「that」は前の言葉(先行詞)を詳しく説明する「形容詞」のような働きや、文をつなぐ「接続詞」としての働きをしますが、「what」はそれ自体が「もの・こと(先行詞)」を含んだ「名詞」としての働きをします。
どちらも日本語では「~ということ」や「~するもの」と訳されることがあり、文の途中に出てくると混乱しやすいですが、英語では「その言葉の前に説明する対象があるか」や「後ろの文が完全か不完全か」というルールで明確に使い分けられます。
この記事を読めば、関係代名詞や接続詞としての複雑なルールがスッキリと分かり、リーディングや英作文で迷わず正確に使いこなせるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「that」と「what」の最も重要な違い
基本的には前に説明する言葉(先行詞)があれば「that」、なければ「what」と覚えるのが簡単です。また、後ろの文が完全なら接続詞の「that」、主語や目的語が欠けていれば関係代名詞の「what」を使います。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | that (ザット) | what (ワット) |
|---|---|---|
| 先行詞(前の名詞) | あり(関係代名詞の場合) なし(接続詞の場合) | なし(what自体に含まれる) |
| 後ろの文の構造 | 不完全(関係代名詞) 完全(接続詞) | 不完全(主語か目的語が欠けている) |
| 日本語訳 | ~する(ような)… ~ということ | ~するもの、~すること 何が(を)~か |
| 役割イメージ | 説明を加える「接着剤」 | 中身が入った「箱」 |
一番大切なポイントは、「what」は「the thing(s) which」と言い換えられるように、それ自体が「もの・こと」という意味を持っているということですね。
一方、「that」は単に文をつなぐ機能や、前の名詞を指す機能だけで、それ自体に「もの・こと」という意味はありません。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「that」は古英語の“あれ・それ”を指す指示詞が語源で、特定の対象を指し示す役割を持ちます。一方、「what」は“何”を問う疑問詞が語源で、不明な対象や事柄そのものを指す役割へと発展しました。
なぜこの二つの言葉に役割の違いが生まれるのか、語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「that」の成り立ち:特定のものを「指す」
「that」は、古英語の「þæt(ザット)」に由来し、元々は遠くにあるものや、既に出た話題を指す「あれ」「それ」という意味の指示代名詞でした。
そこから、「あれだよ、あれ、つまりね…」と情報を付け加えるような感覚で、関係代名詞や接続詞としての機能が生まれました。
あくまで「何かを指し示す」ための言葉なので、指し示す対象(先行詞)が別にあるか、あるいは事実そのものを指して「~ということ」とまとめる役割に特化しています。
「what」の成り立ち:中身を「問う」から「含む」へ
一方、「what」は、古英語の「hwæt(フワット)」に由来し、「何?」と問う疑問詞でした。
「何かわからないもの」を問う言葉から、「(具体的には言わないけれど)そのもの」や「~するもの(全部)」というふうに、対象そのものを表す関係代名詞としての用法が派生しました。
つまり、whatは「?」という未知の箱のようなもので、その箱の中に「もの・こと」が最初から入っているイメージなのです。
だから、わざわざ前に「the thing(先行詞)」を置く必要がないんですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
「I know the book that…(本を知っている)」のように名詞を詳しく言うならthat、「I know what…(~なものを知っている)」のように名詞なしでまとめるならwhatです。文の構造(完全か不完全か)を見極めるのがコツです。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
文法的な役割ごとに使い分けを見ていきましょう。
関係代名詞での使い分け
「~なもの」と説明する場合の違いです。
【OK例文:that(先行詞あり)】
- This is the book that I bought yesterday.
(これは私が昨日買った本です。→「本」を説明) - He is the man that lives next door.
(彼は隣に住んでいる男性です。→「男性」を説明)
【OK例文:what(先行詞なし)】
- This is what I bought yesterday.
(これが私が昨日買ったものです。→what自体が「もの」) - I don’t understand what you said.
(私はあなたが言ったことが理解できません。)
接続詞・間接疑問文での使い分け
「~ということ」や「何が~か」という名詞節を作る場合です。
【OK例文:that(完全な文をつなぐ)】
- I know that he is kind.
(私は彼が親切だということを知っている。→「he is kind」だけで文が成立する)
【OK例文:what(不完全な文をつなぐ)】
- I know what he wants.
(私は彼が何を欲しがっているか知っている。→「he wants」の後ろに目的語が欠けている)
これはNG!間違えやすい使い方
文法のテストや英作文でよくある間違いを見てみましょう。
- 【NG】This is the book what I bought.
(これは私が買った本です。) - 【OK】This is the book that (or which) I bought.
(これは私が買った本です。)
「the book」という先行詞があるのに「what」を使ってはいけません。「what」は先行詞を飲み込んでいる言葉なので、先行詞と並べると重複してしまいます。
- 【NG】I think what he is right.
(私は彼が正しいと思う。) - 【OK】I think that he is right.
(私は彼が正しいと思う。)
「he is right」は主語も補語も揃った完全な文です。要素が欠けていない場合は、単なる接着剤である接続詞の「that」を使います。「what」は主語や目的語の代わりになるので、入る隙間がありません。
【応用編】「that」と「what」を使った重要構文の違いは?
