お料理をするとき、「青ネギ」と「白ネギ」、どちらを使えばいいか迷うことはありませんか？
ラーメンの薬味だったり、お鍋の具材だったり、レシピによって指定が違いますよね。
結論から言うと、「青ネギ」と「白ネギ」は、主に品種と栽培方法が異なり、その結果として「食べる部分」が違います。
「青ネギ」は緑色の葉の部分を、「白ネギ」は光を当てずに育てた白い茎（葉鞘・ようしょう）の部分を主に食べます。
この記事を読めば、青ネギと白ネギの定義から、味、栄養、そして関東と関西での文化的な使い分けまで、その違いがスッキリとわかります。
もうスーパーで迷うことはなくなるでしょう。それでは、まず二つのネギの根本的な違いから見ていきましょう。
結論｜「青ネギ」と「白ネギ」の違いは「品種」と「食べる部分」
「青ネギ（葉ネギ）」と「白ネギ（根深ネギ）」の最も大きな違いは、食べる部分です。「青ネギ」は主に緑色の葉を食べ、薬味として使われます。一方、「白ネギ」は土寄せして白く育てた葉鞘（茎のように見える部分）を食べ、具材として加熱調理に向いています。この違いは、関東と関西の食文化の違いとも深く関連しています。
「青ネギ」と「白ネギ」、この二つは同じネギの仲間ですが、決定的な違いは「主に食べる部分」と、そのための「栽培方法」にあります。
- 青ネギ（葉ネギ）：緑色の葉の部分が柔らかくなるように改良された品種群です。光を当てて育て、葉を主に食べます。
- 白ネギ（根深ネギ）：白い部分（葉鞘・ようしょう）が長く太くなるように改良された品種群です。成長に合わせて土を盛り（土寄せ）、光を当てずに白い部分を軟化させて育てます。
この違いが、そのまま味や食感、料理での使い方に直結しているんですね。
「青ネギ」と「白ネギ」とは？関東と関西で異なるネギ文化
一般的に、関西（西日本）では緑色の葉を食べる「青ネギ（葉ネギ）」が好まれる文化があります。一方、関東（東日本）では白い部分を食べる「白ネギ（根深ネギ）」が主流です。これは、それぞれの地域の土壌や気候に適した品種が根付いたためと言われています。
この二つのネギの違いを語る上で欠かせないのが、日本の食文化です。
青ネギ（葉ネギ）とは？
「青ネギ」は、一般的に「葉ネギ」とも呼ばれる品種群の総称です。
代表的なものに、京都の伝統野菜である「九条ネギ」があります。また、スーパーでよく見かける「万能ネギ」や「小ネギ」は、青ネギを若いうちに収穫したものです（「万能ネギ」は福岡県のJA筑前あさくらによる登録商標です）。
主に関西（西日本）で「ネギ」と言うと、この青ネギを指すことが多いです。
緑色の葉の部分が柔らかく、香り高いため、薬味として生で食べられるのが特徴です。
白ネギ（根深ネギ）とは？
「白ネギ」は、「根深ネギ（ねぶかねぎ）」や「長ネギ（ながねぎ）」とも呼ばれる品種群の総称です。
代表的なものに「千住ネギ」や「下仁田ネギ」などがあります。
主に関東（東日本）で「ネギ」と言うと、この白ネギを指します。
栽培時に「土寄せ」という作業を行います。これは、ネギが成長するにつれて、株元に土を盛っていく作業です。光が当たらないようにすることで、葉鞘（ようしょう）という茎のように見える部分が白く柔らかく育ちます。
一覧表で見る「青ネギ」と「白ネギ」の主な違い
二つの違いを分かりやすく一覧表にまとめました。
| 項目 | 青ネギ（葉ネギ） | 白ネギ（根深ネギ・長ネギ） |
|---|---|---|
| 別名 | 葉ネギ、万能ネギ、小ネギ、九条ネギなど | 根深ネギ、長ネギ、千住ネギ、下仁田ネギなど |
| 主な可食部 | 緑色の葉 | 白い葉鞘（ようしょう） |
| 栽培方法 | 土寄せをしない（または浅い） | 土寄せをして白く軟化させる |
| 主な文化圏 | 関西（西日本） | 関東（東日本） |
| 主な用途 | 薬味（生食） | 具材（加熱調理） |
味・香り・食感・見た目の違い
「青ネギ」は、ネギ特有の香りが強く、食感は柔らかで、生で薬味にすると風味と彩りを加えます。「白ネギ」は、生ではツンとした辛味がありますが、加熱すると辛味成分が甘み成分に変わり、とろけるような食感と強い甘みが出ます。
食べる部分が違うため、味や香り、食感にも大きな違いが生まれます。
見た目と主な可食部
見た目は一目瞭然ですよね。
- 青ネギ：全体が細く、根元から先端まで緑色の葉が占める割合が非常に多いです。
- 白ネギ：根元から上に向かって太くしっかりとした白い部分（葉鞘）が長く、その先に緑色の葉がついています。
味と香り（辛味と甘み）
香りや味も対照的です。
「青ネギ」は、ネギ特有の香りが強く、辛味は白ネギに比べてマイルドです。生で食べた時に、爽やかな香りが料理全体を引き立てます。
「白ネギ」は、生の状態ではツンとした強い辛味と特有の匂いがあります。これは硫化アリル（アリシン）という成分によるものです。
しかし、白ネギの真価は加熱した時に発揮されます。この辛味成分が熱によって変化し、非常に強い甘みに変わるんです。鍋物やすき焼きで煮込んだ白ネギが甘いのはこのためですね。
食感（柔らかさと歯ごたえ）
食感も異なります。
「青ネギ」は葉が薄く柔らかいため、シャキシャキとした軽い食感が楽しめます。中には少し「ぬめり」を感じる品種（九条ネギなど）もあります。
「白ネギ」は、生で食べるとシャキシャキとした強い歯ごたえがあります。しかし、加熱すると繊維が柔らかくなり、「とろとろ」「くたくた」と表現されるような、とろける食感に変化します。
栄養・成分の違い
栄養面では、食べる部分の違いがそのまま反映されます。「青ネギ」の緑色部分（緑黄色野菜）は、β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、ビタミンKが豊富です。一方、「白ネギ」の白色部分（淡色野菜）は、辛味成分のアリシン（硫化アリル）や、フルクタン（水溶性食物繊維）を多く含みます。
緑黄色野菜と淡色野菜に分けられるほど、栄養素の傾向は異なります。
青ネギ（緑色部分）の栄養
「青ネギ」の緑色の葉の部分は、緑黄色野菜に分類されます。
そのため、以下のような栄養素が豊富に含まれています。
- β-カロテン：体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持に役立ちます。
- ビタミンC：抗酸化作用や免疫機能の維持に必要です。
- カルシウム：骨や歯の形成に必要なミネラルです。
- ビタミンK：血液の凝固や骨の健康に関わるビタミンです。
（参考：文部科学省 日本食品標準成分表）
白ネギ（白色部分）の栄養
「白ネギ」の白い葉鞘の部分は、淡色野菜に分類されます。
こちらには、緑色野菜とは異なる特有の成分が含まれています。
- アリシン（硫化アリル）：生で食べた時のツンとした辛味と香りのもとです。ビタミンB1の吸収を助ける働きがあるとされています。
- フルクタン：ネギ属の野菜に含まれる水溶性食物繊維の一種で、加熱すると甘みが増す要因の一つです。
使い方・料理での扱い方の違い
「青ネギ」は香り、彩り、柔らかさを活かし、主に生のまま「薬味」として料理の仕上げに使います（ラーメン、うどん、お好み焼きなど）。「白ネギ」は加熱すると甘く、とろとろになるため、すき焼き、鍋物、焼き鳥（ねぎま）など、味の決め手となる「具材」として使われます。
栄養や味の違いから、料理での役割もはっきりと分かれます。
青ネギ（葉ネギ）の代表的な使い方
「青ネギ」は、その鮮やかな緑色と香りを活かすため、主に「薬味」として生のまま使われます。
- ラーメン、うどん、そばのトッピング
- 冷奴やおひたしの上に乗せる
- お好み焼き、たこ焼き、ねぎ焼きの具材やトッピング
- 納豆の薬味
加熱する場合も、風味を飛ばさないよう、料理の仕上げにさっと加えることが多いですね。
白ネギ（長ネギ）の代表的な使い方
「白ネギ」は、加熱した時の甘さととろける食感を活かし、料理の「具材」として中心的な役割を担います。
- 鍋物（すき焼き、水炊き、鴨鍋など）
- 焼き鳥（ねぎま）
- 炒め物や煮物
- 生のまま薄く切って（白髪ネギ）、辛味のある薬味として（チャーシュー、ラーメンなど）
- 味噌汁の具
生でも食べられますが、その場合は辛味を活かす使い方が中心となります。
主な産地・旬・保存方法の違い
青ネギは関西（京都の九条ネギなど）や西日本が有名で、ハウス栽培により通年流通します。白ネギは関東（埼玉の深谷ネギ、千葉の矢切ネギなど）が有名で、旬は冬です。冬の白ネギは寒さで甘みが増します。
主な産地と文化圏（関東と関西）
前述の通り、食文化と産地は密接に関連しています。
- 青ネギ：関西圏が有名で、特に京都府（九条ネギ）や福岡県（万能ネギ）などが大産地です。
- 白ネギ：関東圏が有名で、埼玉県（深谷ネギ）、千葉県（矢切ネギ）、群馬県（下仁田ネギ）などが名を馳せています。
もちろん、現在では物流の発達により、全国どこでも両方のネギが手に入りますよね。
旬の時期
「青ネギ」はハウス栽培も盛んで、一年中安定して流通しています。あえて言うなら、香りが良く柔らかい春や秋が美味しい時期とされます。
「白ネギ」の旬は、圧倒的に「冬」です。
寒さにあたると、ネギは凍らないように糖分を蓄えます。そのため、冬の白ネギは甘みが格段に増し、鍋物などに最適なんですね。
適切な保存方法
ネギは乾燥に弱いため、適切な保存が大切です。
- 青ネギ：湿らせたキッチンペーパーで包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で立てて保存します。小口切りにして冷凍保存するのも非常に便利です。
- 白ネギ：土がついている場合はそのまま冷暗所に立てておきます。カットしたものは、緑の部分と白い部分で分け、それぞれラップや湿らせた新聞紙で包み、冷蔵庫の野菜室で立てて保存します。
体験談｜関東の「白ネギ」文化に驚いた日のこと
僕も以前、関西から関東に引っ越した際、このネギの違いに衝撃を受けた一人です。
関西にいた頃、僕にとって「ネギ」とは当然「青ネギ」のことでした。うどんはもちろん、すき焼きに入れるのも青ネギ（九条ネギ）が当たり前だったんです。
関東に来て初めてすき焼き屋さんに連れて行ってもらった時、鍋に出てきたのが太い「白ネギ」の筒切りだったので、「これは何かの間違いでは？」と本気で思いました。
「ネギといえば青い薬味だろう」と。
しかし、その白ネギを煮込んで食べてみた時の衝撃は今でも忘れられません。生であれだけ辛かったネギが、信じられないほど甘く、とろけるような食感に変わっていたんです。
あの瞬間に、「白ネギは“具材”であり、加熱して食べるものなんだ」と、頭ではなく舌で理解しました。
それ以来、薬味には青ネギ、鍋や焼き物には白ネギ、と使い分けるのが当たり前になりました。食文化の違いは、合理的な理由（栽培方法や味の変化）に基づいているんだと学んだ経験です。
「青ネギ」と「白ネギ」に関するよくある質問（FAQ）
質問１：「長ネギ」はどっちのことですか？
一般的に「長ネギ」と言う場合、関東で主流の「白ネギ（根深ネギ）」を指すことが多いですね。白い部分が長いことから、その名で呼ばれています。
質問２：栄養を摂るなら、どっちが良いですか？
摂りたい栄養によりますね。緑黄色野菜としてβ-カロテンやビタミンCを摂りたいなら「青ネギ」の緑の部分、アリシンや加熱した時の甘み（フルクタン）を摂りたいなら「白ネギ」の白い部分、といった使い分けになります。
質問３：「わけぎ」や「あさつき」は青ネギですか？
見た目は似ていますが、少し違います。「わけぎ」はネギとタマネギの雑種で、球根（鱗茎）が少し膨らむのが特徴です。辛味が少なく、ぬめりがあります。「あさつき」もネギの仲間ですが、より細く、辛味が強いのが特徴で、薬味として使われます。「青ネギ（葉ネギ）」は、これらとはまた別の品種群なんですよ。
まとめ｜薬味の「青ネギ」、具材の「白ネギ」
「青ネギ」と「白ネギ」の違いについて、ご理解いただけたでしょうか。
「青ネギ」は緑の葉を薬味として生で味わう関西文化のネギ、「白ネギ」は白い茎（葉鞘）を具材として加熱して味わう関東文化のネギ、と覚えておくと簡単です。
| 項目 | 青ネギ（葉ネギ） | 白ネギ（根深ネギ） |
|---|---|---|
| 食べる部分 | 緑色の葉 | 白い葉鞘 |
| 味わい | 香りが強く、辛味はマイルド | 生は辛く、加熱で甘くなる |
| 食感 | 柔らかい | 生はシャキシャキ、加熱でとろとろ |
| 主な用途 | 薬味（生） | 具材（加熱） |
| 文化圏 | 関西（西日本） | 関東（東日本） |
どちらも日本の食卓に欠かせない素晴らしい食材です。それぞれの個性を理解して、料理によって使い分けることで、いつもの食事がさらに豊かになるでしょう。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な食材・素材の違いについても詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。