「because」は相手が知らない「新しい理由」を強調して伝える言葉で、「since」は相手もすでに知っている「前提となる理由」を述べる言葉です。
どちらも日本語では「~なので」「~だから」と訳されますが、英語では「なぜ?」という問いに直接答える強い因果関係を示すのか、それとも「~なのだから、こうしよう」と結果に注目させるのかという点で、その役割は決定的に異なります。
この記事を読めば、文脈や相手との共有知識のレベルに合わせて適切な接続詞を選べるようになり、より自然で誤解のない英会話やライティングが可能になります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「since」と「because」の最も重要な違い
基本的には理由を強調したいなら「because」、相手も知っている前提なら「since」と覚えるのが簡単です。becauseは「なぜなら」という直接的な原因説明、sinceは「~である以上」という背景説明のニュアンスが強くなります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの接続詞の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | because (ビコーズ) | since (シンス) |
|---|---|---|
| 情報の性質 | 新情報(相手が知らない理由) | 旧情報(相手も知っている理由) |
| 焦点 | 「理由」そのものに焦点がある | 「結果(主節)」に焦点がある |
| Whyへの返答 | 可能(Because …) | 不可 |
| ニュアンス | 直接的な原因、強い因果関係 | 既定の事実、当然の前提 |
| 主な位置 | 文末(主節の後)が多い | 文頭(主節の前)が多い |
一番大切なポイントは、「Why?(なぜ?)」と聞かれた時に答えられるのは「Because」だけであるということですね。
「Since」は「~である以上、当然…だよね」というニュアンスを含むため、純粋な理由の説明には使われません。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「because」は“by cause(原因によって)”が語源で、直接的な因果関係を表します。一方、「since」は“sith than(その後ずっと)”が語源で、時間の経過や起点を表す意味から転じて「~という状況が出発点となって」という前提の理由を表すようになりました。
なぜこの二つの言葉に役割の違いが生まれるのか、語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「because」の成り立ち:「原因によって」という直接性
「because」は、中英語の「bi cause」に由来します。
これは現代英語の「by cause」、つまり「原因によって」という意味です。
「cause(原因)」という言葉がそのまま入っていることからも分かる通り、この単語の役割は「原因・理由」をはっきりと指し示すことです。
「Aが起きた。その原因はBだ」というように、出来事と原因を強力な接着剤で結びつけるイメージを持ってください。
だからこそ、相手にとって一番重要な「理由」を伝える際に使われるのです。
「since」の成り立ち:「起点」からの流れ
一方、「since」は、古英語の「sīththan」などが変化したもので、「after that(その後)」や「ever since(それ以来ずっと)」といった「時間的な起点」を意味する言葉でした。
「彼が来て以来(since he came)」という「時間の起点」を表す用法が有名ですね。
ここから転じて、「彼が来たという事実が出発点となって(=彼が来たので)」という「論理的な起点(前提)」を表す意味が生まれました。
つまり、「もうみんな分かっているこの事実(起点)から出発すると、当然こういう結論になるよね」という、流れを重視するイメージなのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
遅刻の言い訳など「相手が知らない理由」を言うときは「because」、もう雨が降っているのを見て「雨だし、タクシーに乗ろう」と提案するときは「since」を使います。情報の新しさと重要度で使い分けるのがコツです。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスや日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
日常会話での使い分け
相手がその理由を知っているか、知らないかを意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:because(相手が知らない理由)】
- I was late because the train stopped.
(電車が止まっていたので遅れました。※相手は遅れた理由を知らない) - I stayed home because I was sick.
(病気だったので家にいました。※「なぜ家にいたの?」への回答)
【OK例文:since(相手も知っている前提)】
- Since it’s raining, let’s take a taxi.
(雨が降っているから、タクシーに乗ろう。※雨が降っていることはお互い見れば分かる) - Since you are here, please help me.
(君がここにいるんだから、手伝ってよ。※君がいることは明白な事実)
ビジネスシーンでの使い分け
ビジネスでは、論理の組み立て方によって使い分けます。
【OK例文:because(理由の強調)】
- We decided to cancel the project because it was over budget.
(予算オーバーだったため、プロジェクトの中止を決定しました。※中止の「理由」を明確に伝えたい)
【OK例文:since(状況の共有と提案)】
- Since we have met our quota, we can relax a bit.
(ノルマは達成したのだから、少し休みましょう。※達成した事実は共有済みで、休む提案に焦点を当てている)
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じても、ネイティブには違和感を与えてしまう使い方を見てみましょう。
- 【NG】A: Why did you buy this? B: Since it was cheap.
(A: なぜこれを買ったの? B: 安かったから。) - 【OK】A: Why did you buy this? B: Because it was cheap.
(A: なぜこれを買ったの? B: 安かったから。)
「Why?」という質問は「理由」を求めているので、新情報(理由)を導く「Because」で答えるのが鉄則です。「Since」は既知の情報を表すため、質問の答えになりません。
- 【NG】I am happy since I passed the exam.
(試験に受かったので嬉しいです。※合格の知らせを初めて伝える場面) - 【OK】I am happy because I passed the exam.
(試験に受かったので嬉しいです。)
相手がまだ知らない重要なニュース(試験に受かったこと)を理由として伝える場合は、「because」を使うべきです。「since」を使うと「私が受かったことはもう知ってると思うけど」というニュアンスになり、相手を混乱させる可能性があります。
【応用編】似ている言葉「as」との違いは?
「as」も理由を表しますが、「since」よりもさらに理由の重要度が低く、補足的なニュアンスが強くなります。「〜のようなので」「〜という状況なので」といった軽い理由付けや、付帯状況を表す際に使われます。
「because」「since」と並んでよく使われるのが「as」です。
これも押さえておくと、表現の幅がグッと広がりますよ。
「as」が表す理由は、「since」よりもさらに軽く、付随的なものです。
相手も知っているようなことや、話の流れで自然と分かるようなことをさらっと述べる時に使います。
重要度の順番で並べると以下のようになります。
Because(重い・新情報) > Since(中くらい・既知情報) > As(軽い・補足情報)
例えば、「As I was tired, I went to bed early.(疲れていたので、早く寝た)」のように、「疲れていた」という理由はそれほど重要ではなく、「早く寝た」という事実を述べるための軽い導入として使われるイメージです。
また、「as」は「〜しながら(同時進行)」という意味も持つため、文脈によっては理由なのか時なのか紛らわしい場合があります。明確に理由を伝えたいときは「because」や「since」を使うのが無難です。
「since」と「because」の違いを学術的に解説
言語学的には、「because」は「従属接続詞」の中でも主節と強い結びつきを持ち、文の焦点(フォーカス)になれる性質があります。一方、「since」は主節の前提となる背景情報(トピック)を提示する役割を持ち、文の焦点にはなりません。これを情報の構造(Information Structure)の違いと呼びます。
専門的な視点から見ると、この二つの言葉の違いは「情報の新旧(Information Status)」と「焦点(Focus)」に関わっています。
文法書や言語学の研究では、「Because」は焦点になり得ると説明されます。
例えば、否定文を作るとき、「I didn’t go because I was sick.」は「病気だったから行ったのではない(行くには行ったが理由は別)」という解釈と、「病気だったので行かなかった」という二通りの解釈が可能です。
これは「because」以下の理由が否定の焦点になれるほど強い意味を持っているからです。
一方、「Since」は焦点になりません。
「I didn’t go since I was sick.」と言えば、「病気だったので(前提)、行かなかった(結果)」という一つの意味にしかなりません。
「since」以下の内容は「前提(背景情報)」として扱われ、文のメインメッセージ(行かなかったこと)の補足として機能するからです。
このように、単なる意味の違いだけでなく、文全体の論理構造における「重み」が異なる点を理解しておくと、論理的な文章作成に役立ちます。
僕が「since」を使って教授に怒られた留学中の体験談
僕も留学したての頃、この「since」と「because」の使い分けで痛い目に遭ったことがあるんです。
大学の講義に遅刻してしまったときのことです。
教室の後ろからこっそり入ろうとしたら、教授に見つかってしまい、「Why are you late?(なぜ遅れたんだ?)」と皆の前で聞かれました。
僕は少しでも丁寧で知的な表現を使おうと思い、習ったばかりの「since」を使ってこう答えました。
「Since I overslept…(寝坊したものですから…)」
すると教授は眉をひそめて、「So what?(だから何だ?)」と返してきました。
僕はパニックになりながら、心の中で「え?寝坊したから遅れたって言ってるのに…」と焦りました。
後で友人に聞いて分かったのですが、ここで「Since」を使ったことで、僕は「私が寝坊したことは周知の事実ですが(当然のことですが)」というニュアンスを出してしまっていたのです。
教授からすれば、「寝坊したのは君の勝手な事情(新情報)だろう。それをさも『当たり前の前提』のように話すな。遅れた理由(Because)をちゃんと説明しなさい」と感じたわけです。
「Because I overslept.(寝坊してしまったからです)」と素直に言えば、単なる理由の説明として受け取られたはずでした。
この経験から、「自分の個人的な事情や相手が知らない理由」を言うときは、絶対に「Because」を使わなければならないと骨身に沁みて理解しました。
言葉の選び方一つで、態度の良し悪しまで判断されてしまう。英語の恐ろしさと面白さを同時に知った出来事でした。
「since」と「because」に関するよくある質問
論文では「since」と「because」どちらを使うべきですか?
論文では、論理的な因果関係を明確に示す必要があるため、「Because」が好まれます。ただし、「Since」も「前提条件」を示す際(数式や公理の引用など)には頻繁に使われます。「Since X is Y, we can conclude Z.(XはYである(ことが既知)なので、Zと結論づけられる)」のような形です。
「Since」を文末に置くことはできますか?
文法的に間違いではありませんが、あまり一般的ではありません。「Since」は「前提」を述べる言葉なので、文頭に置いて「まずこの前提がありますよ、だから…」と繋げるのが最も自然な流れです。文末に置くと、取ってつけたような不自然な印象を与えることがあります。
「For」も理由を表すと聞きましたが?
はい、「For」も理由を表す等位接続詞として使われますが、非常に文語的で硬い表現です。「It is morning, for the birds are singing.(朝だ。というのも鳥が歌っているからだ)」のように、後から補足的に判断の根拠を付け加える際に使われます。日常会話ではほとんど使われません。
「since」と「because」の違いのまとめ
「since」と「because」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の使い分け:新情報の理由なら「because」、既知の前提なら「since」。
- 焦点の違い:becauseは「理由」を強調し、sinceは「結果(主節)」を強調する。
- Whyへの回答:becauseのみ可能。sinceは使えない。
- 位置の傾向:becauseは文末、sinceは文頭に来ることが多い。
言葉の背景にある「情報の新しさ」と「重要度」を意識すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、的確な接続詞を選んでいきましょう。
さらに英語のニュアンスを深く知りたい方は、英語由来語の違いまとめもぜひご覧ください。
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