「旅行」を英語で言いたいとき、「trip」と「travel」、どちらを使えばいいか迷った経験はありませんか?
どちらも日本語では「旅行」と訳せますが、ネイティブスピーカーはこれらを明確に使い分けています。
実はこの二つの言葉、比較的短い具体的な旅行か、一般的な旅行や長旅かで使い分けるのが基本なんです。さらに、文法的な違い(数えられるか、数えられないか)も重要なポイントになります。
この記事を読めば、「trip」と「travel」の核心的なイメージから、具体的な使い分け、さらには似た言葉「journey」との違いまでスッキリ理解でき、英会話やライティングで迷うことはもうありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「trip」と「travel」の最も重要な違い
基本的には、「trip」は出発して元の場所に戻ってくる比較的短い具体的な旅行、「travel」は一般的な旅行行為や長期間の移動を指します。「trip」は数えられる名詞、「travel」は数えられない名詞という文法的な違いも重要です。
まず、結論からお伝えしますね。
「trip」と「travel」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | trip | travel |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 特定の目的を持ち、出発して元の場所に戻ってくる、比較的短期間の具体的な旅行・移動。 | 一般的な「旅行する」という行為そのものや、比較的長期間にわたる旅行・移動。 |
| 期間(傾向) | 短い(日帰り、週末、数週間程度) | 長い(数週間、数ヶ月、または期間を特定しない) |
| 具体性 | 具体的(例:a business trip, a school trip) | 抽象的・一般的(例:air travel, space travel) |
| 文法 | 可算名詞(数えられる) 例:two trips |
不可算名詞(数えられない) 例:much travel ※動詞としても使う (travelled, travelling) |
| ニュアンス | 行って帰ってくる一連の移動、小旅行、出張。 | 旅行という概念、移動そのもの、長旅、冒険。 |
一番大切なポイントは、具体的な「行って帰ってくる」短い旅行には「trip」、一般的な旅行行為や長い移動には「travel」を使うということですね。
そして、文法的に「trip」は数えられ、「travel」は数えられない、という点も会話やライティングでは非常に重要になります。
なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む
「trip」は元々「軽やかに踏む、跳ねる」という意味で、短い移動のニュアンスを持ちます。一方、「travel」は古フランス語の「travail(骨折り、苦労)」が語源で、かつての旅行が困難であったことから、苦労を伴う長旅のイメージを持っています。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、それぞれの言葉が持つ元々の意味、つまり語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「trip」の由来:「踏み出す」短い移動のイメージ
「trip」という言葉は、ゲルマン語起源の言葉で、元々は「軽く踏む」「跳ねる」「踊る」といった意味合いを持っていました。
英語で「つまずく」という意味で使われるのも、この「足を踏み出す」イメージから来ていますね。
そこから転じて、「短い距離を軽快に移動する」「小旅行に出かける」という意味合いで使われるようになったと考えられます。
「ちょっとそこまで踏み出して、戻ってくる」ような、軽やかな短い移動のイメージを持つと分かりやすいでしょう。
「travel」の由来:「骨折り」苦労を伴う移動のイメージ
一方、「travel」の語源は、古フランス語の「travail(トラヴァイユ)」に遡ります。
この「travail」は、「骨折りの仕事」「苦労」「陣痛」といった意味を持つ言葉でした(現代フランス語でも「仕事」を意味します)。
昔の旅行は、現代のように快適な交通手段がなく、非常に困難で骨の折れるものでしたよね。盗賊に襲われる危険もあったでしょう。
このことから、「travel」には元々、苦労や困難を伴う長期間の移動というニュアンスが含まれているのです。
現代では旅行の苦労は減りましたが、「travel」が一般的な旅行行為や比較的長い移動を指す背景には、こうした語源のイメージが残っているんですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスでは「出張」に「business trip」をよく使います。日常会話では、「週末の小旅行」なら「weekend trip」、「海外旅行(行為)」なら「foreign travel」のように使い分けます。「How was your travel?」のように不可算名詞の travel を可算名詞のように使うのは誤りです。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
目的や期間、具体性を意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:trip】
- He is away on a business trip to Osaka this week. (彼は今週、大阪へ出張中です。) ※行って帰ってくる具体的な出張
- How many international business trips do you take a year? (あなたは年に何回、海外出張に行きますか?) ※回数を数えられる
- The company paid for her trip to the conference. (会社が彼女の学会への出張費を支払った。) ※特定の移動
【OK例文:travel】
- This job involves a lot of international travel. (この仕事には多くの海外移動が伴います。) ※一般的な移動行為、数えられない
- Air travel has become much cheaper in recent years. (空の旅は近年ずっと安くなってきた。) ※旅行の形態・概念
- My passport is valid for travel to all countries. (私のパスポートは全ての国への渡航に有効です。) ※渡航という行為
- Do you enjoy business travel? (出張(というもの)は好きですか?) ※一般的な出張行為について
「出張」という具体的な「行って帰ってくる」移動には「trip」が使われやすいですね。「travel」は、より一般的な移動行為や概念を指すのに使われます。
日常会話での使い分け
日常会話でも、考え方は同じです。
【OK例文:trip】
- We’re planning a weekend trip to the mountains. (私たちは週末に山へ小旅行を計画しています。) ※短い具体的な旅行
- How was your trip to Hawaii? (ハワイ旅行はどうでしたか?) ※特定の旅行について尋ねる
- She took several short trips last year. (彼女は去年、何度か短い旅行をした。) ※数えられる旅行
- It’s a ten-minute bus trip from here. (ここからバスで10分の移動です。) ※短い移動
【OK例文:travel】
- I love to travel and see the world. (私は旅行して世界を見るのが大好きです。) ※旅行するという一般的な行為(動詞)
- Travel broadens the mind. (旅は視野を広げる。) ※旅行という概念(不可算名詞)
- Lightweight luggage is essential for frequent travel. (頻繁な旅行には軽量の荷物が不可欠だ。) ※一般的な旅行(不可算名詞)
- Space travel might become common in the future. (宇宙旅行は将来、一般的になるかもしれない。) ※旅行の形態・概念
これはNG!間違えやすい使い方
特に文法的な間違いに注意しましょう。
- 【NG】I had many interesting travels last summer.
- 【OK】I had a lot of interesting travel last summer.
- 【OK】I took many interesting trips last summer.
「travel」は基本的に数えられない名詞なので、「many travels」のように複数形にはしません。「たくさんの旅行」と言いたい場合は「a lot of travel」や「much travel」、あるいは数えられる「trips」を使って「many trips」とします。
- 【NG】How was your travel to Kyoto?
- 【OK】How was your trip to Kyoto?
京都への特定の旅行(行って帰ってきた)について尋ねているので、「trip」を使うのが自然です。「travel」を使うと、一般的な旅行行為について尋ねているように聞こえ、少し不自然です。
- 【NG】Let’s make a travel next month.
- 【OK】Let’s take a trip next month.
来月、具体的な旅行をしようと提案しているので、「trip」が適切です。「travel」は一般的な行為を指すため、「make a travel」という表現は通常しません。「旅行の計画を立てる」なら「make travel plans」と言えます。
【応用編】似ている言葉「journey」との違いは?
「journey」は、A地点からB地点への比較的長い距離の移動、特に陸路の移動を指すことが多いです。「trip」のような「往復」のニュアンスは薄く、片道の移動や、精神的な成長・探求の道のりといった比喩的な意味でもよく使われます。
「trip」や「travel」と似た言葉に「journey(ジャーニー)」があります。これも押さえておくと、表現の幅が広がりますよ。
「journey」は、主にA地点からB地点への、比較的長い距離・時間を要する移動を指します。
「trip」が基本的に「行って帰ってくる」往復の移動を指すのに対し、「journey」は片道の移動を指すことが多いのが特徴です。また、昔の「苦労を伴う旅」というニュアンスから、陸路での長旅を連想させることがあります。
さらに、「journey」は比喩的な意味で使われることも非常に多い言葉です。
人生の道のり、学習や成長の過程、困難な目標への探求など、時間のかかるプロセスや精神的な変化を伴う「道のり」を表すのによく用いられます。
【例文:journey】
- It’s a long journey by train from London to Moscow. (ロンドンからモスクワまでは電車での長い旅だ。) ※長距離の片道移動
- He documented his journey across Africa. (彼はアフリカ横断の旅を記録した。) ※長期間の探検的な旅
- Starting a new business is always a challenging journey. (新しいビジネスを始めることは常に困難な道のりだ。) ※比喩的な意味
- Learning a language is a long journey. (言語を学ぶことは長い道のりだ。) ※比喩的な意味
「trip」が行って帰ってくる具体的な短い旅行、「travel」が一般的な旅行行為や長旅、「journey」が長距離の移動や比喩的な道のり、というイメージですね。
「trip」と「travel」の違いを言語学的に解説
言語学的には、「trip」は具体的な出来事や行事を指す可算名詞であり、個々の旅行を数えることができます。一方、「travel」は旅行という抽象的な概念や活動を指す不可算名詞(集合名詞または物質名詞に近い扱い)であり、通常は数えません。この文法的な違いが、意味や用法の違いの根幹にあります。
「trip」と「travel」の違いは、単なるニュアンスだけでなく、言語学的な観点、特に文法的な性質の違いから理解すると、より本質が見えてきます。
最も重要な違いは、「trip」が可算名詞(Countable Noun)であるのに対し、「travel」が基本的に不可算名詞(Uncountable Noun)であるという点です。
「trip」が可算名詞である理由:
「trip」は、特定の目的地へ行って帰ってくるという、始まりと終わりが明確な一つの具体的な出来事(event)を指します。例えば、「a trip to Kyoto(京都への旅行)」「a business trip(出張)」のように、個々の旅行として区別し、数えることができます。そのため、冠詞(a/an)を付けたり、複数形(trips)にしたりすることができます。
- I took three trips abroad last year. (私は去年、海外旅行に3回行った。)
- It was a wonderful trip. (それは素晴らしい旅行だった。)
「travel」が不可算名詞である理由:
「travel」は、特定の旅行を指すのではなく、「旅行する」という一般的な行為(activity)や概念(concept)全体を指します。これは、「information(情報)」や「advice(助言)」、「furniture(家具)」といった他の不可算名詞と同じように、具体的な形を持たず、分割して数えることが難しい抽象的なものとして捉えられます。そのため、通常は冠詞を付けず、複数形にもしません。
- Travel is my favorite hobby. (旅行は私の好きな趣味です。)
- He has done much travel in Asia. (彼はアジアで多くの旅をしてきた。)
ただし、「travels」という複数形が使われることも例外的にあります。これは、特に長期間にわたる様々な場所への旅行や冒険、あるいは旅行記などを指す文学的な表現として使われることがあります(例:Gulliver’s Travels『ガリヴァー旅行記』)。しかし、一般的な会話では「travel」を不可算名詞として扱うのが基本です。
このように、「trip」と「travel」の意味やニュアンスの違いは、実はこの可算・不可算という文法的な性質の違いに根ざしていると言えるでしょう。具体的な個々の出来事か、抽象的な行為・概念か、という視点が使い分けの鍵になりますね。
僕が「travel」と「trip」を混同して恥をかいた海外旅行の話
僕も大学時代、初めてのバックパック旅行でヨーロッパを周遊したとき、この「travel」と「trip」の使い分けでちょっと恥ずかしい思いをしたんです。
数週間にわたるヨーロッパ周遊。僕にとってはまさに大冒険で、気分はすっかり「traveller」でした。旅の途中、イタリアのホステルで同室になったアメリカ人の学生と仲良くなり、お互いの旅の話をしていました。
僕は興奮気味に、これまでの旅程や次の目的地について話しました。
「This is my first travel around Europe! I started in London, then took a travel to Paris, and now I’m here in Rome. Next travel is to Florence!」
そんな風に、移動区間ごとにも「travel」を連発していたと思います。自分としては「ヨーロッパを旅してるんだ!」という気持ちだったので、それが自然だと思い込んでいたんですね。
すると、そのアメリカ人の学生は、少し不思議そうな顔をして、でも親切にこう教えてくれました。
「Wow, sounds like an amazing journey! By the way, when you talk about specific parts of your journey, like going from Paris to Rome, it’s more natural to say ‘trip‘. Like, ‘My trip from Paris to Rome was great.’ ‘Travel‘ is more general, like the whole act of travelling, you know?」
(「へえ、すごい旅だね!ところで、パリからローマへ、みたいに旅の特定の区間について話すときは、『trip』って言う方が自然だよ。『パリからローマへの移動(trip)は最高だった』みたいにね。『travel』はもっと一般的で、旅行する行為全体を指す感じかな?」)
それを聞いて、僕は「あ…!」となりました。ロンドンからパリへの移動も、ローマからフィレンツェへの移動も、それぞれが具体的な「行って(着く)」移動区間。これは「trip」を使うべきだったんだ、と。
自分の英語が間違っていたこと、そして「travel」という言葉に酔いしれていた自分がなんだか恥ずかしくなりました。まさに顔から火が出る思いでしたね。
この経験のおかげで、「travel」は旅という大きな概念や行為、「trip」はその中の具体的な行程や短い移動、という感覚的な違いが、身をもって理解できました。それ以来、英会話でもライティングでも、この二つの言葉の使い分けにはかなり気を付けるようになりました。
「trip」と「travel」に関するよくある質問
「tour」との違いは何ですか?
「tour(ツアー)」は、特定の目的(観光、視察、公演など)のために、複数の場所を順番に訪れる旅行を指します。あらかじめ計画された旅程やガイドが付いていることが多いです。「trip」や「travel」が単なる移動や旅行行為を指すのに対し、「tour」は計画性や周遊性、特定の目的というニュアンスが強いですね。例:a guided tour(ガイド付きツアー)、a concert tour(コンサートツアー)。
「go on a trip」と「go travelling」はどう違いますか?
「go on a trip」は、「(具体的な)旅行に行く」という意味です。行き先や期間がある程度決まっている、特定の旅行に出かけるニュアンスです。一方、「go travelling」は、「(一般的な意味で)旅行に出かける、旅をする」という意味で、特定の旅行ではなく、旅行行為そのものを行う、あるいは長期間放浪するようなニュアンスで使われることがあります。例:He went travelling around Asia for six months.(彼はアジアを6ヶ月間旅して回った。)
どちらを使えばいいか迷ったら?
具体的な「行って帰ってくる」短い旅行や移動の話なら「trip」を、一般的な旅行の話や長期の移動、旅行という行為自体について話すなら「travel」を使うのが基本です。また、「trip」は名詞としてのみ使いますが、「travel」は名詞(不可算)としても動詞としても使える点も覚えておくと便利です。
「trip」と「travel」の違いのまとめ
「trip」と「travel」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は具体性と期間:具体的で短い「行って帰ってくる」旅行・移動は「trip」。一般的・抽象的な旅行行為や長期間の移動は「travel」。
- 文法が鍵:「trip」は数えられる名詞(可算名詞)。「travel」は基本的に数えられない名詞(不可算名詞)。
- 語源イメージ:「trip」は「軽く踏み出す」短い移動。「travel」は「骨折り」を伴う移動・長旅。
- 似た言葉「journey」:比較的長い片道移動や、比喩的な「道のり」。
これらのポイントを押さえれば、もう英語で「旅行」について話すときに迷うことは少なくなるはずです。
言葉のニュアンスや文法的な違いを意識して、より自然な英語表現を目指しましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。