「It is … that ~」は強調構文や形式主語構文で使われ、特定の要素を強調したり長い主語を後ろに回したりします。「What is … is ~」は関係代名詞whatを使った強調表現(擬似分裂文)で、「~なのは…だ」という形を作ります。
この二つの単語は、文の構造を決定づける重要な構文でも活躍します。
これも押さえておくと、表現力が格段に上がりますよ。
強調構文:It is A that …
文の一部(A)を強調して、「…なのはAだ!」と言いたい場合に使います。
- It was Tom that broke the window.
(窓を割ったのはトムだ。)
形式主語構文:It is … that ~
「~ということは…だ」と、長い主語(that節)を後ろに回す形です。
- It is true that he is rich.
(彼がお金持ちだということは本当だ。)
Whatを使った強調(擬似分裂文):What … is ~
「(私が)~なのは…だ」と、whatで主語の塊を作って強調する形です。
- What I need is money.
(私が必要なものはお金だ。)
「I need money.」と言うよりも、「必要なのはね、お金なんだよ」とタメを作るようなニュアンスが出せます。
「that」と「what」の違いを文法的な視点で解説
文法的には「節(Clause)」の性質で見分けます。接続詞thatが導く節は、S+V+Oなどが全て揃った「完全な文(Complete Sentence)」です。一方、関係代名詞whatが導く節は、what自体がSやOの役割を果たすため、残りの部分だけ見るとSかOが欠けた「不完全な文(Incomplete Sentence)」になります。
専門的な視点から見ると、この二つの最大の違いは「欠落(Gap)があるかどうか」です。
接続詞「that」の後ろには、何も欠けていない完全な文が来ます。
That [ he likes apples ]. (彼はリンゴが好きだ)
この [ ] の中だけで文として自立できます。
一方、関係代名詞「what」の後ろには、名詞が一つ欠けた不完全な文が来ます。
What [ he likes ( ) ]. (彼が好きだ(何かを))
この [ ] の中では、likeの目的語が抜けています。
その抜けた穴を埋めるのが、先頭にある「what(もの)」なのです。
この構造的な違いを理解していると、TOEICなどの文法問題で空欄補充が出たときに、後ろの文を見るだけで瞬時に正解を選べるようになります。
より深く学びたい方は、国立国語研究所などの言語学資料や、生成文法における「補文標識(Complementizer)」と「主要部(Head)」の解説を参照すると、構造のパズルが解けて面白いですよ。
僕が「what」を使いすぎて赤ペンだらけになった英作文の体験談
僕も英語を本格的に学び始めた頃、この「that」と「what」の違いで大失敗したことがあるんです。
大学の英作文の授業で、「私が言いたいことは、彼は嘘をついているということだ」という文を書く課題が出ました。
僕は「こと=what」と丸暗記していたので、自信満々にこう書きました。
「What I want to say is what he is telling a lie.」
返ってきた答案用紙は、後半のwhatが赤ペンで修正され、「that」に書き換えられていました。
先生からのコメントにはこうありました。
「前半の What I want to say(私が言いたいこと)は正解。でも後半は、『彼が嘘をついている』という事実(完全な文)をまとめるだけだから、接続詞の that を使いなさい。whatだと『彼が嘘をついているもの』という意味不明な文になるよ」
ハッとしました。
僕は日本語の「こと」につられて、何でもかんでも「what」を使っていたのです。
前半は「say」の目的語(何を言うか)が必要なので「what」、後半は文全体をパッケージするだけなので「that」。
「I know what he ate.(何を食べたか知ってる=内容)」と「I know that he ate.(食べたという事実を知ってる)」の違いも、この時ようやく腑に落ちました。
この経験から、「後ろの文が完全ならthat、欠けてたらwhat」というルールを徹底的に意識するようになりました。
たった一語の違いで、文の構造がガタガタになってしまう。英語の論理性の厳しさを知った出来事でした。
「that」と「what」に関するよくある質問
「All that …」と「What …」は同じ意味?
ほぼ同じ意味になることがあります。「All (that) I want is you.」は「私が欲しいすべてのものはあなただ=あなただけが欲しい」。「What I want is you.」は「私が欲しいものはあなただ」。All thatの方が「これだけでいい」という限定的なニュアンスが強まりますが、構造的には似ています。
関係代名詞のthatは省略できますか?
はい、目的格(動詞や前置詞の目的語になる場合)のthatは省略できます。「The book (that) I bought」は「The book I bought」と言えます。しかし、主格(主語になる場合)のthatは省略できません。「The man that lives here」を「The man lives here」とすると文の意味が変わってしまいます。
「That’s what I thought.」はどういう意味?
「私もそう思ってた(やっぱりね)」という同意や確認のフレーズです。「That(相手が言ったことや状況)is what I thought(私が思っていたことだ)」という構造で、日常会話で非常によく使われます。
「that」と「what」の違いのまとめ
「that」と「what」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の違い:先行詞があれば「that」、なければ「what」。
- 文の構造:後ろが完全な文なら接続詞「that」、不完全なら関係代名詞「what」。
- イメージ:thatは「指す・つなぐ」、whatは「中身を含む」。
- 使い分け:事実を言うならthat、中身(対象)を言うならwhat。
言葉の背景にある「箱の中身」か「接着剤」かというイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、的確な単語を選んでいきましょう。
さらに英語のニュアンスを深く知りたい方は、英語由来語の違いまとめもぜひご覧ください。
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