「wear」と「put on」の違いとは?状態と動作で使い分け

「wear」と「put on」の決定的な違いは、すでに着ている「状態」か、これから着る「動作」かという点にあります。

日本語ではどちらも「着る」「身につける」と訳されることが多いため混同しがちですが、英語では明確に区別されるため注意が必要。

この記事を読めば、瞬間の動作と継続的な状態の違いを理解し、日常英会話やTOEICなどの試験でも迷わず正しい表現を選べるようになります。

それでは、まず二つの決定的な違いを比較表で詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「wear」と「put on」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、すでに身につけている状態なら「wear」、身につける動作そのものなら「put on」と覚えるのが簡単です。「wear」は「着ている」、「put on」は「(今から)着る」と訳し分けると理解しやすくなります。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリでしょう。

項目wearput on
中心的な意味身につけている状態身につける動作
時間の感覚継続的(一日中、長期間など)一瞬・一時的(数秒〜数分)
日本語訳の目安着ている、履いている、かけている着る、履く、かける(今まさに)
文法的な分類状態動詞動作動詞
対象となるもの服、靴、眼鏡、香水、化粧、ひげ等服、靴、眼鏡、香水、化粧、CD等

一番大切なポイントは、「今、その服が体の上にあるか(wear)」それとも「手に持って体に乗せようとしているか(put on)」という情景の違いですね。

例えば、朝起きてパジャマから着替える動作は「put on」、その後会社でスーツで過ごしている時間は「wear」となります。

なぜ違う?言葉の持つ本来のイメージ(語源)からニュアンスを掴む

【要点】

「wear」は古英語で「身にまとう」「持ち歩く」といった継続的な保持を意味し、「put on」は「put(置く)」+「on(接触)」で対象物を体の表面に接触させる移動の動作を表します。この語源的イメージが、状態と動作の違いを生んでいます。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、言葉の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「wear」のイメージ:「身にまとっている」継続感

「wear」は、単に服を着ることだけを指すのではありません。

古くは「身につけて持ち歩く」「擁する」といった意味合いを含んでおり、そこにはある程度の期間、身につけ続けているという「継続」のニュアンスが強くあります。

だからこそ、服だけでなく、香水や化粧、あるいは「笑顔を浮かべる(wear a smile)」といった表現にも使われるのですね。

「体の一部のように馴染んでいる状態」をイメージすると分かりやすいでしょう。

「put on」のイメージ:「上に置く」物理的な動作

一方、「put on」は「put(置く)」と「on(接触)」の組み合わせです。

文字通り、何かを体の表面に「置く」「くっつける」という物理的な移動を表しています。

ここには時間の継続性はなく、「着る」というアクションそのものに焦点が当たっています。

「on」のコアイメージである「接触」に向かっていく動き、と考えると、動作の瞬間性が理解しやすいはずです。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「wear」は「He wears glasses.(彼は眼鏡をかけている)」のように特徴や状態を説明する際に使い、「put on」は「Put on your coat.(コートを着なさい)」のようにこれからの行動を指示・描写する際に使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーン・日常での使い分け

状況が「静止画(状態)」なのか「動画(動作)」なのかを意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:wear(状態)】

  • He is wearing a dark suit today.
    (彼は今日、ダークスーツを着ています。)
  • Staff must wear ID badges at all times.
    (スタッフは常にIDバッジを着用しなければなりません。)
  • She wears contact lenses.
    (彼女はコンタクトレンズをしています。)

【OK例文:put on(動作)】

  • Please put on your helmet before entering the site.
    (現場に入る前にヘルメットを着用してください。)
  • I need to put on my makeup quickly.
    (急いで化粧をしなきゃ。)
  • He put on his glasses to read the document.
    (彼は書類を読むために眼鏡をかけました。)

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、ネイティブには不自然に聞こえる使い方を見てみましょう。

  • 【NG】 Look! He is wearing his coat now.
    (見て!彼が今コートを着ている(動作)よ。)
  • 【OK】 Look! He is putting on his coat now.
    (見て!彼が今コートを着ている(動作)よ。)

日本語の「着ている」は「動作の進行中(今まさに袖を通している)」と「着衣の状態(すでに着てしまっている)」の両方の意味を持ちますが、英語では厳密に区別されます。

「今まさに着ようとしている」動作を指す場合は、進行形であっても「wear」ではなく「putting on」を使います。

  • 【NG】 I usually put on a tie at work.
    (私は仕事中、たいていネクタイをしています。)
  • 【OK】 I usually wear a tie at work.
    (私は仕事中、たいていネクタイをしています。)

「put on」を使うと、「仕事中、たいていネクタイを(結ぶ動作を)します」という意味になり、一日中何度もネクタイを結んだり解いたりしているような奇妙なニュアンスになりかねません。

【応用編】似ている言葉「dress」「try on」との違いは?

【要点】

「dress」は「服を着る」という動作や状態全般を指しますが、目的語に「人」を取る点に注意が必要です。「try on」は購入前などに「試しに着てみる」という限定的な動作を指します。

「wear」や「put on」と似た言葉に「dress」や「try on」があります。

これも押さえておくと、表現の幅がさらに広がりますよ。

「dress」:正装する、人に着せる

「dress」は少し特殊で、他動詞として使う場合は「(誰かに)服を着せる」という意味になります。

自分が着る場合は「get dressed」という形を使うのが一般的です。

また、「正装する」というニュアンスを含むことも多いですね。

  • She dressed her baby.
    (彼女は赤ちゃんに服を着せた。)
  • I need to get dressed for the party.
    (パーティーのために着替えなきゃ。)

「try on」:試着する

「try on」は、サイズや似合うかどうかを確かめるために一時的に着ることを指します。

お店でのショッピングの場面で頻出するフレーズですね。

  • Can I try this on?
    (これを試着してもいいですか?)

「wear」と「put on」の違いを文法的に解説

【要点】

文法的には「wear」は状態動詞、「put on」は動作動詞に分類されます。状態動詞は通常進行形にしませんが、「wear」を進行形にすると「一時的な強調」を表します。「put on」の進行形は「動作の最中」を表します。

ここでは少し専門的な視点から、文法的な違いを解説します。

英語の動詞は大きく「状態動詞」と「動作動詞」に分けられます。

状態動詞としての「wear」

「wear」は基本的に状態動詞です。

「知っている(know)」や「持っている(have)」と同じグループですね。

そのため、「What do you wear?」と現在形で聞くと、「普段(習慣として)何を着ていますか?」という意味になります。

ただし、「wear」は進行形(be wearing)にすることが可能です。

この場合、「今現在、身につけている状態である」という一時的な状態を強調します。

動作動詞としての「put on」

「put on」は純粋な動作動詞です。

「走る(run)」や「食べる(eat)」と同じく、開始と終了がある動きを表します。

したがって、「He is putting on his shoes.」と進行形にすると、「彼は今まさに靴を履こうとしている最中だ(まだ履き終わっていない)」という動作のプロセスを描写することになります。

「wear」と「put on」に関する失敗体験談

僕も留学したての頃、この二つの使い分けで恥ずかしい思いをしたことがあるんです。

ホームステイ先のホストマザーに、翌日の予定を聞かれたときのことです。

「明日は寒いから、厚手のコートを着ていくよ」と伝えたくて、自信満々にこう言いました。

I will put on my thick coat tomorrow.

すると、ホストマザーは少し笑って、「You mean, you will wear it? If you say ‘put on’, it sounds like you’re planning the moment of dressing up!(それを着て過ごすってことよね? ‘put on’ って言うと、着るその瞬間のことだけを計画してるみたいに聞こえるわよ!)」と教えてくれました。

僕の英語だと、「明日、厚手のコートを(一瞬だけ)羽織る動作をします(そしてすぐ脱ぐかも?)」というような、奇妙な宣言に聞こえてしまったようです。

一日中着て過ごすつもりなら「wear」を使うべきだったんですね。

この経験から、「動作」の一点なのか、「状態」の線なのかを意識することが、英語らしい表現への第一歩だと痛感しました。

皆さんも、出かける準備の話なのか、一日の服装の話なのかで使い分けてみてくださいね。

「wear」と「put on」に関するよくある質問

香水や化粧も「wear」を使いますか?

はい、使います。英語では、服だけでなく、香水(perfume)、化粧(makeup)、アクセサリー(jewelry)、眼鏡(glasses)、さらにはコンタクトレンズや髭(beard)まで、身につけている状態であればすべて「wear」で表現できます。日本語の「着る」「履く」「かける」「する」といった動詞の使い分けをすべて「wear」一語でカバーできるので、実はとても便利な単語です。

「着ていく」と言いたいときはどちらですか?

「パーティーにドレスを着ていく」のように、移動や滞在を含めて「着ている状態」が続く場合は「wear」を使います(例:I will wear a dress to the party.)。一方、「出かける前にコートを着る」という出発直前の動作を指すなら「put on」を使います。文脈が「一日の服装」ならwear、「着替えの動作」ならput onと判断しましょう。

「wear」と「put on」の過去形はどうなりますか?

「wear」の過去形は「wore」(着用していた)、「put on」の過去形は「put on」(着用した)です。「put」は現在形も過去形も過去分詞形もすべて「put」で変化しません。「Yesterday, I wore a suit.(昨日はスーツを着ていた)」、「Example: He put on his hat and left.(彼は帽子をかぶって出て行った)」のように使い分けます。

「wear」と「put on」の違いのまとめ

「wear」と「put on」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は「状態」か「動作」か:「wear」はずっと着ている状態、「put on」は着る瞬間の動作。
  2. 時間の長さが違う:「wear」は一日中などの継続、「put on」は数秒の短い動き。
  3. 日本語訳の工夫:「着ている」ならwear、「(今から)着る」ならput onと訳し分けるとスムーズ。

この二つの違いを意識するだけで、あなたの英語はぐっと自然になり、状況描写の解像度が高まります。

これからは自信を持って、シーンに合わせた英単語を選んでいきましょう。

さらに日常会話で役立つ言葉の使い分けを知りたい方は、日常会話の外来語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてください。

スポンサーリンク