牛のたたきとローストビーフの違い!「生」か「ピンク」か?

「牛のたたき」と「ローストビーフ」、どちらも牛肉の塊(かたまり)肉を使った、見た目にも華やかなご馳走メニューですよね。

どちらもスライスして提供されるため、一見すると非常によく似ていますが、その違いを正確に説明できるでしょうか?

結論から言うと、この二つは「火の通し方」と「料理のルーツ(起源)」が全く異なります。

「牛のたたき」は表面だけを強火で炙(あぶ)り、中は「生(レア)」の状態で食べる日本料理(和食)です。一方、「ローストビーフ」はオーブンなどでじっくりと中まで火を通し、全体を「ピンク色(ミディアムレア〜ミディアム)」に仕上げる西洋料理(洋食)です。

この記事では、この二つの料理の調理法、食べ方、そして「ステーキ」との違いまで、スッキリと解説しますね。

それでは、まず両者の最も重要な違いを比較表で見ていきましょう。

結論|「牛のたたき」と「ローストビーフ」の違いを一言でまとめる

【要点】

「牛のたたき」と「ローストビーフ」の最大の違いは、「火の通り具合」と「調理法」です。「牛のたたき」は、表面だけを強火で炙り、内部は「生(レア)」のまま、ポン酢や薬味で食べる日本料理です。一方、「ローストビーフ」は、オーブンなどで中までじっくり低温加熱し、内部を「ピンク色(ロゼ)」に仕上げる西洋料理で、グレイビーソースなどで食べます。

この「中は生」か「中はピンク(加熱済み)」かが、二つを分ける決定的なポイントです。

項目牛のたたきローストビーフ
起源(ルーツ)日本(和食)西洋(イギリスの伝統料理)
調理法表面を強火で「炙る」(Searing)全体をオーブンで「蒸し焼き」(Roasting)
火の通り具合内部は生(レア)内部はピンク色(ロゼ) ※加熱済み
調理後の処理氷水で「締める」(急冷)アルミホイルで包み「休ませる」(保温)
食感表面は香ばしく、中は生の柔らかさ全体がしっとり、ジューシー
主な食べ方ポン酢、醤油、薬味(玉ねぎ、ニンニク)グレイビーソース、ホースラディッシュ

「牛のたたき」と「ローストビーフ」それぞれの定義と起源

【要点】

「牛のたたき」は、魚(カツオ)の調理法である「たたき」を牛肉に応用した日本発祥の料理です。一方、「ローストビーフ」は、塊の牛肉をオーブンで蒸し焼きにするイギリスの伝統的な料理であり、西洋料理の代表格の一つです。

牛のたたき:表面だけを「炙る」日本の料理

「たたき」という調理法は、もともと高知県の郷土料理である「カツオのたたき」が有名です。カツオの表面をワラなどで炙り、冷やしてから薬味をたっぷり乗せて食べるスタイルですね。

「牛のたたき」は、この調理法を牛肉に応用したものです。なぜ「たたき」と呼ぶかには諸説ありますが、炙った後に薬味やタレを包丁の背で「叩いて」味を染み込ませたから、という説が有力です。

いずれにせよ、表面だけを加熱殺菌し、内部の生の美味しさを味わう、日本独自の肉料理と言えます。

ローストビーフ:中までじっくり「焼く」西洋の料理

「ローストビーフ(Roast Beef)」は、その名の通り「ロースト(Roast=焼く)」した牛肉料理で、特にイギリスの伝統料理として世界的に知られています。

大きな牛肉の塊に塩やコショウをすり込み、オーブンなどを使って低温でじっくりと蒸し焼きにします。クリスマスや日曜日のご馳走(サンデーロースト)として食卓に並ぶ、西洋の代表的な肉料理です。

調理法と火の通し方の決定的な違い

【要点】

二つの料理は、加熱方法と冷却方法が正反対です。「たたき」は強火で表面のみを焼き固め、すぐに氷水で急冷することで内部が「生」であることを保ちます。一方、「ローストビーフ」は低温のオーブンで長時間かけて中心部まで加熱し、焼いた後はアルミホイルなどで包んで休ませることで、肉汁を閉じ込めたピンク色の「ロゼ」(加熱済み)に仕上げます。

牛のたたき:「強火で炙り」「氷水で締める」(中は生)

たたきの調理はスピードが命です。フライパンや金網、あるいは直火(ガスバーナーなど)を使い、強火で肉の表面全体に素早く焼き色をつけます。目的は、表面の香ばしさを出すことと、表面にいる可能性のある菌を殺菌することです。

そして、最大の特徴が、焼いた直後に氷水(または冷水)に浸けて急冷することです。これにより、余熱で内部に火が通るのを防ぎ、中心部を「生」の状態に保ちます。このため、食感は表面の香ばしさと、内部の生の柔らかさのコントラストが際立ちます。

ローストビーフ:「低温でじっくり焼く」「休ませる」(中はピンク)

ローストビーフの調理は、時間が命です。低温(例:120℃〜140℃)のオーブンなどで、肉の塊の中心部までじっくりと熱を伝えます。

厚生労働省の基準でも、中心部の温度を63℃で30分間加熱(または同等の加熱殺菌)することが定められており、中が赤く見えても「生」ではありません。これは、低温で加熱されたタンパク質(ミオグロビン)が赤く発色している「ロゼ」と呼ばれる状態です。

さらに、焼き上がった後は、すぐに切らずにアルミホイルなどで包み、肉を「休ませる」工程が必須です。これにより、中心部に集まった肉汁が肉全体に行き渡り、しっとりとジューシーな仕上がりになります。たたきのように氷水で締めることは絶対にありません。

味付け・食感・食べ方の違い

【要点】

「たたき」はさっぱりとした赤身の旨味を、玉ねぎスライスやニンニクチップなどの薬味と共にポン酢や醤油で食べます。「ローストビーフ」は、肉汁(グレイビー)を煮詰めたグレイビーソースホースラディッシュ(西洋わさび)と共に、ジューシーな肉の旨味を味わいます。

味わいと食感:さっぱり vs ジューシー

牛のたたき
内部が生の赤身であるため、味わいはさっぱりとしており、牛肉本来の鉄分や旨味(アミノ酸)をダイレクトに感じられます。食感は、表面の焼けた香ばしさと、内部の生の「むっちり」とした柔らかさの対比が魅力です。

ローストビーフ
中心部まで火が通っているため、生の食感はありません。代わりに、肉全体がしっとりと柔らかく、噛むと肉汁(脂の甘みと旨味)がジューシーに溢れ出します。

食べ方とソース:ポン酢・薬味 vs グレイビーソース

牛のたたき
和食であるため、食べ方も和風です。玉ねぎスライス、ニンニクチップ、刻みネギ、大葉、みょうがといった薬味をたっぷりと乗せ、ポン酢や醤油ベースのタレでさっぱりと食べるのが王道です。

ローストビーフ
洋食であるため、食べ方も西洋スタイルです。肉を焼いた時に出た肉汁を赤ワインやブイヨンで煮詰めた「グレイビーソース」をかけるのが最も伝統的です。また、ピリッとした辛味のある「ホースラディッシュ(西洋わさび)」を添えるのも定番ですね。

使用する部位とカロリーの違い

【要点】

「たたき」は、生の食感を活かすため、脂が少なく柔らかい赤身肉(モモ、ヒレ)が好まれます。一方、「ローストビーフ」は、ジューシーさを出すためにロースやサーロイン、モモなど、ある程度サシ(脂)がある部位も使われます。そのため、一般的にローストビーフの方が高カロリーになる傾向があります。

使用する部位
「牛のたたき」は、内部を生で食べるため、脂が多すぎるとくどくなってしまいます。そのため、脂身の少ない赤身の部位(モモ、ランプ、ヒレなど)が好まれます。

「ローストビーフ」は、じっくり火を通すことで脂の旨味を引き出すため、適度に脂(サシ)が入った部位(ロース、サーロイン、モモなど)が使われることが多いです。

カロリー
使用する部位に脂が多いこと、そしてグレイビーソースにも脂が含まれることから、一般的に「ローストビーフ」の方が「牛のたたき」よりも高カロリー・高脂質になる傾向があります。

さっぱりとヘルシーに食べたい場合は「牛のたたき」、ジューシーな肉の満足感を味わいたい場合は「ローストビーフ」が向いていると言えますね。

「ビーフステーキ」との違いは?

【要点】

「ステーキ」は、一人前の厚切り肉をフライパンやグリルで「焼く」料理です。たたきやローストビーフが「塊肉」を調理して後から「スライス」するのに対し、ステーキは「スライス」された肉を「焼く」点で調理順序が異なります。

「ステーキ」は、あらかじめ一人前の厚さに「スライス」された肉を、フライパンや鉄板で「焼く」料理です。

「たたき」や「ローストビーフ」が、大きな「塊(ブロック)」のまま調理し、食べる直前にスライスするのに対し、「ステーキ」は最初から「スライス」された状態で調理する、という点で根本的に異なります。

また、ステーキは焼き加減(レア、ミディアム、ウェルダン)を選べますが、たたきは「表面以外は生」、ローストビーフは「中心までピンク」が基本であり、焼き加減を選ぶものではありません。

体験談|「たたき」の香ばしさと「ローストビーフ」の旨味

僕はどちらの料理も大好きですが、その魅力は全く別物だと感じています。

「牛のたたき」の魅力は、何と言っても「香りのコントラスト」です。居酒屋でカツオのたたきを頼む感覚で、牛のたたきを注文したことがあります。表面は炭火で炙られていて非常に香ばしいのに、噛むと中心部はひんやりと冷たく、生の赤身肉の持つ「むっちり」とした食感と、鉄分のような旨味が口に広がります。

それを玉ねぎスライスやニンニクチップと一緒にポン酢で流し込むと…さっぱりしているのに満足感がすごい。これはまさしく「和食」であり、お酒、特に日本酒や焼酎が欲しくなる味です。

一方、「ローストビーフ」の魅力は「計算された火入れ」にあります。ホテルのビュッフェやクリスマスディナーで食べるローストビーフは、一見赤く見えますが、生とは全く違う「しっとり」とした歯ざわりです。

噛むと、表面の香ばしさとは裏腹に、中から温かい肉汁がジュワッと溢れ出します。これは「生」ではあり得ない感覚。じっくりと時間をかけて加熱されたからこその、凝縮された肉の旨味です。こちらは濃厚な赤ワインが欲しくなりますね。

同じ牛肉の塊でも、「炙って冷やす」和食と、「じっくり焼いて休ませる」洋食。二つの文化の違いが、こんなにも味わいを分けるのかと感動します。

「牛のたたき」と「ローストビーフ」に関するよくある質問

最後に、この二つの料理に関するよくある疑問にお答えしますね。

Q: 牛のたたきは生ですが、食べても安全なのですか?

A: 正しい処理が前提です。食中毒の原因となる菌(O-157やカンピロバクターなど)は、肉の内部ではなく表面に付着していることがほとんどです。そのため、新鮮なブロック肉の「表面」を、強火でまんべんなく(6面全て)しっかり加熱殺菌し、調理器具を清潔に保てば、内部が生でも安全に食べられるとされています。ただし、鮮度が落ちた肉や、カット済みの肉、ひき肉では絶対に行わないでください。

Q: ローストビーフの中が赤いのは、生焼け(レア)ではないのですか?

A: いいえ、生(Raw)ではありません。あれは低温で長時間加熱した結果、肉の色素(ミオグロビン)が赤く残っている「ロゼ(Rosé)」と呼ばれる状態で、中心部までしっかり加熱殺菌されています(中心温度63℃で30分など)。ステーキの「レア」とも違い、全体が均一に加熱された状態を指します。

Q: 「カツオのたたき」と「牛のたたき」は同じものですか?

A: 調理法は同じです。「表面を強火で炙り、冷水(または氷水)で締めて、薬味とタレで食べる」という一連のプロセスは全く同じです。カツオのたたきが元祖であり、その調理法を牛肉に応用したものが「牛のたたき」と呼ばれています。

まとめ|「牛のたたき」と「ローストビーフ」の違いと選び方

「牛のたたき」と「ローストビーフ」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

二つの料理は、見た目が似ていても、その調理思想は正反対でした。

  • 牛のたたき和食。表面を「炙り」、氷水で「締める」。中は「生(レア)」。ポン酢や薬味でさっぱりと食べる。
  • ローストビーフ洋食。オーブンで「じっくり焼き」、アルミホイルで「休ませる」。中は「ピンク(ロゼ)」。グレイビーソースでジューシーに食べる。

この違いを知れば、その日の気分や合わせるお酒によって、的確に選べますね。

「さっぱりと、生の肉の旨味を日本酒や焼酎と楽しみたい」日は「牛のたたき」を、「ジューシーな肉の旨味を、赤ワインとゆっくり楽しみたい」日は「ローストビーフ」を選ぶのがおすすめです。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な料理・メニューの違いについて詳しく解説しています。ぜひ他の記事も参考にしてみてください。