「同時並行」と「同時進行」、どちらも複数のことを一緒に進めるときに使う言葉ですよね。
でも実は、この二つの言葉、厳密には「重言(二重表現)」とみなされるリスクがあることをご存知でしょうか?
ビジネスシーンで「このプロジェクトは同時並行で進めます!」と宣言したとき、相手によっては「頭痛が痛い」と同じような違和感を持たれてしまうかもしれません。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つニュアンスの違いから、ビジネスで評価される「スマートな言い換え表現」までスッキリ理解でき、もう言葉選びで迷うことはありません。
それでは、まず最も重要な違いと結論から見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「同時並行」と「同時進行」の最も重要な違い
基本的にはどちらも「複数の物事を同時に進める」という意味ですが、「同時並行」は重言(意味の重複)とされることが多いです。ビジネス文書では「並行して進める」「同時に進める」と言い換えるのが最も無難で正確です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いと特徴を、以下の表にまとめました。
| 項目 | 同時並行(どうじへいこう) | 同時進行(どうじしんこう) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 二つ以上の物事を並べて一緒に行うこと | 二つ以上の物事が同じ時に進むこと |
| 重言のリスク | 高い(「並行」に「同時」の意味が含まれるため) | 中程度(慣用的に使われるが、分解可能) |
| ニュアンス | AとBを横に並べて進める(管理・遂行) | AとBが一緒に動いている(ライブ感・経過) |
| ビジネス推奨度 | △(会話では通じるが、文書では避けるのが無難) | ○(状況説明などで使われることが多い) |
一番大切なポイントは、「並行」という言葉自体に「同時に行う」という意味が含まれているため、「同時並行」は「馬から落馬する」のような重複表現になり得るということです。
日常会話では定着していますが、格式高いビジネス文書や目上の人へのメールでは、「並行して」や「同時に」とシンプルに表現するのが正解です。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「並行」の「並」は“ならぶ”という意味で、複数のものが並走するイメージです。一方、「進行」の「進」は“すすむ”という意味で、時間の経過と共に前へ動くイメージを持つと、ニュアンスの違いが分かりやすくなります。
なぜ「同時並行」が重言と言われるのか、漢字の成り立ちを紐解くとその理由がよくわかりますよ。
「並行」の成り立ち:「並」が表す“同時に並ぶ”イメージ
「並行」の「並」は、二つのものが横にならぶことを意味します。
そして「行」は進むことですよね。
つまり、「並行」だけで「二つのものが並んで(=同時に)進む」という意味がすでに完成しているんです。
ここにわざわざ「同時」を付けると、「同時に・同時に進む」と言っていることになり、これが違和感の原因となります。
「進行」の成り立ち:「進」が表す“前へ動く”イメージ
一方、「進行」は「前に進むこと」を意味します。
ここには「複数」や「並んで」という意味は含まれていません。
そのため、「同時」を付けて「同時進行」とすることで、「複数のものが、同じタイミングで前へ進んでいる」という状態を説明する言葉になります。
「同時並行」に比べれば言葉の重複感は少ないですが、それでも「同時に進める」と言えば済む場合が多いため、冗長な表現と捉えられることもあります。
具体的な例文で使い方をマスターする
日常会話では「同時並行」も使われますが、ビジネス文書では「AとBを並行して進める」とするのがスマートです。「同時進行」はイベントや事態がリアルタイムで動いている様子を伝える際によく使われます。
言葉の違いと、より適切な言い換え表現を例文で見ていきましょう。
ビジネスと日常、そしてスマートな言い換え例です。
「同時並行」の使いどころと言い換え
口頭ではよく使われますが、書くときは注意が必要です。
【日常・口頭(許容範囲)】
- 二つのプロジェクトを同時並行でやらなきゃいけなくて大変だ。
- 家事と育児を同時並行でこなすのは至難の業だ。
【ビジネス文書(スマートな言い換え)】
- 二つのプロジェクトを並行して進めます。
- 開発とテストを並行して実施する予定です。
- 複数のタスクを同時に処理する必要があります。
「同時進行」の使いどころと言い換え
物事が現在進行形で動いているライブ感を出すときに便利です。
【日常・口頭】
- 各地で試合が同時進行している。
- ドキュメンタリー番組で、事件の捜査を同時進行で追う。
【ビジネス文書(スマートな言い換え)】
- 複数の会議が同時に行われている。
- システムの移行作業を、通常業務と並行して行います。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じますが、ビジネスリテラシーを疑われるかもしれない表現です。
- 【NG】この件とあの件は、同時並行で進めてください。(上司へのメールなど)
- 【OK】この件とあの件は、並行して進めてください。
「並行して」だけで十分に意味が通じるため、過剰な修飾は避けるのが無難です。
【応用編】似ている言葉「並列」との違いは?
「並列(へいれつ)」は、単に並んでいる状態を指し、時間の経過や進行のニュアンスは含みません。また、電気回路やデータ処理などで「直列」の対義語として使われることが多く、静的な配置を表す言葉です。
「並行」「進行」と似た言葉に「並列(へいれつ)」があります。
これも押さえておくと、状況描写がより正確になりますよ。
「並列」は、「並び連ねる」と書く通り、二つ以上のものが並んで位置している状態を指します。
「並行」が「進む(動く)」という動作のニュアンスを持つのに対し、「並列」は「置いてある(状態)」という静的なニュアンスが強いです。
例えば、「並列駐車」や「並列処理(コンピュータ)」のように使われます。
ビジネスで「タスクを並列で進める」と言うと、少し機械的で違和感があるかもしれませんね。
「同時並行」と「同時進行」の違いをビジネス視点で解説
ビジネスでは「シンプルで正確な言葉」が好まれます。「同時並行」という言葉を使うよりも、「並行して」「同時に」と短く表現する方が、読み手にとって負担が少なく、論理的な印象を与えられます。
もう少し深く、ビジネスコミュニケーションの観点からこの二つを見てみましょう。
ビジネス文書の鉄則は「一文一義」や「簡潔さ」です。
その視点で見ると、「同時並行」はやはり冗長な表現と言わざるを得ません。
「並行」という熟語自体が「二つの線が交わらずに伸びていく=同時に進む」という意味を持っているからです。
わざわざ「同時」を付け足すことは、屋上屋を架す(無駄なことをする)ようなものです。
一方、「同時進行」は「同時進行ドキュメント」のように、メディアやイベント業界では「臨場感」を演出する言葉として定着しています。
しかし、報告書や企画書においては、情緒的な表現よりも事実の正確な伝達が優先されます。
したがって、「並行して実施する」「同時に着手する」といった、スッキリとした表現を選ぶのが、デキるビジネスパーソンの言葉選びと言えるでしょう。
国語に関する公的な見解については、文化庁の国語施策情報なども参考になります。
僕が「同時並行」を連発して上司に苦笑いされた体験談
僕も新人の頃、この「同時並行」をカッコいい言葉だと思って多用し、恥をかいた経験があります。
ある大規模プロジェクトのキックオフミーティングでのこと。
僕は進行管理の担当として、スケジュール案をプレゼンしていました。
「えー、こちらのA案とB案の作業につきましては、同時並行で進めさせていただきます。また、資料作成も同時並行で行い、さらにはテスト環境の構築も同時並行で……」
張り切って「同時並行」を連呼していた僕に、ミーティング終了後、上司が苦笑いしながら近づいてきました。
「〇〇くん、さっきのプレゼン、熱意は伝わったよ。でもね、『同時並行』って何度も言われると、『頭痛が痛い』って言われてるみたいで、ちょっとムズムズするんだよね」
「えっ? そうなんですか?」
「うん。『並行』だけで『同時に進む』って意味だからね。シンプルに『並行して進めます』って言ったほうが、スマートで知的に聞こえるよ」
その瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしかったのを覚えています。
「難しい熟語を重ねれば仕事ができるように見える」と勘違いしていましたが、実は言葉の意味を正しく理解し、シンプルに伝えることこそが本当の知性なのだと痛感しました。
それ以来、僕は「同時並行」を封印し、「並行して」を使うようにしています。
「同時並行」と「同時進行」に関するよくある質問
ここでは、みなさんが疑問に思いがちな点について、Q&A形式でお答えします。
「同時並行」は間違いですか?
間違いとまでは言い切れませんが、「重言(重複表現)」とみなされることが多いです。日常会話では定着していますが、厳密な言葉遣いが求められるビジネス文書や公用文では避けたほうが無難です。
「並行」と「平行」の違いは何ですか?
「並行」は物事が並んで進むこと(例:二つの作業を並行する)。「平行」は二つの線がどこまで行っても交わらない状態(例:平行線をたどる)や、位置関係を指します。仕事を進める場合は「並行」を使います。
履歴書や面接で使ってもいいですか?
口頭での面接なら「学業とアルバイトを同時並行で頑張りました」と言っても許容範囲ですが、履歴書などの書き言葉では「学業とアルバイトを並行して行い~」や「両立させ~」と書く方が、言葉遣いがしっかりしている印象を与えられます。
「同時並行」と「同時進行」の違いのまとめ
「同時並行」と「同時進行」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は言い換え推奨:「同時並行」は重言のリスクがあるため、「並行して」「同時に」と言い換えるのがスマート。
- ニュアンスの違い:「並行」は並んで進む管理的な視点、「進行」は動いている経過の視点。
- ビジネスでの正解:文書ではシンプルに「並行して進める」を使うことで、誤用を避け、知的な印象を与えられる。
言葉は、少しの気遣いで相手に与える印象がガラリと変わります。
「同時並行」とつい言いたくなったら、グッとこらえて「並行して」と言ってみてください。
それだけで、あなたのビジネスコミュニケーションは一段階レベルアップするはずです。
ビジネスでの言葉遣いにさらに磨きをかけたい方は、ビジネス敬語の違いまとめもぜひ参考にしてみてくださいね。
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