「過ち」と「誤ち」の違いとは?正しい漢字と意味を徹底解説

「過ち」と「誤ち」、どちらも「あやまち」と読みそうになりますが、実はこの二つ、片方は現代ではほとんど使われない(または誤記とされる)表記であることをご存知でしょうか?

正解は「過ち(あやまち)」です。「若気の至り」や「許されない罪」という意味で使われますが、これを「誤ち」と書くのは、基本的には間違い(常用漢字表外)なのです。

しかし、なぜ「誤ち」という漢字変換が頭に浮かんでしまうのでしょうか? それには「誤り(あやまり)」という非常によく似た言葉の存在が関係しています。

この記事を読めば、なぜ「過ち」が正しいのか、その意外な語源から「誤り」との明確な使い分け、さらには恥をかかないための正しい表現がスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「過ち」と「誤ち」の最も重要な違い

【要点】

「あやまち」と読む場合の正しい漢字は「過ち」です。「誤ち」は常用漢字表になく、一般的には誤記または古風な表記とされます。意味の比較対象は「過ち(あやまち)」と「誤り(あやまり)」です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの表記の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、もう迷うことはありません。

項目過ち(あやまち)誤ち(あやまち?)
正誤正しい日本語(常用漢字)一般的ではない(常用外・誤記)
意味失敗、罪、過失、不倫(「誤り」の送り仮名間違いの可能性大)
イメージ取り返しのつかない失敗、道徳的な罪(「誤り」=単純なミス、との混同)
よくある表現過ちを犯す、若気の至りなし(「誤り」と書くべき)

一番大切なポイントは、「あやまち」と書きたいなら「過ち」一択だということです。

もし「誤」という字を使いたいなら、それは「誤り(あやまり)」と読む場合です。ここを混同しないようにしましょう。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「過」は度を越して行き過ぎることを表し、取り返しのつかない失敗を意味します。「誤」は言葉や行動が食い違うことを表し、訂正可能な間違いを意味します。

なぜ「過」という字を使うのか、その漢字の成り立ちを知ると、もう「誤」と間違えることはなくなりますよ。

「過」の成り立ち:度を越して行き過ぎる

「過」という漢字は、「しんにょう(道を行く)」に「咼(骨の関節)」を組み合わせたものです。

これは、関節が曲がるように道が曲がっている、あるいは通り過ぎる、行き過ぎるという意味を表しています。

そこから、「適度な範囲を超えてしまう」「やりすぎて失敗する」という意味が生まれました。

つまり、「過ち」とは、本来あるべき道や規範から外れてしまった、「取り返しのつかない行き過ぎた行為」を指す言葉なんですね。

「誤」の成り立ち:言葉が食い違う

一方、「誤」という漢字は、「言(ことば)」に「呉(大声で騒ぐ)」を組み合わせたものです。

これは、言葉が乱れて事実と食い違うこと、つまり「間違い」や「ミス」を表しています。

「誤解」や「誤算」という熟語からも分かるように、事実や正解とのズレを指します。

この「誤」は、一般的に「誤り(あやまり)」と読み、訂正可能なミスや客観的な間違いに対して使われます。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「過ち」は道徳的な罪や重大な過失に対して使い、「誤り」は計算ミスや事実誤認などの訂正可能な間違いに対して使います。「誤ち」という表記は使いません。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

正しい「過ち」の使い方と、「誤り」との使い分けを見ていきましょう。

「過ち(あやまち)」を使うシーン:罪、過失

個人の責任や道徳的な重みがある場合に使います。

【OK例文】

  • 彼は過去の過ちを深く反省し、更生した。
  • 一瞬の気の緩みが、取り返しのつかない過ちを招いた。
  • 若気の至りで犯した過ち(不倫や非行など)を悔やんでいる。

「誤り(あやまり)」を使うシーン:ミス、不正解

「誤ち」と書きたくなったら、まずこちらを疑ってください。

【OK例文】

  • 計算に誤りがあったため、修正して再提出します。
  • その報道には事実誤認(誤り)が含まれている。
  • 誤字脱字の誤りを見つける。

これはNG!間違えやすい使い方

特に変換ミスや、意味の取り違えに注意しましょう。

  • 【NG】過去の誤ちを償う。(※漢字の間違い)
  • 【NG】計算の過ちを見つけた。(※大げさすぎる)

「誤ち」は常用漢字表にはない読み方であり、現代文では誤記とみなされます。また、単なる計算ミスに「過ち(罪や過失)」を使うと、非常に重苦しく、文脈にそぐわない表現になってしまいます。

【応用編】「過ち」と「誤り」の決定的な違いは?

【要点】

「過ち」は道徳的・社会的な規範に反する行為を指し、本人の責任や後悔の念が含まれます。「誤り」は事実や法則に対する客観的なズレを指し、感情的なニュアンスは薄いです。

「誤ち」と書こうとしてしまう根本的な原因は、「過ち」と「誤り」の混同にあります。この二つのニュアンスの違いを整理しておきましょう。

「過ち(あやまち)」= Human Error + Sin
「罪」「不倫」「重大な過失」など、人として踏み外してはいけないラインを超えた場合に使います。
「過ちを犯す」というフレーズが一般的です。

「誤り(あやまり)」= Mistake / Incorrect
「正解」があるものに対して、そこから外れている場合に使います。
「誤りを正す」というフレーズが一般的です。

使い分けの例:

  • 手順の誤り(ミス)が原因で事故が起き、取り返しのつかない過ち(過失致死など)となった。

このように、原因は「誤り」でも、結果が重大で道徳的な責任を問われる場合は「過ち」に変わることがあります。

「過ち」と「誤ち」の違いを学術的に解説

【要点】

国語施策において、「過」は「あやまち・あやまつ」、「誤」は「あやまる」と訓読みが定められています。「誤ち」という表記は許容されておらず、公用文では明確に区別されます。

学術的、あるいは公的な定義から見ても、この二つの関係は明確です。

常用漢字表による規定

内閣告示の「常用漢字表」において、それぞれの漢字の訓読みは以下のように定められています。

  • :か、す(ぎる)、す(ごす)、あやま(つ)、あやま(ち)
  • :ご、あやま(る)

ご覧の通り、「誤」には「あやまち」という読み方は認められていません。つまり、公用文や学校教育において「誤ち」と書くことは「誤り(間違い)」となります。

古語における「あやまち」

古語辞典などでは、「あやまち」の漢字として「過ち」のほかに「誤ち」や「愆ち」などが挙げられることもあります。

しかし、現代日本語においては表記の揺れを防ぐため、「過ち」に統一されています。

もし小説や歌詞などで「誤ち」と書かれていたとしても、それは作家独自の表現か、あるいは誤用である可能性が高いです。

言葉の正しい使い分けについては、文化庁の国語施策情報などで確認することができます。

「過ち」と「誤ち」の使い分けにまつわる体験談

僕がまだ新人ライターだった頃、この「過ち」と「誤ち」で冷や汗をかいた経験があります。

ある企業の謝罪会見のレポート記事を書いていたときのこと。社長が「私の不徳の致すところであり、大きなアヤマチを犯しました」と発言したシーンを文字に起こしていました。

僕はパソコンで変換された「大きな誤ち」という表記をそのまま使い、原稿を提出してしまいました。「間違い=誤り」というイメージが強かったため、違和感を持たなかったのです。

しかし、すぐに校正担当の方から連絡が来ました。

「〇〇さん、ここ『過ち』じゃない? 『誤ち』なんて言葉、普通は使わないし、これだと社長が単なる計算ミスをしたみたいになっちゃうよ。会社全体の不祥事なんだから、道徳的な重みのある『過ち』を使わないと」

顔から火が出るほど恥ずかしかったです。

漢字一つで、事の重大さが全く変わってしまう

この失敗から、僕は「あやまち=過ち(取り返しがつかない)」、「あやまり=誤り(訂正できる)」というルールを徹底するようになりました。

それ以来、謝罪文や反省文を見るたびに、「これは過ちなのか、誤りなのか」を心の中で問う癖がついています。

「過ち」と「誤ち」に関するよくある質問

Q. 「誤ち」と書いても通じますか?

A. 意味は通じますが、「誤字だな」と思われる可能性が高いです。特にビジネス文書や公的なメールで「誤ち」を使うと、教養を疑われるリスクがあります。意図的な演出でない限り、「過ち」を使うのが無難です。

Q. 「過誤(かご)」という言葉との関係は?

A. 「過誤」は、「過ち(過失)」と「誤り(間違い)」を合わせた熟語です。医療過誤や事務過誤のように、業務上のミスや過失を指す言葉として使われます。この熟語が存在することからも、「過」と「誤」が密接に関係しつつも、別の意味を持っていることが分かります。

Q. 「あやまる」と読む場合はどっち?

A. 文脈によります。「謝罪する」意味なら「謝る」、「間違える」意味なら「誤る」です。「過る(あやまる)」と書くこともありますが、常用漢字表には「過つ(あやまつ)」しかありません。「判断を誤る(間違える)」、「過ちを犯して謝る(謝罪する)」のように使い分けます。

「過ち」と「誤ち」の違いのまとめ

「過ち」と「誤ち」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 正解は「過ち」:「あやまち」と読むなら「過」を使うのが現代のルール。
  2. 「誤ち」はNG:基本的に誤記か常用外。「誤」は「誤り(あやまり)」で使う。
  3. 意味の違い:「過ち」は罪や重い過失、「誤り」は訂正可能なミス。
  4. 覚え方:取り返しがつかないなら「過」、直せるなら「誤」。

漢字の使い分けは、単なる表記の問題ではなく、その事象に対する「重み」や「責任」の捉え方を表します。

これからは自信を持って、適切な漢字を選んでいってくださいね。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、漢字の使い分けの違いをまとめたページもぜひご覧ください。

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