「休業」と「休暇」の違い!給料が出るのはどっち?意外と知らない労働法

「休業」と「休暇」、どちらも仕事を休むことには変わりありませんが、その仕組みや給与の扱いに大きな違いがあることをご存じでしょうか?

実は、「休暇」は労働者が自らの意思で取得するものであるのに対し、「休業」は会社の都合や法律上の制度に基づいて労働が免除されるものという決定的な違いがあります。

この記事を読めば、有給休暇と育児休業の違いや、休業手当の有無など、働く上で知っておくべき権利とルールがスッキリと分かります。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「休業」と「休暇」の最も重要な違い

【要点】

基本的には労働者が申し出て休むのが「休暇」、会社都合や長期的制度で休むのが「休業」です。給与については、休暇(特に有給)は原則支払われますが、休業は無給または手当(給付金)での対応となるケースが一般的です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目休業休暇
中心的な意味業務そのものが停止する、または長期的に免除される労働義務のある日に、労働者の権利として休む
主導権会社(使用者)または法律・制度労働者(自分)
給与の扱い原則無給(休業手当や給付金が出る場合あり)有給休暇なら全額支給(※特別休暇は会社による)
期間のイメージ比較的長期(育休、産休、会社都合など)単発~短期(1日単位、夏休みなど)

一番大切なポイントは、「休暇」は労働者が「休みます」と言って取るものだということです。

一方で「休業」は、育児や介護、あるいは会社の経営不振や天災など、特定の理由や状態に基づいて「労働義務が外れる」状態を指します。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「休業」は“業(なりわい・業務)”自体を休むことであり、組織全体の停止や長期的な業務離脱を指します。一方、「休暇」の“暇(いとま)”は「ひま・すきま」を意味し、日常の業務の合間に一時的に休みを取るイメージです。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くとその理由がよくわかりますよ。

「休業」の成り立ち:「業」を休止するイメージ

「休業」の「業(ぎょう)」は、「なりわい」「仕事」「事業」を意味します。

つまり、「休業」とは事業や業務そのものを一時的にストップさせるという意味合いが強い言葉です。

「本日休業」という看板があるように、店や会社全体が活動を止める場合や、個人が長期間にわたって業務から離れる(育児休業など)場合に使われます。

「個人の都合でちょっと休む」というよりは、「業務を行う状態ではなくなる」という重みのあるニュアンスですね。

「休暇」の成り立ち:「暇(いとま)」をもらうイメージ

一方、「休暇」の「暇(か)」は、「いとま」「ひま」とも読みます。

これは「何もしなくてよい時間」や「すきまの時間」を表す漢字です。

ここから、「休暇」には、本来は働くべき時間の中に、一時的な「いとま(空き時間)」を作るというイメージが含まれます。

「労働義務がある日(労働日)を、労働者の申請によって労働なしにする」という、スポット的な休みの性質がこの漢字から読み取れますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

個人のリフレッシュや用事は「休暇」、育児や災害・会社都合などの公的・長期的な休みは「休業」と使い分けるのが基本です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

「誰の都合か」「期間はどれくらいか」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:休業】

  • 来月から1年間、育児休業を取得することになりました。(長期・制度)
  • 台風の影響により、工場は一時休業いたします。(会社・事業の停止)
  • 会社の業績悪化に伴い、自宅待機としての休業を命じられた。(会社都合)

【OK例文:休暇】

  • 私用のため、明日は有給休暇をいただきます。(労働者の権利・単発)
  • 夏期休暇を利用して、旅行に行く予定です。(季節的な休み)
  • 結婚式のため、慶弔休暇を申請しました。(会社の制度による休み)

このように、制度としての長期的な休みや事業停止は「休業」、個人の申請による休みは「休暇」が自然ですね。

日常会話での使い分け

日常会話でも、考え方は同じです。

【OK例文:休業】

  • 行きつけの店に行ったら「臨時休業」の貼り紙があったよ。
  • 彼女はいま産休(産前産後休業)に入っているんだ。

【OK例文:休暇】

  • 今度の休暇はどこへ遊びに行こうか?
  • 久しぶりに長い休暇が取れたので実家に帰るよ。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、厳密には正しくない使い方を見てみましょう。

  • 【NG】熱が出たので、明日は休業します。
  • 【OK】熱が出たので、明日は休暇を取ります(または欠勤します)。

個人の体調不良で1日休む場合に「休業」は使いません。

ただし、医師から長期の療養が必要と診断されて会社を長く休む場合は「休職」という別の言葉が使われます。

【応用編】似ている言葉「休日」「欠勤」との違いは?

【要点】

「休日」は最初から働く義務がない日。「欠勤」は働く義務があるのに休むこと(給与控除の対象)。「休暇」は働く義務がある日を休みに変えること(有給なら給与あり)。この3つの区別は給与計算で非常に重要です。

「休業」「休暇」と似た言葉に「休日」「欠勤」があります。

これも押さえておくと、給与明細の見方が変わるかもしれませんよ。

「休日」とは、労働契約上、もともと労働義務がない日のことです。

土日祝日や会社の創立記念日などがこれに当たります。

そもそも働く約束をしていない日なので、「休みを取る」という手続きは不要ですね。

一方、「欠勤」とは、労働義務がある日に、労働者の都合で休むことです。

有給休暇を使い切った後に休む場合や、連絡なしに休む場合などが該当します。

「休暇」との最大の違いは、原則として給与が支払われない(ノーワーク・ノーペイ)という点です。

ボーナスの査定などでマイナス評価になることもあるので、注意が必要ですね。

「休業」と「休暇」の違いを学術的に解説

【要点】

労働基準法等の法律において、「休業」は労働義務の免除を指し、会社都合の場合は平均賃金の6割以上の「休業手当」が必要です。「休暇」は労働日の労働義務免除であり、特に年次有給休暇は賃金の支払いが義務付けられています。

法律の専門的な視点から見ると、この二つの違いは「お金(賃金)」の扱いに大きく関わってきます。

労働基準法では、「ノーワーク・ノーペイの原則」があり、働いていない時間に対しては賃金を支払わなくても良いのが基本です。

しかし、「休業」と「休暇」にはそれぞれ特例があります。

1. 休業と休業手当

会社側の都合(資材不足、経営不振など)で労働者を休ませる「休業」の場合、会社は労働者に対して平均賃金の100分の60以上の「休業手当」を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。

これは労働者の生活を保障するための重要なルールです。

一方で、育児・介護休業法に基づく「育児休業」などは、会社からの給与は出ないことが多いですが、代わりに雇用保険から「育児休業給付金」などが支給される仕組みになっています。

2. 休暇と賃金

「年次有給休暇」は、労働基準法第39条で定められた権利です。

これは、労働義務を免除するだけでなく、「休んでも賃金を減額してはいけない(有給)」と法律で決められています。

つまり、「休業」は生活保障的な手当や給付金が中心、「休暇(有給)」は通常通りの賃金保障、という法的な性質の違いがあるのです。

詳しくは厚生労働省のウェブサイトなどで労働条件に関する法令を確認してみると、より深い理解が得られるでしょう。

(人事担当者として冷や汗をかいた「育休」と「有給」の勘違い)

僕が以前、小さな会社で人事労務を担当していた時のことです。ある日、男性社員からこんな相談を受けました。

「来月子供が生まれるので、1ヶ月ほど『休暇』を取りたいんですけど、給料は全額出ますよね?」

僕は一瞬、耳を疑いました。

「えっ? 1ヶ月の有給休暇ですか? それとも育児休業ですか?」

彼の中では「会社を休む=休暇=給料が出る」という認識だったようで、育児休業(育休)も有給休暇と同じように会社から満額の給与が出ると勘違いしていたのです。

僕は慌てて説明しました。

「〇〇さん、育児『休業』は国の制度で、会社から給料は出ないんですよ。その代わり、雇用保険から給付金が出ますが、それは給料の約67%です。もし満額の給料が欲しいなら、溜まっている有給『休暇』を使うしかありませんが、残日数は足りますか?」

彼は顔面蒼白になりました。「ええっ、そうなんですか!? ローンの支払いもあるし、満額出ないのは困るなぁ…」

結局、彼は溜まっていた有給休暇を消化しつつ、足りない期間を育児休業に切り替えることでなんとかやりくりしました。

この時、僕は痛感したんです。

「言葉の違い一つで、生活設計が狂うことさえあるんだ」と。

それ以来、社員への制度説明では「休業」と「休暇」の違い、特にお金に関する部分をしつこいくらい丁寧に説明するようになりました。

言葉の定義をあいまいにしていると、人生の重要な局面で思わぬ落とし穴にはまることがあるんですね。

「休業」と「休暇」に関するよくある質問

産休や育休は「休暇」じゃないんですか?

法律上は「休業」です(産前産後休業、育児休業)。ただし、一般的に会話の中では「産休(さんきゅう)」と略されるため、「休暇」のようなイメージを持たれがちですが、制度としては長期的な労働義務の免除である「休業」に分類されます。

会社が台風で休みになった場合は「休業」ですか?

はい、会社全体の判断で業務を停止する場合は「休業」となります。この時、不可抗力(会社に責任がない)と判断されれば休業手当が出ない場合もありますが、会社側の判断で休ませる場合は休業手当の対象となることが多いです。

夏季休暇や年末年始は「休日」それとも「休暇」?

会社の就業規則によります。最初から「所定休日」として定められていれば「休日」ですが、本来は労働日である日を特別に休みにしている場合は「特別休暇」という扱いになります。

「休業」と「休暇」の違いのまとめ

「休業」と「休暇」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は主導権で使い分け:労働者が申し出るなら「休暇」、会社や制度が決めるなら「休業」。
  2. お金の出所が違う:有給休暇は会社から「賃金」、休業は「手当」や「給付金」が一般的。
  3. 漢字のイメージが鍵:「業」自体を休むのが休業、「暇(いとま)」をもらうのが休暇。

言葉の背景にある仕組みを理解すると、単なる言葉遊びではなく、自分の生活を守るための大切な知識になります。

これからは、就業規則やニュースを見る時も、自信を持って内容を理解できるはずです。

さらに詳しい言葉の使い分けについては、ビジネス用語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてみてくださいね。