「志願」と「志望」の違いを徹底解説!履歴書や面接で使うべき正しい言葉はどっち?

「志願」と「志望」、どちらも「こうなりたい」という願いを表す言葉ですが、就職活動や受験のシーンでどのように使い分けるべきか、迷ったことはありませんか?

実は、「志望」は心の中で願っている状態や将来の方向性を指すのに対し、「志願」は願書を出すなどの具体的な行動や手続きを伴う場合に使われるという、決定的な違いがあります。

この記事を読めば、履歴書の「志望動機」を自信を持って書けるようになり、ニュースで流れる「志願者数」の意味もスッキリと理解できるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「志願」と「志望」の最も重要な違い

【要点】

基本的には心の中で望むのが「志望」、願い出て行動するのが「志願」です。就活や進路では「志望」を使い、願書提出や特定の任務への立候補など手続きを伴う場合に「志願」を使います。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目志望(しぼう)志願(しがん)
中心的な意味自分はこうなりたいと望むこと自分から進んで願い出ること
焦点心の中の願い、方向性申し込み、出願という行動
主な使用シーン就職活動(志望動機)、進路選択受験(志願票)、軍隊、ボランティア
人数の数え方志望者数(行きたいと思っている人)志願者数(正式に申し込んだ人)

一番大切なポイントは、「志望」は気持ちのベクトルを表し、「志願」は手続きのアクションを表すということです。

だからこそ、まだ応募していない段階でも「第一志望」とは言えますが、「第一志願」とは言わないのです。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「志望」の“望”は遠くを眺めて待ち望むことを意味し、将来への期待を表します。一方、「志願」の“願”は神仏や人に願い求めることを意味し、相手に対する具体的な働きかけや申請のニュアンスを持ちます。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くとその理由がよくわかりますよ。

「志望」の成り立ち:「望」が表す“遠くを見る”イメージ

「志望」の「望(のぞむ)」という字は、背伸びをして遠くを見やる様子から生まれた漢字です。

そこから、「遠くにあるものを待ち焦がれる」「期待する」という意味が生まれました。

つまり、「志望」とは自分の志(こころざし)を、将来の目標に向けて遠く見据えている状態を表します。

「こうなりたいなあ」という、自分の中にある希望や方向性に焦点が当たっている言葉なのです。

「志願」の成り立ち:「願」が表す“願い出る”イメージ

一方、「志願」の「願(ねがう)」という字は、「原(頭・水源)」と「頁(顔)」からなり、神仏などにひたすら願い求める様子を表します。

これは単に思うだけでなく、相手に対して「お願いします」と具体的に働きかけるニュアンスが強い漢字です。

ここから、「志願」は、自分の志を遂げるために、相手(組織や機関)に対して「私を使ってください」「入らせてください」と正式に申し出る行為を指すようになりました。

だからこそ、願書などの書類提出を伴う場面で使われるのですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

履歴書や面接では「志望」、受験の手続きや自衛隊などの募集では「志願」を使います。「志望」は動機や理由を語る際に、「志願」は書類提出や立候補の際に適しています。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネス・就活シーンでの使い分け

「気持ちの話か」「手続きの話か」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:志望】

  • 御社を志望した理由は、その革新的な技術力に惹かれたからです。(就活の定番)
  • 彼は営業職を志望している。(希望する職種)
  • 第一志望の企業から内定をもらった。(目標としての順位)

【OK例文:志願】

  • 海外赴任の公募に志願した。(自ら手を挙げて申し込む)
  • 志願書を人事部に提出する。(書類としての申し込み)
  • 消防団に志願して入団した。(自発的な参加申し込み)

このように、キャリアの方向性を語るなら「志望」、具体的なポストに手を挙げるなら「志願(または応募)」が自然ですね。

受験・教育シーンでの使い分け

受験の世界では、この二つは明確に区別されています。

【OK例文:志望】

  • 模試の志望校判定でA判定が出た。(行きたい学校)
  • 進路志望調査票を提出する。(希望を聞く調査)

【OK例文:志願】

  • 今年の大学入学共通テストの志願者数が発表された。(願書を出した人数)
  • 入学志願票に写真を貼る。(出願書類)

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、違和感のある使い方を見てみましょう。

  • 【NG】面接で「御社を志願した動機は…」と話す。
  • 【OK】面接で「御社を志望した動機は…」と話す。

「志願」は「願い出るアクション」そのものを指すため、「志願した動機」と言うと「なぜ願書を出したのか(手続きの理由)」を聞いているようなニュアンスになりかねません。

「なぜ入社したいのか(心の方向性)」を語る場合は「志望動機」が適切です。

【応用編】似ている言葉「希望」との違いは?

【要点】

「希望」は将来に対する明るい見通しや、こうなってほしいという願い全般を指す、最も広い意味の言葉です。「志望」が自分自身の進路や身の振り方に特化しているのに対し、「希望」は「天気の回復を希望する」のように自分以外の事象にも使えます。

「志望」「志願」と似た言葉に「希望(きぼう)」があります。

これも押さえておくと、より適切な言葉選びができますよ。

「希望」は、ある事柄の実現を願い望むこと全般を指します。

「志望」との大きな違いは、対象が自分自身の行動に限らないという点です。

  • 志望:自分がどうなりたいか(例:弁護士を志望する)
  • 希望:どうなってほしいか(例:平和を希望する、配属の希望を出す)

ビジネスシーンでは、「配属のご希望はありますか?」と聞かれたり、「年収の希望額」を書いたりしますよね。

これは「あなたの進路としての志(こころざし)」というよりは、「あなたの条件やリクエスト」という意味合いが強いため、「希望」が使われます。

「志願」と「志望」の違いを学術的に解説

【要点】

大学入試などの統計データにおいて、「志願者数」は検定料を支払い願書を受理された確定人数を指し、「志望者数」は模試などでその大学を希望すると回答した潜在的な人数を指します。この定義の違いにより、両者の数字には大きな乖離が生まれます。

教育行政や統計の分野では、この二つの言葉は厳密に定義されて使い分けられています。

1. 志願者(Applicant)

大学入試センターや各大学が発表する「志願者数」は、入学検定料を支払い、出願書類が受理された人の数です。

これは「契約」に近い確定的なアクションを伴う数字であり、試験会場や問題用紙の手配に直結する実数です。

文部科学省の学校基本調査などでも、正式な手続きを行った人数として扱われます。

2. 志望者(Aspirant / Candidate)

一方、予備校などが発表する「志望者数」は、模擬試験などで「この大学に行きたい」とマークシートに記入した人の数です。

これはあくまで「その時点での意向」であり、実際の出願(志願)に至るかどうかは分かりません。

そのため、人気大学では「志望者数」が「志願者数」を大きく上回ることがよくあります。

詳しくは大学入試センターの公式発表などで用語の定義を確認してみると、データの見方がより深く理解できるでしょう。

(模試の「志望」判定と、本番の「志願」手続きの重みの違い)

僕が受験生だった頃、この「志望」と「志願」の違いを肌で感じた瞬間がありました。

秋の模擬試験までは、志望校欄に憧れの難関大学の名前を気軽に書いていました。

「第一志望:〇〇大学」。判定はいつもE判定でしたが、書くこと自体は自由ですし、誰にも迷惑はかかりません。

この時の僕は、あくまで夢を見る「志望者」の一人でした。

しかし、冬になり、いざ本番の願書を書く段になった時、手が止まりました。

入学検定料の振込用紙を見て、親に「数万円」のお願いをしなければならない現実。

そして、願書をポストに投函すれば、もう後戻りはできないというプレッシャー。

「これを送ったら、僕は正式にこの大学に挑戦する『志願者』になるんだ」

そう思った瞬間、憧れだった大学名が急に現実的な壁として目の前に立ちはだかったような気がしました。

結局、僕は実力相応の大学に「志願」先を変更しました。

「志望」は夢を語れるけれど、「志願」は覚悟を問われる。

言葉の響きは似ていても、その背後にある責任と行動の重みは全く違うのだと、受験料の振込控えを握りしめながら痛感した出来事でした。

「志願」と「志望」に関するよくある質問

履歴書には「志望動機」と書くべきですか?

はい、履歴書やエントリーシートの項目は「志望動機」とするのが一般的です。「志願動機」と書くと、軍隊への入隊や特別な任務への立候補のような、少し特殊で重々しいニュアンスを与えてしまう可能性があります。

「志願兵」とは言いますが「志望兵」とは言わないのはなぜ?

軍隊などは、自らの命を懸ける可能性のある組織であり、単に「なりたい(志望)」と思うだけでなく、強い決意を持って「入隊を願い出る(志願)」という手続きと覚悟が必要だからです。「自ら進んでその役目に就く」という意味で「志願」が定着しています。

大学の「出願」と「志願」は同じ意味ですか?

ほぼ同じ意味で使われます。「出願」は「願書を出すこと」という動作に焦点があり、「志願」は「願い出ること」という意思表示と手続き全体に焦点があります。「出願期間」や「志願者数」のように使い分けられますが、指している行為は同じです。

「志願」と「志望」の違いのまとめ

「志願」と「志望」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は行動の有無で使い分け:心で願うなら「志望」、手続きするなら「志願」。
  2. 漢字のイメージが鍵:「望」は遠くを見る期待、「願」は相手への働きかけ。
  3. 就活では「志望」が鉄則:履歴書や面接では「志望動機」を使うのが一般的。

言葉の背景にある「気持ち」と「行動」の違いを理解すると、自分の意思をより正確に伝えられるようになります。

これからは、エントリーシートを書く時も、ニュースで受験者数を見る時も、その言葉の奥にある意味を正しく捉えられるはずです。

さらに詳しいビジネス用語の使い分けについては、ビジネス用語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてみてください。