「サングラス」と「グラサン」、どちらも日差しを遮るメガネを指しますよね。
でも、会話の中で「グラサン」と聞くと、なんだか特定のイメージ(ちょっと強面の人や昔の芸能人とか…)が浮かびませんか?
実はこの二つ、単に「標準語」か「俗語(スラング)」かという違いなんです。TPOを間違えると、ちょっと恥ずかしい思いをするかもしれません。
この記事を読めば、「サングラス」と「グラサン」の決定的な違いから語源、さらには「シェード」との違いまでスッキリ理解でき、もう使い分けに迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「サングラス」と「グラサン」の最も重要な違い
基本的には、「サングラス」は、日差しを防ぐメガネを指す「標準語」です。一方、「グラサン」は、「サングラス」の音を逆さにした「倒語(とうご)」と呼ばれる俗語(スラング)です。意味するモノは同じですが、「グラサン」にはやや古風な響きや、特定の業界・文化(芸能界、不良文化など)のニュアンスが伴います。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | サングラス (Sunglasses) | グラサン |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 日除けのメガネ(標準語) | 日除けのメガネ(俗語・倒語) |
| 語源 | 英語の “Sunglasses” | 「サングラス」 → 「グラサン」(倒語) |
| ニュアンス | 一般的、中立的、ファッショナブル | 俗語的、やや古風、業界用語的、特定のカルチャー(ヤンキー、芸能人など)を連想 |
| 主な使われ方 | 「サングラスをかける」「サングラス売り場」 | 「グラサンかけてる」「あの人グラサン似合う」 |
「サングラス」がTPOを問わず使える標準語であるのに対し、「グラサン」は使う場面や相手を選ぶ、やや古風なスラングであるという点が大きな違いですね。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「サングラス」は英語の “Sunglasses”(Sun=太陽 + Glasses=メガネ)がそのままカタカナ語として定着したものです。「グラサン」は、「サングラス」の音節を逆転させた「倒語(とうご)」であり、業界用語や若者言葉の一種として広まりました。
なぜこの二つの言葉が生まれたのか、その語源を紐解くと、ニュアンスの違いがよくわかりますよ。
「サングラス(Sunglasses)」 – 標準語としての「日除けメガネ」
「サングラス」の語源は、英語の「Sunglasses」です。
これは「Sun(太陽)」と「Glasses(メガネ)」を組み合わせた言葉で、文字通り「太陽(の日差し)から目を守るメガネ」を意味します。これがそのままカタカナ語として日本語に定着し、標準語として使われています。
「グラサン」 – 倒語(俗語)としての「サングラス」
一方、「グラサン」は日本語が生み出した俗語(スラング)です。
これは、言葉の音節をひっくり返して作る「倒語(とうご)」と呼ばれる手法から生まれました。「サン・グラ・ス」の「グラ」と「サン」を入れ替えて「グラサン」となったわけです。
倒語は、古くは江戸時代の職人言葉や、現代では芸能界・テレビ業界の業界用語(例:「シー(寿司)」「ワイハ(ハワイ)」)としてよく使われます。「グラサン」も、元々はそうした特定のコミュニティで使われ始めた隠語的な言葉だったんですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
「サングラス」は「夏の日差しが眩しいのでサングラスを買う」のように、TPOを問わず使えます。「グラサン」は「あの強面(こわもて)の人がグラサンを外したら優しそうな目だった」のように、特定のイメージを伴うカジュアルな場面で使われます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
「サングラス」が使われる場面(標準語)
「サングラス」は、フォーマルな場でもカジュアルな場でも使える標準語です。
【OK例文:サングラス】
- 日差しが強いので、ドライブ用にサングラスを購入した。
- あの女優は、新作のサングラスをプロデュースしている。
- ファッションとして、冬でもサングラスをかける人が増えている。
- (お店で)「サングラス売り場はどこですか?」
「グラサン」が使われる場面(俗語・スラング)
「グラサン」は、気心の知れた仲間内での会話や、特定の雰囲気を表現したい時に使われます。
【OK例文:グラサン】
- 「うわ、あの人のグラサン、真っ黒で全然目が見えないね」
- 彼はいつも革ジャンにグラサンというスタイルだ。
- (親しい友人に)「お前、そのグラサン似合ってないぞ(笑)」
これはNG!間違えやすい使い方
TPOを間違えると、失礼になったり、幼稚に聞こえたりします。
- 【NG】(ニュース番組のアナウンサーが)「明日は日差しが強いため、グラサンの着用をおすすめします」(理由)「グラサン」は俗語であり、公的な報道やフォーマルな場には不適切です。この場合は「サングラス」が正解です。
- 【NG】(取引先へのメールで)「新商品のグラサンのカタログをお送りします」
- 【OK】(取引先へのメールで)「新商品のサングラスのカタログをお送りします」(理由)ビジネス文書では俗語は避けるべきです。相手との関係性が非常にカジュアルでない限り、「サングラス」を使用します。
【応用編】似ている言葉「シェード」との違いは?
「シェード(Shades)」も「サングラス」を指す俗語ですが、これは英語圏(特にアメリカ英語)のスラングです。「グラサン」が日本語の倒語であるのに対し、「シェード」は英語の “Shade”(陰)から来ています。ファッション業界や音楽好きの間で「おしゃれなサングラス」というニュアンスで使われることがあります。
「サングラス」や「グラサン」と似た言葉に「シェード(Shades)」があります。
これも「サングラス」を意味する言葉ですが、「グラサン」が日本語の俗語(倒語)であるのに対し、「シェード」は英語のスラングです。
英語の “Shade”(陰、日陰)の複数形で、”Sunglasses” よりもカジュアルな表現として、特にアメリカ英語でよく使われます。
日本では、主にファッション業界や音楽好きな人が、「あのアーティストのシェード、格好いい」のように、「グラサン」よりもオシャレなニュアンスで使う傾向がありますね。
「サングラス」と「グラサン」の違いを社会文化的に解説
「グラサン」という言葉は、1980年代〜90年代の「ヤンキー文化」や「バブル期の芸能界」と強く結びついています。当時は「(強面の)不良がかけているもの」という記号的な意味合いが強く、その時代の空気感を反映した俗語でした。現代では、その記号性が薄れ、「やや古風な愛称」として使われることが増えています。
「サングラス」は単なる「日除けメガネ」という機能を示す中立的な言葉ですが、「グラサン」は特定の社会文化的なイメージと強く結びついています。
特に「グラサン」という響きが広まった1980年代〜90年代、それは「ヤンキー(不良)」や「ツッパリ」文化の象徴的なアイテムでした。変形学生服やリーゼントに、真っ黒な「グラサン」を合わせるのが定番スタイルだったんです。(「不良」と「ヤンキー」の違いも気になりますね)
また、同時期にテレビで活躍していた芸能人(特にタレントやミュージシャン)が、素顔を隠したり、威厳を見せたりするために「グラサン」を多用したことも、そのイメージを強めました。
つまり、「グラサン」は単なる道具ではなく、「ちょっと“カタギ”ではない」「怖い」「業界人っぽい」といった特定のアイデンティティを示す記号(シンボル)だったわけです。
現代では、こうした特定の文化的な重みは薄れ、「サングラス」を親しみを込めて(あるいは、少しダサいというニュアンスを込めて)呼ぶ愛称として使われることが多くなりましたね。
僕が「グラサン」と呼んで時代遅れと言われた体験談
僕も「グラサン」という言葉の世代間ギャップで、恥ずかしい思いをしたことがあります。
数年前、当時20代前半だった後輩と夏に外出する際、僕が「日差し強いから、グラサン持ってきた?」と何気なく聞いたんです。僕(当時30代半ば)の世代では、親しい間柄なら普通の会話でした。
すると、その後輩はキョトンとした顔で、こう聞き返してきました。
「グラサン…ですか? ああ、サングラスのことか。グラサンって(笑)なんか昭和ですね!」
僕は一瞬固まってしまいました。彼らにとって「グラサン」は、僕らが思っている以上に「古い言葉」「ダサい言葉」として認識されていたんです。
確かに、彼らは「サングラス」とは言いますが、「グラサン」とは言いません。僕が「グラサン」と言った瞬間、僕の頭の中では「おしゃれな日除け」のイメージだったのに、後輩の頭の中では「昭和の刑事ドラマに出てくる強面の人」が浮かんでいたのかもしれません。
この経験から、俗語には強烈な「賞味期限」や「世代イメージ」があることを痛感しました。TPOだけでなく、相手の世代も考えて言葉を選ばないと、意図せず「古い人」認定されてしまうんだな…と反省しましたね。
「サングラス」と「グラサン」に関するよくある質問
「グラサン」は死語ですか?ダサいですか?
「死語」とまでは言えませんが、主に昭和後期〜平成初期に流行した言葉であるため、現代の若者(10代〜20代)が日常的に使うことは少ないです。そのため、使う人によっては「やや古風」「ダサい」という印象(いわゆる「おじさん構文」的)を与える可能性はあります。ただし、あえてそのレトロ感を楽しむ文脈で使われることもあります。
「グラサン」の語源は業界用語ですか?
はい、その可能性が高いです。「サングラス」をひっくり返した「倒語(とうご)」であり、元々はテレビ業界や芸能界、あるいは特定のコミュニティで使われていた業界用語(隠語)が、一般に広まったものと考えられています。
「サングラス」の「サン」は太陽ですか?
はい、その通りです。英語の「Sun(太陽)」と「Glasses(メガネ)」が組み合わさって「Sunglasses(サングラス)」となりました。
「サングラス」と「グラサン」の違いのまとめ
「サングラス」と「グラサン」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 「サングラス」は「標準語」:英語の “Sunglasses” が語源で、TPOを問わず使える。
- 「グラサン」は「俗語(スラング)」:「サングラス」をひっくり返した倒語。
- ニュアンスの違い:「グラサン」には「やや古風」「業界用語っぽい」「ヤンキー文化」といったニュアンスが伴うことがある。
- 世代間ギャップ:若者層には「グラサン」が通じないか、「ダサい」と感じられる可能性があるため注意が必要。
意味するモノは同じでも、言葉の選び方一つで相手に与える印象はガラッと変わります。
フォーマルな場や世代の違う相手には「サングラス」、気心の知れた仲間内であえて使うなら「グラサン」、といった使い分けが良いかもしれませんね。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、スラング・俗語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。