「合弁会社」と「合同会社」、名前が似ていて「合」の字も同じなので、なんとなく「協力してやる会社かな?」と混同してしまいませんか?
結論から言うと、この二つの違いは「複数の企業が共同で事業を行う状態・仕組み(合弁会社)」と「会社法で定められた特定の会社の種類(合同会社)」。
つまり、「合弁会社」という名前の法人格は存在せず、合弁事業を行うための「箱」として「合同会社」や「株式会社」が選ばれる、という関係性なのです。
この記事を読めば、ビジネスニュースや契約の場面で混乱することなく、二つの言葉を正しく使い分けられるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから一覧表で詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「合弁会社」と「合同会社」の最も重要な違い
基本的には、複数の企業が出資し合うビジネス形態を指すのが「合弁会社(JV)」、株式会社などと同じく法律上の会社の種類を指すのが「合同会社(LLC)」です。合弁会社を設立する際に、その中身(法人格)として合同会社を選ぶことができます。
まず、結論からお伝えしますね。
「合弁会社」と「合同会社」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、構造的な違いがスッキリ見えてくるでしょう。
| 項目 | 合弁会社 (Joint Venture) | 合同会社 (LLC) |
|---|---|---|
| 言葉の定義 | 共同出資で事業を行う「状態・仕組み」 | 会社法で定められた「法人格の種類」 |
| 法的な位置づけ | 法律上の会社の種類ではない | 株式会社と並ぶ会社の種類 |
| 設立の主体 | 複数の企業(または個人) | 1人(1社)から設立可能 |
| 関係性 | 「中身のビジネスモデル」の話 | 「外側の箱(法的形態)」の話 |
| 英語表記 | Joint Venture (JV) | Limited Liability Company (LLC) |
一番大切なポイントは、「合弁会社として、合同会社を設立することができる」という包含関係です。
「合弁会社」はビジネスのやり方、「合同会社」は会社の作り方(ルール)を指しているんですね。
なぜ違う?言葉の定義と概念のレイヤーから正体を掴む
「合弁」は資本を合わせるという意味で、複数のスポンサーがいる状態を指します。「合同」は出資者と経営者が一致して協力するという意味で、会社法上の特定の組織形態(持分会社)を指します。視点が「誰とやるか」か「どう組織するか」かの違いです。
なぜこの二つが混同されやすいのか、言葉の成り立ちと使われる場面から紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「合弁会社」の定義:共同プロジェクトの総称
「合弁(ごうべん)」とは、複数の事業者が共同で出資して事業を行うことを指します。
英語では「ジョイント・ベンチャー(Joint Venture:JV)」と呼ばれます。
例えば、A社とB社がお互いの技術を持ち寄って、新しいC社を作る場合、このC社が「合弁会社」です。
あくまで「共同でやっている」という状態を指す言葉なので、登記上の名称(株式会社C、合同会社Cなど)とは別の次元の話になります。
「合同会社」の定義:株式会社に次ぐ第2の選択肢
一方、「合同会社」は、2006年の会社法改正で新しく作られた会社の法的な種類(法人格)です。
株式会社とは違い、「出資者=経営者」であることが最大の特徴です。
設立コストが安く、経営の自由度が高いため、AmazonやApple、Googleの日本法人など、外資系企業やスタートアップで採用されることが多い形態です。
つまり、「株式会社にするか? 合同会社にするか?」という選択肢の一つなんですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスニュースでは提携のニュースで「合弁会社」が使われ、会社設立や登記の話では「合同会社」が使われます。文脈が「パートナーシップ」なのか「法人登記」なのかで見極めましょう。
言葉の違いは、具体的なビジネスシーンで確認するのが一番ですよね。
ニュースや会話での正しい使い分けを見ていきましょう。
「合弁会社」を使うケース
企業の提携や、共同事業の立ち上げを語る場合に使います。
【OK例文:合弁会社】
- 日本の自動車メーカーと現地のIT企業が、自動運転技術を開発する合弁会社を設立した。
- 海外進出のリスクを減らすため、現地のパートナーと合弁会社(ジョイントベンチャー)を作ることにした。
- 出資比率50:50の合弁会社なので、両社の合意がないと何も決められない。
「合同会社」を使うケース
会社の法的な種類や、設立手続きについて語る場合に使います。
【OK例文:合同会社】
- 副業の節税のために、プライベートカンパニーとして合同会社を設立した。
- 株式会社よりも設立費用が安いので、まずは合同会社からスタートする。
- あの有名外資系企業の日本法人は、実は株式会社ではなく合同会社だ。
- 合同会社の代表者は「代表取締役」ではなく「代表社員」と呼ばれる。
これはNG!間違えやすい使い方
意味が通じないわけではありませんが、定義が曖昧になる使い方を確認しておきましょう。
- 【NG】一人で起業するので、合弁会社を作ろうと思います。
- 【OK】一人で起業するので、合同会社(または株式会社)を作ろうと思います。
「合弁」は「合わせる」ことなので、一人で行う場合は使いません。一人の場合は単独出資となります。
【応用編】合弁会社を作るなら「株式会社」と「合同会社」どっち?
合弁会社(JV)の法人格として、最近は「合同会社」が選ばれるケースが増えています。株式会社よりも利益配分や議決権を自由に決められるため、出資比率と権限を切り離して設計したいJVに向いているからです。
ここで、二つの言葉が交差する応用的な視点を持ってみましょう。
企業同士が「合弁会社(JV)」を作るとき、その「箱」を株式会社にするか、合同会社にするかは重要な戦略になります。
株式会社にする場合
- メリット:知名度が高く、信用が得やすい。
- デメリット:出資比率(株数)に応じて議決権が決まるため、51%を持つ側が支配権を握ることになり、対等な関係が作りにくい。
合同会社にする場合
- メリット:出資額に関わらず「議決権」や「利益配分」を自由に決められる(定款自治)。
- 活用例:金は出すけど口は出さないA社と、金はないけど技術はあるB社が組む場合、B社に強い権限を持たせることができる。
このように、パートナーシップの設計図に合わせて、あえて「合同会社」という形態を選ぶ合弁会社が増えているのです。
「合弁会社」と「合同会社」の違いを会社法・ビジネスの視点から解説
会社法上、合同会社は「持分会社」に分類され、所有と経営が一致しています。合弁会社は法的な定義ではなく、契約に基づく共同事業体です。JV契約書で詳細を決め、その受け皿として適切な法人格(株式会社や合同会社)を選んで登記します。
ここでは少し専門的に、法律や契約の実務から両者の違いを深掘りしてみましょう。
会社法には「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4種類が定められています。
これらはすべて法務局に登記される「法人格」です。
一方、「合弁会社」という種類の会社は会社法には存在しません。
合弁会社の実体は、複数の企業間で結ばれる「合弁契約(Joint Venture Agreement)」に基づいています。
この契約の中で、「新しく作る会社の形態はどうするか(株式会社か合同会社か)」「出資比率はどうするか」「役員は何人ずつ出すか」といったルールを細かく決めます。
つまり、「合弁会社」はビジネス上の契約関係を指し、「合同会社」はその契約を実行するための器(選択肢の一つ)という関係になります。
詳しくはJ-Net21(中小企業基盤整備機構)の解説ページなどで、会社形態の違いを確認してみるのも勉強になりますよ。
僕が「合弁会社」の提案で「合同会社」と混同され話が噛み合わなかった体験談
僕も経営企画室に配属されたばかりの頃、この二つの言葉のレイヤーの違いを意識できず、会議で冷や汗をかいた経験があります。
ある新規事業で、他社と提携して新会社を作るプロジェクトが持ち上がりました。
僕は上司に意気揚々と提案しました。
「部長! 今回のプロジェクトは、先方との合弁会社で進めるべきです!」
すると、隣にいた経理課長が不思議そうな顔をして言いました。
「合弁? うーん、でも今回は上場を目指すわけじゃないし、コストもかけたくないから、普通の株式会社より合同会社の方がいいんじゃないの?」
僕は一瞬混乱しました。
「えっ? いや、僕は合弁会社がいいと言ったんですが……合同会社って、あのAmazonとかのやつですよね? それとは違う話で……」
会議室に微妙な空気が流れました。
経理課長は、「合弁(JV)でやるのは分かったけど、その法人格をどうするか」という具体的な話に飛ばしていたのに対し、僕は「単独でやるか、共同(合弁)でやるか」という入り口の話をしていたのです。
「合弁」と「合同」、音が似ている上に、どちらも会社の話なので、文脈が整理されていないと会話がズレてしまうんですね。
この失敗から、「『誰とやるか(合弁)』と『どんな箱でやるか(合同)』は別の階層の話だ」ということを痛感しました。
それ以来、提案する時は「他社との合弁事業として進め、法人格は合同会社を採用します」と、主語と述語を明確にして話すようにしています。
「合弁会社」と「合同会社」に関するよくある質問
合弁会社を作るメリットは何ですか?
自社にない技術、販路、資金、ブランド力などをパートナー企業から補完できることです。また、新規事業のリスクを単独で負わずに分散できるメリットもあります。海外進出の際に現地の企業と合弁を作るケースが典型的です。
合同会社はなぜ大企業に使われているのですか?
AmazonやAppleなどの外資系企業が日本法人を合同会社にしているのは、アメリカの税制上のメリット(パススルー課税の適用など)を受けるためや、決算公告の義務がなく内部情報をオープンにしなくて済む点、意思決定が迅速に行える点などが理由とされています。
合弁会社を解消することはできますか?
可能です。合弁契約書にあらかじめ「撤退条件」や「株式の買取条項」を定めておくことが一般的です。解消時は、どちらかが株式を買い取って完全子会社化するか、第三者に売却するか、会社を解散(清算)するかのいずれかになります。
「合弁会社」と「合同会社」の違いのまとめ
「合弁会社」と「合同会社」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本はレイヤーの違い:合弁は「共同事業の状態」、合同は「法人格の種類」。
- 包含関係:合弁会社の器として、合同会社を選ぶことができる。
- 特徴の違い:合弁はパートナーシップ重視、合同は低コスト・自由度重視。
- 使い分け:提携の話なら「合弁」、登記・設立の話なら「合同」。
言葉の響きは似ていますが、指している「ビジネスの設計図」の場所が全く異なります。
これからは自信を持って、事業のスキーム(枠組み)を語れるようになってくださいね。
もし、他にも専門用語の使い分けで迷うことがあれば、業界用語の違いまとめなども参考にしてみてください。
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