「stuff」と「thing」の最大の違いは、数えられるか、数えられないか(可算・不可算)という点にあります。
「stuff」は不可算名詞で「漠然とした物事の集まり」を指すのに対し、「thing」は可算名詞で「個別の物事」を指すという文法的なルールがあるため、ここを間違えるとネイティブには違和感を与えてしまいます。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つニュアンスの違いや具体的な使い分け、さらには「matter」など似た言葉との関係までスッキリ理解でき、英会話や英文メールで自信を持って使いこなせるようになります。
それでは、まず最も重要な違いを比較表で見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「stuff」と「thing」の最も重要な違い
「stuff」は数えられない漠然とした「もの」の集まり、「thing」は数えられる個別の「もの」です。「stuff」はカジュアルな響きがあり、「thing」は汎用的に使えます。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | stuff | thing |
|---|---|---|
| 文法的な違い | 不可算名詞(数えられない) ※”a stuff”や”stuffs”とは言わない | 可算名詞(数えられる) ※”a thing”, “things”と言える |
| 中心的な意味 | 漠然とした「もの」「材料」「要素」 (形のない集まりや、名前を呼ぶほどではない物) | 具体的な「もの」「こと」 (個別に区別できる対象) |
| ニュアンス | カジュアル、口語的 (「あれこれ」「例のやつ」) | 一般的、中立的 (フォーマルでも使える) |
| イメージ | 袋に詰め込まれた中身、材料の山 | 一つひとつ輪郭がある物体、事象 |
一番大切なポイントは、「stuff」には「s」をつけない、「thing」には「s」をつけて複数形にできるということですね。
「荷物」を指す場合でも、漠然と「私の持ち物」全体を指すなら「my stuff」、個々のアイテムを意識するなら「my things」となります。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「stuff」は「詰め込む」動作から来た「材料・中身」を指し、「thing」は「集会・議会」から転じて「話題・物事」全般を指すようになりました。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「stuff」の語源:「詰め込む」材料のイメージ
「stuff」は、古フランス語の「estoffer(装備する、詰め込む)」に由来しています。
動詞の「stuff」には「(七面鳥などに)詰め物をする」という意味がありますよね。
つまり、名詞の「stuff」も、輪郭がはっきりしない「材料」や「中身」、あるいは「ごちゃごちゃした塊」というイメージが根本にあります。
「形」よりも「質」や「集まり」に焦点が当たっているため、一つ二つと数えることができない不可算名詞として扱われるのです。
「thing」の語源:「個別の議題」としてのイメージ
一方、「thing」は、古英語の「þing(集会、議会)」に由来し、そこで話し合われる「案件」や「議題」を指す言葉でした。
そこから転じて、認識の対象となる個別の「事象」や「物体」を広く指すようになりました。
会議で「議題が3つある」と数えられるように、「thing」は一つひとつ独立して存在するものとして認識されるため、可算名詞として扱われます。
具体的な例文で使い方をマスターする
「stuff」は「(漠然とした)持ち物」や「やること」として使い、「thing」は「(具体的な)一つのこと」や「状況」として使います。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
「stuff」を使った例文
「stuff」はカジュアルな場面で、具体的な名前を出す必要がない「あれこれ」を指すのに便利です。
【OK例文】
- There is a lot of stuff on the desk.
(机の上にたくさんのものがある。)
※書類や文房具などが雑多にあるイメージ。 - I have so much stuff to do today.
(今日はやることが山ほどある。)
※仕事や雑用など、漠然としたタスクの山。 - Can you move your stuff?
(荷物をどかしてくれない?)
※相手の私物全般を指す。
「thing」を使った例文
「thing」は、個数を意識する場合や、少し改まった場面でも使えます。
【OK例文】
- I have three things to tell you.
(あなたに言いたいことが3つある。)
※明確に3点ある場合。 - How are things going?
(調子はどう?)
※「things」で「状況・事態」全体を表す決まり文句。 - This is the only thing I can do.
(私にできるのはこれだけです。)
※特定の一つの行動。
これはNG!間違いやすい使い方
特に日本人が間違えやすいのが、複数形の扱いです。
- 【NG】 I bought many stuffs at the supermarket.
(スーパーでたくさんのものを買った。) - 【OK】 I bought a lot of stuff at the supermarket.
「stuff」に「s」はつきません。「many」ではなく、不可算名詞に使える「a lot of」や「much」を使います。
- 【NG】 She said a bad stuff.
(彼女はひどいことを言った。) - 【OK】 She said a bad thing.
「a」をつけるなら可算名詞の「thing」です。「stuff」を使うなら「She said bad stuff.」となります。
【応用編】似ている言葉「matter」との違いは?
