「管理部」と「総務部」、どちらも会社を支える裏方(バックオフィス)の部署ですが、その担当範囲や役割の広さに大きな違いがあることをご存じでしょうか?
実は、「管理部」は総務・経理・人事などを統合したバックオフィス全体の総称として使われることが多く、「総務部」は備品管理や施設管理など「他の部署がやらない業務全般」を担当する特定機能を指すという、包含関係の違いがあります。
この記事を読めば、求人票の「管理部募集」が何を求めているのか、取引先の名刺にある部署名がどのような権限を持っているのかがスッキリと分かります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「管理部」と「総務部」の最も重要な違い
基本的にはバックオフィス機能を丸ごと指すのが「管理部」、その中の一機能(庶務・運営)を指すのが「総務部」です。ただし、中小企業では同義語として使われることも多く、企業規模によって定義が揺らぎます。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な関係性はバッチリです。
| 項目 | 管理部 | 総務部 |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 間接部門(バックオフィス)の統合・統括 | 組織運営に必要な庶務・実務 |
| 担当範囲 | 広い(総務+経理+人事+法務など) | 限定的(備品、施設、行事、文書管理など) |
| 企業の規模感 | 中小~中堅企業に多い(部署をまとめるため) | 中堅~大企業に多い(機能が独立しているため) |
| ニュアンス | 会社全体をコントロール・統制する | 会社全体をサポート・支援する |
一番大切なポイントは、「管理部」と言うときは、経理や人事の仕事も含まれている可能性が高いということです。
一方で「総務部」は、経理部や人事部と並列に存在する、独立した部署であることが一般的です。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「管理部」の“管(くだ)”は全体を統制・コントロールするイメージ。「総務部」の“総(すべて)”は雑多な事務をまとめて引き受けるイメージ。前者は「支配・監督」、後者は「包括・奉仕」のニュアンスが強くなります。
なぜこの二つの言葉に範囲や役割の違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くとその理由がよくわかりますよ。
「管理部」のイメージ:全体をコントロールする司令塔
「管理」という言葉は、「管(くだ・とりしまる)」と「理(おさめる)」から成り立っています。
これは、組織の資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が良い状態に保たれるように統制し、監督するという意味を持ちます。
つまり、「管理部」とは、会社の屋台骨として、各部門が勝手な動きをしないようにルールを作り、経営資源をコントロールする「司令塔」のような役割をイメージさせます。
だからこそ、お金(経理)も人(人事)も施設(総務)も、すべて「管理」の下に置かれることが多いのです。
「総務部」のイメージ:すべてを引き受けるサポーター
一方、「総務」の「総(そう)」は、「すべて」「ふさ(束ねる)」という意味です。
「務(つとめ)」は任務や仕事を指します。
ここから、「総務」は「他の部署に属さない雑多な業務を、すべて束ねて引き受ける」というニュアンスになります。
「何でも屋」と言われることもありますが、それは会社運営に必要なあらゆる隙間を埋める「サポーター」としての役割を表しています。
コントロールするというよりは、円滑に回るように「お世話をする」イメージが強いですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
中小企業でバックオフィス全般を指すなら「管理部」、大企業でファシリティや株主総会担当を指すなら「総務部」を使うのが一般的です。
言葉の違いは、具体的なシチュエーションで確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーンでの使い分けと、間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
「会社の規模」や「担当範囲」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:管理部】
- 弊社は小規模なので、管理部が経理も人事も総務も一手に引き受けています。(統合部署)
- 管理部長として、バックオフィス全体の業務効率化を推進する。(統括責任者)
- 求人票:「管理部門スタッフ募集(経理・労務経験者優遇)」
【OK例文:総務部】
- オフィスの空調トラブルについては、総務部に連絡してください。(施設管理)
- 来月の株主総会の運営は、総務部が主体となって進めます。(会議運営)
- 名刺の発注や備品の補充は総務部の担当です。(庶務)
このように、何でもやる部署なら「管理部」、備品や建物なら「総務部」と呼ぶのが自然ですね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることが多いですが、組織の構造を誤解していると思われる使い方を見てみましょう。
- 【NG】(大企業で)給与計算のことは総務部に聞いてみよう。
- 【OK】(大企業で)給与計算のことは人事部(または労務課)に聞いてみよう。
大企業では「総務部」と「人事部」は明確に分かれています。給与や社会保険は人事・労務の管轄であり、総務部に聞いても「担当外です」と言われてしまうでしょう。
- 【NG】(管理部しかない会社で)決算書の作成は経理部にお願いします。
- 【OK】(管理部しかない会社で)決算書の作成は管理部(の経理担当)にお願いします。
「経理部」という独立した部署がない会社も多いです。その場合は「管理部」の中に経理機能が含まれているため、宛先を間違えないように注意が必要です。
【応用編】似ている言葉「経営企画室」「コーポレート本部」との違いは?
「経営企画室」は未来の戦略を練る参謀組織、「コーポレート本部」は管理部をより現代的・対外的に表現した名称です。管理部が「守り(現状維持・統制)」なら、経営企画は「攻め(成長戦略)」、コーポレートは「企業の基盤」というニュアンスです。
「管理部」「総務部」と似た役割を持つ部署名についても整理しておきましょう。
- 経営企画室:社長直轄で、中長期的な経営計画や新規事業の立案を行う「攻め」の部署。管理部とは異なり、ルーチンワーク(給与計算など)は行わないことが多いです。
- コーポレート本部:最近のIT企業やスタートアップに多い名称。「管理部」の言い換えですが、より「全社的な(Corporate)」支援を行うという意味合いを強めています。中身は管理部と同じく、人事・総務・経理などを統合した組織であることが多いです。
- バックオフィス:部署名というよりは、営業や製造などの「直接部門(フロントオフィス)」に対する「間接部門」全体の総称です。
組織図を見る際は、名前だけでなく「その部署が何の機能を担っているか」を確認するのが鉄則ですね。
「管理部」と「総務部」の違いをビジネス視点で解説
組織論の観点から見ると、企業は成長するにつれて「分化」します。創業期は社長が全てを行い、次に「管理部(何でも屋)」ができ、さらに規模が拡大すると「人事部」「経理部」「総務部」へと機能分化していきます。つまり、部署名は会社の成長フェーズを表しているのです。
なぜ会社によって部署名が違うのか、それは「組織の成長フェーズ」と深く関係しています。
1. 創業期~小規模(〜50名):管理部(または総務部)一択
この段階では、人事・経理・総務を分けるほど仕事量がありません。
「管理部」や「総務部」という名前の部署が一つあり、数名のスタッフが全てのバックオフィス業務を兼務します。
ここでは「管理部=総務部=経理部=人事部」です。
2. 中堅規模(50名〜):機能分化の始まり
社員が増えると、業務が専門化します。
「管理本部」の下に「経理課」「人事課」「総務課」がぶら下がる形や、管理部から「経理部」だけ独立する形が増えます。
ここでは「総務」は、人事や経理以外の仕事を担うようになります。
3. 大規模(数千名〜):完全分業
「人事本部」「財務経理本部」「総務本部」のように、それぞれが巨大な組織として独立します。
総務部は、株主総会運営、コンプライアンス、防災対策、ファシリティマネジメントなど、専門性の高い「総務固有の業務」に特化します。
詳しくはJ-Net21(中小企業基盤整備機構)などで組織づくりの事例を見てみると、フェーズごとの部署構成の違いがよく分かります。
「管理部」に入社したら経理も人事も全部担当!?私の勘違い体験談
私が初めて転職活動をしていた時のことです。
前職では大企業の「総務部」で、備品管理や社内イベントの運営だけを担当していました。
「次も同じような仕事がいいな」と思い、あるベンチャー企業の「管理部スタッフ募集」に応募しました。
求人票には「バックオフィス全般」と書かれていましたが、私は勝手に「管理部=総務部みたいなものだろう」と解釈していました。
運良く採用され、意気揚々と入社した初日。
上司から渡された業務リストを見て、私は青ざめました。
そこには、「備品発注」の他に、「月次決算の補助」「給与計算」「社会保険手続き」「採用面接の日程調整」などがズラリと並んでいたのです。
「えっ、これ全部私がやるんですか…? 経理とか人事の仕事じゃ…」
上司はあっけらかんと言いました。
「うん、うちは管理部だからね。管理部門の仕事は全部チームで回すんだよ。君も早く覚えてね」
「管理部」という名前は、「全部やります」の合図だった。
その事実に気づいた時は後の祭りでした。
結果的に、幅広いスキルが身についてキャリアアップには繋がりましたが、「部署名だけで仕事内容を判断してはいけない」と痛感した、ほろ苦い思い出です。
「管理部」と「総務部」に関するよくある質問
「管理部」と「総務部」、どっちが偉いんですか?
偉い・偉くないという決まりはありませんが、組織構造上、「管理本部」の下に「総務部」が置かれるケースが多いため、管理部の方が上位組織(包括する側)に見えることはあります。ただし、役割が違うだけです。
英語で言うとどうなりますか?
管理部は「Administration Department(アドミニストレーション)」や「Corporate Division」が一般的です。総務部は「General Affairs Department(ジェネラル・アフェアーズ)」と訳されます。Generalは「一般的な、全般の」という意味ですね。
名刺に「管理部(総務担当)」と書くのはなぜ?
それは、その会社が「管理部」という大きな箱の中に、「総務」「経理」などの機能を内包しているからです。相手に対して「私は管理部の中でも、特に総務の仕事をしていますよ」と専門領域を伝えるための親切な表記です。
「管理部」と「総務部」の違いのまとめ
「管理部」と「総務部」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は範囲で使い分け:全体を統括するのが「管理部」、庶務に特化するのが「総務部」。
- 企業規模が鍵:中小企業では「管理部=何でも屋」の可能性が高い。
- 漢字のイメージ:「管」はコントロール、「総」はすべて束ねる。
言葉の背景にある組織の仕組みを理解すると、求人探しや取引先とのやり取りがもっとスムーズになります。
これからは、部署名を見ただけで「あ、この会社はこういう組織体制なんだな」と想像できるようになるはずです。
さらに詳しいビジネス用語の使い分けについては、ビジネス用語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてみてください。