英語を勉強していて、「toward」と「towards」、どっちを使えばいいのか迷ったことはありませんか?
単語の最後に「s」があるかないかだけの違いですが、実はこれ、アメリカ英語かイギリス英語かで使い分けられることが多いんです。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ地域的な背景や微妙なニュアンスの違いまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「toward」と「towards」の最も重要な違い
基本的にはアメリカ英語では「toward」、イギリス英語では「towards」が好まれますが、意味や機能に違いは全くありません。どちらを使っても間違いではありませんが、文脈や相手に合わせて使い分けるとより自然です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | toward | towards |
|---|---|---|
| 主な使用地域 | アメリカ、カナダ | イギリス、オーストラリア |
| 意味 | ~の方へ、~に向かって | ~の方へ、~に向かって(同じ) |
| 品詞 | 前置詞(形容詞としての古い用法あり) | 前置詞 |
| ニュアンス | 少しフォーマルで直接的な響き | 少し口語的で柔らかい響き |
一番大切なポイントは、意味は全く同じで、地域による好みの違いだということですね。
アメリカ人は「s」を省く傾向があり、イギリス人は「s」をつける傾向がある、と覚えておけば間違いありません。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
古英語の「toweard」が語源です。「to(方向)」+「ward(向く)」で構成されています。語尾の「s」は、副詞を作るための古い文法要素(属格語尾)の名残であり、意味を変えるものではありません。
なぜ「s」がある形とない形が存在するのか、語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「-ward」の成り立ち:方向を示す接尾辞
「toward」の語源は、古英語の「toweard」です。
これは、「to(~へ)」という前置詞と、「weard(~の方へ向く)」という方向を表す接尾辞が組み合わさってできました。
つまり、もともとは「その方向へ向いている」という意味合いを持っていたんですね。
「-wards」の成り立ち:「s」は副詞を作る印
一方、「towards」についている「s」は、古英語における「副詞的属格(adverbial genitive)」と呼ばれるものです。
昔の英語では、単語の語尾に「s」をつけることで、副詞としての機能を持たせる習慣がありました(例:always, unawaresなど)。
この名残でイギリス英語では「s」付きの形が好まれ続けていますが、アメリカ英語では簡略化されて「s」が落ちた形が定着したと言われています。
具体的な例文で使い方をマスターする
物理的な方向を示す場合も、抽象的な傾向や目標を示す場合も、どちらの単語も使えます。アメリカ英語圏の相手には「toward」、イギリス英語圏の相手には「towards」を使うとスムーズです。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
相手の国籍や企業の文化に合わせて選べると、プロフェッショナルな印象を与えられますよ。
【OK例文:toward(アメリカ英語圏)】
- We are working toward a solution.(解決に向けて取り組んでいます。)
- The trend is moving toward remote work.(トレンドはリモートワークに向かっています。)
- This contribution goes toward the charity.(この寄付は慈善事業に充てられます。)
【OK例文:towards(イギリス英語圏)】
- We made a step towards agreement.(合意に向けて一歩前進しました。)
- His attitude towards the project is positive.(そのプロジェクトに対する彼の態度は前向きです。)
- I am looking towards the future.(私は未来を見据えています。)
日常会話での使い分け
日常会話でも、基本的にはどちらを使っても通じます。
【OK例文】
- She walked toward(s) the door.(彼女はドアの方へ歩いて行った。)
- It’s getting toward(s) evening.(夕方に近づいてきた。)
- I have feelings toward(s) him.(彼に対して特別な感情を持っている。)
これはNG!間違えやすい使い方
基本的には互換性がありますが、形容詞として使う場合には注意が必要です。
- 【NG】 a towards event
- 【OK】 an untoward event(不都合な出来事)※「toward」単体の形容詞用法は古風で稀ですが、「untoward」などの形では使われます。「s」付きは形容詞にはなりません。
現代英語では「toward」を形容詞(「差し迫った」「有望な」の意)として使うことは稀ですが、もし形容詞的に使う場合は「s」のない「toward」が正解です。
【応用編】似ている言葉「forward」と「forwards」などの違いは?
「toward(s)」と同様に、「forward/forwards」「backward/backwards」なども、基本的には「sなし=アメリカ」「sあり=イギリス」の傾向があります。ただし、「forward」に関しては、副詞以外(形容詞・動詞・名詞)の用法では地域に関わらず「sなし」が原則です。
「toward」と「towards」の違いがわかったところで、同じルールが適用される他の単語についても押さえておきましょう。
-ward(s)系単語の使い分けルール
方向を表す以下の単語も、同じような地域差があります。
- backward / backwards(後ろへ)
- upward / upwards(上へ)
- downward / downwards(下へ)
- afterward / afterwards(その後)
これらも、「アメリカはsなし」「イギリスはsあり」が好まれる傾向にあります。
注意!「forward」の特例
「forward(前へ)」に関しては少し特殊です。
- 副詞の場合:アメリカは「forward」、イギリスは「forwards」も使う。
- 形容詞・動詞・名詞の場合:地域に関係なく「forward」一択です。
例えば、「forward thinking(前向きな考え)」や「look forward to(楽しみに待つ)」の場合、「forwards」とすることはできません。
「toward」と「towards」の違いを学術的に解説
言語学的なコーパス(言語データ)分析によると、アメリカ英語では「toward」が圧倒的に優勢ですが、イギリス英語でも近年は「toward」の使用頻度が増加傾向にあります。意味論的な差異はなく、文体やリズムによる選択が行われることもあります。
少し専門的な話になりますが、言語学のデータ(コーパス)から見ると、興味深い傾向が見えてきます。
アメリカの現代英語コーパス(COCA)などのデータでは、「toward」の使用頻度が「towards」を圧倒的に上回っています。
一方で、イギリスのコーパス(BNC)では「towards」が優勢ですが、近年では「toward」の使用例も増えてきています。これは、インターネットやメディアを通じてアメリカ英語の影響が世界的に広がっているためと考えられます。
また、意味論的には完全に同義語(Synonym)として扱われますが、詩や文学作品においては、音節のリズムや韻を踏むために、著者が意図的にどちらかを選択することもあります。
言葉の変遷や地域差については、国立国語研究所のような言語研究機関の資料を調べるのも、言葉への理解を深める良いきっかけになるかもしれませんね。
僕が「towards」を使って指摘された留学中の体験談
僕も英語学習を始めたばかりの頃、この「s」の有無でちょっとした洗礼を受けたことがあるんです。
大学生の時、アメリカのシアトルへ語学留学に行きました。最初のライティングの授業で、エッセイを提出した時のことです。僕は高校時代に買った英和辞典がたまたまイギリス英語寄りだったのか、無意識に「towards」を使っていました。
「I am working towards my goal.」
翌日、返却されたエッセイを見て驚きました。先生の赤いペンで「towards」の「s」が斜線で消され、「toward (US style)」とメモ書きされていたのです。
授業の後、先生に聞きに行きました。「これは間違いですか?」と。
先生は笑って答えました。「間違いじゃないよ。イギリスに行けばそれが正解だ。でもここはアメリカだ。郷に入っては郷に従え、アメリカンスタイルで書いた方がクールだろ?」
その時は「そんな細かいこと!」と思いましたが、後になって気づきました。言葉の選び方一つで、「自分がどこの文化圏の英語を学んでいるか」が相手に伝わってしまうのだと。
それ以来、僕はアメリカ人の友人と話す時は「toward」、イギリス出身の教授にメールする時は「towards」と、相手に合わせて使い分けるようにしました。
この経験から、「正解・不正解」ではなく「スタイルと相手への配慮」が大切だということを学びました。
「toward」と「towards」に関するよくある質問
テストでどちらを書けばいいですか?
学校の試験や資格試験(英検、TOEICなど)では、基本的にどちらを使っても正解になります。ただし、一つの文章の中で混在させず、どちらかに統一するのがマナーです。アメリカ英語が中心の教材なら「toward」が無難でしょう。
発音に違いはありますか?
はい、少し違います。「toward」は「トード」または「トゥウォード」のように発音し、「towards」は語尾に「ズ」の音が加わり「トードズ」のようになります。地域によってもイントネーションが異なります。
「Toward」と文頭に来ることはありますか?
はい、あります。「Toward the end of the movie…(映画の終わりに向けて…)」のように、文頭で前置詞句を作ることができます。この場合もsの有無は地域差によります。
「toward」と「towards」の違いのまとめ
「toward」と「towards」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 意味は同じ:「~の方へ」「~に向かって」という意味に違いはありません。
- 地域差がカギ:アメリカ英語は「toward」、イギリス英語は「towards」が主流。
- 統一感が大切:一つの文章内で混在させず、どちらかのスタイルに統一しましょう。
言葉の背景にある地域差や歴史を知ると、単なる暗記ではなく、相手に合わせた言葉選びができるようになります。
これからは自信を持って、自分のスタイルで使い分けていきましょう。英語の微妙なニュアンスの違いについてさらに知りたい方は、英語由来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
スポンサーリンク