「matter」は「問題」「事柄」という意味で、解決すべき課題や重要性を含むニュアンスがあります。「thing」より深刻でフォーマルな響きを持ちます。
「stuff」や「thing」と似た意味で使われる言葉に「matter」があります。
「matter」は、単なる「もの」や「こと」ではなく、「関心事」「問題」「トラブル」といった、対処すべき事柄というニュアンスが強くなります。
例えば、「What’s the matter?(どうしたの?/何が問題なの?)」というフレーズは有名ですよね。
「It doesn’t matter.(それは重要ではない/構わない)」のように動詞としても使われ、「重要性」を含んでいる点が「stuff」や「thing」との大きな違いです。
ビジネスシーンで「個人的な用事」と言う場合、「personal stuff」(カジュアル)よりも「personal matter」(少し深刻・フォーマル)の方が、重みが出るでしょう。
「stuff」と「thing」の違いを言語学的に解説
「stuff」は物質名詞的な性質を持ち、境界線が曖昧な「質量」として認識されます。一方「thing」は可算名詞として、境界線が明確な「個体」として認識されます。
少し専門的な視点から、この二つの違いを深掘りしてみましょう。
言語学や認知文法の分野では、名詞を「有界(bounded)」か「非有界(unbounded)」かで分類する考え方があります。
「thing」は有界的な概念です。
つまり、一つひとつの対象に明確な境界線があり、「ここからここまでが1個」と認識できるものです。だからこそ、1, 2, 3…と数える(カウントする)ことが可能になります。
対して「stuff」は非有界的な概念です。
水や砂のように、明確な切れ目がなく、全体として一つの塊や質として認識されます。これを「物質名詞」的な扱いと言います。
「stuff」が指す対象は、実際には個別の物体(本、服、ペンなど)の集合体であることが多いのですが、話し手の認識の中では、それらを個別に区別せず、ひとまとまりの「構成要素」や「材料」として捉えているわけです。
「私の部屋にあるもの(stuff)」と言ったとき、話し手は個々のアイテムではなく、部屋を埋め尽くしている「所有物の総体」をイメージしているのです。
この「認識の枠組みの違い」が、文法上の可算・不可算の違いとして表れているんですね。
「stuff」と「thing」の使い分けで冷や汗をかいた体験談
僕も海外生活を始めたばかりの頃、この使い分けで恥ずかしい思いをしたことがあります。
語学学校の初日、自己紹介を終えて休憩時間に入ったときのことです。ネイティブの先生に、週末の予定を聞かれました。
僕は張り切って、「買い物をしたり、洗濯をしたり、いろいろやる予定です」と言いたくて、こう答えました。
「I have many stuffs to do!」
すると先生は、優しく微笑みながらも、少し困ったような顔をして言いました。
「”Stuffs”とは言わないんだよ。”Stuff”は数えられないから、”a lot of stuff”と言うか、”many things”と言った方が自然だね」
顔から火が出るかと思いました。「stuff」に「s」をつけるのは、初歩的なミスだったのです。
さらに恥ずかしかったのは、その後の会話で「You know, like… stuff like that.(ほら、なんかそんな感じのものだよ)」と、言葉に詰まるたびに「stuff」を連発してしまったことです。
後で知ったのですが、あまりに「stuff」を多用すると、語彙が乏しく、少し投げやりで知性に欠ける印象を与えてしまうこともあるそうです。
この経験から、文法的な正確さはもちろん、TPOに合わせて「thing」や具体的な名称を使い分けることの重要性を学びました。
「カジュアルで便利な言葉ほど、使いすぎには注意が必要だ」という教訓は、今でも僕の英語学習の根幹にあります。
「stuff」と「thing」に関するよくある質問
「stuff」は失礼な言葉になりますか?
「stuff」自体は失礼な言葉ではありませんが、非常にカジュアルな響きを持っています。上司や目上の人、フォーマルなビジネスメールなどで使うと、馴れ馴れしい印象や、具体性に欠ける印象を与える可能性があります。そのような場面では「things」「items」「matters」「materials」など、より具体的またはフォーマルな単語を選ぶのが無難です。
「foodstuff」の「stuff」も同じ意味ですか?
はい、語源的には同じです。「foodstuff」は「食料品」「食糧」という意味で、食品を構成する「材料」「原料」というニュアンスが含まれています。このように、他の単語と結びついて複合語を作る場合も、「材料」「要素」という意味合いが生きています。
「Good stuff!」ってどういう意味ですか?
これはネイティブがよく使う褒め言葉で、「いいじゃん!」「よくやった!」「さすが!」といった意味です。相手の行動や成果物、あるいは美味しい食べ物などに対して、「良いものだ(中身が良い)」と評価する際に使われます。カジュアルな会話で頻出する表現ですね。
「stuff」と「thing」の違いのまとめ
「stuff」と「thing」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 数の概念が違う:「stuff」は数えられない(不可算)、「thing」は数えられる(可算)。
- イメージの違い:「stuff」は漠然とした集まりや材料、「thing」は個別の事象や物体。
- ニュアンスの違い:「stuff」はカジュアルで口語的、「thing」は汎用的。
- 使い分けのコツ:「s」をつけたいなら「things」、ひとかたまりで言うなら「stuff」。
「数えられるか、数えられないか」という文法的な違いは、単なるルールの暗記ではなく、その言葉が持つ「世界観」の違いです。
日常会話では「stuff」の便利さに頼りたくなりますが、場面に応じて「thing」や具体的な名称を使い分けることで、あなたの英語はぐっと洗練されたものになりますよ。
言葉の持つ微妙なニュアンスを楽しみながら、ぜひ実際の会話で使ってみてください。外来語やカタカナ語の使い分けについてさらに知りたい方は、日常会話の外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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