「プロマイド」と「ブロマイド」の違いとは?写真の正しい呼び方

「プロマイド」と「ブロマイド」、どちらもアイドルの写真などを連想させる言葉ですよね。

響きも似ているし、同じような意味で使っている人も多いかもしれません。でも、この二つの言葉、実は由来が全く違うってご存知でしたか?

「あれ、どっちが正しいんだっけ?」と、ふとした時に迷ってしまうこともあるでしょう。結論から言うと、写真の印画紙の種類に由来する「ブロマイド」が語源的には正しい呼び方なんです。

この記事を読めば、「プロマイド」と「ブロマイド」の言葉の成り立ちから、日本でどのように意味が変化してきたのか、そして具体的な使い分けまでスッキリ理解できます。もう、写真の呼び方で迷うことはありませんよ。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「プロマイド」と「ブロマイド」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、語源(印画紙の種類)に基づけば「ブロマイド」が正しい言葉です。「プロマイド」は宣伝用写真(Promotion Picture)から来た和製英語という説もありますが、「ブロマイド」の誤用や俗称として広まった側面が強いです。迷ったら「ブロマイド」を使うのが無難でしょう。

まず、結論からお伝えしますね。

「プロマイド」と「ブロマイド」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 プロマイド ブロマイド
語源 プロモーション・ピクチャー(Promotion Picture)? 和製英語説が有力。 臭化銀印画紙(Bromide Paper)に由来。こちらが語源的に正しい
本来の意味 宣伝(プロモーション)用の写真。 臭化銀印画紙に焼き付けた写真全般。
日本での主な意味 「ブロマイド」の誤用・俗称として使われることが多い。または宣伝用写真。 映画俳優や歌手、アイドルなどの肖像写真(特にマルベル堂の商品が有名)。
どちらを使うべきか 文脈によっては通じるが、誤解を招く可能性あり。 語源的にも、日本での定着度からも、こちらを使うのが一般的

一番大切なポイントは、写真の種類(印画紙)に由来する「ブロマイド」が元々の正しい言葉であるということですね。

日本では特に、スターの肖像写真として「ブロマイド」という言葉が広く定着しています。迷ったら「ブロマイド」を選んでおけば、まず間違いありません。

なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む

【要点】

「ブロマイド」の「ブロム(Brom)」は臭素(Bromine)を意味し、写真の印画紙に使われる臭化銀(Silver Bromide)に由来します。「プロマイド」は宣伝(Promotion)用の写真が語源という説もありますが、確かな由来は不明です。

なぜこの二つの言葉が存在し、混同されやすいのでしょうか?それぞれの言葉の成り立ちを探ると、その背景が見えてきますよ。

「ブロマイド」の由来:「bromide paper」という印画紙から

「ブロマイド」という言葉の語源は、英語の「bromide paper(ブロマイド・ペーパー)」にあります。

これは、写真の印画紙(写真を焼き付ける紙)の一種で、感光材として「臭化銀(silver bromide)」を使用していることから、この名前がつきました。化学に詳しい方なら、「ブロム(Brom)」が臭素(Bromine)を指す元素記号Brのことだとピンとくるかもしれませんね。

つまり、「ブロマイド」とは、元々は臭化銀印画紙に焼き付けられた写真そのものを指す言葉だったのです。

このタイプの印画紙は、鮮明な画像が得られることから広く普及し、特に人物写真、中でも映画俳優や歌手などのスターの肖像写真が多く作られました。そこから日本では、「ブロマイド=スターの肖像写真」という意味合いが定着していったのですね。

「プロマイド」の由来:「promotion picture」?(和製英語説)

一方、「プロマイド」の語源については、はっきりとした定説がありません。

有力な説の一つとして、宣伝や販売促進を意味する「プロモーション(promotion)」と、写真を意味する「ピクチャー(picture)」を組み合わせた和製英語ではないか、と言われています。

つまり、「プロモーション用の写真」という意味合いですね。

しかし、これはあくまで一説であり、「ブロマイド」という言葉が先に存在し、それが発音しやすさなどから変化したり、誤って覚えられたりして「プロマイド」という俗称が広まったのではないか、とも考えられています。

国語辞典などでも、「プロマイド」は「ブロマイド」の俗用、あるいは「ブロマイドに同じ」と説明されることが多いのが現状です。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

本来は印画紙の種類を指す場合は「ブロマイド」ですが、現代ではほぼ使われません。日本では「アイドルのブロマイド」のようにスターの肖像写真を指すのが一般的です。「プロマイド」はその誤用や俗称として使われることが多いです。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

本来の意味と、日本で定着した意味合い、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

本来の意味合いでの使い分け(印画紙)

写真技術の専門的な文脈で、印画紙の種類について言及する場合の使い分けです。現代の一般的な会話では、まず使われることはないでしょう。

【OK例文:ブロマイド】

  • この古い写真は、ブロマイド紙にプリントされているため、独特の風合いがある。
  • 彼はブロマイドプリントの技法を学んでいる。

【NG例文:プロマイド】

  • (この文脈で「プロマイド紙」という表現は基本的に使われません)

日本で定着した意味合いでの使い分け(スターの写真)

日本で最も一般的な、映画俳優や歌手、アイドルなどの肖像写真としての使い方です。

【OK例文:ブロマイド】

  • 子供の頃、好きなアイドルのブロマイドを集めるのが趣味だった。
  • 浅草のマルベル堂は、有名人のブロマイド専門店として有名だ。
  • 彼は、憧れの俳優の貴重なブロマイドを額に入れて飾っている。

【やや注意:プロマイド】

  • お祭りの屋台で、アニメキャラクターのプロマイドが売られていた。(俗称として通じる場合もある)
  • 雑誌の付録についていた歌手のプロマイド。(ブロマイドの誤用・言い換えとして)

このように、スターの肖像写真としては「ブロマイド」を使うのが一般的で、より正確です。「プロマイド」も意味が通じる場面はありますが、やや俗な響きになったり、誤用と捉えられたりする可能性がありますね。

これはNG!間違えやすい使い方

本来の意味や、日本で定着した意味合いから考えると、少し不自然に聞こえる使い方です。

  • 【NG】旅行先で撮った風景写真のブロマイド
  • 【OK】旅行先で撮った風景写真のプリント(または単に写真)。

「ブロマイド」は、日本では特に「人物の肖像写真」というイメージが強いため、風景写真などに対して使うのは不自然です。単に「写真」や「プリント」と言うのが適切でしょう。

  • 【NG】会議資料に使うグラフのプロマイド
  • 【OK】会議資料に使うグラフの図版画像データ

「プロマイド」に宣伝用という意味合いがあるとしても、ビジネス資料のグラフなどに対して使うのは一般的ではありません。「図版」や「画像」といった言葉を使いましょう。

【応用編】似ている言葉「生写真」との違いは?

【要点】

「生写真(なまじゃしん)」は、雑誌の印刷などではなく、印画紙に直接焼き付けられた写真のことを指します。特にアイドルグッズの世界では、複製や印刷ではない、オリジナルのプリントに近い写真として、「ブロマイド」とは区別され、希少価値を持つものとして扱われることがあります。

「ブロマイド」と関連して、特にアイドルファンの間でよく使われる言葉に「生写真(なまじゃしん)」があります。これも押さえておくと、写真の種類に関する理解が深まりますよ。

「生写真」とは、一般的には、印刷物(雑誌のグラビアなど)として複製されたものではなく、写真用の印画紙に直接焼き付けられた(プリントされた)写真のことを指します。

「ブロマイド」も印画紙に焼き付けられた写真なので、広義には生写真の一種と言えます。

しかし、特に現代のアイドルグッズの文脈では、「ブロマイド」が比較的安価で大量生産される肖像写真(昔ながらのスタイルを踏襲したもの)を指すのに対し、「生写真」は、CDの特典やイベント会場限定で販売される、より希少性の高い、あるいはオフショット的な写真を指して区別されることが多いようです。

ファンにとっては、印刷ではない「生」のプリントであることや、入手方法が限られている点が付加価値となり、「ブロマイド」とは異なる特別なアイテムとして扱われるわけですね。

まとめると、技術的にはどちらも印画紙プリントですが、流通形態やファンの間での認識によって使い分けられている、と言えるでしょう。

「ブロマイド」と「プロマイド」の違いを歴史的観点から解説

【要点】

日本では大正時代に「ブロマイド」という言葉と共にスターの写真が普及し始めました。特に浅草の「マルベル堂」は昭和初期から現在に至るまで「ブロマイド」を専門に販売し、その文化を支えてきました。「プロマイド」という呼び方は、その過程で生まれた誤用や俗称が広まったものと考えられます。

「ブロマイド」と「プロマイド」の混乱には、日本における写真文化の歴史が関係しています。

日本に「ブロマイド」という言葉と、スターの肖像写真が持ち込まれたのは、大正時代と言われています。映画の普及とともに、人気俳優たちの写真が「ブロマイド」として販売され、ファンたちの間で人気を集めました。

その文化を語る上で欠かせないのが、東京・浅草にある「マルベル堂」の存在です。1921年(大正10年)創業のマルベル堂は、昭和初期から現在に至るまで、数多くのスターたちの「ブロマイド」を撮影・販売し続けてきました。マルベル堂のブロマイドは、日本の芸能史・写真史において非常に重要な位置を占めており、「ブロマイド=マルベル堂の写真」というイメージを持つ人も少なくありません。

マルベル堂は一貫して「ブロマイド」という名称を使用しています。これは、語源である「bromide paper」を意識してのことでしょう。

では、なぜ「プロマイド」という呼び方も広まったのでしょうか?

これには諸説ありますが、

  • 「ブロマイド」の発音が日本人にとって少し難しく、「プロマイド」の方が言いやすかったため。
  • 宣伝(プロモーション)に使われる写真という意味合いから、誰かが「プロマイド」と呼び始めたため。
  • 単なる聞き間違いや覚え間違いが広まったため。

などが考えられます。特に戦後の混乱期などを経て、言葉の正確な由来が曖昧になり、二つの呼び方が混在するようになったのかもしれませんね。

しかし、歴史的な経緯や、マルベル堂のような専門店の呼称を見ても、日本におけるスター写真の正式な呼び方としては「ブロマイド」が主流であったことは間違いないでしょう。「プロマイド」はその過程で生まれた俗称、あるいは誤用が定着したものと考えるのが自然です。

アイドルグッズ集めと「ブロマイド」の思い出

僕が小学生の頃、まさに昭和のアイドル全盛期でした。テレビをつければ歌番組が毎日のように放送され、学校では「どのアイドルが好きか」で盛り上がったものです。

そんな時代の楽しみの一つが、お小遣いを貯めてアイドルの「ブロマイド」を買うことでした。

近所の文房具屋さんやおもちゃ屋さんの店先に、ビニールの袋に入ったブロマイドが束になって吊るされていて、一枚10円とか20円だったでしょうか。ドキドキしながら袋を開けて、お目当てのアイドルの写真が出ると、友達と見せ合って大喜びしたものです。

当時は、それが「プロマイド」なのか「ブロマイド」なのか、深く考えたこともありませんでした。友達の間では「プロマイド」って呼んでいた気もしますし、「ブロマイド」と言っていた子もいたかもしれません。

大人になってから、ふとしたきっかけでマルベル堂さんの存在を知り、浅草のお店を訪れた時、壁一面に飾られた膨大な数の「ブロマイド」に圧倒されました。そこで初めて、「あ、正式にはブロマイドって言うんだ。しかも印画紙の種類が由来だったのか!」と知って、子供の頃の記憶と知識がつながった瞬間でした。

同時に、子供の頃に何の気なしに「プロマイド」と呼んでいたのは、やっぱり言いやすさとか、誰かが間違って言っていたのが広まったのかな、なんて想像したりもしました。

言葉って、時代やコミュニティの中で少しずつ変化していくものなんだな、と実感した出来事です。でも、語源を知ると、その言葉への理解が深まって、より大切に使おうという気持ちになりますよね。僕にとって「ブロマイド」は、そんな言葉の一つです。

「プロマイド」と「ブロマイド」に関するよくある質問

結局どっちの言葉を使えばいいの?

一般的には「ブロマイド」を使うのがおすすめです。語源的にも正しく、特に日本で定着している「スターの肖像写真」という意味合いでは、「ブロマイド」の方が広く認知されています。マルベル堂の商品も「ブロマイド」です。

「プロマイド」は完全な間違いですか?

「ブロマイド」の誤用や俗称として広まった側面が強いため、厳密に言えば間違いと捉えることもできます。ただし、「宣伝用写真」という意味で「プロマイド」という言葉が使われる文脈も稀にあります。しかし、一般的には「ブロマイド」を使う方が誤解がないでしょう。

現代ではどのように使われていますか?

現代でも、特に昭和時代のアイドルや俳優の写真などを指して「ブロマイド」という言葉が使われます。また、一部のアニメグッズやゲームのキャラクター写真などにも「ブロマイド」という名称が使われることがあります。一方で、若い世代の間では「生写真」という言葉の方が、特にアイドルの写真については一般的かもしれません。

「プロマイド」と「ブロマイド」の違いのまとめ

「プロマイド」と「ブロマイド」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 語源は「ブロマイド」:臭化銀印画紙(Bromide Paper)に由来する「ブロマイド」が本来の正しい言葉。
  2. 「プロマイド」は俗称?:宣伝用写真(Promotion Picture)が語源という説もあるが、「ブロマイド」の誤用や俗称として広まった可能性が高い。
  3. 日本ではスター写真:「ブロマイド」は、特に映画俳優や歌手、アイドルなどの肖像写真を指す言葉として日本で定着した。
  4. 迷ったら「ブロマイド」:語源的にも、日本での定着度からも、「ブロマイド」を使うのが一般的で無難。
  5. 「生写真」との違い:「生写真」は印刷ではなく印画紙プリントを指し、特にアイドルグッズでは希少価値を持つアイテムとして区別されることがある。

言葉の由来を知ると、なぜ二つの呼び方が存在するのか、納得できますよね。これからは自信を持って「ブロマイド」を使っていきましょう。

言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、表記が紛らわしい言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。