期に間に合わせました。

この経験から、僕は「shall」という言葉を見たら「命令」「絶対条件」と脳内変換するようにしています。たった一語の解釈ミスが、プロジェクトの命運を分けることもある。それを身をもって学んだ出来事でした。

「shall」と「should」に関するよくある質問

Q. 「Shall we dance?」は義務じゃないですよね?

A. はい、それは「提案」です。
日常会話での「Shall I…?」「Shall we…?」は例外的に、「私(私たち)が〜するという運命・義務を負いましょうか?」というニュアンスから転じて、「〜しましょうか?」という丁寧な提案になります。契約書の「shall」とは別物と考えてOKです。

Q. テストで「should」を「〜すべき」と訳すと減点されますか?

A. 文脈によりますが、「〜したほうがいい」の方が自然な場合が多いです。
「すべき」だと少し上から目線の強い義務に聞こえますが、「should」はあくまでアドバイス。「〜したほうがいいよ」「〜するはずだ」と訳す方が、本来のニュアンスに近いことが多いですね。

Q. 契約書で「must」を使っちゃダメなんですか?

A. ダメではありませんが、「shall」が好まれます。
「must」も義務を表しますが、人間的な強制力や圧力のニュアンスが含まれることがあります。「shall」の方が、法的な定めとして客観的で厳格な響きを持つため、伝統的に契約書では「shall」が標準とされています。

「shall」と「should」の違いのまとめ

ここまで、「shall」と「should」の違いについて解説してきました。一見似ている二つの言葉ですが、その背負っている「責任の重さ」は全く違うことがお分かりいただけたでしょうか。

最後に、ポイントを振り返っておきましょう。

  • shall:契約書や法的な文脈での「絶対的な義務」。背後には「負債・運命」のイメージがある。
  • should:日常やビジネスでの「推奨」や「論理的な推量」。背後には「理想・当然」のイメージがある。
  • 注意点:ビジネス文書の「shall」を単なる未来形と誤解すると、契約トラブルの元になる。

言葉の背景にある「拘束力の強さ」を意識するだけで、英文契約書を読む時の解像度や、アドバイスをする時の適切さが格段に上がります。

もし、他にも英語由来の言葉やカタカナ語の使い分けで気になることがあれば、ぜひ以下の記事も参考にしてみてくださいね。

英語由来語の使い分け:https://chigai-labo.com/words-guide/gairaigo/english/

英語のニュアンスを深く理解することは、グローバルなコミュニケーションの第一歩です。この記事が、あなたの英語力をワンランクアップさせるきっかけになれば嬉しいです。

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