「アロマテラピー」と「アロマセラピー」の最も大きな違いは、語源となる「言語」がフランス語か英語かという点です。
なぜなら、どちらも意味は「芳香療法」で全く同じですが、フランス語読みの「Aromathérapie(アロマテラピー)」と、英語読みの「Aromatherapy(アロマセラピー)」という発音の違いが、そのままカタカナ表記の違いになっているからです。
この記事を読めば、資格試験やサロン選び、日常会話でどちらを使うべきかが明確になり、それぞれの言葉が持つ微妙なニュアンスまで正しく理解して使いこなせるようになります。
それでは、まず両者の決定的な違いを一覧表で詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「アロマテラピー」と「アロマセラピー」の最も重要な違い
最大の違いは「読み方」です。「アロマテラピー」はフランス語由来で日本アロマ環境協会(AEAJ)などが採用。「アロマセラピー」は英語由来で、英国式や医療従事者が使う傾向にあります。意味はどちらも「芳香療法」です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリでしょう。
| 項目 | アロマテラピー | アロマセラピー |
|---|---|---|
| 語源の言語 | フランス語 (Aromathérapie) | 英語 (Aromatherapy) |
| 主な採用団体 | 日本アロマ環境協会(AEAJ) など | 日本アロマセラピー学会 など |
| ニュアンスの傾向 | フランス式(医療寄り) または一般的な普及用語 | イギリス式(リラクゼーション) または医療現場での英語使用 |
| 発音の特徴 | 「テ」ラピー (Therapyの仏読み) | 「セ」ラピー (Therapyの英読み) |
一番大切なポイントは、「どちらを使っても間違いではない」ということです。
ただし、所属する協会や学ぶ流派によって呼び方が統一されている場合が多いので、その場のルールに合わせるのがスマートですね。
なぜ違う?語源の言語(フランス語と英語)からイメージを掴む
この言葉の生みの親はフランス人のガットフォセです。彼が造語した「Aromathérapie」がオリジナルで、それが英語圏に伝わり「Aromatherapy」となりました。フランス語は「テラピー」、英語は「セラピー」と発音します。
なぜ同じ意味なのに二つの呼び方が定着してしまったのでしょうか。
そのルーツである「言葉の誕生」に遡ると、理由がよく分かります。
アロマテラピーのルーツ:フランスでの誕生
実は、「アロマテラピー」という言葉が生まれたのは20世紀初頭と比較的新しいのです。
フランスの化学者、ルネ=モーリス・ガットフォセが、実験中の火傷をラベンダー精油で治療した経験から研究を深め、1937年に著書で「Aromathérapie(アロマテラピー)」という造語を発表しました。
フランス語では「Therapy(療法)」を「Thérapie(テラピー)」と発音します。
これがオリジナルの呼び名なんですね。
アロマセラピーへの変化:英語圏への広がり
その後、この療法はイギリスなど英語圏へも広がっていきました。
英語では「Therapy」を「セラピー」と発音します(thの発音ですが、カタカナではサ行で表記されることが多いです)。
そのため、英語圏では「Aromatherapy(アロマセラピー)」として定着しました。
日本には両方のルートから情報が入ってきたため、二つの表記が混在することになったのです。
具体的な例文とシーンで使い分けをマスターする
資格試験や協会活動では「アロマテラピー」が主流です。一方、病院や学会、または「フィジカルセラピー(理学療法)」のように他の療法と並列で語る際は「アロマセラピー」が使われることもあります。
言葉の違いは、実際の使用シーンで確認するのが一番ですよね。
日常やビジネス、資格取得の場面での使い分けを見ていきましょう。
アロマテラピーを使う場面
日本で最もポピュラーなのはこちらかもしれません。
- アロマテラピー検定:日本アロマ環境協会(AEAJ)が主催する有名な検定です。
- アロマテラピーアドバイザー:資格の名称も「テラピー」で統一されています。
- 「趣味はアロマテラピーです」:一般的な趣味として語る場合、こちらを使う人が多い印象です。
AEAJは日本最大のアロマ団体なので、ここのテキストや資格を目指す人は「テラピー」と呼ぶのが自然ですね。
アロマセラピーを使う場面
英語的な響きや、医療・ケアの文脈で使われることがあります。
- 日本アロマセラピー学会:医師や看護師が中心の学会では「セラピー」を採用しています。
- 英国式アロマセラピー:イギリスのホリスティック(全体的)な手法を取り入れたサロンなど。
- 「アニマルアロマセラピー」:動物へのケアなど、英語の論文や文献をベースにする分野。
「セラピスト」という言葉が定着しているため、職業人を指すときは「アロマテラピスト」よりも「アロマセラピスト」と呼ぶ方が一般的かもしれません。
【応用編】「アロマ」だけで使う場合は?
日常会話では「アロマ」と略すのが最も無難で通じやすいです。「アロマオイル」「アロマポット」のように複合語として使う場合も、「テラピー」や「セラピー」を省略することが一般的です。
正直なところ、会話では「アロマテラピー」も「アロマセラピー」も長いですよね。
そんな時は、シンプルに「アロマ」と言ってしまえばOKです。
「アロマに行ってきた」「アロマを焚いている」と言えば、どちらの流派かに関わらず意味は通じます。
ただし、厳密には「アロマ(Aroma)」は「芳香(香り)」という意味の単語であり、「療法(Therapy)」の意味は含まれていません。
専門的な文脈で「療法」としての側面を強調したい場合は、省略せずに使うのがプロフェッショナルな姿勢でしょう。
「アロマテラピー」と「アロマセラピー」の違いを学術的に解説
フランス式は「メディカル(医療)」、イギリス式は「リラクゼーション」という傾向があります。語源の通り、フランスでは医師が処方する薬としての側面が強く(テラピー)、イギリスではマッサージなどを伴う癒やしとしての側面(セラピー)が発展しました。
少し専門的な視点から、この二つの言葉が持つ「背景」の違いを深掘りしてみましょう。
実は、呼び方だけでなく、発展した地域によって「アロマ」へのアプローチも少し異なるのです。
- フランス式(アロマテラピー):精油を「薬」のように扱い、内服や原液塗布を行うこともあります(医師の指導下で)。高濃度で科学的なアプローチが特徴です。
- イギリス式(アロマセラピー):精油を植物油で希釈し、マッサージ(トリートメント)を通じて心身を癒やす方法が主流です。リラクゼーションや美容、ホリスティックケアとしての側面が強いです。
日本ではイギリス式のリラクゼーションスタイルが先に広まりましたが、言葉としてはAEAJの影響で「アロマテラピー」が定着しました。
そのため、日本の「アロマテラピー」は、言葉はフランス語由来ですが、内容はイギリス式のリラクゼーション要素も多く含んでいるという、独自の進化を遂げていると言えます。
健康や医療に関する正しい情報は、厚生労働省のサイトなどでも確認することができます。
参考:厚生労働省
僕がアロマ検定で「アロマセラピー」と書いて焦った体験談
僕がアロマテラピー検定1級を受けた時の、ちょっと冷や汗ものの体験をお話しします。
当時、僕は独学で勉強していて、参考書だけでなくネットの記事も読み漁っていました。
ネット上では「アロマセラピー」という表記も多く、僕の頭の中ではこの二つが完全に混ざっていたんです。
試験対策の記述練習をしていた時、ふと「あれ? 協会名は『アロマ環境協会』だけど、検定名はどっちだっけ?」と不安になりました。
テキストを見返して愕然。
そこには徹底して「アロマテラピー」と書かれていたんです。
「セラピー」の文字は一つも見当たりません。
もし記述問題で「アロマセラピーの定義を述べよ」なんて出題に対して「アロマセラピーとは…」と書き始めていたら、減点対象にはならないまでも、採点官に「おや? テキスト読んでないな」と思われたかもしれません。
「郷に入っては郷に従え」
資格試験では、主催団体の用語に合わせることが合格への第一歩だと痛感しました。
それ以来、AEAJ関連の話題では意識して「テラピー」と言うようにしています(心の中ではたまに噛みそうになりますが)。
「アロマテラピー」と「アロマセラピー」に関するよくある質問
Q. どっちを使うのが正解ですか?
A. 基本的にどちらも正解です。意味に違いはありません。ただし、日本アロマ環境協会(AEAJ)の資格やイベントに関わる場合は「アロマテラピー」、医療系の学会や英国式サロンの文脈では「アロマセラピー」を使うのが無難です。
Q. 職業名は「アロマテラピスト」ですか?
A. いいえ、職業名としては「アロマセラピスト」と呼ぶのが一般的です。「テラピスト」と言うこともありますが、語呂の良さや英語圏の影響からか「セラピスト」の方が圧倒的に定着しています。AEAJの資格名でも「アロマテラピーインストラクター」や「アロマセラピスト」といった使い分けが見られます(※AEAJの資格名は「アロマセラピスト」です)。
Q. 病院で行われるのはどっちですか?
A. 病院やクリニックで行われる補完代替医療としてのアロマは、学会名(日本アロマセラピー学会など)の影響もあり「メディカルアロマセラピー」と呼ばれることが多いです。しかし、フランス式の流れを汲んで「メディカルアロマテラピー」と呼ぶ場合もあります。
「アロマテラピー」と「アロマセラピー」の違いのまとめ
「アロマテラピー」と「アロマセラピー」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 言語が違う:フランス語読みなら「テラピー」、英語読みなら「セラピー」。意味は同じ。
- 協会の違い:AEAJは「アロマテラピー」、医療系学会などは「アロマセラピー」が多い。
- 職業名:資格名は様々だが、職業としては「アロマセラピスト」と呼ばれることが一般的。
- 使い分け:その場の文脈や相手が使っている言葉に合わせればOK。「アロマ」と略すのもアリ。
一文字の違いですが、その背景にはフランスとイギリス、それぞれの文化や歴史が隠れていたんですね。
これからは、サロンの看板や資格のテキストを見た時に、「お、ここはフランス語読みを採用しているな」なんてニヤリとできるかもしれません。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、メディア・文化系外来語の違いまとめの記事もぜひご覧ください。
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