タルタルチキンとチキン南蛮。
どちらも揚げた鶏肉にタルタルソースがかかった、ご飯が進む大人気メニューですよね。ですが、この二つ、実は明確な違いがあることをご存知でしたか?
「同じ料理じゃないの?」と思っている方も多いかもしれませんが、決定的な違いは「甘酢」の有無にあります。
この記事では、タルタルチキンとチキン南蛮の違いを、調理法、味、そして発祥の歴史から徹底的に比較解説します。これを読めば、二つの料理をスッキリと理解し、自信を持って注文できるようになりますよ。
結論|タルタルチキンとチキン南蛮の決定的な違い
タルタルチキンとチキン南蛮の決定的な違いは「甘酢」を使うかどうかです。「チキン南蛮」は、揚げた鶏肉を「甘酢(南蛮酢)」に漬けるか、かけた上で、タルタルソースをかける(または、かけない)料理です。一方、「タルタルチキン」は、甘酢の工程がなく、唐揚げやチキンカツに直接タルタルソースをかけた料理を指すことが一般的です。
つまり、タルタルソースがかかっていたとしても、そこに「甘酢」の酸味と風味が加わっていなければ、それは「タルタルチキン」であり、「チキン南蛮」とは呼べない、ということですね。
二つの料理の主な違いを、以下の比較表で整理しました。
| 項目 | チキン南蛮 | タルタルチキン |
|---|---|---|
| 甘酢(南蛮酢) | 必須 | 不要(使わない) |
| ベースの鶏料理 | 卵衣の天ぷら、または唐揚げ | 唐揚げ、またはチキンカツ(フライ) |
| 主なソース | 甘酢 + タルタルソース (または甘酢のみ) | タルタルソースのみ |
| 味の傾向 | 甘酸っぱい+タルタルのコク | 衣の香ばしさ+タルタルのコク |
| 発祥 | 宮崎県の郷土料理 | チキン南蛮から派生した料理、または洋食 |
タルタルチキンとチキン南蛮、それぞれの定義と発祥
「チキン南蛮」は、昭和30年代に宮崎県で誕生した郷土料理です。一方、「タルタルチキン」は、チキン南蛮から派生した料理や、既存の揚げ物(唐揚げ・チキンカツ)にタルタルソースをかけたアレンジ料理を指す、より広義な名称です。
二つの料理は、そのルーツと定義が異なります。
「チキン南蛮」とは?(宮崎発祥の郷土料理)
「チキン南蛮」は、宮崎県発祥の郷土料理です。
その歴史は戦後、昭和30年代(1960年頃)に宮崎県延岡市の洋食店「ロンドン」のまかない料理として誕生したのがルーツとされています。揚げた鶏肉を甘酢に漬け込むのが特徴で、当時はタルタルソースはかかっていませんでした。
その後、その店の従業員が独立し、宮崎市に「おぐら」を開業する際に、甘酢に加えて「タルタルソース」をかけるスタイルを考案し、これが全国に広まる「チキン南蛮」のイメージとして定着しました。
農林水産省の「うちの郷土料理」にも選定されており、地域に根ざした食文化であることがわかりますね。(参考:農林水産省 うちの郷土料理 チキン南蛮)
「タルタルチキン」とは?(揚げ鶏+タルタル)
一方、「タルタルチキン」には、チキン南蛮のような明確な発祥や定義はありません。
一般的に、以下の二つのどちらかを指すことが多いです。
- チキン南蛮から「甘酢」の工程を省略し、唐揚げなどにタルタルソースをかけたアレンジ料理。
- エビフライやカキフライのように、チキンカツ(パン粉のフライ)にタルタルソースをかけた洋食メニュー。
つまり、「タルタルチキン」とは、「揚げた鶏肉(唐揚げやチキンカツ) + タルタルソース」という組み合わせの料理を指す、非常に広い名称と言えます。
最大の違いは「甘酢」の有無
チキン南蛮のアイデンティティは「甘酢」にあります。揚げたての鶏肉を甘酢にくぐらせることで、衣がしっとりとし、酸味と甘みが肉に染み込みます。タルタルチキンは、この甘酢の工程がないため、揚げた衣の食感とタルタルソースの味が直接感じられます。
二つの料理を分ける最も重要な境界線は、「甘酢(南蛮酢)」です。
チキン南蛮:「甘酢」+「タルタル」のダブルソース
チキン南蛮は、調理工程に「甘酢」が組み込まれています。
揚げた鶏肉を、砂糖、酢、醤油などを合わせた「南蛮酢(甘酢ダレ)」にジュワッと漬け込む(または、上からかける)のが最大の特徴です。
この工程により、衣はサクサク感を残しつつも、甘酢を吸ってしっとりとした独特の食感に変わります。そして、「甘酢の酸味と甘み」+「タルタルソースのコクとまろやかさ」という、二重のソースが織りなす複雑な味わいこそが、チキン南蛮の醍醐味です。
タルタルチキン:「甘酢」は必須ではない
タルタルチキンは、この「甘酢」の工程がありません。
ベースとなる唐揚げやチキンカツに、直接タルタルソースをかけるスタイルが一般的です。そのため、チキン南蛮のような「酸味」はなく、揚げた衣の香ばしさや食感(カリカリ、ザクザク)と、タルタルソースの味がダイレクトに組み合わさります。
ベースとなる「揚げ鶏」の調理法の違い
ベースの揚げ物も異なる傾向があります。本場・宮崎のチキン南蛮は、小麦粉と「溶き卵」を使った天ぷら風の「卵衣」で、ふんわり仕上げるのが特徴です。一方、タルタルチキンは、「唐揚げ」や「チキンカツ(パン粉のフライ)」をベースにすることが多いです。
上に乗るソースだけでなく、ベースとなる揚げ鶏の作り方にも違いが見られます。
チキン南蛮の衣(卵衣 または 唐揚げ衣)
本場・宮崎のスタイル
宮崎の伝統的なチキン南蛮は、鶏肉に小麦粉をまぶした後、「溶き卵」をくぐらせて揚げます。これは唐揚げともフライとも違う、「ピカタ」や「フリッター」に近い調理法です。この卵衣が甘酢をたっぷりと吸い、独特の「フワッ」とした食感を生み出します。
ほっともっと(お弁当)のスタイル
お弁当チェーン(例:ほっともっと)などのチキン南蛮は、持ち帰り時間を考慮し、食感が残りやすい「唐揚げ」に近い衣(カリッとした衣)を採用していることが多いです。
タルタルチキンの衣(パン粉 または 唐揚げ衣)
「タルタルチキン」という名前で提供される料理のベースは、大きく二つに分かれます。
- チキンカツ(フライ)ベース:洋食店などで見られるスタイルで、衣は「パン粉」です。ザクザクとした食感が特徴です。
- 唐揚げベース:居酒屋やお弁当屋で見られるスタイルで、衣は「小麦粉や片栗粉」です。カリッとした食感が特徴です。
いずれにしても、チキン南蛮(宮崎風)のような「卵衣」で作られることは稀です。
味・食感・見た目の違い
チキン南蛮は「甘酢の酸味」が味の決め手であり、衣がしっとりとしがちです。タルタルチキンは「甘酢がない」ため酸味がなく、ベースとなる唐揚げやチキンカツの「衣の食感(カリカリ・ザクザク)」が際立つのが特徴です。
これまでの違いをまとめると、味と食感の違いは明確です。
チキン南蛮
味は「甘酸っぱい + まろやか」。甘酢の酸味が全体を引き締め、そこにタルタルソースのコクが加わります。食感は、衣が甘酢を吸うため、揚げたてでも「しっとり」または「フワッ」とした口当たりになります。(※ほっともっと のようにカリッと感を残すスタイルもあります)
タルタルチキン
味は「衣の香ばしさ + タルタルのコク」。甘酢がないため酸味はなく、非常にストレートな味わいです。食感は、ベースが唐揚げなら「カリッ」、チキンカツなら「ザクザク」と、衣の食感が最後までしっかり残ります。
栄養・カロリー・健康面の違い
どちらも揚げ物にタルタルソースをかけるため、高カロリー・高脂質な料理である点は共通です。チキン南蛮は甘酢(南蛮酢)を使う分、糖質がやや高くなる可能性がありますが、タルタルチキンもベースがチキンカツ(パン粉)の場合は吸油率が高く、カロリーは高くなります。
健康面でどちらが良いかを決めるのは難しいですね。
チキン南蛮
ベースが卵衣や唐揚げ衣で、さらに甘酢(砂糖やみりん)とタルタルソース(マヨネーズ)が加わるため、高カロリーです。ほっともっとの「チキン南蛮弁当」は762kcal あります。
タルタルチキン
ベースがチキンカツ(フライ)の場合、パン粉が油を多く吸うため、それ自体が高カロリーです。唐揚げベースでも、タルタルソースが加わるため、やはり高カロリーになります。
わずかな差として、チキン南蛮は「甘酢」の分だけ糖質が、タルタルチキン(フライベース)は「パン粉」の分だけ脂質が、それぞれ高くなる傾向があると言える程度でしょう。
【体験談】ソースの違いが決め手!僕の「南蛮」と「タルタル」の記憶
僕がこの二つの違いを初めて意識したのは、とある町の洋食屋さんでした。
メニューには「チキン南蛮定食」と「チキンカツ・タルタルソース定食」が並んでいました。写真ではどちらも鶏肉にタルタルソースがかかっており、違いが分かりません。店員さんに尋ねると、「南蛮は甘酢がかかってて、カツはそのままですよ」と教えてくれました。
僕はその日、「チキン南蛮定食」を選びました。出てきたのは、想像よりフワッとした衣のチキン。甘酢の酸味とタルタルのまろやかさが絶妙で、ご飯が止まらない美味しさでした。
後日、気になって「チキンカツ・タルタルソース定食」を注文。こちらは衣がザクザクの「フライ」です。甘酢がない分、衣の食感とタルタルソースの味がダイレクトに伝わってきます。これもまた違った美味しさで、満足感がありました。
この経験から、僕は「酸味でさっぱりと食べたい時はチキン南蛮」「衣の食感とタルタルのコクをストレートに楽しみたい時はタルタルチキン」と、気分で使い分けるようになりました。決め手は、やはり「甘酢」ですね。
タルタルチキンとチキン南蛮に関するFAQ(よくある質問)
ここでは、タルタルチキンとチキン南蛮に関してよくある疑問にお答えします。
結局、一番の違いは何ですか?
「甘酢」を使うかどうかです。甘酢を使っていれば「チキン南蛮」、使っていなければ(唐揚げやカツに直接タルタルをかけていれば)「タルタルチキン」と呼ぶのが一般的です。
ほっともっとの「チキン南蛮」と「九州チキン南蛮」の違いは何ですか?
上にかけるソースが違います。通常の「チキン南蛮」は具材感のある「タルタルソース」 ですが、「九州チキン南蛮」は甘めでクリーミーな「南蛮ソース」 が使われています。
チキン南蛮にタルタルソースは必須ですか?
必須ではありません。宮崎県には、タルタルソースをかけず、甘酢ダレだけで食べるスタイルの元祖のお店も存在します。
まとめ|タルタルチキンとチキン南蛮、今日の気分はどっち?
タルタルチキンとチキン南蛮の違い、スッキリしましたでしょうか。
どちらもタルタルソースがかかっていることが多いため混同されがちですが、その正体は全く異なる料理でした。
- チキン南蛮:宮崎発祥の郷土料理。揚げ鶏 + 甘酢 + タルタルソース。
- タルタルチキン:揚げ鶏(唐揚げやカツ) + タルタルソース。(甘酢は使わない)
「甘酢」の酸味が欲しいかどうかで、選ぶべきメニューが変わってきますね。
ぜひ、この違いを意識して、その日の気分にピッタリなチキン料理を楽しんでみてください。
「食べ物の違い」カテゴリでは、他にも「かしわ天ととり天の違い」など、様々な料理・メニューの違いについて解説しています。