「誠実」と「真摯」、どちらもビジネスシーンで自分の真剣さを伝える時によく使われる言葉ですよね。
でも、「誠実な対応」と「真摯な対応」はどう違うのか、自信を持って答えられますか?
実はこの2つの言葉、焦点が「人の内面(人柄)」にあるか、「物事への態度(行動)」にあるかという点で明確に使い分けられます。
この記事を読めば、履歴書や面接での自己PR、あるいはお客様への謝罪対応などで、相手に最も響く言葉を迷わず選べるようになり、あなたの信頼感はグッと高まるでしょう。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「誠実」と「真摯」の最も重要な違い
「誠実」は人の性格や人柄を表し、嘘偽りのない内面を指します。「真摯」は物事に対するひたむきな態度や姿勢を表し、行動の真剣さを強調します。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、ビジネスでの基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 誠実(せいじつ) | 真摯(しんし) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 私利私欲がなく、真心を持って人や物事に接すること | 真面目で熱心に、ひたむきに物事に取り組むこと |
| 焦点(対象) | 人柄、性格、内面(嘘がないこと) | 態度、姿勢、行動(熱心であること) |
| よく使われる場面 | 自己PR、他己紹介、信頼関係の構築 | 謝罪、決意表明、クレーム対応、プロジェクトへの取り組み |
| NGな使い方 | 「誠実に取り組む」(間違いではないが「真摯」の方が適切) | 「真摯な人」(あまり使われない表現) |
一番大切なポイントは、「あの人は誠実だ」とは言いますが、「あの人は真摯だ」とはあまり言わないということです。
「誠実」はその人の「性格」を褒める言葉であり、「真摯」はその人の「態度」を評価する言葉だからですね。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「誠」は言葉と行動が一致する(成る)ことを表し、内面的な正しさを指します。「摯」は手でしっかり掴むことを表し、物事に対する手厚く真剣な態度を指します。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「誠実」の成り立ち:「誠」が表す“言行一致”のイメージ
「誠」という字は、「言(ことば)」と「成(なす)」から成り立っています。
これは、「言ったことがその通りに成る」、つまり言葉と行動が一致しており、嘘や偽りがない状態を表しています。
そこに、中身が詰まっていることを意味する「実」が加わり、「心が真心で満ちている」という内面的な美徳を指す言葉になりました。
だからこそ、「誠実」は人の内面や性格を評価する際に使われるんですね。
「真摯」の成り立ち:「摯」が表す“ガシッと掴む”イメージ
一方、「真摯」の「摯(し)」という字を見てみましょう。下半分に「手」がありますよね。
この字は「執(とる)」と「手」が組み合わさったもので、元々は「手でしっかりと掴む」「手厚い」という意味を持っています。
ここから転じて、「真(まこと)」に「摯(手厚く真剣に)」向き合う、つまり物事に対してガシッと正面から向き合い、ひたむきに取り組む態度を表すようになりました。
「真摯」が具体的な行動や態度に対して使われるのは、この「手で掴む」という動作的な語源があるからなのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
自己PRなど人柄を伝える時は「誠実」、謝罪や仕事への姿勢を伝える時は「真摯」を使います。「誠実な人」はOKですが、「真摯な人」は違和感があるため避けましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
相手との関係性や、伝えたい内容(性格か態度か)を意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:誠実】
- 彼はどんな小さな約束も守る、誠実な人柄で信頼されています。
- お客様からのご質問には、常に誠実にお答えするよう心がけています。
- (就活の自己PRで)私の長所は、誰に対しても嘘をつかず誠実に向き合える点です。
【OK例文:真摯】
- 今回のご指摘を真摯に受け止め、再発防止に努めてまいります。(謝罪)
- 新しいプロジェクトの成功に向けて、チーム一丸となって真摯に取り組む所存です。(決意)
- 彼の仕事に対する真摯な姿勢は、若手社員の手本となっています。(評価)
「誠実」は「嘘をつかないクリーンな印象」、「真摯」は「汗をかいて一生懸命やる熱い印象」と覚えておくと良いかもしれません。
日常会話での使い分け
日常会話でも、考え方は同じです。
【OK例文:誠実】
- 結婚相手には、やっぱり誠実な人がいいよね。
- 店員さんの誠実な対応に感動して、この店のリピーターになった。
【OK例文:真摯】
- 彼は息子の進路相談に真摯に向き合ってくれた。
- あの選手の野球に対する真摯な態度は、見ていて気持ちがいい。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることもありますが、違和感を与えてしまう使い方を見てみましょう。
- 【NG】田中部長はとても真摯な人だ。
- 【OK】田中部長はとても誠実な人だ。
- 【OK】田中部長は仕事に対して真摯な人だ。
「真摯」はあくまで「態度」にかかる言葉なので、単に「真摯な人」と言うと、「何に対して真摯なのか?」という対象が抜けている感じがして、不自然に聞こえることがあります。「仕事に対して真摯な人」のように対象を明示するか、人柄そのものを褒めるなら「誠実」を使いましょう。
【応用編】似ている言葉「実直」との違いは?
「実直」は「誠実」に似ていますが、より「真面目で正直、律儀」というニュアンスが強く、少し不器用だが信頼できるといった意味合いで使われることが多いです。
「誠実」「真摯」と似た言葉に「実直(じっちょく)」があります。これも押さえておくと、人物評価の表現の幅が広がりますよ。
「実直」は、「実(まこと)」に「直(なお)」と書く通り、影日向なく真面目で正直なことを指します。
「誠実」とほぼ同じ意味で使われますが、「実直」には「融通が利かないほど真面目」「地味だがコツコツやる」といった、少し古風で堅実なニュアンスが含まれることがあります。
例えば、「彼は実直な職人だ」と言うと、口数は少ないけれど仕事は完璧にこなす、信頼できる人物像が浮かびますよね。
華やかさよりも堅実さをアピールしたい場合は、「実直」を使うのが効果的です。
「誠実」と「真摯」の違いを学術的に解説
コロケーション(共起表現)の観点から見ると、「誠実」は名詞(人、人柄)を修飾する形容動詞的用法が多く、「真摯」は動詞(取り組む、受け止める)を修飾する副詞的用法が顕著です。
少し専門的な視点から、この二つの言葉の違いを深掘りしてみましょう。
言語学の「コロケーション(語と語の慣用的な結びつき)」という観点から分析すると、両者の役割の違いがはっきりと見えてきます。
コーパス(大規模な言語データベース)などを参照すると、「誠実」は「誠実な人」「誠実な対応」「誠実な人柄」のように、名詞を修飾する形容動詞的な使い方が非常に多いです。これは、「誠実」が対象の属性(性質)を表す言葉であることを裏付けています。
一方、「真摯」は「真摯に取り組む」「真摯に受け止める」「真摯に向き合う」のように、動詞を修飾する副詞的な使い方が圧倒的に多いです。これは、「真摯」が動作の様態(どのように行うか)を表す言葉であることを示しています。
つまり、「誠実」は「What(その人は何者か)」を語り、「真摯」は「How(どのように行うか)」を語る言葉だと言えます。
この違いを理解しておくと、自己PRでは「私は誠実な人間です(What)」と述べ、入社後の抱負では「業務に真摯に取り組みます(How)」と述べる、というような完璧な使い分けが可能になります。
謝罪メールで「真摯」を連発して上司に怒られた僕の失敗談
僕も新人の頃、この言葉の使い分けで痛い目を見たことがあります。
入社1年目、お客様からのクレームに対する謝罪メールを作成していた時のことです。とにかく反省していることを伝えたくて、僕は「真摯」という言葉を連発しました。
「この度のご指摘を真摯に受け止めます」「今後は真摯に対応いたします」「真摯な姿勢で改善に努めます」……。
自分では「これで熱意と反省が伝わるはずだ!」と自信満々で上司にチェックをお願いしました。
ところが、メールを見た上司はため息をついて言いました。
「君ね、『真摯』って言えば許されると思ってない? こんなに連発すると、逆に軽く聞こえるよ。口先だけで『真剣です、真剣です』って言ってる詐欺師みたいだぞ」
ガーンと頭を殴られたような衝撃でした。言葉の重みを考えず、ただ「魔法の言葉」のように使っていたことを見透かされたんです。
上司は続けました。「ここは『誠実に対応いたします』でいいんだよ。そして、どう真摯に取り組むのか、具体的な行動を書かないと意味がない」
その経験以来、僕は「真摯」という言葉を使う時は、必ずその後に「具体的な行動」をセットにするようにしています。「真摯に受け止め、〇〇という対策を行います」というように。言葉は飾りではなく、行動の裏付けがあって初めて輝くんですよね。
「誠実」と「真摯」に関するよくある質問
「誠実に対応します」と「真摯に対応します」どちらが正しい?
どちらも正しいですが、ニュアンスが異なります。「誠実に対応します」は「嘘偽りなく、正直に対応します」という宣言で、「真摯に対応します」は「熱心に、真剣に対応します」という宣言です。謝罪の場面では、相手の言葉を重く受け止める意味で「真摯」が好まれる傾向があります。
「真摯な人」と言うのは間違いですか?
間違いではありませんが、一般的ではありません。「真摯」は態度や姿勢にかかる言葉なので、人柄を表す場合は「誠実な人」や「真面目な人」と言う方が自然です。「仕事に対して真摯な人」のように、対象を限定すれば違和感なく使えます。
履歴書の自己PRではどちらを使うべき?
自分の性格をアピールしたいなら「誠実」がおすすめです。「約束を守る」「嘘をつかない」といった信頼感をアピールできます。一方、仕事への取り組み方をアピールしたいなら「真摯」を使い、「困難な課題にも真摯に取り組み~」のように具体的なエピソードと合わせると効果的です。
「誠実」と「真摯」の違いのまとめ
「誠実」と「真摯」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は対象で使い分け:人の内面・性格なら「誠実」、物事への態度・行動なら「真摯」。
- ニュアンスの違い:「誠実」は嘘のない真心、「真摯」はひたむきな熱意。
- シーン別の活用:自己PRや信頼構築は「誠実」、謝罪や決意表明は「真摯」。
- 漢字のイメージ:「誠」は言行一致、「摯」は手で掴む真剣さ。
言葉は単なる記号ではなく、あなたの「姿勢」を相手に伝えるための大切なツールです。場面に応じて最適な言葉を選べるようになれば、あなたの「本気度」は相手に真っ直ぐ伝わります。
これからは自信を持って、その場にふさわしい言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、ビジネス敬語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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