「shall」は「義務・運命・提案」を表すフォーマルな言葉、「will」は「意志・単なる未来」を表す一般的な言葉。
どちらも未来のことを話すときに使われますが、その裏にある「強制力」や「話し手の意志」の強さには決定的な違いがあります。
この記事を読めば、それぞれの助動詞が持つ核心的なイメージと正しい使い分けが分かり、日常会話からビジネス文書まで的確に理解できるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから一覧表で見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「shall」と「will」の最も重要な違い
基本的には、日常の未来や意志なら「will」、契約上の義務や丁寧な提案なら「shall」と覚えるのが簡単です。「will」は自分の気持ちや予測、「shall」は定まった運命やルールというニュアンスが強くなります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの助動詞の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリでしょう。
| 項目 | shall(シャル) | will(ウィル) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 義務、運命、提案 | 意志、予測、未来 |
| ニュアンス | 「神や運命によってそうなる」「~するものとする(法的義務)」 | 「~するつもりだ(意志)」「~だろう(予測)」 |
| 使われる場面 | 契約書、法律、丁寧な提案(Shall I…?)、聖書 | 日常会話、天気予報、約束、推測 |
| 強制力 | 強い(逃れられない運命・規則) | 中程度(話し手の気持ち次第) |
簡単に言うと、「私は行きます(意志)」なら「I will go.」となり、「(契約に基づき)支払うものとする(義務)」なら「The tenant shall pay…」といった使い分けになります。
なぜ違う?英語の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「shall」は「負債・義務」を意味する古語が語源で、「逃れられない運命」のイメージがあります。一方、「will」は「望む・欲する」という古語が語源で、主語の「~したい」という意志が根本にあります。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、単語の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「shall」の成り立ち:「負うている」義務のイメージ
「shall」の語源は、古英語の「sculan」で、これは「~の義務がある」「~の負債がある」という意味でした。
つまり、自分の意志とは関係なく、「借金を返すように、当然そうしなければならない」という強制的なニュアンスが根本にあります。
ここから、「運命的にそうなる」「規則としてそうする」という、少し堅苦しく、避けられない未来を表す言葉になりました。
「will」の成り立ち:「望む」意志のイメージ
一方、「will」の語源は、古英語の「willan」で、「~したいと望む」「欲する」という意味でした。
名詞の「will」に「意志・遺言」という意味があるのもこのためです。
したがって、「will」は単なる未来だけでなく、「主語がそうすることを望んでいるから、そうなるだろう」という、意志の力が働いている未来を表します。
「I will do it.」は「やることになっている」ではなく、「私がやりたいからやる(やるつもりだ)」というニュアンスが強いのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
日常会話では「will」が圧倒的に多く使われます。「shall」は「Shall I/we…?」という提案の形や、契約書などのフォーマルな文書で「義務」を表す際に限定的に使われます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
日常会話・ビジネスでの使い分け
自分の意志で決めるのか、相手への提案や契約上の決まりなのかを意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:will(意志・予測)】
- I will call you later.
(あとで電話しますね。/電話するつもりです。) - It will rain tomorrow.
(明日は雨が降るでしょう。) - Will you open the door?
(ドアを開けてくれませんか?/開ける意志はありますか?)
【OK例文:shall(提案・義務)】
- Shall I open the window?
(窓を開けましょうか?/私が開ける運命にしましょうか?) - Shall we dance?
(踊りませんか?/一緒に踊る流れにしましょうか?) - The Borrower shall pay the interest.
(借主は利息を支払うものとする。※契約書)
「Shall I…?」や「Shall we…?」は、「(私の意志ではなく)運命やあなたの意向として、そうすることになっていますか?」と尋ねるニュアンスから、丁寧な「提案」になります。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることもありますが、現代英語では不自然になる使い方を見てみましょう。
- 【NG】 I shall go to the convenience store.
- 【OK】 I will go to the convenience store.
単に「コンビニに行くつもりだ」と言いたいときに「shall」を使うと、「私はコンビニに行く運命にある」や「コンビニに行く義務を負う」のように、非常に大げさで古風、あるいは気取った響きになります。
現代の日常会話(特にアメリカ英語)では、単純未来や意志未来には「will」を使うのが自然です。
【応用編】似ている言葉「should」「be going to」との違いは?
「should」は「shall」の過去形から派生し、「~すべき(当然そうなるはず)」という推奨や推量を表します。「be going to」は「will」と似ていますが、「すでに決まっている予定」や「客観的な兆候がある未来」を指し、「will」のような「今決めた意志」とは異なります。
「shall」や「will」と関連する表現についても押さえておきましょう。
「should」は、もともと「shall」の過去形ですが、現在では独立した意味で使われます。
「shall(義務)」のマイルド版として、「~したほうがいい(推奨)」「~するはずだ(当然の推量)」を表します。
一方、「be going to」は「will」と比較されます。
- will:その場で決めた意志、単なる予測(I will help you./手伝うよ!)
- be going to:前から決まっていた予定、目に見える根拠がある未来(I am going to visit him./彼を訪ねる予定です。)
「Look at those clouds! It’s going to rain.(あの雲を見て!雨が降りそうだ)」のように、根拠がある場合は「will」より「be going to」が好まれます。
「shall」と「will」の違いを文法・ニュアンスで深掘り
かつての英文法では、主語の人称(I/WeかYou/He/Theyか)によって「shall」と「will」を使い分けていましたが、現代(特にアメリカ英語)ではその区別はほぼ消滅し、すべて「will」で代用可能です。ただし、「Shall I/we…?」の提案表現や、法的文書での「shall」は依然として現役です。
少し専門的な視点から、文法的な変遷と現代の用法を解説します。
古い文法書やイギリスの伝統的な用法では、以下のような使い分けがありました。
- 単純未来(自然な成り行き):
一人称(I/We)は shall
二・三人称(You/He/They)は will - 意志未来(話者の強い意志):
一人称(I/We)は will(~するぞ)
二・三人称(You/He/They)は shall(~させるぞ/~させなければならない)
ダグラス・マッカーサーの有名な言葉「I shall return.(私は必ず戻ってくる)」は、この「意志未来」の用法(あるいは、神の意志・運命的な響きを持たせた表現)として解釈されます。
しかし、現代英語ではこの複雑なルールは廃れ、人称に関わらず「will」を使うのが一般的です。
ただし、以下の2点だけは現代でも「shall」が生き残っています。
- 提案・申し出:Shall I…?(しましょうか?)、Shall we…?(しませんか?)
- 規定・契約:Employees shall…(従業員は~しなければならない)
特に契約書翻訳や法務の分野では、「shall」は「義務(obligation)」を表す最も重要な単語の一つとして扱われています。
僕が「shall」の訳し方で冷や汗をかいた契約書翻訳の体験談
僕も駆け出しの翻訳者だった頃、この「shall」の重みを知らずに恥をかいたことがあります。
ある海外企業との提携契約書を和訳する仕事でのこと。
条文に「The Distributor shall sell the Products…」とあるのを見て、学校で習った「shall=未来」のイメージで軽く考えてしまいました。
「販売店は製品を販売するでしょう」とか「販売する予定である」と訳して提出したんです。
すると、監修についていた法務担当者から真っ赤に修正された原稿が戻ってきました。
「ここは『販売店は製品を販売するものとする』または『販売しなければならない』です。『でしょう』なんて曖昧な予測ではありません。これは法的義務です」
顔から火が出るかと思いました。
契約書における「shall」は、単なる未来ではなく、守らなければ契約違反になる「強制力のある命令」だったのです。
「will」も契約書で使われますが、こちらは単なる事実の記載や機能説明(~となる、~する)に使われることが多く、義務の強さは「shall」に劣ります。
「たった一語の解釈ミスが、ビジネスの責任問題に関わる」と痛感した出来事です。
それ以来、「shall」を見たら背筋が伸びるようになりました。
「shall」と「will」に関するよくある質問
天気予報では「It shall rain」と言いますか?
言いません。「It will rain.」を使います。天気は自然現象であり、誰かの義務や神の命令(運命)として語る文脈でない限り、「shall」を使うと非常に芝居がかって聞こえます。客観的な予測には「will」が適切です。
「Let’s go.」と「Shall we go?」の違いは?
「Let’s go.」は「行こうよ!」と積極的に誘うニュアンスが強く、リーダーシップを感じさせます。「Shall we go?」は「そろそろ行きましょうか?」と相手の意向を伺う、より丁寧で控えめな提案です。目上の人やフォーマルな場では「Shall we?」の方が上品に響きます。
聖書で「shall」が多いのはなぜですか?
聖書(特に古い翻訳版)では、神の言葉や予言として「汝、~すべし(Thou shalt…)」や「~となるであろう(It shall come to pass)」という表現が多用されます。これは「神の意志により確定した未来」や「絶対的な戒律」を表すためで、「shall」の持つ「逃れられない運命・義務」という語源的な意味が色濃く反映されている例です。
「shall」と「will」の違いのまとめ
「shall」と「will」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本イメージ:「shall」は義務・運命、「will」は意志・未来。
- 日常会話:基本は「will」。提案(Shall I/we?)の時だけ「shall」を使う。
- ビジネス(契約):「shall」は「~するものとする」という法的義務を表す。
- 強制力:「shall」の方が圧倒的に強く、外的な強制力が働くニュアンス。
言葉の背景にある「運命的な義務」と「主体的な意志」の違いを理解すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになりますね。
契約書を読むときや、丁寧に相手を誘うときに、これらの違いを意識することで、より正確で品のある英語力が身につくはずです。
これから自信を持って、適切な助動詞を選んでいきましょう。
英語の表現についてさらに詳しく知りたい方は、英語由来語の違いまとめのページもぜひご覧ください。より深い理解に役立つはずです。
また、文法的な詳細については文部科学省の外国語教育に関する資料なども参考になります。
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