「パート社員」と「パート」、どちらも同じように使われますが、違いはあるのでしょうか?
結論から言うと、両者に法的な違いはなく、どちらも「短時間労働者」を指す言葉です。
この記事を読めば、履歴書での正しい書き方や、アルバイトとの微妙なニュアンスの違いまでスッキリ理解でき、自信を持って使い分けられるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「パート社員」と「パート」の最も重要な違い
「パート社員」も「パート」も意味は同じで、法律上の「パートタイム労働者」を指します。「パート」は略称・通称であり、日常会話で使われます。「パート社員」は社内呼称や丁寧な表現として使われる傾向があります。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な理解はバッチリです。
| 項目 | パート社員 | パート |
|---|---|---|
| 正式名称 | パートタイム労働者(短時間労働者) | パートタイム労働者(短時間労働者) |
| 意味 | 正社員より労働時間が短い従業員 | 正社員より労働時間が短い従業員 |
| ニュアンス | 組織の一員であることを強調(丁寧) | 日常的な通称・略称(カジュアル) |
| 履歴書への記載 | 「パート」または「パートタイム労働者」 | 「パート」と書くのが一般的 |
一番大切なポイントは、法律上や雇用契約上の違いは一切なく、単なる「呼び方」の違いに過ぎないという点です。
「パート社員」と言うときは、「社員」という言葉を付けることで、より組織への帰属意識や責任感を含ませたいという企業の意図が含まれる場合があります。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
語源は英語の「Part-time(パートタイム)」です。フルタイム(全時間)に対する「部分的な時間」という意味で、ここから「パートタイマー」となり、さらに略されて「パート」となりました。「パート社員」は日本独自の造語的な表現です。
なぜ同じ働き方なのに呼び方が分かれるのか、言葉のルーツを紐解くと納得できますよ。
「パート(パートタイマー)」の語源
「パート」は、英語の Part-timer(パートタイマー)の略です。
Part-time は「一部の時間」を意味し、定時までフルに働く「Full-time(フルタイム)」の対義語です。
つまり、所定労働時間の一部だけ働く人という意味が根本にあります。
「パート社員」という言葉の背景
一方、「パート社員」は、「パートタイマー」に日本の企業文化である「社員」をくっつけた和製語に近い表現です。
単に時間を切り売りする労働力としてではなく、「わが社の社員(メンバー)」として迎え入れるというニュアンスを込めて、企業側が呼称として採用するケースが増えています。
「準社員」や「メイト社員」などと呼ぶのと同様の意図ですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
日常会話では「パート」、履歴書や面接では「パート」または「アルバイト」と書くのが一般的です。「パート社員」は主に企業側が求人や規定で使う言葉ですが、応募者が使っても問題ありません。
使い分けの感覚を掴むために、具体的な例文を見てみましょう。
日常会話での使い分け
普段の会話では「パート」が圧倒的に自然です。
【OK例文:パート】
- 近所のスーパーでパートを始めました。
- 午後はパートがあるので失礼します。
- パート仲間とランチに行きました。
ビジネス・求人での使い分け
企業側や、少し改まった場では「パート社員」が使われることがあります。
【OK例文:パート社員】
- 弊社では現在、パート社員を募集しております。
- パート社員向けの福利厚生制度を拡充しました。
- 正社員登用制度により、パート社員から正社員へステップアップできます。
履歴書での書き方
履歴書の職歴欄では、以下のように書くのが一般的です。
- 株式会社〇〇 入社(パートとして勤務)
- 株式会社〇〇 入社(アルバイトとして勤務)
「パート社員として勤務」と書いても間違いではありませんが、シンプルに「パート」で十分通じますし、丁寧さも欠きません。
【応用編】似ている言葉「アルバイト」との違いは?
法律上は「パート」も「アルバイト」も「パート社員」も全て同じ「パートタイム労働者」です。一般的に、主婦(夫)層を「パート」、学生・フリーター層を「アルバイト」と呼び分ける慣習がありますが、明確な境界線はありません。
「パート」とセットで語られるのが「アルバイト」です。
実は、法律(パートタイム・有期雇用労働法)の上では、パートもアルバイトも区別はありません。
どちらも「1週間の所定労働時間が、同じ事業所の正社員よりも短い労働者」と定義されています。
しかし、世間のイメージや求人市場では、以下のような使い分けが定着しています。
- パート:主婦(夫)が対象。家事や育児の合間に、長期的に働くイメージ。
- アルバイト:学生やフリーターが対象。学業の合間や、一時的に働くイメージ。
企業によっては「パート社員」には賞与や退職金の一部が出るが、「アルバイト」には出ない、といった社内規定による待遇差を設けている場合もあります。
「パート社員」と「パート」の違いを法律・ビジネス視点で解説
法律上の正式名称は「短時間労働者」です。厚生労働省の定義では、正社員と比較して労働時間が短い者を指します。「パート社員」という呼称は、非正規雇用であっても戦力として重視する企業の姿勢を表すことがあります。
もう少し専門的な視点から解説します。
法律上の定義:短時間労働者
「パートタイム・有期雇用労働法」では、名称にかかわらず、以下の条件に当てはまる人を「短時間労働者(パートタイム労働者)」としています。
1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
つまり、「パート」だろうが「アルバイト」だろうが「嘱託」だろうが、時間が短ければ法律上は同じ扱いです。
企業は、正社員との「不合理な待遇差」を設けることを禁止されています(同一労働同一賃金)。
ビジネス上の呼称戦略
企業があえて「パート社員」と呼ぶ背景には、「責任感を持って働いてほしい」「長く定着してほしい」というメッセージが込められていることが多いです。
「バイト」という呼び方が持つ「気楽さ」「一時的」なイメージを払拭し、組織の一員としての自覚を促すためのネーミングと言えます。
詳しくは、厚生労働省のパートタイム・有期雇用労働法に関するページなどで、法的な権利や定義を確認できます。
僕が「パートさん」と呼んで失敗した新人時代の体験談
僕が新入社員としてスーパーマーケットの店舗運営に配属された時の話です。
現場にはベテランの女性スタッフがたくさんいました。
僕は親しみを込めて、彼女たちのことを「パートさん」と呼んでいました。
「パートさん、これお願いします」「パートさんのシフト調整しました」
ある日、勤続20年のリーダー的な女性スタッフに呼び出されました。
「〇〇さん、悪気はないと思うんだけど、『パートさん』ってひとくくりに呼ばないでくれる?」
僕はハッとしました。
彼女たちは、雇用形態こそ「パートタイム」ですが、店舗運営の要であり、商品知識も接客スキルも僕より遥かに上でした。
それを「パートさん」という属性だけで呼ぶことは、彼女たちの個々のスキルやプロ意識を軽んじているように聞こえたのです。
会社側も、彼女たちを「メイト社員」と呼び、責任ある仕事を任せていました。
「言葉一つで、相手へのリスペクトが欠けていると伝わってしまう」ということを痛感した出来事です。
それ以来、雇用形態で呼ぶのではなく、「〇〇さん」と名前で呼ぶか、どうしても全体を指すときは「スタッフの皆さん」と呼ぶように心がけています。
「パート社員」と「パート」に関するよくある質問
履歴書の職歴欄、「パート」と「アルバイト」どっちを書けばいい?
基本的には、実際に勤務していた時の呼称に合わせるのが無難です。求人が「パート募集」なら「パートとして勤務」、「アルバイト募集」なら「アルバイトとして勤務」と書きます。どちらかわからない場合は、「パート」と書いても「アルバイト」と書いても、採用担当者は同じ「非正規雇用での勤務経験」として受け取るので、大きな問題にはなりません。
「パート」から「正社員」になれますか?
企業によりますが、「正社員登用制度」がある会社なら可能です。法律(パートタイム・有期雇用労働法)でも、事業主はパートタイム労働者を正社員へ転換するための措置(求人情報の周知や試験の実施など)を講じる努力義務があります。面接時に登用実績を確認すると良いでしょう。
社会保険は「パート社員」なら入れますか?
名称に関係なく、労働時間や年収などの条件を満たせば加入義務が発生します。具体的には、週の所定労働時間が正社員の3/4以上ある場合などが基本ですが、従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業では、「週20時間以上」「月額賃金8.8万円以上」などの条件を満たせば加入対象になります。
「パート社員」と「パート」の違いのまとめ
「パート社員」と「パート」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 意味は同じ:どちらも法律上の「短時間労働者」を指す。
- 使い分けの傾向:「パート」は日常会話や略称、「パート社員」は企業の正式呼称や丁寧語。
- アルバイトとの関係:法律上の区別はないが、主婦層=パート、学生層=バイトと呼び分ける慣習がある。
- 履歴書への記載:「パートとして勤務」と書けば問題ない。
言葉の背景にある法律や、企業が込めたニュアンスを理解すると、求人票の見方や履歴書の書き方も自信を持ってできるようになります。
これからは自信を持って、ご自身の働き方に合った言葉を選んでいきましょう。
さらに詳しいビジネス用語の使い分けについては、ビジネス用語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてください。