「とかく」と「とにかく」の違い!「兎角」と書くのはどっち?

「とかく」と「とにかく」、響きは似ていますが、ビジネスシーンで使う際にはその「視点」と「目的」に大きな違いがあります。

一言で言えば、「とかく」は悪い傾向になりがちな「現状の分析」、「とにかく」は他の事情を一旦置く「優先順位の決定」に使われます。

もし、問題解決を急ぐ場面で「とかくこのプロジェクトは…」と語り出してしまうと、「今は評論している場合じゃない!」と上司に叱られてしまうかもしれません。

この記事を読めば、それぞれの言葉が持つニュアンスの違いがスッキリと分かり、状況分析をしたい時と、行動を促したい時で、的確な言葉を選べるようになります。

それでは、まず最も重要な違いの一覧表から詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「とかく」と「とにかく」の最も重要な違い

【要点】

「とかく」は「放っておくと〜しがちだ」というネガティブな傾向や風潮を表す際に使います。「とにかく」は「他のことはさておき」と、特定の事項を優先・強調する際に使います。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目とかく(兎角)とにかく(兎に角)
中心的な意味あれこれと、〜しがちである他のことはともかく、まずは
焦点傾向・風潮(特に悪い方向)優先順位・結論の先出し
ニュアンス批判的、評論家的、客観的主体的、強引、前向き
漢字表記兎角兎に角
ビジネスでの注意愚痴っぽく聞こえることがある雑に聞こえることがある

一番大切なポイントは、「とかく」は「世間一般の傾向(〜しがち)」を語る言葉であり、「とにかく」は「今の行動(まずはやる)」を促す言葉であるということです。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

どちらも指示代名詞の「と(彼・それ)」と「かく(此・これ)」が語源です。「とかく」は「あれやこれや」と目移りするイメージ、「とにかく」は「あれこれ言う前に」と一つに絞るイメージを持つと分かりやすいです。「兎」の字は当て字です。

なぜ似たような響きなのに意味が異なるのか、言葉の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「とかく」の語源:あれやこれやと動く様子

「とかく」は、古語の「と(彼=あちら)」と「かく(此=こちら)」が組み合わさった言葉です。

もともとは「あちらこちら」「あれやこれや」と、物事が定まらずに動く様子を表していました。

そこから転じて、「物事は放っておくと、あれやこれやと(悪い方へ)動きがちだ」という「傾向」を表す言葉として定着しました。

漢字の「兎角」は、仏教語の「兎角亀毛(とかくきもう/ウサギの角やカメの毛のように実在しないもの)」から取られた当て字とされていますが、現代では「傾向」の意味が主です。

「とにかく」の語源:あれこれ言うのは後回し

「とにかく」も語源は同じく「と(彼)」+「に(助詞)」+「かく(此)」です。

直訳すると「あれにこれに」「なんだかんだと」という意味になります。

しかし、現代語としての使い方は、「あれこれ(他の事情)は一旦置いておいて」という「限定」や「優先」のニュアンスが強くなりました。

「兎に角」という漢字も当て字であり、深い意味はありませんが、「角(つの)」を突き出して一点突破するようなイメージで覚えると、「優先する」という意味と結びつけやすいかもしれませんね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

世間の風潮や人の悪い癖を指摘する時は「とかく」、議論を打ち切って結論を急ぐ時や意思を強調する時は「とにかく」を使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

現状分析か、行動の促進かで使い分けます。

【OK例文:とかく】

  • 新入社員はとかく遠慮しがちだが、もっと積極的に発言してほしい。(傾向の指摘)
  • 年末はとかく忙しくなりがちなので、早めに準備しよう。(ありがちな状況)
  • 現代人はとかく運動不足になりやすい。(世間の風潮)

【OK例文:とにかく】

  • 理由は後で聞くとして、とにかく急いで対応してください。(優先順位の決定)
  • 予算の問題はあるが、とにかく企画書を通すことが先決だ。(一点集中)
  • とにかくやってみましょう。(行動の促し)

日常会話での使い分け

日常でも、愚痴っぽくなるか、前向きになるかで使い分けられます。

【OK例文:とかく】

  • 噂話というものは、とかく大きくなりがちだ。(世の常)
  • 年を取ると、とかく昔話をしたくなるものだ。(自分の傾向)

【OK例文:とにかく】

  • とにかくお腹が空いたから何か食べよう。(欲求の優先)
  • とにかくすごい映画だったよ!(強調・言葉にできないすごさ)

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じますが、文脈として不自然な使い方を見てみましょう。

  • 【NG】会議が長引いているが、とかく結論を出そう。
  • 【OK】会議が長引いているが、とにかく結論を出そう。

「まずは結論を」と急ぐ場面で「とかく」を使うと、「あれこれと結論を出そう」という意味不明な文になってしまいます。

「とかく」は「~しがちだ」という文脈で使うのが基本です。

  • 【NG】若者はとにかくスマホばかり見ていると言われる。
  • 【OK】若者はとかくスマホばかり見ていると言われる。

「とにかく」でも意味は通じますが、「そういう傾向がある」と客観的に(あるいは批判的に)述べる場合は「とかく」の方が、「世の常として」というニュアンスが出て適切です。

【応用編】似ている言葉「いずれにせよ」や「何はともあれ」との違いは?

