のし鶏と松風焼きの明確な違いは「名前の由来」にあり!

おせち料理や普段のお弁当のおかずとしておなじみの「のし鶏」と「松風焼き」。

どちらも鶏ひき肉を四角く焼いた料理で、見た目がそっくりですよね。この二つ、一体何が違うのでしょうか?

結論から言うと、「のし鶏」と「松風焼き」は、現代ではほぼ同じ料理を指す言葉として使われています。

しかし、厳密にはその「名前の由来」と「トッピングの意味」に微妙な違いが隠されています。「松風焼き」という名前には、おせち料理にふさわしい、ある特別な意味が込められているんです。

この記事では、二つの料理の本来の意味から、つくねとの違いまで、スッキリと解説します。

まずは、両者の核心的な違いを一覧表で比較してみましょう。

結論|「のし鶏」と「松風焼き」の違いを一言でまとめる

【要点】

「のし鶏」と「松風焼き」は、どちらも鶏ひき肉を平たく伸ばして焼いた料理を指し、現代ではほぼ同義語として使われます。厳密な違いは名前の由来にあり、「のし鶏」は調理法(鶏肉を平たく”伸す”)を指すのに対し、「松風焼き」は縁起(表面にだけトッピングし「裏がない=正直」)を担いだ料理名を指します。

つまり、鶏ひき肉の和風ミートローフという料理カテゴリが「のし鶏」で、その中でも特におせち料理として「裏がない(正直)」という縁起を担がせたものが「松風焼き」と呼ばれる、とイメージすると分かりやすいですね。

項目のし鶏(のしどり)松風焼き(まつかぜやき)
料理内容同じ。鶏ひき肉に卵や味噌などを混ぜ、平たくして焼いたもの。
名前の由来調理法(「伸し鶏」「熨斗鶏」)縁起・逸話(能の「松風」)
トッピング青のり、けしの実、ごま等けしの実、ごま等(表面のみ
文化的な意味鶏肉の和風ミートローフ(総称)裏がない(正直)」という縁起物
主な用途おかず、お弁当、おせちおせち料理(特に重視される)

「のし鶏」と「松風焼き」それぞれの定義と起源

【要点】

「のし鶏」は、鶏ひき肉を練って平たく「伸す(のす)」ことが語源です。一方、「松風焼き」は、能の演目『松風』の「浦(裏)寂しい」という言葉に由来し、表面にだけトッピングを施す縁起料理を指します。

のし鶏(のしどり):「平たく伸ばした鶏肉」という調理法

「のし鶏」は、漢字で「伸し鶏」や「熨斗鶏」と書かれます。

「のし(伸し)」とは、餅や生地などを薄く平らに伸ばすことを意味します。その名の通り、鶏ひき肉に卵、味噌、みりん、片栗粉などを加えて練った「たね」を、型(バット)に敷き詰め、平たく「伸して」焼いた料理そのものを指す名前です。

ハンバーグやつくねのように一つずつ成形する手間がなく、焼いた後に切り分ける、和風のミートローフやテリーヌのような料理ですね。

松風焼き(まつかぜやき):おせちの定番、「裏が寂しい」が語源

「松風焼き」も、料理自体は「のし鶏」とほぼ同じです。ではなぜ名前が違うのかというと、そのユニークな語源にあります。

「松風」とは、能の演目『松風(まつかぜ)』に由来します。

この物語の中で、「須磨の浦(うら)は寂しい」という趣旨の和歌が詠まれます。この「浦(うら)寂しい」という言葉と、料理の「裏(うら)が寂しい」という状態をかけた「しゃれ」なのです。

つまり、表面にはトッピング(けしの実など)があって華やかだが、裏面には何もついておらず寂しい様子を「松風」と呼んだのです。

決定的な違い:トッピングと「裏がない」という縁起

【要点】

「松風焼き」の最も重要な定義は、「裏に何も塗らない・付けない」ことです。この状態が「裏がない」=「隠し事のない、正直な様子」を連想させ、新年のおせち料理として「今年も一年、まっすぐに生きられますように」という願いを込めた縁起物とされています。

この「裏がない(=正直者)」という意味合いこそが、「松風焼き」と呼ばれる料理の核心です。

松風焼きのトッピング
伝統的なトッピングは「けしの実(ポピーシード)」です。けしの実が手に入りにくい現代では、「ごま(白ごま・黒ごま)」で代用されることが非常に多くなっています。「青のり」を使うこともあります。

のし鶏のトッピング
「のし鶏」は調理法を指す名前なので、トッピングに厳密な決まりはありません。「松風焼き」と同じように、けしの実やごまを振ることもあれば、「青のり」だけを振るレシピもあります。

また、青のりとけしの実(またはゴマ)を市松模様(チェック柄)のように半分ずつトッピングするスタイルもあり、これも「のし鶏」と呼ばれることが多いです。この場合、裏面にもトッピングが施されるわけではないので、広義の「松風焼き」とも言えますね。

調理法・材料・味の違い(ほぼ無し)

【要点】

呼び名に関わらず、調理法や材料はほぼ同じです。鶏ひき肉に、卵、味噌、砂糖、みりん、醤油、生姜、片栗粉(またはパン粉)などを加えてよく練り、型に入れてオーブンやフライパンで焼きます。

「のし鶏」も「松風焼き」も、レシピ上の違いはほとんどありません。

どちらも鶏ひき肉を使い、味噌や砂糖、醤油などで和風の味付けをするのが基本です。塩麹を使ってジューシーに仕上げるレシピもあります。

調理法も、型に入れてオーブンで焼く方法、フライパンで焼く方法、電子レンジで加熱する方法 など、様々です。

つまり、「のし鶏」と「松風焼き」は、料理としては同じものであり、「松風焼き」はその料理に込められた「文化的な意味合い(縁起)」を強調した呼び名、と言えます。

「つくね」との違いは?

【要点】

「つくね」との違いは「成形」です。「つくね」は、ひき肉の「たね」を一個ずつ手で丸めたり、串に巻き付けたりして成形します。一方、「のし鶏(松風焼き)」は、たねを型に敷き詰めて一度に大きく焼き、後から切り分ける点(=成形の手間がない)が異なります。

鶏ひき肉を練って作る料理、といえば「つくね」もありますよね。

「つくね」も「のし鶏(松風焼き)」も、材料(鶏ひき肉、つなぎ、調味料)は非常に似ています。

最大の違いは「成形」のプロセスです。「つくね」は、焼き鳥屋さんのように一本ずつ串に巻き付けたり、鍋に入れる団子のように手で丸めたりと、「一個ずつ」形を作ります。

一方、「のし鶏(松風焼き)」は、たねをバットや型に「平たく敷き詰めて」一度に加熱し、冷めてから包丁で四角や扇形に「切り分ける」のが特徴です。

そのため、「のし鶏(松風焼き)」は、ハンバーグやつくねを作るよりも成形の手間がかからず簡単、とも言われます。

体験談|おせち作りで知った「松風」の本当の意味

僕も、以前はおせち料理に入っているあの四角い鶏肉料理を、単に「のし鶏」と呼んでいました。お弁当に入っているミートローフの和風版、くらいの認識でしたね。

ある年、おせち料理を自分で作ってみようと思い立ち、レシピを調べたところ、「松風焼き」という名前と、その由来に初めて出会いました。

「表面にだけ、けしの実を振る。裏には何もない。これが『裏がない』=『正直』という意味になる」

これを読んだ時、なるほど!と膝を打ちました。ただのトッピングだと思っていた「けしの実(や、ごま)」に、そんな深い意味が込められていたとは。

単なる「のし鶏」が、この「裏がない」というルール(作法)を守るだけで、「松風焼き」という縁起物になる。日本料理の「見立て」や「しゃれ」の文化の奥深さを感じた瞬間でした。

それ以来、おせち用に作るときは、必ず片面だけにトッピングし、「これは松風焼きだ」と思いながら作るようになりました。そして、食べる時も「裏がない、正直な一年になりますように」と心の中で願っています。

「のし鶏」と「松風焼き」に関するよくある質問

ここでは、のし鶏と松風焼きに関するよくある疑問にお答えしますね。

Q: 結局、のし鶏と松風焼きは同じものですか?

A: はい、料理としてはほぼ同じものです。「のし鶏」は鶏ひき肉を平たく焼いた料理全般を指し、「松風焼き」はその中でも特に「表面にだけトッピングを施し、『裏がない(正直)』という縁起を担いだもの」を指す、文化的な呼び名です。おせち料理に入っている場合は「松風焼き」と呼ばれることが多いですね。

Q: なぜおせち料理に入っているのですか?

A: 「松風焼き」として入っています。表面は華やかですが、裏面には何もトッピングがなく「裏が寂しい」様子を、能の『松風』の「浦寂しい」にかけ、さらに「裏がない」=「隠し事がなく正直な生き方ができるように」という新年の願いを込めた縁起物だからです。

Q: トッピングは「ごま」と「けしの実」、どちらが正しいですか?

A: 伝統的な「松風焼き」のトッピングは「けしの実(ポピーシード)」です。しかし、けしの実は現代では手に入りにくい場合があるため、「ごま(白ごまや黒ごま)」で代用されることが非常に一般的になっています。どちらを使っても間違いではありません。

まとめ|「のし鶏」と「松風焼き」の違いと使い分け

「のし鶏」と「松風焼き」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

二つの料理は、呼び名こそ違えど、その実態は「鶏ひき肉の和風ミートローフ」としてほぼ同じものでした。

  • のし鶏:調理法(伸して焼く)に着目した、料理の総称
  • 松風焼き縁起(裏がない=正直)に着目した、料理の文化的な名称。特におせち料理で使われる。

この違いを知れば、おせち料理に入っている「松風焼き」を見る目が変わりますよね。

普段のおかずやお弁当に入れるなら「のし鶏」新年のお祝いや縁起を担ぎたい時には「松風焼き」と、心の中で呼び分けてみると、日本料理の奥深さをより楽しめるかもしれません。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な料理・メニューの違いについて詳しく解説しています。ぜひ他の記事も参考にしてみてください。