「文書」と「文章」の違いとは?ビジネスで恥をかかない使い分け

「文書」と「文章」、どちらも文字に関わる言葉ですが、ビジネスシーンではその「対象」に決定的な違いがあります。

一言で言えば、「文書」は紙やファイルなどの「媒体(モノ)」、「文章」はその中に書かれている「中身(テキスト)」

もし、上司に「契約の文章(中身)を持ってきて」と言われて、契約書という「文書(モノ)」自体を持っていかず、テキストデータだけをコピーして送ったら、「ハンコが押せる現物はどこだ?」と怒られてしまうかもしれません。

この記事を読めば、物理的な書類としての扱いと、中身の表現としての扱いがスッキリと分かり、ファイリングやメール作成で迷うことなく適切な言葉を選べるようになります。

それでは、まず最も重要な違いの一覧表から詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「文書」と「文章」の最も重要な違い

【要点】

「文書」は文字が記された「物体・媒体」を指し、保存や証拠としての機能が重視されます。「文章」は文法に従って綴られた「内容・表現」を指し、思想や感情の伝達が重視されます。「文書=入れ物」「文章=中身」と覚えましょう。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目文書(ぶんしょ)文章(ぶんしょう)
中心的な意味文字が書き記された「もの」まとまった思想を表す「文の集まり」
焦点媒体、記録、形式(Container)内容、表現、文脈(Content)
数え方1通、1件、1冊1編、1つ
ビジネスでの役割証拠、保存、契約、通達伝達、説得、説明、表現
英語DocumentText / Writing / Composition

一番大切なポイントは、「文書」は保存・管理する対象であり、「文章」は読み・書きする対象であるということです。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「文書」の「書」は「かきしるしたもの(書物)」を意味し、記録媒体としての性質を持ちます。「文章」の「章」は「あや(模様・まとまり)」を意味し、美しく構成された表現のまとまりを指します。

なぜこの二つの言葉に使い分けが生まれるのか、漢字の構成を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「文書」の成り立ち:「文(ふみ)」の「書(しょ)」

「文書」は、「文」と「書」で構成されています。

「書」という字には、「書物」「書類」「書き記したもの」という意味があります。

つまり、「文字によって意思を伝達・記録するための物体」という、物理的な存在感が強いのです。

古文書(こもんじょ)と言うように、歴史的な証拠や記録として残る「モノ」を指すのが本来の役割です。

「文章」の成り立ち:「文(ふみ)」の「章(しょう)」

一方、「文章」は、「文」と「章」です。

「章」という字は、「あや(模様)」「ひとまとまり」という意味を持ちます。

音楽の「第一章」や、勲章の「章」と同じですね。

ここから、「いくつかの文が集まって、一つのまとまった意味や思想を美しく構成しているもの」という、中身の質や構造に焦点が当たった意味になります。

「文章力が高い」とは言いますが、「文書力が高い」とは言いませんよね。これは表現の巧みさを指す言葉だからです。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

契約書や報告書など、形として存在する書類は「文書」と呼びます。その中に書かれている挨拶や説明の内容は「文章」と呼びます。「文書作成ソフト」で「文章」を書く、という関係性です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

管理するものか、作成するものかで使い分けます。

【OK例文:文書(媒体・記録)】

  • 社外秘の文書をシュレッダーにかける。(物理的な紙)
  • 契約文書をPDFファイルで保存する。(ファイル形式)
  • 文書管理規程に基づいて保管する。(管理対象)

【OK例文:文章(中身・表現)】

  • 企画書の文章を推敲して、より魅力的にする。(表現の工夫)
  • 彼の書く文章は論理的で分かりやすい。(中身の質)
  • メールの文章が長すぎて要点が伝わらない。(テキストの内容)

「ビジネス文書」という言葉は、「報告書」や「稟議書」などのフォーマット(形式)全体を指しますが、「ビジネス文章」と言うと、ビジネスに適した書き方や文体のことを指します。

日常会話での使い分け

日常でも、モノか中身かで使い分けます。

【OK例文:文書】

  • 役所から重要な文書が届いた。(封筒に入った書類)
  • 怪文書が出回っている。(出所不明の紙)

【OK例文:文章】

  • 読書感想文の文章がうまく書けない。(中身)
  • SNSに投稿する文章を考える。(テキスト)

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じますが、違和感を持たれる可能性がある使い方を見てみましょう。

  • 【NG】この契約の文章をハンコを押して提出してください。
  • 【OK】この契約の文書(または書類)にハンコを押して提出してください。

ハンコを押すのは「紙(媒体)」に対して行う行為なので、「文書」や「書類」が適切です。

「文章」にハンコを押すというと、文字の上にスタンプを押すような奇妙なイメージになります。

  • 【NG】彼女は文書を書くのが得意だ。
  • 【OK】彼女は文章を書くのが得意だ。

「文書を作る(作成する)」ならOKですが、「書く」という動詞は中身の表現(ライティング)に結びつくため、「文章」の方が自然です。

【応用編】似ている言葉「書類」や「書面」との違いは?

【要点】

「書類」は事務的な記録文書の総称で、複数枚の紙の束をイメージさせます。「書面」は「口頭」の対義語で、文字に書き表された状態や形式を指します。「文書」が最も公的で広い意味を持ちます。

「文書」や「文章」の周辺には、他にも似た言葉があります。

これらも整理しておくと、状況描写がより正確になりますよ。

事務的な「書類(しょるい)」

「書類」は、事務や業務に使われる書き付けの総称です。

「提出書類」「必要書類」のように、手続きに必要な紙の束を指すことが多く、最も日常的なビジネス用語です。

「文書」よりも少しカジュアルで、実務的な響きがあります。

口頭ではない「書面(しょめん)」

「書面」は、文字で書かれた面、つまり「紙に書いたもの」であることを強調する言葉です。

「口頭ではなく書面で回答してください」のように、証拠を残すための形式として指定する際に使われます。

「文書」とほぼ同じ意味ですが、「言った言わない」を避ける文脈で好まれます。

「文書」と「文章」の違いを情報管理の視点から解説

【要点】

情報管理システム(IT)の世界では、「文書(Document)」はファイルそのものや管理単位を指し、「文章(Text)」はその中に含まれる非構造化データを指します。文書管理システム(DMS)はファイルを管理し、テキストマイニングは文章を分析します。

少し専門的な視点から、この二つの違いを深掘りしてみましょう。

デジタルの世界でも、この二つは明確に区別されています。

文書(Document)=コンテナ(入れ物)

Wordファイル(.docx)やPDFファイル(.pdf)などのファイルそのものを指します。

これには、作成日時、作成者、アクセス権限などの「属性情報(メタデータ)」が付与されます。

企業が導入する「文書管理システム」は、これらのファイルをいつ誰が作って、どこに保存して、いつ廃棄するかという「ライフサイクル」を管理するものです。

文章(Text)=コンテンツ(中身)

ファイルの中に書き込まれている、文字列データの集合体です。

「テキストマイニング」や「自然言語処理」の対象となるのは、この「文章」です。

AIが分析するのは「文書の属性」ではなく「文章の意味」なのです。

上司に「文章管理」と言ってキョトンとされた体験談

僕も昔、この言葉の選び方で恥ずかしい思いをしたことがあります。

入社3年目、社内のペーパーレス化プロジェクトに参加していた時のことです。

会議で張り切って発言しました。

「これからは、社内の文章管理を徹底して、検索しやすくすべきです!」

すると、上司が不思議そうな顔で言いました。

「文章管理? 誰が書いた『てにをは』とか表現のチェックをするってこと? 校閲部でも作るの?」

僕は真っ赤になりました。

僕が言いたかったのは、企画書や報告書といった「ファイル(文書)」の保存ルールやフォルダ構成の話でした。

しかし、「文章(中身のテキスト)」と言ってしまったために、「表現の良し悪しを管理する」という文学的な話に聞こえてしまったのです。

上司は笑って教えてくれました。

「それを言うなら『文書管理』だね。ファイルそのものを管理するのは『文書』、中身の書き方を指導するのは『文章』だよ」

この経験から、システムやルールで管理するのは「文書」、人が頭を使って推敲するのは「文章」と、明確に区別するようになりました。

言葉一つで、システムの話が国語の話になってしまう。ビジネス用語の厳密さを痛感した出来事でした。

「文書」と「文章」に関するよくある質問

メールは「文書」ですか「文章」ですか?

メールという「通信手段・記録」そのものは「文書(信書)」の一種として扱われますが、メール本文に書かれている内容は「文章」です。「メール文書を保存する」といえばメールデータそのものの保存を指し、「メールの文章を考える」といえば文面を作成することを指します。

「公文書」とは言いますが「公文章」とは言わないのはなぜですか?

「公文書」は公務員が職務上作成した「記録媒体(書類)」を指し、法的な証拠能力や保存義務の対象となる「モノ」だからです。中身の書き方(公用文の書き方)を指す場合はありますが、制度としては「文書(Document)」として管理されるためです。

Wordファイルはどちらですか?

Wordファイル自体(.docxファイル)は「文書ファイル」です(Wordソフト内でも「新規文書」と表示されます)。しかし、そのファイルの中に打ち込まれたテキストデータは「文章」です。「文書を作成するソフト」を使って「文章を書く」というのが正しい認識です。

「文書」と「文章」の違いのまとめ

「文書」と「文章」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 文書:文字が記された媒体・物体。保存・証拠・管理の対象。Document。
  2. 文章:まとまった思想を表す文の集まり。表現・伝達・推敲の対象。Text。
  3. 使い分け:ファイルや紙なら「文書」、中身の言葉なら「文章」。
  4. ビジネス:文書管理は「モノ」の管理、ビジネス文章は「書き方」のスキル。

言葉の背景にある「媒体」と「中身」の関係を理解すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

これからは自信を持って、扱う対象に合わせて適切な言葉を選んでいきましょう。

ビジネス文書のルールや書き方についてさらに詳しく知りたい方は、ビジネス敬語の使い分けまとめページもぜひ参考にしてみてくださいね。

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