【要点】

「いずれにせよ」は複数の選択肢や可能性の結果が同じになること、「何はともあれ」は最優先事項を強調すること、「なにしろ」は理由を強調することです。「とにかく」の言い換えとしてビジネスで使える表現です。

「とにかく」は便利な言葉ですが、ビジネスメールでは少し砕けすぎた印象を与えることがあります。

より適切な言い換え表現を知っておくと、知的な印象を与えられますよ。

結果は同じ「いずれにせよ」

「いずれにせよ(いずれにしても)」は、「どの道を選んでも結果はこうなる」「事情はどうあれ」という意味です。

「A案でもB案でも、いずれにせよコスト削減は必須です」のように、冷静な判断を示す際に使います。

ビジネスメールでは「とにかく」の代わりに最も使いやすい表現です。

最優先を強調「何はともあれ」

「何はともあれ(何はさておき)」は、「他のことは横に置いておいて、これだけは」という最優先事項を強調します。

何はともあれ、無事でよかった」のように、感情的な安堵や重要性を伝える際に適しています。

理由の強調「なにしろ」

「なにしろ(なにせ)」は、「なんといっても~だから」と、理由や背景を強調する言葉です。

なにしろ時間がなくてね」のように、言い訳や事情説明の枕詞として使われます。

「とかく」に近い「傾向」を表すこともありますが、より口語的です。

「とかく」と「とにかく」の違いをビジネス心理の視点から解説

【要点】

「とかく」を使う人は、現状を一歩引いて分析する「評論家ポジション」を取りがちです。一方、「とにかく」を使う人は、現状を打破して前に進めようとする「実務家ポジション」を取りますが、思考停止と誤解されるリスクもあります。

少し専門的な視点から、この二つの違いを深掘りしてみましょう。

ビジネスの現場において、言葉の選び方はその人の「スタンス」を表します。

「とかく」を使う心理

「最近の若い社員はとかく指示待ちになりがちで…」

このように「とかく」を使う時、話し手は対象から心理的な距離を置き、「自分は違うけれど、世間一般ではこうだ」という客観的・評論家的なポジションを取っています。

現状分析としては正しいかもしれませんが、多用すると「で、あなたはどうするの?」と当事者意識の欠如を疑われる可能性があります。

「とにかく」を使う心理

「理由は分かりました。とにかく今すぐ対応しましょう」

「とにかく」を使う時、話し手は複雑な背景を意図的に無視し、行動に焦点を当てています。

これはリーダーシップの発揮とも言えますが、一方で「議論の放棄」や「思考停止」のサインとも受け取られかねません。

とにかくやれ!」という指示は、パワハラに繋がりやすい言葉でもあるため、使用には注意が必要です。

会議で「とにかく」を連発して「思考停止」と思われた体験談

僕も昔、この言葉の使い方で失敗し、上司に厳しく指導された経験があります。

入社3年目、プロジェクトの進捗が思わしくなく、対策会議が開かれた時のことです。

メンバーからは「リソースが足りない」「仕様が曖昧だ」といった課題(言い訳)が次々と挙がっていました。

進行役だった僕は、議論が停滞するのが嫌で、こう仕切りました。

「皆さんの言い分は分かりました。でも、納期は迫っています。とにかく手を動かしましょう。とにかく終わらせることが最優先です!」

会議の後、上司に呼び出されました。

「君の『とにかく』は、メンバーの声を無視しているように聞こえるぞ。課題を整理せずに『とにかくやれ』と言うのは、思考停止と同じだ」

ガツンと言われました。

僕はリーダーシップを発揮したつもりでしたが、実際には「臭いものに蓋」をして、強引に進めようとしていただけだったのです。

上司は続けました。

「こういう時は、『とかく議論が発散しがちだが、まずは課題を一つに絞ろう』とか、『いずれにせよやる必要はあるから、方法を考えよう』と言うべきだ。言葉一つで、メンバーの納得感は変わるんだよ」

この経験から、「とにかく」は強力な推進力になる反面、周囲の思考や意見を遮断する危険な言葉でもあると痛感しました。

それ以来、ビジネスの場で「とにかく」を使う時は、「議論を尽くした後の最後の一押し」に限定するようにしています。

言葉の持つ「強制力」を理解して使うことが、大人のビジネススキルなんですよね。

「とかく」と「とにかく」に関するよくある質問

「とかくするうちに」とはどういう意味ですか?

「とかくするうちに」は、「あれこれしているうちに」「何やかやしている間に」という意味です。時間が経過する様子を表す慣用句で、現代では「そうこうするうちに」と言う方が一般的かもしれません。

ビジネスメールで「とにかく」を使っても失礼になりませんか?

目上の人や取引先に対して「とにかくご連絡いたします」などと使うと、雑な印象や、「他の事情はどうでもいい」という投げやりなニュアンスを与えてしまうリスクがあります。「取り急ぎ」「まずは」「いずれにいたしましても」などに言い換えるのが無難なビジネスマナーです。

「兎角」と「兎に角」、なぜウサギなんですか?

どちらも当て字(借字)です。「とかく」は仏教語の「兎角亀毛(ウサギのツノ、カメの毛=実在しないもの)」と音が同じであることから字が当てられた説がありますが、意味的な関連はありません。「とにかく」も夏目漱石などが使い始めた当て字が定着したと言われています。ウサギの角のように「ありえない」という意味ではなく、単に音を借りただけの表記です。

「とかく」と「とにかく」の違いのまとめ

「とかく」と「とにかく」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. とかく:~しがちである。ネガティブな傾向や風潮を表す。評論家的。
  2. とにかく:他のことはさておき。優先順位を決定し、行動を促す。実務的。
  3. 使い分け:現状を嘆くなら「とかく」、前へ進めるなら「とにかく」。
  4. ビジネス:「とにかく」は雑に聞こえるので「いずれにせよ」などに言い換えを。

言葉の背景にある「傾向の指摘」と「行動の優先」という役割を理解すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

これからは自信を持って、状況にふさわしい言葉を選んでいきましょう。

ビジネスシーンでの言葉遣いについてさらに詳しく知りたい方は、ビジネス敬語の使い分けまとめページもぜひ参考にしてみてくださいね。

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